プロステル王都の孤児院!
「あの家っす。」
ファーノは貴族街に近い家を指差す。
「でかくね?」
「普通の家より大きいね。」
青空と大愛は屋敷と言っても良い程の家を見ながら呟く。
「テュリップさんってお金持ち?」
日葵が呟くとテュリップが答える。
「曾祖父の家でした、平民の私に何故か相続されまして。」
「へぇ~・・・そう言う事もあるんだぁ。」
千春は首を傾げながら答えると耳元でモリアンがこそっと呟く。
「貴族の方って色々あるんですょぉ~(ボソッ)」
「色々って?(コソコソ)」
「曾祖父さんの愛人さんが産んだ子・・・とか(ボソッ)」
「あ~・・・そういう・・・(コソコソ)」
ファーノは当たり前の様に門を通ると子供達を見つける、子供達は広い庭で元気に走り回っていた。
「おぉー元気だー。」
「本当に孤児院みたいだね。」
「テュリップさん1人で大変じゃないです?」
頼子達は笑顔の子供達を見ながら問いかける。
「年上の子達がお手伝いしてくれますから。」
テュリップが答えていると子供達が駆け寄って来る。
「かーちゃーん!」
「おかーちゃんおかえりー!」
「おかえりなさいお母さん!」
小さな子供達を面倒見ていた女の子が2人の小さな子と一緒に走って来る。
「ただいま、オランダ、何も無かった?」
「うん!」
歳は14程か、ショートヘアで活発なオランダは満面の笑みで答える。
「その人達おきゃくさま?」
「えぇ。」
「・・・あぁ!!!ファー!」
「おう、元気そうだなオランダ。」
「迎えに来てくれたの!?」
「ちげぇよ、仕事だよ仕事。」
「えー!いつ私迎えに来てくれるの!?」
「迎えに来ねぇよ。」
ツンツンと答えるファーノに頬を膨らませながら文句を言うオランダ。
「ファーノ君この子迎えに来る予定だったの?」
「違うっす、勝手にコイツが言ってるだけっす。」
「そうなの?」
千春はオランダに問いかける。
「ファーにぃと結婚する約束したんです!」
「ちげーよ!俺みたいな獣人じゃなく人の男選べって言ってんだろ!」
「ファーにぃがいいの!」
「・・・うぜぇ~。」
「オランダちゃん約束したの?」
「しました!」
「してねぇよ!」
「おうって返事したもん!」
「あんときゃ話半分しか聞いてなかったんだよ!」
「でも返事したもん!」
「してねーよ!」
ギャイギャイと喧嘩を始めたファーノとオランダ、ユラは千春の袖をちょいちょいと引っ張ると千春に話しかける。
「あの子達とあそんでいい?」
「いいよー、何かいる?」
「えっとぉばどみんどん!」
「バドミントンね。」
千春はバドミントンセットを数セット取り出すとユラとイーレンに渡す。
「ケガしないようにねー。」
「だいじょうぶー!けがしたらなおすー!」
「イーナもやるのですー!」
3人は自分達と変わらない歳の子を見つけ走って行った。
「うわぁぁぁん!」
泣き出したオランダに皆の目が行く。
「あぁ~あ泣かせた~。」
「ダメじゃんファーノ君、泣かしちゃ。」
「ありゃりゃ、オランダちゃん大丈夫?」
青空達がオランダを囲み一斉にファーノを見る。
「・・・俺っすか?」
「そりゃファーノ君が悪い。」
「うん、約束は約束じゃん。」
「ちゃんと面倒見てあげないと。」
「いやいや!待ってくださいっす!俺が面倒見れる訳ないっすよ!?」
ファーノがそう言うとテュリップが問いかける。
「ファーノ、このお金あったら見れるわよね?」
ファーノが渡した金貨100枚入った巾着を見せる。
「・・・えぇぇ、それはかーちゃんのだから。」
面倒そうに答えるファーノ、泣くオランダ、少し困り顔のテュリップ。
「ふみゅ、ファーノ君って港町に住んでるんだよね?」
「・・・いや、別に家持ってる訳じゃねーっすから。」
「何処に住んでんの?」
「ギルドの一部屋っすね、仮住まいっす。」
「へぇ~・・・仕事ってアレだよね?」
「・・・はいっす。」
チンピラモドキの仕事をしていたファーノの事を思い出す千春。
「ファーノ君って喧嘩得意?」
「負けた事無いっすね、ロイロの姐さんにはボッコボコにされたっすけど。」
「ほほ~、ワークスさんどう?」
千春はニコニコと笑みを浮かべるワークスを見る。
「見どころは有ります、鍛え上げましょうか?」
千春の考えが判っているのか、にこやかに答えるワークス。
「ふみゅふみゅ、ファーノ君ちょっとうちで働かない?」
「へ?」
「簡単なお仕事だから。」
「何するんっすか?」
「執事♪」
「無理っすよ!?」
「大丈夫!基本立ってるだけだから♪」
いつもとなりで静かに立っているワークスを思い出しながら千春は答える。
「・・・まぁそれなら・・・って!ちょっと待ってくださいっす!チハルお嬢ってあっちの大陸の姫って聞いたっすよ!?」
「気のせいだよ。」
千春が言うと頼子達が答える。
「うん、姫って言うか王女だけど、っぽく無いよね。」
「たしかになー。」
「聖女っぽい所はたまにあるけどね。」
「こういう面倒見が良い所とか?」
「おせっかいともいう。」
JK達は横で好き勝手に言っていると、オランダが問いかける。
「ファーにぃ・・・大陸いっちゃうの?」
「・・・いや・・・えっと。」
「ファーにぃと一緒にオランダちゃんも来ない?侍女枠空けとくけど。」
「え?私が侍女?」
「うん、オランダちゃんって歳いくつ?13~14くらいかな?」
「10です。」
「「「「「「え?」」」」」」
思った以上に若いオランダに皆が驚く。
「え?これでマクリと一緒の歳!?」
「ちょっとまって、マクリちゃん発育不良なの?」
「いや、オランダちゃんが発育良いんじゃないかなぁ。」
千春、頼子、麗奈がオランダを見ながら呟くと、横で美桜が呟く。
「・・・チハルよりあるじゃん。」
「・・・くっ・・・まだ・・・まだ私も今から・・・・。」
「いや、ハルママみたらわかるっしょ、遺伝だよ遺伝。」
「良いじゃんアイテムボックス使えるし。
「だー!!!うるさあああい!」
何故か千春に被弾し、大声を上げる千春。
「あのぉ~・・・。」
話に取り残されたテュリップが申し訳なさそうに声を掛けて来る。
「はい?どうしました?」
「あの、うちのオランダはどうなるのでしょうか?」
「えっと、隣の大陸のジブラロール王国、王宮で侍女としてファーノ君と就職すると言う事で。」
千春はそう答えるとファーノとオランダを見る。
「OK?」
「・・・。」
「・・・。」
千春に話を振られ2人は思わず目を合わせる。
「はい!ファーにぃが行くなら私も行きます!頑張ります!」
「いや!俺は!」
「ファーノ、付いて来たら美味い飯とあの酒がいつも飲めるぞ?(ボソッ)」
いつの間にかファーノの近くに来ていたルプが耳打ちする。
「・・・行くっす!」
「はい!決定!」
「チハル様ココはどうなされるので?」
「ティーちゃん、様禁止ね。」
「・・・チハル・・・ちゃん?」
「ココは人を雇うって言うのは?」
「人ですか?」
千春の言葉に反応したのはテュリップの方だ。
「うん、ティーちゃん、ここを王国が認めた孤児院とかに出来ない?」
「多分・・・出来ます。」
「おっけー、資金の方は私が出すね、多分交易も始まるし、なんなら飛空島送るから。」
「飛空島?」
「それは後で説明するよ♪」
千春とラティス、そしてテュリップの話を、ポカンとした顔で見つめるファーノとオランダ。
「ファーにぃ。」
「ったくお前・・・まぁ仕方ねぇか、お前成人するまでまだあるんだからな?」
「ファーにぃの所は12でしょ?」
「お前人間だろ、この国では15だ・・・サフィーナ嬢、ジブラロールの成人って幾つっすか?」
「15よ?」
「あと5年待て。」
「えぇー!なーがーいー!」
オランダはファーノをポカポカと叩きながら文句を言う、その姿を生暖かい目で見つめるJK軍団。
「アオハルですなぁ。」
「ういういしぃ・・・。」
「うちらあんな感じ無かったよね。」
「まぁ・・・無いね。」
「え?そうなん?ウチは結構あんな感じだよ?」
「エーデルさん落ち着いてるからなー。」
「ミオが子供なんよ。」
「ちょ!?マテ!ウチは子供ちがうぞー!」
あっちもこっちもギャイギャイ騒ぎ、ユラ達は既に子供達と仲良く遊び、侍女達はそれを楽し気に眺める。
「いつも通りだな。」
「わっちはお腹空いたばい。」
「もうすぐお昼ですよ?千春さんが何か作るんじゃないですか?」
ルプ、ビェリー、コンは達観したような顔で呟いた。
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