メタエ村で食べ歩きだ!
「こちらで御座います、チハル王女殿下。」
「は~・・・い?」
村長のアンバに案内された部屋を見て千春は目が点になる。
「すっ・・・すごっ!」
「うわぁ!何ここ!」
「豪華!村長さんの家ってこんなに凄いんですか!?」
千春と一緒に部屋に入った頼子、美桜、麗奈が叫ぶと青空達もドヤドヤと部屋に入る。
「うひょー!」
「うわぁお!」
「すいーとるーむ!」
「凄いわ・・・・。」
青空、大愛、日葵、花音も部屋を見渡すと声を上げる。
「村長さんココって客間ですか?」
「・・・はい、貴族が泊る事が有りますので。」
「へぇ~、だからこんな豪華なんですね~。」
「その貴族からの要望なのですよ。」
困り顔で答えるアンバ。
「貴族ってプロステル国のです?」
「いえ、ロンガー国です。」
「・・・もしかしてロンガー国ってメンドクサイ国なんです?」
苦笑いするアンバに千春が問いかけると首を横に振る。
「そんなことは有りません、交易もしておりますし、旅人や冒険者も気の良い者ばかりです。」
「貴族さんは?」
「・・・。」
「把握しました。」
千春は何処の貴族も面倒な人いるんだなーと思いながら話を切る。
「チハル!みてみてー!ソファーやわらかーい!」
「庭もすごーい!」
「ダイア!ほら!これ!」
「うわぁ、成金って感じの置物だぁ。」
「・・・村長さん、その貴族さんの部屋チハルが使っても大丈夫なんですか?」
キャッキャと喜ぶ青空達を横目に花音が問いかける。
「勿論です、この村は国に属しておりません、しかし隣国の村という事もありますのでご用意しているだけです、大陸が違うとは言え王女殿下がお泊りになるのでしたら何も問題は有りません。」
「プロステル国と近いのに国に属してないんですか?」
「はい、そもそもここは先々代が開拓した場所、ちょうど国との境目で空白地帯になるのですよ。」
「へぇ~・・・え?って事は村って言うか別の国になるんじゃないんです?」
思わず問いかける千春。
「国と言い切ると面倒な事が多いのですよ。」
「・・・そう言う物なんですか。」
「はい。」
面倒なんだな~と思いつつも良く分からない千春。
「それじゃ町・・・じゃない村に食べ歩き行きますかー!」
「何が有るのかな。」
「村長さん、この村の特産あります?」
「特産?」
「はい!美味しい食べ物とか食材とか、何か面白い物が採れるとか♪」
「美味しい・・・どれも似た物ですからねぇ。」
うーんと考えつつ呟くアンバ。
「肉は何肉をよく食べます?」
「ここら辺ですと野鳥や鹿、熊や猪あたりですか。」
「味付けは?」
「プロステル国の塩やロンガー国の岩塩ですね。」
「塩かぁ、やっぱりそうだよねぇ~。」
期待は出来ないな~と千春は頷く。
「それじゃ村に行こっ!」
美桜が手を上げながら皆に言う。
「ご案内致しますので馬車を準備致します。」
「あ、大丈夫です、飛んで行くんで。」
「え?」
千春はアイテムボックスから箒を出すと、皆も杖や箒を取り出す、勿論侍女達もだ。
「チハルお嬢、俺それ持ってないから留守番してるっす。」
「ロイロ、おねがーい。」
「任せろ。」
「ちょ!?ロイロ姐さん!?」
ロイロはファーノの首をガシっと掴み、侍女見習いになったオランダの手を引くと庭に出る、そしてドラゴンに変化するとオランダを背にのせファーノは鷲掴みする。
『準備おーけーじゃ!』
「おっけー、それじゃいってきますねー!」
千春はアンバに声を掛けると庭にでて箒に跨ると地面を蹴る。
「え?」
アンバはもう一度声にならない声を出すと、皆は次々と青空へ飛んで行く。
「・・・え?」
そして部屋にはアンバ1人になり誰も居なくなった。
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「チハルおねーちゃんおなかすいたー。」
ルプの背中に乗るユラ、イーレン、イーナ。
「肉串は有るっぽいからまずそれ買おう!」
「やったぁ!」
「何の肉かなぁ。」
「イーナは何でもたべるのです!いいこなので!」
「イーナ、そろそろアルデアが血欲しがるんじゃない?」
「欲しがってるのです!」
「今日の夜呼ぶって言っておいてー。」
「ハイなのです!」
箒に乗り話をしていると直ぐに村の通りが見えて来る、村人は皆千春達を指差しながら見ている。
「わ~注目されてる~♪」
「ミオ、そりゃこれ見たら注目するっしょ。」
麗奈は後ろからついて来るドラゴン達を指差しながら答える。
「あの広場降りるよー。」
千春はそう言うと少し広くなっている広場へ着地する。
「オランダ、怖く無かったじゃろ?」
「はい!ロイロ様!」
「ロイロ姐さん・・・俺には聞かないんっすか?」
「お前は慣れたじゃろ。」
「慣れませんって!」
「こんどあくろばっとひこうと言うヤツをしてやるからのぅ。」
「嫌な気しかしないんで遠慮するっす!」
オランダを背中から下ろしロイロは楽し気に話す。
「あっちからいいにおい!」
「さすがユラ、そっち行ってみよー!」
ユラの指差す方へ歩き始める千春、ドラゴン達は既にドラゴニュートに、そして千春達の周りを守りながら歩いて行く。
「ココなのです!」
イーナが指差す方では大きな串に肉が幾つも刺さったまま焼かれていた。
「おぉー、いい匂い!」
「ちょっと獣臭さある?」
「何肉なんだろ。」
「おねえさーんその肉何の肉なんですかー?」
「・・・こ、これかい・・・ですか?」
「はい!」
「猪だよ・・・でございますです。」
「普通に話して貰っても良いですよ?」
「そ・・・そうですか?」
困り顔の女性は固い笑みで答える。
「おたべになりますか?」
「はい!えっとー、とりあえず20本ください!」
「はい!」
店員女性は急いで焼いている肉を再度火にかけ焼き始める。
「どうぞ!」
「有難うございます。」
サリナとモリアンが焼き串を受け取ると皆に配る。
「おいくらですか?」
サリナが巾着からお金を取り出しながら問いかける。
「お!お金は大丈夫でございます!」
「え?お支払い致しますよ?」
「いえ!貴族の方から受け取る事は出来ませんので!」
「そう言う訳にもいきません、おいくらですか?」
「・・・ぎ、銀貨8枚です。」
「それではこちらを。」
サリナは小金貨一枚渡す。
「お、お釣りを・・・。」
お釣りをサリナに渡す女性店員。
「あの・・・。」
「・・・はい?何でしょう?」
「貴族様では無いのですか?」
「貴族令嬢も居ますが・・・何故ですか?」
「いえ!気になっただけですので!」
焦る女性店員にサリナは何かを察したのか笑みを浮かべお辞儀をすると店から離れる。
「サリナー、なんかおかしいね。」
「はい、村長様の話も有ります、貴族がこの村で面倒事を起こしている事は間違いなさそうですね。」
「んー。」
「美味しいですか?」
「びみょ~。」
千春はモグモグと猪の串焼きを食べながら答える。
「チハルおねーちゃん肉おいしー!」
「よかったねー、レンちゃんはどう?」
「・・・かたいー!」
小さな口でモゴモゴと咀嚼するイーレン、ユラは固いのも気にせずパクパクと食べていた。
「柔らかい肉は無いのかなー。」
「チハル!あっち焼き鳥あるよ!」
「鳥なら柔らかいか、レンちゃんあっち行ってみよう。」
「レン、それは俺が食べてやる。」
人狼姿になったルプがイーレンの肉串を受け取ると柔らかな肉を食べる様にパクパクと食べてしまう。
「やっぱり獣人の顎すごいね。」
麗奈はルプを見ながら話していると美桜もウンウンと頷く。
「ほら、ファーノ君も普通に食べてる。」
「オランダちゃん苦戦してるね。」
「ファーノ君が処理するっしょ。」
千春の後ろに付いて行きながら話す2人、そして次は焼き鳥を食べ、イーレンやオランダも普通に食べる事が出来た。
「もうちょっと食べたいね。」
「他の食べよう!」
「あれ!饅頭っぽいのある!」
「あの饅頭、ジブラロールにもあったよね。」
「肉まん?」
「んにゃ、ジブラロールだとそば粉で包んだ惣菜饅頭。」
「へー、アレ食べてみよう!」
ワイワイと食べ歩くJK達は饅頭屋に突撃する。
「おじさん!饅頭20個!」
「お、おう。」
焼いた饅頭を大きな葉に包む店主は侍女達に渡す。
「おいくらですか?」
「・・・頂いてもいいので?」
「勿論です。」
「・・・銀貨6枚です。」
「おじさーん!」
サリナがお金を出す前に千春が小金貨を一枚取り出し渡す。
「おじさん♪」
「な、なんですか?」
「貴族からお金取らないの?」
「え!?」
「さっきのお店もなんか変な感じだったから。」
千春は屈託のない笑みで問いかける。
「そ・・・それは、貴族に逆らうと仕入れが出来なくなる・・・からだ。」
「マ?」
「・・・ま?」
「マジですか?」
「あ、あぁ。」
「だからお金取らないの?」
「くれる時もあるが・・・請求すると睨まれる。」
「そっかぁ・・・その貴族何処に居ます?」
「今は居ない、たまに村へやって来ると色々難癖つけて帰るだけだ、その時だけ我慢すれば良いだけだ。」
「・・・ヤな貴族だなぁ。」
千春は困り顔の店主を見ながら呟く。
「で?何処の貴族なの?」
「ロンガー国だ。」
「ってことは獣人さん?」
「いや、その貴族は獣人の特徴が無いんだよ。」
「人間?」
「ロンガー国は人間の貴族も居ると聞く、人間かもしれない。」
「そっか、どんな・・・いや、聞いても分からないか、アイトネー。」
『は~い♪』
「話聞いてた?」
『聞いてたわよ~♪』
「名前分かる?」
『マアジ・サンマって言う貴族ね。』
「真鯵秋刀魚?」
『マアジ・サンマよ?』
「なにその魚みたいな名前。」
『私に聞かれても・・・ねぇ?』
アイトネはキョトンとした顔でアイトネを見ている店主に向かって言う。
「・・・え?」
「アイトネ、夜何か食べたい?」
『あそこに珍しいお肉があるからあのお肉で何か食べたいわ~♪独り言だけど♪』
「おっけーあっちね、おじさんありがとー!塩が良くきいて美味しかったよ!」
「あ、あぁありがとう・・・え?」
千春は店主に手を振り店を離れる、そして村の肉やに突撃した。
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