楽しい楽しい夕食準備!

「キキッ!」

「ん?なんじゃ?アルデア嬢か?」

 職務が終わりのんびりしていたエイダンの前に蝙蝠が降り立つ。


「エイダン国王♪」

「どうしたんじゃ?」

「今暇?」

「仕事は終わったが・・・何か有ったのか?」

「何って言う程じゃないわ、チハルがプロステル王国で色々やってるのは知ってるでしょ?」

「うむ、色々やらかして居るんじゃろうなぁ。」

 思わず遠くを見ながら呟くエイダン国王。


「それでシグリップ国王がチハルの事を勘ぐってるわ♪」

「じゃろうな!」

 そりゃそうだろうとエイダンは思わず笑いながら即答する。


「で、言っても良いの?」

「う~む、言った所でシグリップが何か出来るわけ無いからのぅ~。」

「それはそうね、ジブラロール王国に来て、さらに王宮へ侵入、そしてチハルの侍女や特殊部隊の目を搔い潜った所で門の前には女神ハルが居るんだもの。」

「その前にアルデア嬢の目があるじゃろ?」

「もちろん♪」

 クスクスと笑いながら答えるアルデア。


「今チハル達は?」

「ラティス王妃と一緒に料理を作ってるわ♪」

「ほぉ~・・・新しい料理か?」

「しゃぶしゃぶって言ってたわよ。」

「しゃぶしゃぶか、あれも美味いからのぅ。」

「食材は新しいわよ、ブタって言ってたわ。」

「ブタ?あ~、猪を育てやすくしたヤツじゃな。」

「あら?知ってたの?」

「うむ、儂はブタより猪肉の方が食いごたえあって好きじゃがな。」

「へぇ~、チハルが言うには柔らかくてしゃぶしゃぶにするととても美味しいって言ってたわよ。」

 アルデアの言葉にゴクリと唾を飲みこむエイダン。


「仕方ないのぅ、シグリップに話をしに行くかの。」

 そう言うとエイダンは立ち上がる。


「それじゃチハルの庭に来て頂戴ね、妖精が迎えに来るわ♪」

「分った、半刻ほどで準備する。」

 エイダンはそう言うとアルデアは頷き蝙蝠の姿に変化するとシャンデリアの裏に隠れた。


「・・・しゃぶしゃぶか、確か辛口のニホンシュが合うと言っておったな・・・ジブラロール酒の辛口はなんじゃったかな?」

 ブツブツと呟きながらエイダンは自室へ酒を取りに戻った。



------------------



「チハル~♪」

「ん?なに~?アルデア。」

 肉をスライスしていた千春はアルデアに返事を返す。


「ココの王様がチハルが何者か考えてたわよ。」

「ありゃ?なんで?」

「・・・自覚無いの?」

「え?何かした?私。」

 本気で答える千春にアルデアは手の平で目を隠しプルプルと首を振る。


「まぁ良いわ、多分食事の時に聞いて来ると思うのよ。」

「そうなの?まぁいんじゃない?」

「・・・軽いわね。」

「だって言ったところで信じてもらえるか分かんないし?」

「そうね・・・それはそうなのよね。」

「それだけ?」

「んーん、一応それをエイダン国王に伝えて来たわ。」

「いつ?」

「今。」

「・・・今居たよね?ココ。」

「えぇ、分身はあっちに置いてるもの。」

「ほんっと便利すぎでしょ。」

 思わず突っ込む千春。


「それで、エイダン国王が直接シグリップ国王に説明するそうよ。」

「そりゃ助かる♪」

「半刻したら迎えに行って欲しいのよ、私は移動出来るけれど、人は連れて行けないから。」

「おっけー、レナー、ヒマリー。」

「なんじゃーい?」

「なーにー?」

「リリかクゥクゥ連れてお父様連れて来て~。」

「ユラとレンちゃんでもいんじゃない?。」

 麗奈はそう言うと、野菜の傷んだ所を綺麗に取っている幼女2人を見る。


「おとうさまむかえに行くの?」

「わたしもおむかえ行きます♪」

「おっけー、ルルとポポは?」

 千春が言うと、ルル、ポポがポンと現れる。


「迎えにいくぜー!」

「フェアリーリングは何処につくる~?」

 前回エイダン達はアイトネに送り迎えされフェアリーリングはまだ設置されていなかった、ルルはユラの頭の上から問いかける。


「チハルさん?!」

「ん?どしたの?ティーちゃん。」

「よよよよよよ妖精が!」

「うん、妖精のルルとポポだよ。」

 姿を消していた妖精を見て驚くラティス。


「初めて見ました!」

「こっち居ないの?」

「何処かの森を守っていると聞いた事は有ります。」

「へ~、リリとクゥクゥも居るよ、リリークゥクゥー。」

 千春の声にこたえリリとクゥクゥが姿を現す。


「はぁ~い♪リリでぇ~す♪」

 パタパタと飛びながらラティスの周りを飛ぶリリ。


「す・・・すごい!」

「凄いんだ。」

「はい!凄いです!妖精は幸運を運ぶと言われておりますので!」

「おお~。」

 興奮気味なラティスを見てご機嫌なリリはラティスの頭に降りると座る。


「幸運は運ばないわよぉ~?」

「いえ!チハルさん達が来た事で王国は幸運ですから!」

「それは私達じゃないけどぉ?」

「良いじゃん、妖精の手柄で♪」

 ケラケラと笑いながらも手を動かし肉を切る千春。


「チハル~半刻って何分?」

「1時間だったと思う。」

「おっけー、それじゃまだ先だね。」

「だねー。」

「フェアリーリングを作る場所だけ決めてたら?」

「それもそうだね、ティーちゃん誰も来ない部屋か庭ある?」

「部屋なら幾つもありますが・・・使って無い部屋となると分からないです、リプ分かる?」

 リプテルはラティスに聞かれ少し考える。


「どれくらいの広さが必要ですか?」

「人が数人立てるくらいの広さで大丈夫だよー。」

「それでしたらラティス様の横にある部屋で宜しいのでは?」

 リプテルはラティスを見ながら答える。


「隣の部屋?」

「はい、ラティス様の物が保管してある部屋です、兵士も巡回しておりますし、誰も入りませんから。」

「そこで良いのかしら?」

 ラティスが言うと千春達は頷く。


「ティナ、ユラ様とイーレン様に場所を教えてあげて?」

「はい。」

 オルティナはニコッと頷き2人を見る。


「モリー、護衛を。」

「サフィー、俺が行くから大丈夫だ。」

「僕も行きまーす♪」

「ルプさん、コンちゃんお願いします。」

 サフィーナは2人に言うと、ユラ達は厨房を出て行った。


「チハル、メグも良い?」

 アルデアが不意に千春へ話しかける。


「また見てた?」

「えぇ、その子で映してるわ。」

 厨房をジーっと見つめる小さな蝙蝠を指差すアルデア、千春は蝙蝠に手を振る。


「大丈夫だよー♪」

「それじゃエイダン国王と一緒に連れて来るわね。」

「ほいほーい♪」

「ってことはー、昨日と同じ感じかね~。」

 横で肉を綺麗に並べていた頼子が呟く。


「だねー、アイトネもモートさんも今日いっぱい動いてくれたらしいからお礼しないとね。」

『別にお礼とか要らないわよぉ~♪』

「俺もお礼と言われる程ではないが、料理は頂くよ。」

「・・・まだ呼んでないよ2人とも。」

『呼ぶでしょ?』

「呼ぶけどね。」

 アハハと笑いながら今日も賑やかな食事になりそうだと千春は嬉しそうに微笑んだ。



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「今日も楽しそうねぇ~。」

 春恵は門の部屋で本を閉じながら呟くと門を通り玄関を開ける。


「・・・足りるかしら。」

 玄関の前に置配された酒をアイテムボックスに入れると異世界へ戻る、そして応接間に移動するとユラ達が庭に現れる所だった。


「ハルおかーさん!」

「おかえりユラ~♪レンちゃんもおかえり~♪」

「ハルさまただいま!」

 2人はトテトテと春恵に近寄ると春恵はしゃがみ2人を抱く。


「エイダンさんとメグさんは今準備してるから少し待っててね♪」

「「はーい!」」

「ハル、お願いが有るんだが。」

 ルプは春恵に声を掛けると、春恵は微笑み返しアイテムボックスを開け、一升瓶を一本取り出す。


「これでしょ?」

「おぉう!流石だな!」

「今届いたの、でも足りるかしら?」

 春恵はそう言うと城の方を見る。


「足りそうね、ルプ、エイダンさんの荷物多そうだから手伝ってくれるかしら?」

「お?ジブラロール酒でも持って行くのか?」

「えぇ、お酒足りそうね。」

「よし、コン、エイダンを迎えに行くぞ。」

「はいっ!」

「ユラとレンはここでお留守番してろよ。」

「「はーい!」」

 ルプが外に出るとコンはルプの上に乗る、そして地面を蹴り外からエイダンの自室に向かい飛んで行った。




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