王と王の内緒の対談!

「マルグリット様いらっしゃいませ!」

「あら、ラティス王妃も料理を?」

 マルグリットが様子を見に厨房へ現れるとラティス王妃が出迎える。


「はい!お料理楽しいですねっ!」

 髪を後ろへ束ね、フサフサの耳をピコピコ動かしながら答えるラティス王妃。


「チハルと料理すると楽しいわよね♪」

 微笑みながら答えるマルグリット、ラティス王妃もウンウンと頷く。


「お母様いらっしゃいませ~♪あれ?チェラシーは?」

「ぐっすり寝てたから置いて来たわ。」

「大丈夫です?」

「アルデアの分身が横に居るわ、それに護衛も付いているもの。」

 マルグリットは安心しなさいと千春へ言う、するとアイトネがニコニコと笑みを浮かべながら話しかける。


『チェラシーが泣けば私に声が届くわ♪』

「そりゃ安心だわ。」

 アハハと笑い千春は料理をアイテムボックスに入れて行く。


「チハルおねーちゃんお仕事ないの?」

「うん、終わったよー、ユラ、レンちゃんありがとうね♪」

「ハルおかーさんも後でくるってー。」

「ほいほい、りょうかーい、それじゃ全部収納して食卓に向かいますかー。」

 千春が声を掛けるとマルグリットが少し残念そうに呟く。


「あら、手伝いたかったのに。」

「手はいっぱい有りますから大丈夫ですよん♪」

 千春の後ろにはJK軍団、そして侍女達、王宮の料理人と沢山の人が動いていた。


「王宮の料理人さん達も凄いんですよ、作った事無いのにすぐ覚えるんです。」

「ルノアーもそうよね。」

「いえ、ルノアーさんは更に研究して今じゃ私より美味しく作りますから。」

「あの子は真面目だものね。」

 幼い頃のルノアーを思い出しながらクスクスと笑うマルグリット。


「あれ?お父様は?ルプとコンも居ない。」

 マルグリットの後ろには付き人のエリーナが1人しか居ない。


「エイダンは直接シグリプの所へ向かったわ。」

「ルプとコンは護衛ですね。」

「・・・そうね。」

 含みの有る言い方で答えるマルグリット、エイダンと共にルプとコンは沢山の酒を担いで行った事は言わなかった。


「チハル、こっちは全部収納したわよ。」

「ほーい、それじゃ食卓に向かいますかー。」

 サフィーナにそう言うと皆は王族の食卓へ向かった。



------------------



「シグリプ!来たぞ!」

「は?また来たのか?」

「なんじゃ、せっかく良い物持ってきたと言うのに、のぅルプ、コン。」

 エイダンの言葉に頷き、ルプとコンは人型の姿で籠を見せる。


「今日の料理に合う日本酒だ、美味いぞ?」

「今日は熱燗で行きたいですねぇ~♪」

 ルプとコンは嬉し気に言う。


「アツカン?」

「酒を温めて呑むんじゃ。」

「は?酒を温める?」

「そうじゃ、ぬる燗でも美味いぞ?」

「ヌルカン・・・?」

「呑んでみたらわかる!」

 エイダンは説明が面倒になりシグリップに言い放つ。


「で?何しに来たんだ?酒持ってきただけなのか?」

「いや、お前チハルの事を勘ぐっておったじゃろ。」

「・・・何故知ってる?」

「儂の情報網があるのでな、既にこの王国の情報は手に取るように分るんじゃ。」

「おいおいおい!なんだそれは!?」

「冗談じゃ、チハル達が居る間だけ様子を見てるだけじゃからな。」

「それでも大問題だぞ?」

「・・・まぁそうじゃな、悪気はない、許せ。」

「許せと言われてもなぁ、この部屋に誰か潜ませているのか?魔法道具か?」

「ん?あ~。」

 エイダンはキョロキョロと見まわしシャンデリアを見る。


「あれじゃ、アルデア嬢もう大丈夫じゃぞ。」

 エイダンが言うとシャンデリアから蝙蝠が飛び降りエイダンの肩にピタリと止まる。


「蝙蝠?」

「あぁ、アルデア嬢の眷属じゃ。」

「・・・何者なのだ?」

「言って無かったか、アルデア嬢はヴァンパイアじゃ。」

「・・・は?伝説の魔族じゃねぇか!」

「しかも真祖じゃからなぁ。」

「・・・なぜそんな物騒な奴がジブラロールの諜報してんだよ。」

「そりゃチハルの飯が美味いからのぅ、今はジブラロールに住んでおる。」

「そうだ!チハル!あの娘は何者なんだ!?どう考えてもおかしい、王族の養女はまだ分かる、だが聖女で女神が呼べ、しかもドラゴンやフェンリルを使役している!そして何よりあの知識と食事!」

 一気に捲し立てるシグリップ。


「ふむ、まぁ座れ。」

 エイダンはそう言うとシグリップをソファーに促し自分も座る。


「はぁ・・・で?」

「まずは約束をして貰おうか。」

「何だ?」

「今から言う事は内緒じゃ。」

「内緒って・・・軽く言うなぁ。」

 呆れる様に呟くシグリップ。


「ほっといてもチハルがバラシそうじゃからなぁ。」

 エイダンはそう言いながら笑みをこぼす。


「それじゃ意味ねぇだろ。」

「一応ジブラロールでは極秘にしておる。」

「ほぉ?」

「シグリップ、約束出来るか?」

「あぁ、国家機密として扱おう。」

「ふむ、約束を破ると神罰が落ちるかもしれぬぞ。」

「チョットマテ!急にヤバい話になってんじゃねぇか!」

「そうか?」

「そうだよ!待て!本当に聞いて良いのか!?ソレは!」

「・・・ま、大丈夫じゃろ。」

「・・・神罰落ちるかもしれねぇ話なのに軽いんだよお前は。」

 ガックリと首を垂れるシグリップ。


「まぁわかった、話を聞こう。」

「ふむ、まずはチハルの事じゃ。」

 エイダンはそう言うと、日本の事、そしてロイロやルプ、ビェリーやコン、そしてJK軍団の話を始めた。



------------------



「・・・。」

「と、言う事じゃ。」

「・・・。」

「内緒じゃぞ?」

「・・・。」

「何か言えや!」

「言えるか馬鹿野郎!」

「馬鹿と言うヤツが馬鹿なんじゃぞ?」

「うっせぇ馬鹿野郎!なんだよ異世界って!それにジブラロールの技術がヤバいだろ!」

「儂のせいじゃないからなぁ、チハル達の父親が進めておるんじゃ。」

「マジかよ・・・。」

 エイダンは何故かニコニコと笑みを浮かべながら答える。


「エイダン。」

「なんじゃ。」

「俺にそこまで説明すると言う事は・・・つまりそう言う事か?」

「うむ、お前も1人、いや、宰相やラティス王妃に支えられて頑張って来たんじゃろう?」

「あぁ、あの2人には心身共に支えられてきた。」

「それにじゃ、今回の件はチハルが関わっておる。」

「それは関係ない、逆に礼を言わなければならないくらいだ。」

「それは判るが、言ったじゃろ、儂も力になると。」

「・・・それじゃ。」

「うむ、タイキ殿やイサム殿と相談するが、技術提供を約束しよう。」

「・・・大丈夫か?」

「ジブラロールとしては問題無いぞ?」

「・・・プロステルからは何をすればいい?」

「そうじゃな、交易船を飛ばす予定じゃ、いや交易島になるのか?とにかく交易を進めたい。」

「それはこちらも願ったりだ・・・ちょっとまて、飛ばすって何だ?」

「タイキ殿達が開発した飛行艇、空飛ぶ船じゃ。」

 当たり前の様に説明するエイダン、シグリップはポカンと口を開けたままエイダンの話を聞く。


「今回チハル達が来た理由も、ちょいと欲しい鉱石を探しに来たのじゃ。」

「・・・あぁ聞いている、石工ギルドで鉱石を大量に買ったってな。」

 溜息を吐きながら答えるシグリップにエイダンは苦笑いする。


「ジブラロールからの交易で品物を優遇して欲しいくらいじゃな。」

「それは構わない、それ以上の見返りが有るわけだからな。」

「そこらへんの詳しい話は商業ギルドを通して話をさせよう。」

「分った、関税の方は俺達から指示しよう。」

「安く頼むぞ?」

「わかった。」

 シグリップはコクリと頷くと、扉からノックの音がする。


「陛下。」

「入れ。」

「お食事の準備が整いました。」

 執事が報告し頭を下げる。


「よし、話は終わりじゃ!」

 エイダンは待ってましたと言わんばかりに立ち上がりシグリップを見る。


「今日の飯は美味いぞ♪」

 ニヤリと笑うエイダン。


「おう、ラティスも料理したんだ、美味いに決まってる。」

「ほう?ラティス王妃も料理出来るんじゃな。」

「・・・いや、した事無いはずだが。」

「・・・大丈夫か?」

「あぁ、肉が生焼けだろうが、味がなかろうがラティスの手料理なら何でも美味い。」

「・・・いや、それはどうなんじゃ?」

「うっせぇな!早く行くぞゴルア!」

「俺はもう立ってんだよ!お前が早くしろやゴルア!」

 2人はギャイギャイと文句を言い合いながらも笑みを浮かべ部屋を出る、そして仲良く食卓へ向かった。







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