麺!

「麺だ。」

「麺だね。」

「パスタ?」

「うどん・・・じゃないね。」

「きしめん的な?」

「パスタでも平たいのあるじゃん。」

「あるねー、食べた事無いけど。」

 JK達はいつもの様に厨房を貸してくれと言い、厨房へ突撃していた。


「麺をご存じで?」

「はい、これはどうやって食べるんですか?」

 千春は料理人に問いかける。


「これを茹で、スープとして食べます。」

「へぇ~、ラーメン的な感じかなぁ。」

 料理人はそう言うと長いフォークを取り出す。


「長っ!」

「箸じゃないんだね。」

「麺用のフォークなのかな?」

 普段使うフォークの倍はある、長いフォークの先を見ながら千春達は感想を言い合う。


「味付けはどんな感じなんですか?」

「こちらの野菜を煮込み、塩で味付けをします、今夜の出す物は出来ておりますので味見されますか?」

「します!」

 千春が食い気味に言うと、料理人は麺を茹で始める。


「コンソメスープっぽいね。」

 頼子は匂いを嗅ぎながら呟く。


「だねー、味見してちょっと手加えても良いかも。」

「で?千春はなに作るの?」

「コンソメスープパスタに合いそうな物って何かなー。」

「ハンバーグ!」

 美桜が元気に千春へ言うと、横に居たユラ、イーレン、イーナがブンブンと頷く。


「はいはい、それじゃハンバーグ作りましょっかねー。」

 可愛い仕草の幼女達を見ながら笑みを浮かべる千春。


「副菜とかは?」

「ん~、どうしよっかな。」

「ねぇ、チハル。」

「はい、レナたん。」

「あれ作りたい。」

「アレって?」

「ほら、スープにさ、パイ生地で蓋して焼くやつ。」

「はいはいはい、アレね、パイ生地あるよ、ギョースーだけど、レナ作る?」

「作るー♪」

「レナ、手伝うよん。」

「さんきゅ~ダイア。」

 2人が楽し気に話していると、料理人がスープを持ってくる。


「こちらです。」

「有難うございます。」

 千春はスープを口にすると、少し考える。


「どう?」

「うん、ちょっとだけ味付け足しても良いですか?」

「はい。」

 料理人は小さな鍋にスープを持ってくると千春はアイテムボックスから調味料を取り出す。


「ベーコンも良いけどやっぱりここはジブラロール産ソーセージかな。」

「ハーブ入り?」

「ハーブ入り♪」

 まな板にソーセージを並べ斜めにスライスすると、スープに入れ火を入れる。


「あとは胡椒少々~♪」

「そんだけ?」

「ソーセージに味付いてるからね。」

 興味津々に料理人がソーセージを見ている。


「それは肉詰めでしょうか?」

「はい、肉と一緒に香り付けのハーブやガーリックを混ぜたものです。」

「食べさせてみたら?」

「スープ出来たら食べてもらおう♪」

 コトコトとスープを煮込む、麺が少し柔らかくなり過ぎかなと思いながら千春はスープを器に入れ料理人に渡す。


「どうぞ♪」

「・・・有難う御座います。」

 料理人はお礼を言うと長いフォークを使いソーセージを口に入れ目を見開く。


「!?」

「スープも飲んでみてください。」

「はい!」

 驚いた顔でそのままスープを口にすると料理人は更に驚く。


「これは!まったく味が違います!」

「こっちにはベーコン・・・燻製肉とか無いんですか?」

「燻製ですか?干し肉なら有りますが、それは遠征等で食べる保存食なので。」

「あら~、やっぱりこっちでもそうなんですね、ココには無いんですか?」

「有りません。」

「そりゃ残念、アレはアレで美味しいんですよ、料理次第ですけど。」

 そう言うとアイテムボックスからジブラロールで普通に出回っている干し肉を取り出す。


「それベーコン?」

「んにゃ、ふつう~の干し肉。」

「それ美味しくないじゃん。」

 食べた事が有る美桜が嫌そうに言う。


「まぁね~、塩味だけだし肉の臭味あるからね。」

「ジャーキーとは違うの?」

 千春の言葉に日葵が問いかける。


「胡椒とか香り付もしてないんだよコレ。」

「へぇ~。」

「でも煮れば肉の味も出るし、良い感じで塩味もつくからねー、コレで一品作ろっか。」

「千春、ハンバーグはまかせれ。」

「まかした。」

「ヨリおねーちゃん!てつだう!」

「わたしも!」

「イーナも!」

「よーし!それじゃハンバーグ作ろうか!」

 頼子はおこちゃま達を連れハンバーグの準備を始める。


「チハル、干し肉で何作るん?」

「パスタあるしペペロンチーノでも作ろっかな。」

「ペペロン?」

 日葵は不思議そうに問いかける。


「うん、ベーコンの代わりに使っても美味しかったからさ。」

「作った事あんのね。」

「せっかく麺文化が有るなら広げたいじゃん♪」

 そう言うと千春は日葵、花音と一緒に干し肉を切り刻み始めた。



------------------



「はぁ・・・。」

 大きな溜息と共に牙を見せるネフェルス国王、そしてネフェルス国王を怯えながら見る少年。


「申し訳ございません。」

「まさか、デットナ国の王がこんなに幼いとは。」

 ネフェルスは少年をもう一度見ると、また溜息を吐く。


「宰相アンバスとボンド卿は何処へ?」

「冥界だそうだ。」

「・・・それでは先程話をしていた男性は。」

「冥界の神だ。」

「一緒に居たそちらの貴族も一緒に連れていかれたのですか?」

「マアジか、その通りだ。」

 裏で手を回している者達を聞き出し、そして命だけはと懇願する怯えた宰相達を思い出しながらネフェルス国王は少年を見つめる。


「スクエド王・・・幾つになる?」

「12です、ネフェルス王。」

「はぁぁぁぁ、それは宰相の言いなりにもなるだろうなぁ!」

 大声で叫ぶネフェルス王、スクエドと呼ばれた少年はビクッ!っと体を硬直させ目を見開く。


「先王は?」

「病気で亡くなりました。」

「何の病気だ?」

「分かりません、教会の者や聖女も祈りを捧げましたがダメでした。」

「聖女・・・。」

 聖女と言われ千春達を思い出すネフェルス国王、そしてスクエド王に問いかける。


「その聖女の名は?」

「シュリンと言う名でした、ランスルーセン教と言う英雄神を祀る人達だと。」

「そうか。」

「聖女が何か?」

「いや、我が知っている聖女とは違うなと思ってな。」

 もう一度溜息を吐くネフェルス国王、先王は確実に殺されたのだろう、その犯人は宰相、そして聖女もグルだろうと、スクエド王を見ながら話しかける。


「これからどうする?」

「宰相やボンド卿の言った者達を裁きます!」

「1人でか?」

「・・・。」

「スクエド王、信頼出来る者は居るのか?」

「・・・。」

 心当たりは有りそうだが、心配そうに考えるスクエド王。


「我がデットナ国に行くわけにもいかんからな・・・。」

「はい。」

 ショボンとした顔で頷くスクエド王、するとモートが帰って来た。


「話は終わったか?」

 モートはネフェルス国王に話しかける。


「いえ、まったく。」

「ふむ、スクエド、お前このまま王をやるのか?」

「・・・はい、父から受け継いだ民を導くのは僕の使命ですから。」

「そうか。」

 モートは先程と違い、優しい目でスクエドを見る。


「だが、俺が手を貸すのはココまでだ。」

「有難うございます神モート様。」

 たてがみを揺らしながら頭を下げるネフェルス国王、そしてスクエド王も頭を下げる。


「アイトネ。」

『なに~?チハルが料理作ってるのにぃ~。』

「チハルにデットナ国の話は?」

『してないわ~・・・あら、結構面倒な事になってるわね。』

「チハルが知れば黙って無いだろ。」

『助けちゃうわね♪また美味しいお菓子貰えるかも♪』

「あとはまかせた。」

『任されたわ~♪』

 アイトネはニコッと笑い少年スクエド王を見る。


『スクエド・シャー・デットナちゃん♪』

「は!はい!」

『天命を与えます♪』

「!?」

『聖女を連れ国に戻りなさい♪』

「せ!?聖女様ですか!?」

 思わず問い返すスクエド。


『えぇ♪』

「聖女様を国へお連れして何をすれば宜しいのですか!?」

『観光させてあげて♪』

「・・・え?」

 そう言うとアイトネは手を振り姿を消した。


「ネフェルス王・・・どういう事でしょうか!?」

「我にも分からないが、女神アイトネ様の言う通りにすれば良い・・・と、言う事だろうな。」

「聖女様は今どちらへ?」

「女神アイトネ様が『チハルは料理作っている』と言われていた、今は厨房だろう。」

「聖女様が厨房で料理!?」

 信じられないと言う顔でスクエド王はネフェルス国王を見る、ネフェルス国王も首を振る。


「女神様の事だ、何かしらお考えが有るのだろう、チハル王女に相談する、ついて来いスクエド王。」

 立ち上がるネフェルス国王に、スクエド王も立ち上がる、そしてネフェルス国王は少年王を連れ厨房へ向かった。







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