獣人の国ロンガー国!

「獣人の国行くの不安になってきたわ。」

 ぽつりと呟く頼子に千春はゴンドラの外を見ながら頷く。


「鳥の獣人さんだから・・・って感じでも無いよねー。」

「ユラちゃんも食べてるもんねー。」

「イーレンちゃんとイーナちゃんも食べてたよ?」

「こっちの人は気にしないのかな。」

 麗奈と美桜が言うと、首が取れそうな程首を横に振るモリアン。


「サフィーとモリーは食べないもんね。」

「食べませんね・・・。」

「貴族だから?」

「いえ・・・それは関係無いかと。」

 サフィーナは苦笑いで答える。


「チハル様!もうすぐロンガー国が見えます!」

 ドラゴンのアベリアに乗った竜騎士アイリスがゴンドラの横を飛びながら報告する。


「遠くで降りる?」

『いや、その必要は無さそうじゃな。』

 ロイロは楽し気に千春へ言うと前の方を見る。


「鳥の獣人ですね、武装しています。」

 アベリアが答えると、アベリアに乗ったアイリスは緊張した顔で前を見る。


『アイリス、心配しなくても大丈夫じゃ、この数のドラゴンに攻撃するはずは無い、仮に攻撃しようものなら。』

「そうですね、国が消滅します。」

 内心ホッとしたアイリスはアベリアの手綱を握り直しゴンドラから離れる。


「ロイロ、交渉お願いしていい?」

『うむ、任せろ。』

 ロイロはニヤリと笑うと速度を落としながら鳥の獣人に近寄る。


「ドラゴン殿!何用か!?」

 手には槍を持ち、皮に所々金属パーツが見える鎧を着た茶色の羽を持つ鳥の獣人が叫ぶ。


『なぁ~に、他国の観光旅行じゃ、入国を許可してもらえるか?』

「・・・その手に持つ物は?」

『他国の王女と貴族が乗っておる。』

「他国?」

『うむ、東の大陸、ジブラロール王国第一王女じゃ。』

「・・・案内します、同行願えますか?」

 丁寧に話す鳥の獣人。


『チハル。』

「はーいお任せでー。」

 千春は窓から顔を出すと、鳥の獣人はペコリと頭を下げ背を向け街へ向かう、ロイロ達はその後ろを付いて行く。


「何処に行くのかな?」

「着陸出来そうなところじゃない?」

「王族って言っちゃったからお城とか?」

「お城かぁ・・・めんどくたいなぁ。」

 頼子達の話を聞き千春は溜息を吐く。


「一番話が早く済むでしょうに。」

「任せた手前、イヤっ!って言えないんだよなぁ。」

 アハハと笑いながら窓の外を見る、頼子達も顔を窓から出し街並みを見ながらキャッキャと話す。


「おぉー!獣人だらけだ!」

「みんな見てるね。」

「そりゃドラゴンが編成組んで飛んでたら見るっしょ。」

「そりゃそうだ、アハハ!」

 後を飛ぶライト、そしてライトが運ぶゴンドラから青空達も顔を出し街並みを見学していた。


「トカゲな人がいる!」

「ドラゴニュートじゃね?」

「いや、翼無いじゃん。」

「ほら!あの人めっちゃヤギ!」

「人間っぽい人も居るけど、顔が動物のままの人も居るねー。」

 獣人を見ながら話すJK達、そして街の上を暫く飛んでいると、王城が見えた。


「やっぱりお城ですにゃぁ。」

「獣人の国の王様って何の獣人なんだろ。」

「獣人の王様でしょ?やっぱりアレじゃん?」

「アレ?」

「ライオン!」

「あー、それっぽい!」

「そんなベタな、もっとほら、神話に出てくるような動物とか居るじゃん。」

「それ言うならドラゴニュートとかじゃん?」

 千春達が話しているとゴンドラの速度がさらに落ち、ロイロは地上へゴンドラを降ろす。


『到着じゃ。』

「ロイロおっつかれ~ん♪」

「ち・・・チハル王女殿下、お、王城ですか!?」

 黙って見守っていた商人のコンゴが問いかける。


「あ、用事有るんですよね?」

「は・・・はい。」

「ちゃんと話しておきますんで♪」

「よろしくお願いします。」

 懇願するように頭を下げるコンゴ、千春はゴンドラから降りると、ワラワラと兵士が集まり整列していた。


「・・・攻撃されないよね?」

「大丈夫じゃ、殺気が有れば儂が動くからのぅ。」

「暴れちゃダメだよ。」

 青空達もゴンドラから降り千春と合流する。


「まだ兵士集まってるんだけど大丈夫だよね?」

 青空は心配そうに呟く、すると兵士の列が分れ、奥から豪華なローブを着た獣人が現れる。


「ようこそロンガー国へ、我はネフェルス・エピ・ロンガーと申す、ドラゴン殿この国へ観光旅行という事で?」

 髪の様に靡く黄金色のたてがみ、王はライオンの獣人だった、そして大きな牙が見える口から太く低い声が漏れる。


「うむ、儂はロイロ、この子達のお守りじゃ。」

 ロイロはそう言うと千春の頭にポンと手を置き微笑む、そして千春を促す。


「ん?あ、チハル・アル・ジブラロールです、第一王女です、一応。」

 ペコッと頭を下げる千春にサフィーナがクスクス笑みを浮かべ千春の横に立つ。


「初めましてネフェルス国王陛下、サフィーナ・ファンギスと申します。」

 ジブラロール風のカテーシーで挨拶をするサフィーナ、そして千春の説明を続ける。


「チハル王女殿下は次期王妃殿下で御座います、私は第二王妃になります。」

 サフィーナは微笑みながらネフェルス国王に話しかけると、ネフェルス国王は大きな声で笑う。


「はっはっは!肝の据わったお嬢さんだ!流石は次期王妃と第二王妃か!はっはっは!!!」

 ネフェルス国王は大きな口を開け鋭い牙を見せながら大笑いする。


「おおきなくちー。」

 ユラは思わず呟く。


「俺の方がデカいだろ?」

 フェンリルの姿でルプはそう答えると大きな口をガパッと開け微笑む。


「では、城で話をしようか。」

 ネフェルス国王がロイロに言うと千春が待ったを掛ける。


「あ!すみません!コンゴさん達は王都に用事あるんでちょっと待ってくださーい♪」

 千春はそう言うと馬をアイテムボックスから取り出す、すかさず青空が目覚ましの魔法を掛け、頼子は馬車を出す。


「!?」

「あ!入国証とか色々手続きあったのかな!?」

 そう言うと千春はネフェルス国王の方を見る。


「チハル王女の認めた商人であろう?問題無いぞ?」

「あざーす!コンゴさん楽しかったよー!またね!」

「はい!貴重な体験有難うございました、また茶器で良い物が有りましたら取っておきますので。」

「よろしく!」

「チハル王女様有難うございましたー!」

 冒険者鉄血の友人達もコンゴと一緒に馬車に乗り込む。


「お待たせしました!」

 もう一度ネフェルス国王を見る千春、ネフェルスはコクリと頷き城の方へ向かう。


「すごいなー兵士さんみんな獣人だー。」

「やっぱりライオンだったね王様。」

「百獣の王だから?」

「こっちだと百獣の王って言ったらパパドラじゃない?」

「いや・・・パパドラよりママドラの方が強いじゃん。」

「ママドラも強いけどアルデアちゃんも強いよね。」

「それ言うなら・・・マルグリット様もじゃん?」

 千春の後ろを歩く青空達はいつの間にか異世界最強は誰かと言う話題で盛り上がっていた。






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