プロステル王城の食卓へ!

「・・・これがジブラロールの料理か。」

「どうじゃ?」

「いや、もう食べる前からこんなに楽しみな事は無いな。」

 良い香りが厨房に立ち込める、シグリップは千春達の動きに釘付けになっていた。


「チハル様、この調味料は?」

「醤油です、ハース領でも交易で入ってきてるんで、ルジイタにも有るんじゃ無いかな?」

「はい、聞いた事が有ります、王都にも探せば有るかと。」

 料理人はメモを取りながら千春の料理を確認する。


「千春割り下できた?」

「できたよ~ん♪」

「肉は?」

「サフィーがスライスしてるよー。」

 魔国牛を薄く切りそろえ並べるサフィーナ。


「サフィーちゃん上手いなぁ。」

「ありがとう♪ミオも上手ですよ?」

「ウチは厚切りだもん。」

 オーク肉のロース部分を切りながら答える美桜。


「油おっけー!」

「まってー!パン粉まだ作ってるー!」

「レナ、これ揚げて良いよ~。」

「なにこれ?」

「ウズラの卵フライ。」

「可愛いな。」

「美味しいんだってコレ。」

「ギョースー好きだなぁチハル。」

「便利なんだも~ん♪」

 冷凍状態でアイテムボックスから取り出す千春、それを受け取った麗奈は袋を開けフライを揚げる。


ジュワァァァァア!


「チハルートロミたんなくない?コレ。」

 カレーを混ぜる青空が千春に問いかける。


「もっと煮込んだらトロミ出ると思うけど、微妙だったら小麦粉溶かして入れてくれる?」

「りょ!ドロドロがいいから入れるー。」

 青空が言うと大愛は小麦粉を水で緩くしカレーに流し込む。


「あとは煮込むだけー。」

「こっちも出来たよー。」

「あとは揚げ物だけかな?」

 手が空いた日葵と花音が麗奈の手元を見る。


「こんくらいかな~。」

 麗奈が油を切りキッチンペーパーの上にフライを転がす。


「「・・・。」」


パクッ!

パクっ!


「あ!こら!」

「あふっ!あふあふあふ!」

「あががあふうううう!」

「バカかな?」

 揚げたても揚げたての熱々フライを口に入れた2人が口を押えアフアフと悶える。


「チハルー他にも揚げるー?油の鍋もう一個あるけど。」

「ギョースーでいい?」

「いいよーん。」

 千春は次々と冷凍食品を取り出す。


「あ!ゴマ団子!」

「こっちは何?」

「牡蠣フライだ。」

「あーうちカキフライ苦手。」

「なんかわかる。」

「これコロッケ?」

「貝柱フライだ。」

「ソラ、それは貝柱風だから偽物。」

「・・・ほんとだ、まぁ美味けりゃいいのだよダイアどん。」

 楽し気に冷食を開け次々と油の中に投入していく。


「はーいトンカツ通りまーす。」

 美桜はロース肉に衣をつけ麗奈に渡すと揚げはじめる。


「いっぱい揚げてんね。」

「これ全部カレーにトッピング出来るじゃん。」

「ココサンの全乗せみたいになるんじゃね?」

「むり、食べ切れないわ。」

 揚げ物だらけの横でモリアンが卵を沢山茹でていた。


「チハルさーん!ゆで卵おっけーです!」

「うぃーそれじゃ潰してタルタルよろー。」

「おまかせあれー!」

 腕まくりしながらモリアンは答えると、慣れた手付きでタルタルを作り始めた。



------------------



「おわりー!お疲れー!」

 千春は最後の料理をアイテムボックスに収納すると皆に声を上げる。


「それじゃあとは食べるだけだねー。」

「何処で食べるのかな?」

 千春はエイダンとシグリップの所へ行くと確認する。


「料理出来たんですけど、ご飯何処で食べます?」

「王族の食卓がある、来客用でもあるから皆で食べれるな。」

「おぉー流石王城!」

「すまないが、妻も連れて来て良いか?」

「・・・え?奥さんいたの?」

「居るが・・・何故そんな不思議そうにするんだ?」

「いやぁ~・・・ほら、なんか王都とか行って遊んでそうだし?」

「エイダン、お前の娘はズケズケと言うなぁ。」

「可愛いじゃろ。」

「・・・そう言う事にしておこう、セレス、ラティスを食卓に呼んでくれ。」

「了解致しました。」

 セレスはお辞儀をするとラティスを呼びに行く。


「それでは向かうか。」

「・・・シグリップさんってお酒飲みます?」

「あぁ、呑むが?」

「食事の時飲みます?」

「普通は呑むだろう?」

「あ、普通なんだ、ちょっと酒飲みグループがこっち居るんですよ。」

 千春はペット達を見る。


「ほぉ?そりゃいいな、エイダンお前も呑むだろ?」

「ふむ、一度国に戻った方がいいんじゃがなぁ。」

 エイダンが言うと静かにしていたアルデアが声を掛ける。


「エイダンさん大丈夫よ、メグが連絡してるわ。」

「・・・メグが?」

「えぇ♪」

「何故知っておる?」

「私が伝えたもの♪」

「ふむ、そう言う事らしい、シグリプ俺も付き合うぞ。」

「よし、とっておきの酒を出してやるよ。」

 シグリップはそう言うと食卓に向かった。



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『そろそろね~♪』

 マルグリットの部屋でのんびり寛ぐアイトネ。


「もうそんな時間かしら?」

 マルグリットはチェラシーをあやしながら答える。


「どうしようかしら、チェラシーまだ起きてるわ。」

「連れて行ったら?」

「えぇ~?大丈夫かしら。」

「アイトネ様が居るのよ?何を心配するのよ。」

 アルデアは呆れた様に答えるとアイトネもニコッと微笑む。


『チェラシーは聖女よ?私が守るわ♪』

「私も見てるわよー♪」

「アイトネ様、私達もお供しても宜しいでしょうか?」

 エリーナとアルベルはアルデアに問いかける。


『えぇ、皆で行きましょう♪』

 タイミングよく千春が呼ぶ声を聞きとったアイトネは手を振り皆をプロステル王城へ飛ばした。



------------------



「ココが食卓だ。」

 シグリップに促され部屋に入ると円状の大きなテーブルがあった。


「おぉー、ジブラロールの食卓とちがーう。」

「国によって食事の指向が違うからのぅ。」

 千春の言葉にエイダンが答える。


「それじゃサフィー料理よろー。」

「チハルの保管している料理もだしてね。」

「うぃうぃ。」

「チハルおねぇちゃん!モートさんよんでいい?!」

「いいよー、おかぁさんも呼ぼうかなー。」

 ユラは千春に確認するとイーレン、イーナと手を繋ぎモートを呼ぶ。


「おかぁ~さ~ん♪」

「はいはい、見てたわよー、揚げ物多すぎじゃない?」

「えへっ、この前買いすぎちゃって消費したかったんだよね♪」

 千春は笑って誤魔化しながらアイトネを呼ぶ。


「アイトネー♪」

『はぁ~い♪』

 アイトネと一緒にチェラシーを抱いたマルグリット、付き人のエリーナ、アルベルそして。


「チハル!アルデアちゃんが2人居る!」

「マジだ!なんで!?」

 美桜と麗奈が指を差しながら叫ぶ。


「チハル言って無かったの?」

 元から居たアルデアはそう呟きながらアイトネと一緒に来たアルデアに吸い込まれる。


「言うの忘れてたわ、一緒に居たのはアルデアのぶんしーんだよ。」

「ビックリしたわ、言えよー。」

「ごめんごめん。」

 千春と美桜が話していると、アルデアはマルグリットからチェラシーを受け取り抱きかかえる、そしてマルグリットはニコッと微笑み歩き始める。


「・・・久しぶりねぇ~♪シグリプ♪」

「お・・・おぉ、マルグリット、げ・・・げんき・・・か?」

 笑みを浮かべているはずだが眉間に皺を寄せながら近づくマルグリットに一歩下がりながら答えるシグリップ。


「あなた、何か言ってたわよねぇ~?」

「な!?なななななんの事だ????」

「私に、イイ歳してとか言ったわよね?」

「な!?なんで知ってんだ!?」

「知ってるからよ?」

 マルグリットはそっと手をシグリップの頬に当てるとビキビキと氷が顔に付く。


「つめてええええええ!!!」

「あら?体の方が良かったかしら?」

 足元から氷が這い上がりシグリップの動きを止める。


「エイダン!ちょっ!おい!」

「メグ、今日はこれくらいで勘弁してやれ。」

「冗談よ?」

 クスッと笑みを浮かべ手を払うとシグリップに付いた氷は霧散する。


「相変わらずだなマルグリット。」

「あら、相変わらず美しいなんて♪」

「それは否定しないがな。」

 シグリップは苦笑いで答える、そして見知らぬ男と千春に話しかけている女性を見る。


「あの2人も関係者か?急に現れたが。」

「あのお二方も神だ、男性の方は冥界の神モート様、女性の方はチハルの母君であり女神のハル様だ。」

「・・・本当に神は居るんだな。」

「うむ。」

「もう少し早く・・・いや、過ぎた事を考えてもしょうがないな。」

「兄の事か。」

「あぁ、だが言ってもしょうがない・・・。」

「これも何かの縁だ、困った事が有れば俺も手伝ってやる。」

 フンッと鼻で笑いながらエイダンはシグリップの背中を叩く。


「さぁ、チハルの食事を頂くのに暗い雰囲気は禁止だ、食事は楽しく、これがルールだ。」

「あら、エイダンいつもの話し方じゃないのね。」

「たまには良いだろ?」

「えぇ、でもうるさくしないでよ?チェラシーも居るんだから。」

「アー!」

 アルデアに抱かれ楽し気に声を上げるチェラシー。


「チェラシー♪パパだよ~♪」

「可愛いな、チェラシーって言うのか。」

 シグリップはチェラシーをのぞき込みながら話しかける。


「かっ!!!シグリプは触るな!」

「なんでだよ!」

「汚れる!」

「汚れてねぇよ!さっき厨房でも洗ってただろうが!」

「消毒しろ!消毒!」

「なんだよショウドクって!」

「熱湯の中に手を入れて来い!」

「火傷するだろうが!!!」

「「ぎゃぁぁ!!!」」

 シグリップとエイダンはマルグリットに耳を引っ張られながらチェラシーから離れて行く。


「うるさくしないでって言ったばかりでしょう!凍らせるわよ!」

「すまん。」

「すまねぇ。」

「ほら、準備が終わるわよ、座ってなさい。」

 マルグリットに言われおっさん2人は椅子におとなしく、しょんぼりと座った。




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