ロンガー国の不穏分子!

「本当に観光旅行なのか。」

「はい、卒業旅行なんですけどね。」

「学園か。」

「まぁそんなところです。」

「・・・。」

「どうしました?」

 応接間で話をするネフェルス国王と千春、ネフェルス国王は黙って千春を見る。


「最近プロステル方面から来る人族が減っているのだ。」

「そうなんですね。」

「途中何かおかしなことは無かったか?」

「初めて来るので良く分からないですね、それに空から来ましたから。」

「そうか。」

 千春とネフェルス国王が話をしていると横から頼子が話しかける。


「ねぇ、千春。」

「なに?」

「態度の悪い貴族の話あったじゃん?」

「あー!秋刀魚ね。」

「それそれ、その人のせいとかじゃない?」

「どうなんだろ、ネフェルス陛下、秋刀魚って人居ます?」

「サンマ?あぁ、サンマ男爵か。」

 思い当たる節があるネフェルス国王が呟く。


「その人がメタエ村で好き放題やってましたよ、みんな嫌がってました。」

「なんだと?」

「その人何してるんですか?」

「プロステル方面の交易と関税を管理している。」

「その人、タダで商店のご飯食べたり態度悪いらしいですよ。」

「その話は本当・・・いや、チハル王女を疑うのもおかしな話だな。」

「その人って獣人さんなんですか?」

「いや、人族だ、プロステルは人族の国、メタエ村もそうだろう?」

「はい、獣人さんは少なかったですね。」

「人族との商談は人族同士が良いだろうと、人族の貴族をあてがっていたが・・・裏目に出ていたのか。」

 悔しそうに呟くネフェルス国王。


「その人ってプロステルの人なんです?」

「デットナ国だ。」

「あれ?デットナ国って敵対してるんじゃないんですか?」

「良くは思っていないが、使者はこの国にも居る、サンマ男爵はこの国に理解がある、先代はロンガー国で功績も残していたのでな、この国の貴族籍を持っているのだ。」

「なんで嫌わられる事してんだろ。」

 はて?と千春は首を傾げる。


「悪い事してんじゃないのぉ~?」

 頼子が千春に言うと、麗奈も同じく頷き話す。


「人に嫌われるような事してプロステル国と仲悪くさせようと思ってるとか?」

「それくらいでシグリップさんが同盟破棄はしないっしょ。」

「でも中間地点で色々話聞いたらさ、いざという時何が有るか分かんないじゃん?」

 JK達は憶測だが、色々と話始める、ネフェルス国王はそれを黙って聞く。


「んー・・・。」

 千春は腕を組み唸る。


「どうしたん?千春。」

「いやぁ手っ取り早く確定情報欲しいなーっておもってね?」

「アルデアちゃんに諜報活動してもらう?」

「それも考えたけど、結構時間掛かるじゃん?」

「って事は。」

「うん、何か良い供物あったかなー。」

 千春はアイテムボックスの中身を思い出しながら呟く。


「あ!チハル!」

「ん?なに!?」

 声を上げたのは大愛だ。


「ほら!うちが保管してもらってたヤツあるじゃん?」

「えーっと、あー!・・・良いの?」

「良いよ、また買えば良いし。」

 大愛はサムズアップしながら言うと千春はアイテムボックスからスタビャのホイップたっぷりチョコソース掛け苺フラペを取り出す。


「アイトネー!」

『はーい!マアジ・サンマちゃんはデットナ国の軍事部門貴族のボンド・スメルって子から命令されてるわよー♪』

「はい、ありがとう。」

 現れ情報を垂れ流しにするアイトネに苺フラペを渡す千春。


「そ・・・その方は?」

「この方はこの世界の創造神、女神アイトネ様です。」

「!?」

「あ、言うの忘れてました、私達全員聖女なんですよ。」

「ぜ!?全員!?」

「はい♪」

『♪』

「アイトネ、そのスルメさんってなんで命令してんの?」

『スメルよ~♪戦争したいみたいよ?』

「なんで?」

『んー、戦争すると儲かるみたいね、人ってホント争いが好きよねぇ~・・・ズズズズズッ。』

「だそうです。」

 目を見開くネフェルス国王に千春が言うと、ネフェルスは眉間、いや牙を剥きだしながら唸る。


「何か有れば動ける様にしてはいるが・・・まさか、内部に諜報員が居たとは。」

「先代は良い人だったんですよね?」

「あぁ、人族、獣人関係なく助ける事が出来る、いいヤツだった。」

「今は息子さん的な?」

「そうだ。」

「そっかぁ、因みにデットナ国ってここからどれくらい離れてますか?馬車でどれくらいとか。」

「商人の馬車で2小月と言った所か。」

「20日かー、ロイロでも半日かかるなぁ。」

 千春はロイロを見ながら呟く。


「なんじゃ?潰すか?」

「全員悪いわけじゃないだろうしなー。」

「あっちの王様とかどうなんだろうね。」

「金儲けだけの為にその軍事なんちゃらのスルメさんが企んでるだけかもだし?」

「アイトネー、そこんとこ分かる?」

『国王は傀儡ね、宰相と力の持った貴族の言いなりよ、根は悪い子じゃないわね。』

「はい!悪いのは宰相とスルメ!あとこの国のサンマ!」

 千春が手を上げながら言うと、ネフェルス国王が千春に話しかける。


「チハル王女。」

「はい?」

「何故そこまでする?」

「何もしてないですよ?」

「物凄い事をしているぞ?女神様を顕現させ、他国の情報を聞き出し、あまつさえ張本人まで特定するなど、国が動きそれを掴むまで何大月・・・いや何年かかるか分からぬ事だ。」

 驚きと畏怖を混じらせた表情でネフェルス国王が呟く。


「いやぁ、自分の周りで色々あると安心してご飯食べられないじゃないですか。」

「ご、ご飯?」

「はい、心配で夜しか寝れませんし。」

 えへっ♪と冗談を言いながら千春は答える。


「チハルおねーちゃん。」

「なにー?」

「モートさんよぶ?」

「その手が有ったかー・・・でもモートさんに連れて行ってもらっても第二のスルメとサンマが出て来るかもだよねー。」

「宰相だよね。」

「そうだった、一番悪い人っぽいよね。」

「チハル、私のヤツも出して良いよ。」

 日葵が言うと、千春はアイテムボックスからホイップたっぷり抹茶フラペを取り出す。


「ユラ、レンちゃん、イーナ、おねがーい。」

「「「モートさーん!」」」

 幼女3人はタイミングを合わせ笑顔でモートに呼びかける。


「・・・。」

 仮面の半分から覗くモートは笑顔でユラ達の前に来ると、3人の頭を軽く撫で千春を見る。


「話聞いてました?」

「勿論。」

「お願い出来ます?コレ報酬です♪」

「連れて来るか?人間の法で裁く方が良いのだろう?」

 モートはネフェルス国王を見ながら話す。


「何故それを?」

 思っていた事を言い当てられネフェルス国王は驚く。


「モートさんも神様なんで考えてる事ダダ洩れなんですよ。」

 アハハと笑いながら説明すると、モートは目を瞑る。


「ふむ、そうだな、ネフェルス王、あちらの王も連れて来てやる、話をしたらいい。」

「宜しいので!?」

「この子達の願いだからな。」

 モートは半分の仮面から見える顔に笑みを浮かべながら答えるとその場から消えた。


「それじゃ、宰相とスルメとサンマが来るから準備してもらう?」

「俺達が囲んでたら問題ねぇだろ、あとスルメじゃなくスメルな?」

 ルプはそう言うが、すでにネフェルス国王は指示を飛ばしていた、獣人兵士が動き外が慌ただしくなる。


「チハル王女。」

「はい?」

「ココからは楽しい話では無くなる、部屋を変えてお待ち頂けるか?」

「あー・・・了解で~す。」

 千春が答えると、ホッとした顔でネフェルス国王が立ち上がる、そして千春達は別の部屋に案内される。


「その場で切り捨てとかあるのかなー。」

「どうだろー、スルメとサンマはありそうー。」

「魂の濁り次第なのかなー?」

「お国事だからアレじゃん?」

「公開処刑?」

「かもねー。」

『私が実況中継してあげましょうか?』

「「「「「「遠慮します!」」」」」」

 JK達は一斉に後ろを歩くアイトネに突っ込んだ。






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