半殺し!

「あっちに逃げた!」

「ルプ!半殺し!」

「おぉ~、怒ってんなぁ。」

「ビェリー、近くにいる?」

「んにゃー、散り散りに逃げとるねーわっちも行って来るばい♪」

 ビェリーはルプの背に飛び乗るとルプ、ビェリー、コンは森へ消える。


「全員捕まえるのは無理かなー。」

 千春は腕を組みながら呟くとイーナが声を掛ける。


「けんぞくが追いかけるのです!」

「眷属?」

「あれなのです!」

 イーナは小さな指を森に向けると黒いモヤの掛かった狼が居た。


「おぉー、それじゃルプ達が追いかけてる盗賊以外を捕獲!」

 千春が言うと狼達は大きく吠え森に走って行った。


「盗賊も馬鹿だねぇ~。」

「チハルを見て開口一番に貧相な胸とか死亡フラグじゃん。」

「モートさんを呼ばなかっただけチハルも成長したって事だね。」

 頼子達は千春の後ろから呟くと千春はホッペタを膨らませながら振りむく。


「あいつら全員笑ったから同罪だよね?」

「・・・そうだね。」

 ぷんぷんと音が聞こえそうな程お怒りの千春、頼子達は苦笑いで森を見つめた。



------------------



「おい!やべぇぞ!」

「なんでドラゴンが湧いて出るんだよ!」

「あれはドラゴニュートってヤツか!?」

「初めて見たぞ!?」

「あんなもんしょっちゅう見るもんじゃねぇだろ!」

「おい!お前ら早く逃げるぞ!」

 盗賊達は散り散りになりながらも数名のグループで逃げ回る、そして森を抜けるとそこには。


『遅かったのぅ。』

「ど・・・ドラゴン。」

『これ以上逃げるなら消し炭になるぞ?』

「・・・くっ。」

「アニキ・・・。」

「降伏だ。」

『賢明じゃな、ほれ、お前、全員を縛れ。』

 ロイロはロープを投げると、アニキと呼ばれた男は部下達を縛る。


『さて、他の奴らは捕まえたかのぅ~。』

 ロイロは狼の遠吠えがする方を見ながら呟いた。



------------------



「ダメだ!追いつかれる!」

「狼くらいならやれるぞ!?」

「いや!ダメだ!剣が効かねぇ!」

「魔物か!?」

「もっと厄介な奴だ!」

 3人で逃げる盗賊達は森を駆け抜けながら叫ぶと横から黒い狼が飛び掛かる。


「うわぁ!!!」

「ヤガラ!」

「逃げろ!」

「クソッ!」

「ぎゃー!」

「どうした!メジル!」

「ダメだ!こっちにも居る!」

「メイダ!走れ!」

 メイダと言われた男は2人をもう一度見る、そして2人に背を向け走ろうとしたが動けなかった。


「・・・ダメだ。」

 目の前には2頭の狼が牙を剥きながら唸っていた。


「くそっ!くそっ!」

 今から生きたまま食われると思い、メイダは膝を突き地面を叩く、すると狼が唸りながら近寄る。


「・・・。」

グルルルルル


「・・・・・・・?」

 いつまでも噛みつかれもせず動かない狼に気付いたメイダはそっと狼を見る。


「とうこうするのですー!」

 小さな少女が狼の背に乗り踏ん反り返りながら命令する。


「・・・え?」

「とうこうするのです!・・・こうさん?こうふく?」

 はて?と首を傾げるイーナ。


「する!するから命は助けてくれ!」

「それはイーナは判らないのですっ!」

「な!何をすれば許してくれる!?」

「チハルおねーちゃんにあやまるのです!」

「・・・チハル?」

「おまえたちが笑ったおねーちゃん!」

「あ・・・え?それだけ?」

「チハルおねーちゃんのおむねを笑った人間はめいかい旅行なのですよ?」

「め・・・冥界!?」

「なのですよ?」

「謝る!謝る!」

「それじゃ付いて来るのです♪」

 イーナはそう言うと狼の中へ消える。


グルルルルルルル。


「狼に付いて行けば良いのか?」

「・・・多分・・・。」

「ヤガラ、大丈夫か?」

「あぁ、食われるかと思った。」

「俺もだ。」


ガウッ!


「「「はいぃぃぃ!」」」

 盗賊3人は狼に返事をすると、狼に囲まれたまま大人しく付いて行った。



------------------



「2時の方50mばーい。」

「隠れてるな。」

「ビェリーさん他には?」

「12時の方200mくらいやね。」

「それじゃ僕そっち行きますねー。」

 コンはそう言うとピョンとルプの背から飛び降り、クルンと一回りすると戦闘モードの9尾の狐へ変化する、そしてそのまま森を駆け抜けた。


「俺はそっちを捕まえてくる。」

「わかったばーい、わっちは左のバラけとる奴束縛してくるば~い♪」

 ビェリーはそう言うとヒョイっと飛び降り大蛇に変化する、そして木をスルスルとすり抜けながら闇へ消えた。


「さて、半殺しって言ってたが・・・普通に捕まえりゃ良いだろ。」

 プンプンと怒る千春を思い出しながらルプは笑いながら盗賊の方へ駆け出した。



------------------



「アベリア、あとは何処?」

 ドラゴンのアベリアに乗った竜騎士アイリスは空から森を見ると問いかける。


「あそこに2人、その赤い葉がある木の下にも2人居るわ。」

「レフト、ライト。」

「「はい!」」

 レフトとライトは既に気配を見つけていたのか一直線に森へ突っ込む、そして響く悲鳴と怒号。


「他は?」

「見当たらないわ、右はルプ様達が、左はアルデア様の眷属が、一番遠くに逃げた者はロイロ様が捕獲しました。」

「そう・・・一人でも逃がす訳にはいかないわ。」

「そこまで?」

「えぇ、チハル様のお怒りは神の怒りよ?」

「・・・まだ呼ばれてませんよ?」

 ドラゴン姿で首を傾げるアベリア。


「でも多分・・・見てらっしゃいます。」

 アイリスはそう言うと空を見上げる。


「女神様はチハル様がお好きですものね~。」

 アベリアはクスクスと笑い高度を下げる。


「アイリス様捕獲しました。」

「こちらも捕獲しました。」

 レフトとライトに鷲掴みにされた盗賊はぐったりとしたまま動かない。


「・・・生きてる?」

「はい、まだ心臓は動いてます。」

「こちらも生きてはいます。」

「・・・それじゃ戻りましょうか。」

 アイリスはアベリアに乗ったまま声を掛けると、ドラゴン3頭は地面を蹴り千春の元へ戻った。



------------------



「あ!アベリア帰って来た。」

「おぉぅ、ドラゴンに握られてる、潰れてね?」

「半殺しって行ったからマジで半分死んでるかもなー。」

 バサバサと風を切りながら地面に降り立つドラゴン達。


「チハル様捕獲完了しました。」

 竜騎士アイリスは任務完了が出来嬉しそうに答えると、レフトとライトは盗賊をポイっと地面に投げ落とす。


「・・・生きてる?コレ。」

「あ、動いた。」

「それ痙攣って言うんじゃね?」

 ピクピクと痙攣する盗賊を見ながら大愛は青空に突っ込む。


「チハル、コレどうするんだ?」

「盗賊でしょ?悪い事してるんだよね?」

「してるから盗賊なんだろ?」

 ルプに言われ千春は盗賊達を見る、狼に囲まれた盗賊が悲鳴の様に声を上げる。


「申し訳ありませんでしたぁぁ!!!!!」

「・・・なにが?」

「あの!ボスが!その!あの!お・・・お胸の事を・・・。」

「へぇ~・・・怒った理由わかってたのぉぉ~?」

「はぃぃぃぃ!もうしわけございませんでしたぁぁ!!!」

 イーナに聞いたとは言えず泣きそうな返事をし、再度謝る盗賊。


「悪い事してるんだよね?」

「・・・と、盗賊なので。」

「サフィー、こっちの盗賊ってどうなるの?」

 千春がサフィーナに問いかけると、モリアンがてくてくと歩いて来る、そして謝る盗賊に話しかける。


「盗賊さん質悪い方ですぅ~?」

 モリアンはニコッと笑いながら問いかける。


「たち悪いって何?」

 千春が首を傾げると日葵が答える。


「モリーちゃん曰く質悪いのは生死関係なく奪う方らしいよ。」

「たち悪く無いのは?」

「通行料的な物貰ったら帰る盗賊らしい。」

「へぇ~、そんなの有るんだ。」

「ほら、王都の手前で兵士とやり合ってたじゃん。」

「うん。」

「アレが質悪い方だよ。」

「あーあー!そう言う事ね!」

 納得した千春はもう一度盗賊を見る。


「たち悪い方なの?」

「いや!悪く無い方・・・です!」

「えぇ~?本当~?」

「本当です!」

「神様に聞くよ?」

「え?か・・・神?」

「こういう時はモートさんかな?」

 千春はそう呟くと、顔半分を仮面で隠した男が現れる。


「やぁチハル、こいつ等か?」

「うん、たち悪い盗賊?」

「・・・言ってる事は本当だな、余程の事が無ければ戦わないタイプだな。」

「へぇ~・・・でも私の事馬鹿にしたのはアウトだよね。」

 それはそれ、これはこれと千春は意地悪な顔で盗賊を見る。


「申し訳ありませぇん!!!!」

 地面に額をこすりつけながら謝罪する盗賊、その横で意識の有る盗賊達は全員地面に頭を付け謝る。


「・・・んー、ゆるしてあげる。」

「おー!チハルが大人になった!」

「えらいねぇ千春。」

 美桜が言うと頼子も千春の頭をナデナデしながら褒める。


「・・・だってこんなゴッツいおじさん達が土下座してんだもん、ちょっと引くよね。」

「まぁね。」

「それじゃ私達行くから、これからはまっとうに生きて下さいね、じゃないと・・・。」

「「「「「はいっ!まっとうに生きます!」」」」」

「ん!それじゃ怪我治すから怪我人はー・・・。」

 千春は盗賊を見回すと、怪我人はレフトとライトに鷲掴みされていた4人だけだった。


「・・・うん、取り敢えず死なない程度まで回復しようか。」

「そうだね、ウチこっちやるわ。」

「私こっちの人やるー。」

「手伝うー。」

「ほいほーい、ダイア、この人回復しよー。」

「あいよー。」

 手分けして回復魔法を掛けるヒーラー軍団、横で申し訳なさそうにレフトとライトがのぞき込む。


「レフト、ライト、気にしなくていいからね?」

 千春は半殺し!と命令したのは自分だからと2人をなだめ、今にも息を引き取りそうな盗賊を回復した。










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