超巨大な鳥は美味しいぞ!

「これで何作るの?」

 村長の家で厨房を借りたJK達、村で買った食材を並べながら大愛が千春を見る。


「アイトネが珍しいって言ってたこの肉使って色々作りま~す♪」

「で?コレ何なの?」

 大きな肉の塊を見ながら問いかける大愛。


「えっとねぇ、体長5mくらいある鳥。」

「何それ怖い。」

「しかも飛べないらしい。」

「ダチョウ?」

「ダチョウの巨大版?」

「へー・・・美味しいの?」

「さぁ?」

 千春はモモ肉と思われる部位にナイフを入れると、鶏肉とは思えないほど真っ赤な肉が現れる。


「うおぉ、牛肉みたいだ。」

「すごぉ~。」

「ちょっとスライスするからヨリ焼いてくれる?」

「おっけー、何味?」

「取り敢えず塩かな。」

 千春は肉を削ぎ落すと、一口サイズに切っていく、頼子はそれを受け取り塩をパラパラとかけながら焼いて行く。


「鑑定・・・。」

「なんて出た?」

「クオイス鳥、最大8mになる・・・生食可!?」

「え?生で食べれるの?」

「食べれるって出たよ。」

「へぇ~・・・鳥刺しイケるんだ。」

「食べる?ミオ。」

「だが断る!」

「デスヨネー。」

「千春、生でイケるならこれくらいでいい?」

 軽く炙り焦げ目は付いているが、中に火は通っていない状態で見せる頼子。


「うん、食べてみよう。」

「はーい小皿だしてー。」

 頼子は焼いた肉を皆に配る。


「ユラちゃん達も食べるの?」

「たべるー!」

「たべたいですー!」

「たべたいのですー!」

 子供達にも配り、ちゃっかり小皿を持つモリアンにも肉を入れる。


「それじゃ味見しまーす。」

 千春はそう言うとパクリと口に入れ咀嚼する。


「・・・うまぁ。」

「何これウマッ。」

「え?塩だけ?」

「塩だけだよ。」

「塩でこれだけ美味いなら料理したらどうなるんだろうね。」

「臭味が少ない、旨味はあるしサッパリしてる所は鳥肉なのに食べた感凄いなー。」

「コレは当たりかもしれない。」

 千春はポツリと呟き肉にナイフを入れる。


「流石女神様のおすすめ肉だね。」

「クオイス鳥ってまだ有るの?」

「うん、2頭・・・2羽?分買ったからあるよ。」

「5mの鳥?」

「うん、5mある鳥。」

「解体するの?」

「んにゃ、肉屋さんが部位毎に分けてくれてるから欲しい部位あったら言ってね。」

「何が有るの?」

「鶏と同じだったよ。」

 千春が言うと、サフィーナが色々な部位を取り出しテーブルに並べる。


「これがモモ肉ね。」

「・・・マジでデカいな。」

 頼子の体よりも明らかに大きなモモ肉を見ながら呟く。


「こっちが胸肉、こっちは砂刷り、これはレバーだね。」

「これは?」

「それ心臓。」

「でっか!!!私の頭よりデカいんだが!?」

 大きな心臓を見て驚く麗奈。


「うーん。」

 千春は腕を組みながら唸る。


「何作るか悩んでる感じ?」

「うん。」

「千春!私このモモ肉でステーキ作るわ♪」

「おっけー、それじゃ私は・・・。」

 千春はおもむろに心臓を持ち上げる。


「ハツのバター焼き作ろっと♪」

「なにそれ美味しそう。」

「鶏のハツってこれくらいじゃん?」

 千春は親指を見せる。


「そんなに小さいの?」

「小さいよー。」

「これがデカすぎなんだってば。」

 美桜が問いかけると千春が答え、麗奈も突っ込む。


「うおー!」

「でっかーい!」

「なにこれ手羽先?」

「飛ばないくせに手羽先大きいな!」

 青空達は自分達の腕よりも大きな手羽先を見ながらキャッキャと騒ぐ。


「え~っと・・・ダチョウ・・・ダチョウ・・・千春!ヒレって何処!?」

「えっと、これかな?」

「ヒレ貰って良い?」

「いいよー、何作るの?」

「ヒレ肉のロースト!」

 花音がスマホを見せると、真っ赤なローストダチョウ画像が表示されていた。


「おぉー美味しそう。」

「だよね!」

「それじゃカノンはそれおねがーい。」

 千春の指示で皆が動き出す、青空達もスマホでレシピを見ながら色々な物を作り始めた。



------------------



「よし、こんなもんかな。」

 千春は大きなハツの調理が終わりアイテムボックスに入れる。


「チハル様、パンが焼けました。」

「ありがとーサリナ、サフィー、パンも入れといてー。」

「はーい。」

 パンの準備が終わり見渡すと、大愛と日葵がお皿に生肉を並べていた。


「それ刺身?」

「うん、美味しそうっしょ。」

「生肉でとか食べた事無いわ。」

「だねー、ローストビーフならあるけど。」

「チハル、一応鑑定してもらっていい?」

「はいよー、鑑定・・・うん、大丈夫。」

「はい!衛生検査終了!サフィーちゃんこれもおねがーい。」

「はーい。」

 次々と出来上がる料理をサフィーナはアイテムボックスに収納していく。


「それじゃ村長さん呼んで夕食にしますかー。」

「呼んで来まぁ~す♪」

 モリアンは既に屋敷を把握しているらしく、迷いもせず村長の部屋へダッシュした。



------------------



「チハル王女殿下、こ、こちらで御座います。」

 文官ワラサが千春達を食卓へ案内する、大食いペット達は客間で食べる為別行動だ。


「有難うございまーす。」

「並べますね。」

「よろー。」

 サフィーナがアイテムボックスから料理を次々と取り出すと、文官ワラサは目を見開き驚く、しかし侍女達は華麗にスルーする。


「作りすぎじゃん?」

 次々と並べられる料理に思わず青空が突っ込む。


「アイトネ様呼ぶんでしょ?」

『よんだー?』

「今からですー。」

『美味しそう♪』

 料理を見てキャッキャするアイトネ。


「お待たせしました。」

 扉が開き村長アンバはテーブルを見て驚く。


「凄い・・・これは?」

「クオイス鳥を料理しました♪」

「クオイスですか、よく見つけましたね。」

「お肉屋さんに売ってましたよ?」

「あの鳥は足が速く、体も大きい、そしてなにより狂暴ですから、あまり出回る物ではないのですよ。」

「へー・・・結構レアな鳥なんですね。」

「平原に行けば結構走り回ってます、ですが狩るとなると・・・銀級以上の冒険者でも大変です。」

「ほぉぅ~♪」

 千春は後でルプ達を使って乱獲したろ~♪と思いながら頷く。


「それ乱獲したら問題有りですか?」

「ら、乱獲ですか!?」

「はい♪」

「平原は広いです、あちらこちらにクオイス鳥は集落を作ってますので、1つの集落を乱獲した所で変わりません。」

「了解でっす♪」

「それで、その・・・その方は?」

 アンバはニッコニコで話を聞いていたアイトネを見ながら問いかける。


「えっと、私達の友達で護衛もしてる偉い人です♪」

「こんなに美しい方が護衛!?」

『あら~美しいなんて♪ありがとう♪』

「社交辞令だよアイトネ。」

『本気で言ってるわよ~?』

「思考読めたんだったわ・・・さ!ご飯にしましょう!村長さん!」

「は、はい、それでは。」

 アンバは頷き席に座ると、皆も席に座る、侍女や村長のメイドが大皿の肉を取り分け皆に配っていく。


「それではー。」

「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」

「それはジブラロールの作法で御座いますか?」

「はい♪」

 ニコッと微笑み千春が「いただきます」の説明をすると、アンバは頷く。


「とても良いですね、それでは私も、いただきます。」

 アンバは挨拶をするとフォークでハツのバター焼きを口に入れる。


「・・・う!?」

「どうです?」

「美味い!!!」

「美味しいですよねークオイス鳥。」

「いえ!この料理がですよ!?」

「素材が良いと味付けも楽しいです♪冷める前に食べてくださいね♪」

 美味しい美味しいと食べるアンバを見ながら千春はニッコニコだ。


「チハル~冷めるよ~?」

「おぉっと!私もタベルー!」

「チハルおねーちゃん!ハツおいしー!」

「だね♪」

 千春はそう言うとハツを口に入れモグモグした。



------------------



「っかぁ!ウメェなこの鳥!」

「ビェリーさん!それ僕の!」

「そっちにもあるやん!」

「僕のお皿から食べるの禁止です!」

「いいやん、これやるけん。」

 ビェリーは子供の姿でフォークを持ち、目の前にある真っ赤なヒレ肉を刺しコンの口に入れる。


「んぐっ・・・おいひいぃぃ。」

「あの肉の塊を見たが、儂くらいあったぞ?」

「ロイロよりはちいせぇよ、だが俺よりはデカいな。」

「食いごたえもあるばいねー。」

「おいしいです!」

 ペット達はモグモグと料理を口にする。


「ファーノ、この鳥の居る場所はわかるじゃろ?」

「西の平原一帯にあっちこっちいるっす。」

「ほう?あっちこっちに居るんじゃな?」

「結構いるっすねぇ、一回仕事で手伝った事あるっすけど・・・ヤバいっすよ?」

「何がじゃ?」

「平原の最強動物っす。」

「ほう。」

「そこらの肉食獣すら逃げるっすから。」

「こやつらは肉食なのか?」

「違うっす、ただテリトリーに入ってきたら蹴り殺すだけっす。」

「狂暴じゃな。」

「っす。」

「ふむ・・・少々狩っても大丈夫じゃろ?」

 ニヤリと笑うロイロはルプを見る。


「今千春も同じ事考えてねぇか?ロイロと千春の感情がリンクしてっぞ。」

「明日は楽しみじゃな!」

「大渓谷を見学したらドラゴンで移動するんだよな?」

「うむ。」

「それじゃ時間はたっぷりあるな。」

「そう言う事じゃ♪」

 ロイロとルプは頷くと、目の前の料理に目をやる。


「・・・ビェリーお前!食いすぎだろ!」

「コンもばーい。」

「儂の刺身が消えておる!」

「それはビェリーさんです。」

「ロイロ様!おかわり持ってきますっ!」

 侍女見習いオランダはそう言うと料理の追加を取りに行った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る