プロステル王城で夕食を!

「・・・お待たせ致しました。」

 申し訳なさそうにドレスを着たかわいらしい女性が入って来る。


「ラティス、皆に挨拶を。」

 シグリップは立ち上がりラティスの横に立つ。


「妻のラティスだ。」

「初めまして、ラティス・アム・プロステルと申します。」

 挨拶する事が少ないのか、ぎこちなく挨拶をするラティス、そしてJK軍団が騒ぎ出す。


「え?若くない?」

「ウチらと変わらないんじゃね?」

「犯罪じゃん?」

「いやぁ~!無理やり嫁がされたパターン!」

「かわいー♪」

 ワイワイ騒ぐJK達、そして千春はシグリップに問いかける。


「シグリップさ~ん。」

「なんだ?」

「ラティスさん幾つなの?」

「・・・20になったばかりだ。」

「いつ結婚したの?」

「4年前だ。」

「・・・シグリップさんの歳は?」

「43だが?」

「犯罪だ!」

「なんでだよ!」

「年の差凄すぎでしょ!」

「しょうがないだろう!王なら嫁を持てとうるさかったんだよ!」

「ラティスさん!無理やり!?無理やりなの?!」

 横から美桜が問いかける。


「いえ!違います!前からシグリップ様はお慕いしておりましたので!」

「前って幾つくらいなの?」

「10歳頃です。」

「「「「「犯罪だー!」」」」」

「いや、今のはラティスさんだからセーフじゃね?」

「あ、そうか。」

 恥ずかしそうにするラティスは微笑みながらシグリップを見る。


「ほら、乙女の目してんじゃーん。」

「んじゃセーフか。」

「こっちじゃ法的にもセーフだから最初からセーフなんだろうけど、こっちの大陸だとどうなんだろね。」

 ブツブツと呟く美桜、麗奈、青空。


「なれそめ聞きたいなぁ~♪」

 大愛はラティスを見ながらニヤニヤと話しかける。


「幼い頃シグリップ様に助けて頂きました。」

「あ、命の恩人的な?」

「はい!」

 嬉しそうに話すラティス。


「獣人の私に手を差し伸べてくれたのです。」

 ラティスが言うと皆はラティスを見る。


「獣人!?」

「え?何処が?」

「人じゃん!」

「何処?何処が?」

「あ~、リュトリュイーズ様みたいな感じかなぁ?」

 ふと思い出したのか美桜が呟くと、ラティスはクリーム色の長い髪をかき分け耳と角を見せる。


「何の獣人さんなんです?」

「プロング族で御座います。」

「どんな動物なんだろう。」

「動物で言うと鹿でしょうか。」

「へぇ~、可愛い角だ~。」

 耳の上にクルンと丸くなった小さな角を見て呟く千春。


「チハル、食事が冷えますよ?」

「うわぁ!わすれてたよ!」

 サフィーナの言葉に答えると千春達は皆席に付く、するとサフィーナ達と城の執事、侍女達が動き始める。


「ラティス、座ろうか。」

「はい♪」

 シグリップはラティスの手を引き座らせる。


「おぉ~カッコいいな。」

「女性には優しいぱてぃーん。」

「いっぱい泣かして来たんじゃね?」

「ありそう~。」

「・・・チョットマテ、泣かしてないぞ!?」

「「「ダウト!」」」

 美桜、青空、大愛が叫ぶ。


「ミオ、この人女性には優しいのよ?昔から。」

 マルグリットはエイダンの横に座りながら話す。


「俺の話はヤメテクレ・・・。」

 懇願するようにマルグリットへ言うシグリップ、横ではラティスがクスクスと笑っていた、そしてラティスの前に料理が並ぶと目を見開き驚く。


「良い香り・・・何ですか!?」

「あちらの大陸、ジブラロール王国の料理だ。」

「・・・これがそうなのですか?」

「あぁ。」

 少しずつ小鉢に入れられたすき焼きやカレー、揚げ物等が並べられる。


「メインはカレーですけど、すき焼きとか照り焼きも作ってるので♪」

「スキヤキ?テリヤキ?」

 首をコテンと傾げるラティス。


「うん、可愛い。」

 ぽつりと呟く千春は笑みを浮かべ頷く。


「さて、食べるとするかのぅ、シグリップ、ラティス王妃、食事の前に言う言葉が有る。」

 エイダンはそう言うと言葉を続ける。


「大陸が違う、国も違う・・・しかし、この料理を食べる時は『いただきます。』食べ終われば『ごちそうさま。』これが食事のルールだ。」

「そんなルールがあるのか。」

「えぇ、こちらの国でも食事のマナーは有るでしょう?」

 マルグリットも話始める。


「はい、御座います。」

 コクリと頷くラティス。


「ジブラロールの食事のマナーは、その言葉と楽しく食べる、これがマナーよ♪」

 ラティスに微笑みながらマナーを教えると、その横にいる女神が手を合わせる。


『いただきまーす!』

 アイトネがそう言うとJK達も手を合わせ挨拶をする、そして食事が始まった。


「・・・いただきます・・・か。」

「いただきます♪」

 シグリップ、ラティスは挨拶を呟くとスプーンに手をやりカレーを掬う。


パクッ


「!?」

「ぬ?凄い香りだな。」

「おいしい!」

「あぁ、複雑な味と香りが交じり合っているな。」

「・・・ぱくっ。」

「色々な国を旅したが、こんな飯は初めてだ。」

「シグリップ様、料理がさめてしまいますよ?」

「そうだった。」

 2人はカレーを口にし、ウズラのフライや他の揚げ物にも手を付ける。


「チハル、そのタルタルも使って良いのじゃろ?」

「はーい、大丈夫でーす。」

「タルタル?エイダン、タルタルって何だ?」

「この玉子のソースだ。」

「・・・これか?」

 小さな器に黄色いタルタルソースを見つけると、エイダンを見る、エイダンはたっぷりのタルタルをフライに乗せパクリと口に入れる。


「んまいのぅ!コレは!」

「お父様、それマヨソムリエのモリーが作ったんですよ?」

「ほう、美味いわけだ。」

 千春とエイダンの話を耳にしながらシグリップは貝柱もどきフライにタルタルを乗せ口に入れる。


「・・・うっめぇ。」

「フフフ。」

「なんだ?ラティス。」

「昔の言葉遣いのシグリップ様だな~って思いまして。」

「変か?」

「いえ、安心しました♪」

「ははは、ほら、こっちも美味いぞ。」

「はい!頂きます♪」

 いちゃつくシグリップ夫妻を横目にエイダンは微笑む。


「仲良さそうね。」

「あぁ、兄が死んだと聞いて心配になったが・・・大丈夫そうだな。」

 マルグリットとエイダンは2人を見ながら話す。


「チハル、カレーのレシピは教えたの?」

「はい、教えました、揚げ物は教えて無いですけど。」

「あら?教えなかったの?」

「だって冷凍食品なんで・・・。」

「あの出来上がった物を揚げただけの?」

「ソレです♪」

「それじゃ教えられないわねぇ。」

 マルグリットに答える千春。


『チハル!パフェは!?』

「作ったよー、食後に出すからね。」

『わかったわ♪』

 アイトネは女神らしいと言われる為か、綺麗な姿でカレーを食べる、しかし食べる速度は尋常ではなかった。


「千春。」

「なにー?ヨリ。」

「また幸せにしましたなぁ~。」

「ふっふっふ、幸せを運ぶ聖女やで?」

「ほんっと冗談抜きでソレ。」

「みんなもだよ?」

「私はもう1つネタあるし~♪」

「お?美の聖女発動?」

「多分食べ終わったらラティスさん聞いて来ると思うんだよねぇ~♪」

「わかる・・・お母様の髪めっちゃ見てたもんね。」

「でしょ、私お母さんから営業トークと試供品渡されてんだわ。」

「マ?」

「マ。」

「こっちも拡販?」

「するっしょ~♪」

「やべぇ、ママさんズ商会大儲けじゃん。」

「報酬貰わないとね!」

「何貰うのよ。」

「あいぽんの新型!」

「16?」

「yes!」

「うらやま!」

「あら、千春新しいスマホ欲しいの?」

「うん、これ買ったの3年前だし。」

「いるなら買ってあげるわよ?」

「まじで?!おかぁさん!」

「マ♪」

「いや、無理して若者言葉使わなくて良いから。」

「・・・むりしてないもん。」

「可愛く言わないで下さーい。」

 千春達は幸せそうな夫婦達を横目に楽しい時間を過ごした。






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