異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます！】

しゃぶしゃぶ祭りじゃーい！

「美味い！」

「こちらはゴマダレと言うソースです、これは果実酢だそうです。」

「へぇ、どっちも美味い！」

「良かったです♪」

　シグリップ国王、ラティス王妃は2人の世界を作り上げしゃぶしゃぶを味わっていた。

「・・・何見せられてんの？ウチら。」

　美桜はブタ肉をしゃぶしゃぶしながら2人を見る。

「仲良くて良いじゃん♪」

　同じく肉をしゃぶしゃぶするとユラのお皿に入れる千春、皆が2人を見ているとシグリップが千春を見る。

「チハル。」

「は～い？」

「色々有難う。」

「いいえ～、私が食べたいだけなので～♪」

「ラティスにも料理を教えてくれたんだろ？」

「このしゃぶしゃぶスープとタレの作り方だけですよ？」

「こんな食べ方が有るとはな。」

　シグリップは鍋を見ながら微笑む。

「あー、そう言えば先程商人達が来てな。」

「はい？」

「聖女様にお会いしたいと色々持ってきたぞ。」

「おー・・・会うんです？」

「いや、物だけは貰っておいた。」

「えぇ～、それはちょっと悪いなぁ。」

「構わねぇよ、アイツ等は聖女の名前を使って店の宣伝をしたいだけだ。」

「別にいいですけど？」

「・・・は？」

「アレですよね、聖女御用達！みたいな。」

「あぁ、そうだが、良いのか？」

「何貰ったんです？」

「パーレッド商会はブタ肉、ワーフス商店は色々な石、ベルノーズの所は野菜だな。」

「おぉぉぉ！イイですね！」

「後で品を渡すぞ、今王宮の方で預かっているからな。」

「やったね♪」

「・・・王都で散々買って来たと聞いたが、まだ必要なのか？」

「買いましたねー、でも保存出来ますから大丈夫です♪」

「そんなに入るのか？その保存魔法は。」

「私とサフィーはこの部屋の半分も入りませんけど、アルデアとおかぁさんは滅茶苦茶入るんで。」

　アルデアはすまし顔でしゃぶしゃぶをしゃぶしゃぶしていたが千春を見てニコッと微笑む。

「そ、そうか。」

「・・・。」

「どうした？チハル。」

「いや・・・ティーちゃんワンチャン使えそうだなーって思いまして。」

「何！？そう言うのが分かるのか！？」

「まぁ・・・その、そうですね。」

　千春はラティスの胸をチラッと見ると呟く。

「ラティス、教えてもらうか？」

「使えると楽しそうです♪」

「楽しいどころの話じゃないんだがな。」

　苦笑いで答えるシグリップ。

『チハルー♪お肉まだあるのー？』

「あるよーって早いな！」

『そんなこと無いわよー？』

　アイトネの前にある鍋に付きっ切りで肉を入れ、灰汁を掬い、そしてまた肉を入れるモリアン。

「モリー、次の置いておくわね。」

「はーい♪」

　楽し気に肉を鍋に投入するモリアン、そして色が変われば直ぐに食べるアイトネ。

「モート様もどうぞ。」

「ありがとうサフィーナ。」

　モートの所にはナッテリーが付き同じ様に肉を入れていた。

「はぁ～私はターンエンドで。」

「ウチはもうちょっとイケる。」

「私は次ゴマダレで魔国牛～♪」

　ＪＫ達も楽し気にしゃぶしゃぶを味わう。

「エイダン、はい。」

「おぅ。」

　マルグリットはエイダンの皿に肉を乗せると次の肉をしゃぶしゃぶする。

「野菜も食べなさいよ。」

「おぅ。」

　煮えた野菜もお皿に入れ、楽しそうにしゃぶしゃぶを楽しむマルグリット。

「お母様楽しそう。」

「メグさん面倒見が良いもの。」

「おかぁさんも食べるの早くない？」

「だって火傷しないから。」

「ずーるーいー。」

　肉をフーフーと冷やしながら食べる千春と、タレをつけて直ぐに口に入れる春恵。

「っかぁぁ！やっぱり熱燗だな！」

「んむ！美味いのぅ！」

「わっちは冷やがよかばーい。」

「ビェリーさんも熱燗でいきましょうよー」

　楽し気に鍋をつつきつつ酒を呑むペット軍団。

「こんなに楽しい食事は初めてだな。」

「シグリップ様、昨夜も楽しい食事でしたよ？」

「あぁ、カレーも美味しかったなぁ。」

「こんなに暖かい食事は初めてです。」

　しみじみと語り合うシグリップとラティス。

「ジブラロールじゃコレが当たり前じゃぁ、羨ましかろう。」

「あぁ、羨ましい、本当にな。」

「素直じゃな。」

「本当だからな、こんな風に食事を取れるジブラロールが羨ましい。」

「なぁ～に、交易が始まればプロステルの王都でもこれが当たり前になるぞ。」

「本当か？」

「うむ、まずは料理を王都に広める事じゃな。」

「本当に良いのか？」

「うむ、良いのじゃろ？チハル。」

「はい、もうレシピはいくつかメイソンさんがヤモンドさんに渡してたんで、すぐ広まると思いますし。」

　千春は満面の笑みで答えると、シグリップが思い出したように話しかける。

「チハル、さっきの話だが、商人達に御用達の話をしても大丈夫なのか？」

「はい、これからお世話になると思いますし♪」

「商業ギルドを通しても良いんだぞ？」

「そっちはそっちで色々お願いもしますし～、別に大丈夫ですよ♪」

「そうか、分かった、通達しておこう。」

「は～い、このしゃぶしゃぶも広めて大丈夫ですから。」

「・・・エイダン、良いのか？」

「美味い物を広めるのはチハルの趣味じゃ、気にするな。」

「どういう趣味だよ、これだけでどれだけの金が入って来ると・・・。」

「お金はパン酵母で貰いますから♪」

「あの柔らかいパンか。」

「そうで～す♪あ！そうだ！パン酵母のお金はメイソンさんとヤモンドさんにお願いしてるんですけど、孤児院経営に使ってもらいたいんですよ！」

　千春はハッと思い出しシグリップに言う。

「それは大丈夫だ、ラティスからも聞いている、国から補助を出す事で決定している。」

「そうなんです？」

「あぁ、他国の姫に金を出させるわけにはいかんだろ。」

「別にイイんですけどねぇ。」

『チハル。』

「ん？何？アイトネ。」

『教会も使いなさいな。』

「え？教会ってあの教会？」

　例の教会を思い出し千春は不安げに問いかける。

『悪い子は皆連れて行ったから、今いる子は良い子達よ。』

「アイトネがそう言うなら間違いないね。」

『今いる子供達も孤児の子ね。』

「あの偽物聖女に良く利用されなかったね。」

『司祭の預かる子には手を出してないわ。』

「・・・他の子は？」

『それも大丈夫よ、ね、シグリップ君。』

　アイトネが言うとシグリップは真面目な顔で頷く。

「皆、国が保護した。」

「よかった。」

　心配そうにしていた千春に笑みが零れる。

「・・・本当に聖女様だな。」

「へ？」

「なぜそこまで他人を心配出来るんだ？聖女だからか？」

「えぇ？私じゃなくても皆同じ事考えるよね？」

　千春は頼子達を見るとウンウンと頷く。

「皆聖女だから、だろう？」

「そう言えば皆そうだったわ、でも聖女じゃなくても心配すると思うよ？」

　千春はそう言うと、サフィーナを見る。

「チハルと一緒に生活していると、他人でもそう思う様になりましたね。」

　サフィーナは答えながらサリナを見ると微笑み頷く。

「はい、以前は人の事まで思う事は有りませんでした、自分の事で精一杯だったので。」

「私もですぅ、でもチハルさんの事を見ているとうつっちゃいました。」

　サリナが言うとモリアンも楽し気に答える。

「そういうもんかな？」

　千春が呟くと春恵が千春の頭を撫でる。

「国どころか世界が違うのよ、人への関心、命の尊さ、そして思いやり、考え方は違うわ、でも・・・。」

「でも？」

「同じ事を考える人が居ない訳ではないでしょ？」

「うん、テュリップさんとかね！ね！ファーノ君♪オランダちゃん♪」

　千春は何故ここに俺は居るんだ？と言う顔でこっそりペット組と同じテーブルで食事をしていたファーノと、ペット達の鍋に肉を入れるオランダに声を掛ける。

「まぁ・・・そうっすね。」

「はい！おかあさんは聖女様みたいなおかあさんですっ！」

　照れるように答えるファーノ、そして可愛いドヤ顔で答えるオランダ。

「そんな聖女のような人は国で雇用しないとダメだな、早速明日向かわせよう。」

「はいはーい！チハル！デザート！」

　話をぶった切る美桜に皆が笑う。

「そうだった！」

　千春が言うとサフィーナはクスクス笑いながらアイテムボックスからデザートを取り出す。

「これは？」

「プリンでーす♪これもティーちゃんに作り方教えたんでいつでも食べれますよ♪」

「そうなのか？」

「はいっ！」

「プリンか！チハル！ウイスキーあるか！？」

「えぇ～？混ぜるの？」

　ロイロは楽し気に千春へ言うと千春はウイスキーを取り出す。

「シグリップさん♪」

「なんだ？」

「またプロステル王国に来たくなるようにしてくださいね♪」

「・・・任せろ。」

　ニヤリと笑うシグリップ、そして頷くラティス、千春は満足そうに満面の笑みで答えた。