商業ギルドに到着!

「また遊びに来るからねー♪」

「やー!ちはるちゃまかえっちゃやだー!」

「また遊びに来るから・・・ね?」

「・・・ほんとう?」

「うん、指切りげんまん♪」

「ゆびきりげんまん?」

「そ、約束を守る印だよ。」

 千春はそう言うと、抱き着くシューミの小指を自分の小指と絡める。


「やーくそーくげんまん♪嘘ついたら針千本のーます♪」

 千春はわらべ歌を歌うと、ラティス王妃、テュリップ、そしてサフィーナ達までもが目を見開き驚く。


「チハルちゃん!そんな約束してはいけません!!!」

「チハル様!?」

「チハル!?何その歌!?」

「え?指切りの歌だけど?」

 千春は平然と3人に答えるが、皆はオロオロとしながら千春を見る。


「千春、それ直訳で聞こえたらマジヤバいんじゃね?」

 頼子は千春に耳打ちをすると、美桜達も歌の歌詞を思い出しながら呟く。


「えっと、約束破ったら・・・げんまん・・・拳骨1万発だっけ。」

「ついでに針千本飲まされるって言うね。」

「うわぁそれは直訳されたらヤバいわ。」

 思わず翻訳の魔道具を手に取る美桜達。


「えっと・・・うん、この歌はちょっと刺激強すぎたね、アハハ。」

 ケラケラと笑いながら皆に答える千春。


「また絶対来るから大丈夫だよ♪」

 頼子はサフィーナ達に言うと、安心したのか苦笑いしていた。


「そだね、フェアリーリングも作るし、飛行島も飛んで来るし、絶対来るから大丈夫♪」

『約束忘れそうだったら私が強制的に連れて来るわ。』

「アイトネまで本気にしてー、ただの歌だからね?」

『・・・その歌、呪言掛かってたわよ?』

「・・・え?」

『チハル、この世界の理に呪歌もあるの。』

「・・・マジすか?」

『えぇ、今は廃れてるけれど、歌に術を乗せて使う者も居たわ。』

「うわぁ~・・・気を付けよ。」

 千春は呟きながら頼子達を見ると、皆も無言で頷く。


「また来るだけの約束だから良いけど、ヤバい約束した時はマジヤバいね。」

「ヤバいヤバい。」

「うちも気を付けよっと。」

 青空達もウンウンと頷きながら呟く。


「ま、そう言う事だから、絶対また来るね♪」

「うん!やくそく!」

 気を取り直し千春はシューミと軽くハグすると皆に手を振り孤児院を離れた。



------------------



「びっくりしましたぁ~。」

「本当ですね。」

 モリアンが呟くとサリナも頷きながら答える。


「呪歌か~。」

 頼子は千春の横を歩きながら呟く。


「どんな事出来るのかな。」

「いや、ヤバそうじゃん、考えない方が良くね?」

「いや、思わず口ずさんだら逆にヤバくね?」

「そだね、もし試すならアイトネ様が居る時にしよう。」

「うん、そうしよう。」

 千春と頼子はテクテクと歩きながら呟く。


「チハルお嬢、この先が商業ギルドっす。」

「ほいほーい♪」

 ファーノの指差す大きな建物を見つけると皆は建物の前に並ぶ。


「・・・でけぇ~。」

「稼いでますなこりゃぁ。」

「え~っと、ドココさんから貰った手紙どれだっけー。」

 千春はアイテムボックスの中を思い出しながら手紙を一通取り出す。


「これだこれだ。」

 千春は手紙を手に取ると商業ギルドに入る、中には商談中の商人達がテーブルに座り話し込んでいた。


「カウンターで良いかな?」

「はい、良いと思います。」

 サフィーナに問いかける千春、そしてカウンターに行くと男性へ声を掛ける。


「すみませーん。」

「はい、いらっしゃいませ、何用で御座いますか?」

 ニコッと微笑む男性、しかし目は千春を見定める為か眼光を光らせていた。


「石工ギルドに行きたいんですがー、場所分かりますか?」

「どのようなご用件で?」

「えっと、石を色々買いたいんです。」

「身分証はお持ちですか?」

「えっとぉ・・・。」

 千春はジブラロール支店の商業ギルド会員証を見せる。


「はい!」

「・・・ジブラロール・・・ヴァンディ大陸ですか・・・!?」

 名前の欄を見た男性は姿勢を正す。


「失礼致しました、直ぐにギルドマスターをお呼び致しますのでこちらへ。」

「いや、石工ギルドの場所・・・。」

「どうぞこちらです。」

「えっと・・・えぇ~?」

 千春はサフィーナを見ると、すまし顔でコクリと頷く。


「・・・めんどくたぁい。」

 ブツブツと呟きながら千春は男性の後ろをついて行く、その後ろからJK達と侍女達が、ペット達は外でお留守番だ。


「どうぞこちらへ。」

「はぁ~い・・・。」

 どんよりとした返事で千春は答えると部屋に入る、部屋にはメイドが礼をしながらソファーへ促す。


「・・・すげぇ。」

「一番良い商談室でしょうから。」

 当たり前でしょうと言わんばかりにサフィーナは呟く。


「お茶飲みますか?」

 サフィーナが千春達に声を掛ける。


「んー、メイドさんが淹れてくれるっぽいし、アイテムボックス見せたら面倒だしやめとこぉ~。」

「商業ギルドでアイテムボックスと影収納はヤバいよね。」

「うん、目の色変わるもん。」

 小さな声で頼子達も呟く、メイドは手際よく紅茶を淹れJK達に配ると、おすまし顔で扉の横に移動する。


コンコン


「はい!」

 千春が声を上げると扉が開く。


「お待たせしました、プロステル王国商業ギルド、ギルドマスターをしております、ヤモンドと申します・・・お・・・王妃殿下!?」

 千春の横でちょこんと座るラティス王妃を目にしたヤモンドは驚き声を上げる。


「お久しぶりです、ヤモンドさん。」

「はい、ご機嫌麗しく。」

 驚いた顔も一瞬、直ぐに笑みを浮かべ言葉を返すヤモンド。


「チハル・アル・ジブラロール王女殿下、お初にお目にかかります。」

 丁寧な礼をするヤモンド、千春はニコッと微笑み返す、その姿を見たヤモンドはソファーの対面に座ると話しかける。


「本日はどの様なご用件で御座いますか?」

「石工ギルドの方に用事がありまして、場所を教えて頂きたいなと。」

 千春はそう言うとドココの手紙を渡す。


「失礼致します。」

 手紙を受け取ったヤモンドは丁寧に蝋の封緘を剥すと手紙を読み始める、そして額には汗が流れる。


「・・・はい、確かに。」

 ヤモンドは言葉に詰まりながら千春へ答える。


「直ぐに石工ギルドのギルマスをお呼び致します。」

「いやいや、行きますから大丈夫ですよ?」

「いえ!直ぐに呼びますので!」

「石も見たいんですけど。」

「石工ギルドにある物をお持ちしましょう!」

「えぇ~?」

 千春は困り顔で呟くと、ヤモンドを見る。


「その手紙何て書いてました?」

「え!?・・・え~・・・その・・・チハル王女殿下の言われる事は全て受け入れるように・・・と、はい。」

「ありゃ、なんかごめんなさい。」

「めめめめっめめっっそうもございません!!!」

「色々用事もあるので石工ギルドは直接行きますので、場所教えてください♪」

「はいっ!少々お待ちください!地図をお持ちしますので!」

「ファーノ君地図いる?」

「いらないっすよ、場所教えてもらえたら案内出来るっす。」

「だそうです、ファーノ君に教えてもらって良いです?」

「はい!」

 ヤモンドは直ぐに返事を返すと、ファーノに場所を教える。


「あ~、西の物見塔っすね。」

 軽く答えるファーノ、何故か汗だくのヤモンドはウンウンと頷く。


「了解っす、チハルお嬢、もう大丈夫っす。」

「おっけー、それじゃヤモンドさん有り難うございました♪」

「いえいえいえいえ!何か有りましたらお呼び下されば何処でもお伺いさせていた!いただだだだきまっすのでぇ!」

「ありがとう♪」

 最後だけ何故か貴族令嬢風に微笑み答える千春、その姿を見たJK軍団は声を押し殺しながら肩を震わせる。


「・・・皆行くよー。」

「・・・う、うん・・・ックックック。」

「ップププッ!い、行こうかっ!」

「そ、そうだね・・・プププッ。」

「・・・失礼だなぁ。」

 ぷくっと頬を膨らませる千春は立ち上がり皆と部屋を出る。


「・・・ぷはぁ!!!超ビビッてたじゃんギルマスさん!」

「多分手紙さー、もっと書いてるよね。」

「うん、絶対書いてるね。」

「あれじゃん?言う事聞かないと王都消えるくらい書かれてたんじゃね?」

「アリエ~ル、ドココさんドラゴンの事知ってるし。」

「そこまで書かないっしょー。」

 千春が言うと皆は千春を見る。


「書いてると思う人挙手。」

「「「「「「はーい。」」」」」」

 千春以外全員手を上げる。


「・・・ドココさんなら書くかも・・・か?」

 皆の挙手を見た千春はポツリと呟く。


「王都・・・消える?」

 思わず呟くラティス王妃。


「消えない消えない!消えないよ?!」

「で、ですよね?」

「うん♪さ!石工ギルドにれっつごー!」

 千春はそう言うとファーノの背中をポンと叩いた。







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