プロステル王都でおっかいっものっ!

「綺麗な街だね。」

 千春は王都に入ると街を見回し呟く。


「有難うございます♪」

 ラティスは自分が褒められたように喜びお礼を言う、しばらくすると竜車が止まり扉が開く。


「到着致しました。」

 従者が声を掛けながらお辞儀をする、千春達はワイワイと竜車から降りるとファーノを見る。


「ファーノ君よろしくねい!」

「・・・王妃様が案内するって言って無かったっすか?」

「いやいや、それはそう言う理由にしただけだよ、ねぇ?ティーちゃん。」

「ある程度ならご案内出来ますが・・・大通り程度しか分かりません。」

「大通りで良いじゃないっすか、別に裏を見て回りたいって訳じゃ無いんっすよね?」

「まぁそうだけどね、取り敢えず商業ギルドには行きたいかな。」

「お、チハルちゃんと覚えてたんだ。」

 美桜は千春をニヤニヤと笑いながら話す。


「おぼえてまぁ~す!」

「一応ココに来た理由だからねぇ~。」

 千春が答えると頼子も頷く。


「商業ギルドで御座いますか?」

「うん、ちょっと石工ギルドに用事があってね。」

「石ですか?」

「そ、綺麗な石をちょっと買いたいなって。」

「それでしたら磨き上げた宝石の方が・・・。」

「あ~、うん、色々原石的なね?」

「お店でも買えますよ?」

「うっ・・・えっと・・・。」

「千春は言い訳するの下手だなぁ。」

 頼子はそう言うとラティスに説明を始める。


「珍しいわけじゃ無いんだけど、ちょっとおもしろい事が出来そうな石があるの。」

「おもしろい?」

「そ、そのままじゃタダの石なんだけど、加工すると鉄みたいな金属が取れるんだよ。」

「そうなんですね。」

「だからちょっと多めに手に入れたいなって話。」

「そう言う事でしたら石工ギルドの方がよろしいですね。」

 納得したラティスはニコッと微笑む。


「石工ギルドの場所は俺もよく分かんねーっす、商業ギルドなら冒険者ギルドの近くなんでこの通りの先っすね。」

 ファーノは一番大きな通りを指差す。


「おっけー、それじゃ向かいますかー。」

 千春はそう言うと通りに腕を向け歩き始めた。



------------------



「チハルおねーちゃん!これみてー!」

「あら、お人形?」

「ぬいぐるみー!」

「かわいー。」

「かわいいのです!」

 おこちゃま達は店に並べられたヌイグルミに走り出す、その横をビェリーとコンが子供の姿で追走する。


「ヌイグルミあるんだ。」

「はい、隣の小さな町で綿花を育てておりますので。」

 ユラ以外にも小さな子供がヌイグルミを見ていた。


「高いの?」

「値段は判りませんが、そう高い物では無いと思いますよ?」

 ラティスは少し不安そうに呟き、横を歩くリプテルを見る。


「市井の子が数回のお駄賃で買える程の値段です、小さなものなら大銅貨4~5枚で買えますので。」

「ジブラロールと値段変わらないなら500円くらいか。」

「500えん?」

「あ、それは気にしなくて良いよ♪」

 皆は左右にある店を見て回り、あれやこれやと商品を見ては大人買いしていた。


「・・・チハルお嬢。」

「な~に~。」

 千春は綺麗に織られたスカーフを見ながら答える。


「・・・まだぜんっぜん進んでないっすよ。」

「ん~・・・別によくない?」

「・・・日が落ちますぜ?」

「まだ昼前じゃ~ん♪」

「・・・サフィーナ嬢、良いんっすか?」

 適当に答える千春を見限り、ファーノはサフィーナを見る。


「いつもの事ですから。」

「マジっすか。」

 ファーノはそう言うともう一度千春を見る、千春は既に視界におらず隣の店の帽子を見ていた。


「ファーノ!」

「げっ!」

 急に声を掛けられるファーノ、千春達は一斉に声の方を見る。


「戻って来たのね!」

「いや、えーっと。」

「ファーノ君、あの人どなたさん?」

「彼女じゃね?」

「人族だよ?」

「ミオがそれ言う?」

「えへっ」

 長い髪を横で纏めた身の細い女性は小走りでファーノに近寄るとファーノに抱きつく。


「かーちゃん・・・ただいま。」

「「「「「かーちゃん!?」」」」」

 千春達は思わず叫びファーノと女性を見る。


「かーちゃん、ほら人前だから。」

 ファーノ苦笑いしながら優しく女性を離す。


「ファーノ君のおかぁさんなの?」

「そうっす、俺みたいな身寄りのない子を引き取って育ててくれてるっす。」

「孤児院の人?」

「いや、かーちゃん1人でやってるっす。」

 ファーノが説明していると女性が不思議そうに千春達を見る。


「この子達は?」

 女性はファーノに問いかける。


「俺の雇い主だよ。」

「雇い主?」

「あ、そうだ、かーちゃんコレ。」

 ファーノは千春から貰った金貨の入った巾着を渡す。


「・・・え?」

 ズッシリと手に来る重みで女性は驚く。


「どうしたの?コレ。」

「チハルお嬢からの報酬。」

「いつもお金送ってくれるけれど・・・悪い事したお金じゃないのね。」

「・・・アタリマエジャナイカ。」

 フッと目を逸らしながら答えるファーノに千春達はクスクスと笑う。


「ご挨拶が遅れました、私はテュリップと申します。」

 身なりこそ市井の者と変わらないが、それとなく感じられる気品さに千春達も改めて挨拶を交わす。


「チハルです♪」

 千春が自己紹介するとJK達もにこやかに挨拶する。


「こんなに可愛い子達のお仕事?」

「王都を案内してるんだ。」

「案内・・・。」

 テュリップはそう呟くと巾着を見る。


「ファーノ君、それ全部渡すの?」

「食ってく分は抜いてるっすよ。」

 ファーノはポケットから金貨を一枚取り出し千春に見せる。


「身寄りの無い子って沢山居るの?」

「俺が出た時は5人だったっす、かーちゃん今何人?」

「7人よ♪」

 何故か嬉しそうに話すテュリップ。


「お金とか大変だよね。」

「それは俺たちが仕送りしてるっす。」

「あ、そう言う感じなんだ。」

 千春が呟くと、テュリップは千春に話しかける。


「家を出た子達が協力してくれてますので。」

「そっかぁ〜。」

「ふぁーにい!」

「にーちゃんだぁ!」

 ユラと変わらない頃の女の子と男の子が駆け寄る。


「大きくなったなぁアルケ、カンシュ。」

 2人の頭を撫でぐり回すファーノ。


「千春、またおせっかい焼こうとしてるだろ。」

 ルプは千春の横に来るとポツリと呟く、千春はニコッと笑うとサフィーナを見る、サフィーナは分かっていたように微笑み返した。


「んじゃ行きますかぁ。」

 頼子が千春に声を掛ける。


「え?何処に?」

「そりゃテュリップさんの家っしょ?」

「・・・うん、テュリップさん、子供達と遊んでも良いですか?」

「えぇ、でも御用事があったのでは?」

「別に急いでないですし♪」

「石工ギルドは後でイイもんね。」

「ここに来たメインクエストじゃないっけ?」

 頼子に麗奈が問いかけるが、千春も頼子もケラケラと笑う。


「楽しそうな方が優先!」

「石工ギルドよりもおこちゃまでしょ。」

「綺麗な石は?」

「石は逃げぬよレナどん。」

「そうそう、ファーノ君の里帰り優先しようぜー!」

 皆に言われ、麗奈も頷く。


「そりゃそうだ、行きますか〜♪」

 千春はそう言うと商業ギルドと逆の道を歩き始めた。







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