side:王と宰相!

「フレーム子爵領は北と南で分けネオラ男爵、オンド男爵領と併合が妥当だろう。」

「プロト侯爵領は如何なさいますか?」

「・・・あそこは王国でも必要な穀倉地帯だ、アイヒェン子爵の次男はどうだ?」

「農業産業に詳しいですな。」

「昨年の働きにも問題無かった、打診してみてくれ。」

「了解致しました。」

 シグリップ国王と宰相ショワカは地図を見ながら話しを終わらせるとソファーに移動し座り直す。


「あ~・・・酒呑みてぇ。」

「お疲れ様で御座います。」

「たまには王様らしい事しねぇとなぁ。」

「いつもされてますよ。」

「そうかぁ?」

 砕けた話し方で答えるシグリップはニヤっと笑う。


「ラティスは?」

「先程の連絡では買い物が終わり王宮に向かっていると報告が。」

「そうか、楽しんでたら良いがな。」

「楽しそうに買い物をされていたそうです。」

「そうか。」

 フッと笑みを浮かべるシグリップ。


「聖女達は?」

「色々と食材を買い占めていたと。」

「・・・は?買い占め?」

「はい、店の肉や野菜、他にも石工ギルドで鉱石を数山買い占めたと。」

「・・・なにやってんだ?あの聖女様は。」

「さぁ、色々と楽しいお方で。」

 宰相も笑みを浮かべ答える。


コンコン


「おう。」

 シグリップが声を掛けると侍女が扉を開け、兵士が入って来る。


「陛下、お手紙が届いております。」

「あ~、ショワカ。」

「はい。」

 宰相は手紙を受け取り差出人を確認する。


「・・・商人からの手紙でございますね。」

「なんだ?商人?俺にか?」

「はい。」

 手紙を受け取るシグリップは封を乱雑に開けると読み始める。


「・・・はっはっはっは!聖女様はな~にやってんだろうな。」

「如何なされましたか?」

「あっちこっちで物を買い占めたと言ってただろう?」

「はい。」

「それを聞きつけた商人達がこぞって物を贈りたいそうだ。」

 ゲラゲラと笑いながら説明するシグリップは足をパンパンと叩きながら喜ぶ。


「新しい聖女様で御座いますから。」

「貴族連中の前で処刑したが、噂はプラターキ鳥よりも早く駆け巡る、そして新しい神の噂もな。」

「如何なされるので?」

「贈りたいなら贈れば良いだろ、チハルも必要なら喜ぶだろう、会いたいと書いてるが・・・面倒事に巻き込むのも申し訳ない、俺が直接話をしてやるか。」

「陛下、お疲れでは御座いませんか?」

「俺は神モートを呼んで断罪してもらっただけだ。」

「しかし・・・陛下、昨日からお休みになっておりませんが。」

「問題無い、兵士達も動き続けている、それにショワカ、お前も寝てないだろう。」

 苦笑いでシグリップは宰相を見ると、笑みを浮かべる。


コンコンコン!


「また手紙か?」

 シグリップが扉に目をやると勢いよく扉が開く。


「シグリップ様!ただいま帰りました!」

 元気に部屋へ飛び込むラティス王妃。


「ラティス、元気良いな。」

「・・・し、失礼致しました。」

 シグリップに言われ恥ずかしそうに服を正すラティス王妃。


「王都は楽しかったか?」

「はいっ!」

「良かったな。」

「はいっ!それでですね!あの!えっと!その!」

「・・・。」

「私の料理を食べて頂けますか?!」

「え?ラティスの料理か?」

「はいっ!今夜の食事をチハル様・・・チハルさんと一緒に作るお約束をしたのです!」

「へぇ、それは楽しみだな。」

 嬉しそうに言うラティスを見てシグリップは微笑む。


「あの・・・シグリップ様。」

「どうした?」

「お疲れでは御座いませんか?」

「ん~、大丈夫だが?どうした?」

「その・・・これをチハルさんから頂きまして。」

 ラティス王妃は小瓶を見せる。


「これは?」

「チハル様のご説明では『ふぁいとばくはつげんきどりんく』と言われておりました。」

 小瓶には見慣れぬ文字が書いてある、そして日本語が読めれば、あぁコレねと誰もが知る栄養ドリンクだった。


「チハルがくれる物なら怪しくは無いんだろうが・・・『ふぁいとばくはつげんきどりんく』と言う文言は怪しさ爆発しているな。」

 瓶を受け取るシグリップ。


「この蓋を左に回すと開くと言われていました。」

「こうか?」

 蓋を持つ手に力を入れると、パキッと音がし蓋が開く。


「・・・なんだコレは。」

 クンクンと香りを嗅ぐシグリップ、少し不安げにラティス王妃も小瓶を見つめる。


「ま、飲んでみるか。」

 そう言うとシグリップは瓶を口にする、そして一気に飲み込む。


「・・・ぐぁぁぁ!」

「シグリップ様!?」

「陛下!?」

「・・・だ、大丈夫だ。」

 シグリップは軽く口を押え口を拭う。


「だ、大丈夫ですか?シグリップ様!?」

「口の中がパチパチと弾けて驚いただけだ、それに物凄い匂いだな。」

 口の中の後味を気にしながらテーブルの水を手に取り飲み干す。


「げ、元気出ましたか?」

 心配そうに呟くラティス王妃。


「あぁ、元気出たぞ、凄いな、有難うラティス。」

「♪」

「それじゃ食事楽しみにしてるからな。」

「はいっ!」

 ラティス王妃は満面の笑みで答えるとシグリップの職務室から出て行った。


「陛下・・・本当に大丈夫ですか?」

「あぁ、流石に元気が出たと言う事は無いが・・・いや、酒とは違うほてりは在るな。」

 自分の顔をポンポンと両手で叩きながら答えるシグリップ。


「・・・これは何処の文字だ。」

 小瓶を見つめるシグリップが呟く。


「このラベルの文字・・・精巧な模様・・・なによりこの瓶は。」

 ツルリとした茶色の瓶、中身が見える透明度、そしてラベルには精巧で小さな文字が狂いもなく正確に並び書かれていた。


「ジブラロールの文字・・・では無いのは確かだ。」

「はい、こちらとあまり変わりませんので。」

「それにこの瓶、そしてこれは紙か、なんだコレは。」

「聖女様に御聞き致しますか?」

「・・・いや、エイダンがまた遊びに来ると言ってたからな、その時に聞いてみよう。」

「それがよろしいかと・・・。」

 シグリップはそう言うと瓶の蓋を閉め、テーブルに置く。


「・・・色々秘密がありそうな王女だなぁ。」

 そう呟きながら窓の外を見るシグリップ、すると窓の外に黒髪の少女が浮かんでいた。


「!?」

「あ!バレた!」

「チハル!?何してんだお前!?」

 思わず突っ込むシグリップ。


「あはははwおいしかった?デボビタンEX♪」

「・・・これか?」

 小瓶を指差すシグリップ。


「あとコレもあげるー♪」

 千春は窓際まで箒で近寄ると窓にまた瓶を置く。


「・・・コレは?」

「コレはこっちの材料で作った元気回復ジュースだよ♪」

「こっちの材料?それじゃアレは?」

「アレは~・・・あっち♪それじゃ!夜はしゃぶしゃぶだよー!ティーちゃんの手作りだから期待しててねー!」

 千春はそう言い残すと箒で飛んで行ってしまった。


「・・・何故人が空を飛べるんだ。」

「分かりません・・・ジブラロールの魔法道具だとは思いますが。」

「・・・ショワカ、コレ飲んでみるか?」

「・・・陛下が貰ったのでしょう?」

「・・・まぁ・・・そうだが。」

「では、それは陛下が頂くべきで御座います。」

「おいおい、ショワカ、こう言うのは分かち合うのが友達だろう?」

「いえ?私は陛下の部下で御座いますので。」

「はぁ!?そう言う時だけ部下面するのやめねぇか?」

「いえいえいえいえ、どうぞお飲みください。」

「・・・半分!半分はどうだ?!」

「・・・半分でしたら・・・まぁ。」

 宰相の言葉にニヤリと笑みを浮かべ、カップに半分づつ分けると宰相に渡す。


「よし、飲むぞ。」

「はい・・・。」


グビグビッ!


「・・・ん?普通の果実か?」

「初めて飲む味ですが、そうですね、果実だと思います。」

「・・・ちょとまて、なんだこの感覚は。」

「凄いです、本当に回復しています。」

「ポーションでもここまで回復しないぞ?」

 2人は驚きながらカップを見つめる、そして食事の時に千春へ何の果実か聞いた2人は違う意味で失神しそうになった。








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