孤児院のお食事会!

ドォォォォン!!!!


「なに!?」

「え?!」

 千春達が料理を並べていると外から大きな音が鳴る。


「ルプ!」

「大丈夫だ、神の神罰が落ちただけだ。」

「え?」

「千春は気にしなくて良い事だ、ほら料理が冷めるぞ?」

「う・・・うん。」

 ルプに言われ、外を気にしながら料理を並べる千春、頼子達もそれを聞き一緒に並べる。


「いいにおい!」

 部屋にはソースの良い香りが漂い、子供達は嬉しそうに手伝いをする。


「こっちがお好み焼きで、この丸いのがタコ焼き、こっちは焼きそばだよ。」

「おいしそー!僕これたべたい!」

 ユラよりも小さな年長さんくらいの男の子、ラッシュは丸いタコ焼きを指差す。


「これシューがつくったんだよー。」

 ベータはラッシュの頭を撫でながらシューミを見ると、ドヤ顔で頷く。


「どんな味なんだろうね♪」

 シューミはベータの横にいるラッシュと、大人しく横で見ている小さな少女アルビーを見る。


「はーい!マヨはココに置いておきますねぇ~♪」

 モリアンは瓶に入れたマヨネーズをあちこちに並べて行く。


「さーみんな席に座ってー♪」

 ラティス王妃は楽しそうに皆へ声を掛ける。


「ティーちゃん子供好き?」

「はい!可愛いですよね♪」

「いい王妃様だねぇ~。」

 美桜と麗奈もラティスと一緒に子供達を席に座らせる。


「さて、無言の圧が先程から掛かっておりますがー。」

 千春がぽつりと呟く。


「うん、ウチに感じる。」

「あ、キノセイじゃなかったか。」

「アイトネー。」

『ハーーーーーイ!』

「さっきの音って神罰的な?」

『モートが審判を下したのよ♪』

「ってことは冥界逝きだよね。」

『そんな事より食事をしましょ♪』

「はいはい、それじゃみんな手を合わせてー。」

「手?」

「おてて?」

「そうだよー、こうやって手を合わせて、『いただきます』って言うんだよ。」

「おいのり?」

「お祈りじゃないけど、料理に使われた材料の命やそれを育てた人達に有難う、料理を作った人に感謝の気持ちを伝える言葉だよ。」

 千春はテュリップの横でちょこんと座るアルケとカンシュに教えると、他の子も手を合わせる。


「それではー。」

「「「「「「いただきまーす!」」」」」」

「「「「「「いただきまぁす!」」」」」」

 JK達の声に合わせ子供達も元気に声を上げる、そして。


「おいしー!」

「このまるいの熱いよ!」

「ふーふーしてたべないと!」

「ふーふーふーふー!・・・おいひー!」

 子供達は満面の笑みで料理を頬張る。


「美味しい・・・こんなに美味しい物がこんなに簡単に作れるなんて。」

 テュリップは驚きながらもフォークでお好み焼きをパクリと口に入れる。


「その棒は?」

「これは箸って言う料理を食べる時に使う道具です。」

 頼子は右手に持つ箸を使いお好み焼きの具をヒョイと摘まみ口に入れる。


「あちらの大陸の道具ですか?」

「そうですねー、最近は使える人増えてますね。」

「洗うのも楽そうです。」

「ジブラロールじゃ普通に売ってますからね。」

 頼子が答えると千春が続けて話す。


「生産ギルドのダーサンが最近割りばしも作り始めたからね。」

「え?初耳。」

「ほら、最近露店でも使う様になったじゃん。」

「あー。」

「回収するの大変だって話してたから教えたんだよ。」

「へー、大丈夫なの?」

「なにが?」

「ほら、森林がどうだとか伐採でなんちゃらとか。」

「大丈夫、日本でも端材で作ってるって教えたら手を叩いてたから。」

「それじゃ大丈夫か。」

「美味しいですぅぅぅぅう!!!痛ぁぁい!!!」

 真面目な話をしている横でモリアンはサフィーナに叩かれていた。


「うぅ・・・この料理はマヨの為にある料理ですぅ・・・おいひい。」

「分かるわー。」

 モリアンの言葉に思わず答える青空。


「ソラはわかっちゃうんだ。」

「私もマヨネーズ好きだからね、マヨネーズをいかに美味しく食べるか!」

「わかります!ソラさん!」

「だよね!モリーちゃん!」

 2人は何故か腕を組み頷く。


「これだけ美味しければ幾らでも食べれそうです。」

 ニコニコと話を聞きながらお好み焼きを食べるラティス王妃、千春と頼子はそっと耳打ちする。


「作ってたから知ってると思うけど・・・。」

「これ油だから・・・太りますよ、ティーちゃん。」

「・・・え?」

「カロリー高いんだ~コレ。」

「かろりー?」

「それはまぁ置いといて、油使ってるから、普通のご飯食べるより太るから気を付けて。」

 そう言われフォークを持つ手が止まる。


「あの・・・モリーちゃんさんとソラ様は物凄く付けて食べてますが。」

「あの2人太り難い体質らしくて、あれくらいじゃ太らないけど・・・。」

 千春はラティスの細い腕を見る。


「うん、ティーちゃんもうちょっと肉付けて良いと思うわ。」

「それは私も思った、ティーちゃん小食でしょ?」

「・・・はい、あまり食べられないです。」

「太りすぎも良く無いけど、ティーちゃんは痩せすぎだもん、大丈夫だよ。」

「王様に言われない?」

「・・・いわれます。」

「それじゃ多めに食べても大丈夫!」

「でもコレステロールには気を付けないとね。」

「これすてろーる?」

「油ばかり取ると血液がドロドロになっちゃうから。」

「!?」

「ちゃんとバランスよく食べたら大丈夫だよ。」

「ばらんす・・・ですか。」

「そ、野菜、肉、果物、偏った食生活じゃなければ大丈夫♪」

「・・・。」

 ラティスは目をキラキラさせながら千春と頼子を見る。


「・・・なに?どうしたの?」

「凄いです!」

「え?なにが?」

「あちらの大陸ではそんな食事のお勉強までされてるのですか!?」

「そ、そんなことは・・・ないよ?」

「でも最近学園でも家庭科やってんでしょ?」

 頼子はそう言うとサフィーナを見る、サフィーナは頷く。


「食事は大事だからねー、生きて行く為に食べるのも大事なんだけど、身も心も健康で居たいでしょ。」

「心もですか?」

「うん、ほら、見て。」

 千春は料理を頬張る子供達に視線を移す。


「・・・幸せそうです。」

「でしょ♪」

「これが心の健康・・・ですか。」

「そ!体の健康、そして心の健康♪」

 千春は目の前のたこ焼きをパクっと口に入れる。


「素敵です、是非ともプロステル王国でもその考えを広めて行きたいと思います。」

 真剣な目をしながら呟くラティス。


「サフィー、食育の職員は育ってる?」

「はい、他の領からも教えを乞う者が殺到するほどです。」

「それじゃその人達に出張してもらおうかなぁ。」

「良いですね、王女殿下の依頼と有れば誰も断りませんから。」

「ありゃ、権力は使いたくないんだけど。」

「いえ?逆ですよ、喜んでやりたいと殺到される意味です。」

「マ?」

「はい♪」

 ニコッと微笑むサフィーナ、横ではサリナも真剣な顔で頷く。


「そっか、それじゃ飛行島を一度プロステル王国まで飛ばすかな。」

「そうですね、戻ったら商業ギルドに行ってみましょうか。」

「うん♪」

 千春は返事をすると、ふと宙を見つめながら止まる。


「どうしたん?千春。」

「商業ギルド・・・なんか忘れてる?」

「・・・千春マジで忘れた?ココに来た理由。」

「・・・あっ・・・イヤ?ワスレテナイヨ?」

「デスヨネー、ほら、タコ焼き冷えるよ。」

「そうだった!今はこっちだ!」

 気を取り直した千春はタコ焼きにマヨネーズを垂らすと、パクっと口に入れた。


「んっまぁ♪」








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