石工ギルドのメーシャンさん!

「ココっすねー。」

 物見塔が見える大きな建物を指差すファーノ、周りからは石を叩く音が聞こえる。


「ギルマスさんと話したら早いのかな。」

 千春はサフィーナを見ながら言うと、首を傾げる。


「取り敢えず入ってみましょうか。」

「そだね~♪」

 大きな扉をモリアンが開く、そして千春達は石工ギルドの中へ入ると、商人らしき者と妖精族と思われる者達が話をしていた。


「こんにちわ~♪」

 千春が小さな声で挨拶をすると、商人達はチラリと千春達を見る、しかし興味を無くし直ぐに視線を戻した。


「カウンターで聞いてみよ♪」

「ですねぇ~。」

 千春が言うとモリアンは早足でカウンターまで行く。


「こんにちは。」

「いらっしゃいませ、どういったご用件で御座いますか?」

 人間の女性は笑みを浮かべながら問いかけて来る。


「チハルさん、石ありますー?」

「はい、この石だよ。」

 千春は黒い針のような物が入った石を取り出しカウンターへ置く。


「この石が欲しいんですけどー。」

「これは、スチュート石ですか、如何程ご準備致しますか?」

「スチュートって言うんだコレ。」

「はい、スチュート領で取れる石で御座います。」

「遠いんですか?」

「王都から馬車で2週間程で御座います。」

「ほぉ~・・・ロイロで4~5時間か(ボソッ)」

「それでは商人証をお預かりしても宜しいですか?」

「は~い。」

 千春はポシェットから商人ギルド証を取り出し渡す。


「・・・・・・!?」

 女性は目を見開きギルド証を見る、そしてスンッと表情を戻し千春を見る。


「少々お待ち頂いても宜しいでしょうか。」

「はい♪」

「ではこちらに。」

「・・・またぁ?」

 思わず千春は苦笑いで呟く。


「バレた?」

「多分。」

 頼子が横から話しかけると千春は頷く、受付嬢は他の職員に声を掛けると千春達を招く。


「こちらへ。」

「しゃーないかぁ。」

 千春の後ろからJK達、そしてラティス、その後ろからは侍女達が数人付いてくる。


「ティーちゃんなんで笑ってるのぉ?」

「いえ、すみません、チハルちゃんと一緒だと面白いなと思いまして。」

「えぇぇ?」

 ラティスは王妃とバレると騒がれるかもしれないと頼子にヴィッグを付けられ口には軽くスカーフを巻いていた。


「こちらで御座います。」

「有難うございます。」

「直ぐにギルドマスターをお呼び致しますので。」

 丁寧な礼をすると受付嬢が部屋から出て行く。


「この石が採れる領教えてもらったし直接の方が良いかなぁ。」

「そりゃ直接の方が安いんじゃない?」

「急がない旅だし行くのもあ~り~♪」

「でもさー、石が採れる所の特産って石しか無さそうじゃん?」

「そりゃ石の為に行くんだから、ダイアは何を言ってるのかな?」

「だってさ!ほら!特産品で美味しい物を食べる!これが醍醐味じゃん!?」

「ダイアどん・・・その美味しい物誰が作るのかなぁ?」

 千春はジト目で大愛を見ると、容赦なく千春を指差す。


「チハルっしょ?」

「・・・まぁそうだけどね。」

 千春はジト目を止め、ニパッと笑みを浮かべ笑う。


コンコン


「はーい。」

「やぁやぁ!お待たせしたね!可愛い子がいっぱいじゃないか♪」

 千春達を見て喜びながら入って来たのは・・・。


「ダーサンさん!」

「え?!なんで生産ギルド長がいんの!?」

 思わず突っ込む千春と頼子。


「ん?ダーサンを知ってるのかい?」

「「え?」」

「その様子だと知ってるみたいだね、ジブラロールの王女と言うのは本当みたいだ。」

 ユラよりも少し大きい、小学生高学年程の背丈、そしてピンクの髪の毛を雑に縛ったポニーテール、そこから覗く尖った耳、ジブラロールの生産ギルド長ダーサンとそっくりな姿だ。


「僕はメーシャン、ダーサンの双子の姉だ。」

 フフン♪と言わんばかりに腰に手を当て自己紹介するメーシャン。


「チハル・アル・ジブラロールです、ダーサンとは仲良くさせて貰ってます。」

 ペコリと頭を下げる千春。


「?!」

「どうしました?」

「王女殿下だよね?」

「はい。」

「そんな簡単に頭を下げちゃダメだよ?」

「あ~、そこは気にしないでください、あと王女殿下いらないんで、チハルでいいですよ。」

「はっはっは!これは変わった王女が居たもんだ♪チハルね、良い名前だね!」

 メーシャンはそう言うと立ち上がった千春達をソファーに促し自分も座る。


「それで?スチュート石が欲しいのかい?」

「はい♪」

「どれくらい?」

「沢山?」

「?」

「えっと、お使いで買いに来たんですよ。」

「へぇ~、沢山か、まぁそれなりに在庫はあるけど、売りに出せるほど良いスチュート石はあまりないよ?」

「良い?」

「あぁ、その手に持っている石は特上クラスだ。」

 メーシャンはそう言うと手を叩く。


「カラレ、スチュート石を5ランク持ってきて。」

「はい。」

 秘書の様な女性は返事をすると部屋を出て行く。


「その石は特上、宝石とは言えないが持っていると運が良くなると言われているんだ。」

「あ~、こっちにもパワーストーン的な効果あるんだ。」

「言われてるだから微妙じゃね?」

「たしかに~。」

「この原石を石工ギルドで磨き上げるんだが、何処までご要望だい?」

 皆の話を聞き微笑むメーシャンが問いかける。


「原石のままで大丈夫です。」

「そうか、それじゃかなり安く出来るね。」

「加工料がやっぱり高いんです?」

「そりゃそうさ、それで儲けてるようなものだしね♪」

 メーシャンはパチリとウインクをすると千春に微笑む。


「お持ちしました。」

 カラレは盆の上に石を並べテーブルに置く。


「これがウチで取り扱うスチュート石だ、この水晶に入った針が多い物ほど高値になるよ。」

「こっちは?」

「この針が水晶と一緒にならなかった塊だよ、これも磨くと綺麗になるんだ。」

 千春は光に当たるとキラキラする塊を手に取る。


「鑑定しても良いです?」

「お?鑑定持ちかい?良いよ♪」

「有難うございます・・・鑑定。」

 千春は塊を鑑定する。


「どう?」

 千春の横で頼子が呟く。


「うん・・・チタン鉱石だコレ。」

「当たりじゃん♪」

「すみません、こっちの塊の方って沢山手に入ります?」

「ん?こっちじゃ無いのかい?」

「はい、こっちが良いです。」

 千春はチタン鉱石を手に答える。


「・・・あはははは!王女殿下、もうちょっと商人のノウハウを覚えた方が良いよ!あはははは!」

「え?」

 思わず声が出る千春、チラッと横を見るとラティス、そしてサフィーナが苦笑いしていた。


「そんなに直で言われると値段を吊り上げられる、足元を見られるって事だよ。」

「それ言っちゃったメーシャンさんもじゃないですかぁ~・・・。」

「普段は言わないよ、王女殿下がダーサンの知り合いだから教えただけさ。」

「王女じゃなくチハルでぇ~す♪」

「ごめんごめん、チハル、それで?その石で何をするんだい?」

 メーシャンはそう言うと千春の顔をのぞき込む。


「・・・ひ・・・ひみつ・・・です。」

「そうかぁ~、その石はランク的には2番、下から二番目に安いんだ・・・で?何に使うの?」

「・・・ヨリぃ~。」

「言っても良いんじゃない?加工方法知らないし。」

「そう言えばそうだったわ、お父さん達しか分かんないか。」

「へぇ、加工して何かしらに使えるんだね。」

「そう言う事です、ただ、どう加工するのかとかは全然知らないです。」

「本当?」

「はい、お使いで来たんで。」

「そうかぁ、それを知っているのはジブラロール国王陛下と言う訳だ。」

「あ、違います、色々あって私お父さん2人いるんで。」

「へぇ~♪お父さんと話は出来ないかなぁ~?」

「・・・出来ると思いますよ?」

「へ?」

 軽く答える千春にメーシャンは思わず声漏らす。


「めんどくさいからお父さんに電話するわ。」

 千春はそう言うとスマホを取り出し電話を掛けるそして。


『もしもーし。』

「あ、お父さん、チタン鉱石みっけたよ。」

『本当かい!?』

「で、今目の前に石工ギルドのギルドマスターでダーサンのお姉さん、メーシャンさん居るんだけど。」

『ふむふむ、それで?』

「何に使うのか聞かれたりしてるんだよね。」

『あ~・・・そりゃ聞かれるかぁ。』

「教えても良いの?」

『構わないよ。』

「え!?良いの!?」

『うん、逆に作り方ある程度教えてインゴットで仕入れる事が出来ればこちらも有難い・・・まぁ無理だろうけど、加工は更に面倒だし。』

「・・・へぇ~、それじゃ直接話して。」

『え?』

「はい、メーシャンさん、今みたいに耳に当てると向こうと話出来るから。」

 千春はスマホをメーシャンに渡す、メーシャンは驚きながらもスマホを耳に当てる。


「・・・何も聞こえないよ?」

『お、もしもし、初めまして、千春の父大樹と申します。』

「うあぁぁ!」

 驚いたメーシャンはテーブルにスマホを投げる。


「あらららら。」

「千春、スピーカーにしたら?」

「あ・・・。」

 千春はスピーカーにするとテーブルの上に置く、そしてメーシャンと大樹の電話商談が始まった。







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