準備万端プロステル王国へれっつらごー!

「あのぉ・・・。」

「どうしたの?アイリスさん。」

 女性竜騎士のアイリスに千春は首を傾げる。


「・・・騎士は私だけですか?」

 アイリスは周りを見渡すが騎士は自分だけだった。


「そだよー♪」

「・・・えぇぇ、誰か呼びましょうか?」

「大丈夫だよ、ドラゴニュートいっぱい居るし、騎士よりヤバい人も沢山いるから。」

 執事のワークス筆頭に元エンハルトの影サリナ、執事でありエンハルトの護衛スチュアとスタンが並ぶ。


「モリーとナッテリーもヤバいよ。」

 横で荷物を影に入れながら頼子が話す。


「ウチら以外全員ヤバい。」

「いや、ヤバく無い子が2人居る。」

 美桜の言葉に麗奈が指差すのはユラとイーレンだ。


「うん、かわいい。」

 青空は2人の後ろから抱き着きながらニコニコと言う。


「結構大人数になったけど大丈夫かな。」

 大愛は庭に出るとロイロ達がゴンドラを運び込んでいた。


『チハル、ゴンドラは3つ有れば良いじゃろ。』

「2つで良いよ?」

『せっかく持ってきたんじゃ、ビェリー、1つ収納してくれ。』

「あいよー。」

 ビェリーが影に収納していると千春が棒を手に持ちながら皆を集める。


「はーい皆集合~♪」

「うわっ、マジでそれすんの?」

「うん、大人数だからね~。」

 8本の棒を千春は根元から持つと皆に見せる。


「赤い印の人はこっちー。」

「うぃーっす。」

 まずは頼子がくじを引く。


「あかー。」

「次ウチね・・・赤ー。」

「ほーい、色なーし。」

 皆は次々とくじを引くとゴンドラの前に移動する。


「ユラ達は3人一緒ねー。」

「はーい!」

「はーい!」

「イーナもくじ引きしたかったですぅー。」

「私は?」

 アルデアもくじを引きたかったのか指をワニワニと握りながら千春に問いかける。


「アルデアもイーナ達と一緒だよ。」

「そう・・・。」

「くじ・・・引く?」

「うん。」

 アルデアは千春の持つ棒を一本取る。


「赤だわ。」

「はい、それじゃアルデアとユラ達はそっちねー。」

 千春が指示すると棒を回収する。


「はい!つぎー!」

 ワークス達の前に行くと千春はくじを前に出す。


「楽しそうですなぁ。」

 ワークスはニコニコと笑みを浮かべ千春からくじを貰う。


「色なしですな。」

「ほい、つぎサフィー。」

「私はチハルと同じ赤に乗りますよ。」

「えー、不公平なので引いて下さい。」

「良いですけど。」

 サフィーナはそう言うと一本棒を手に取る。


「赤です。」

「・・・運いいなぁ、はい!つぎモリー。」

「はーい!」

 侍女達と執事達も順番にくじを引く。


「モリアン、ナッテリーは色なし、そっちねー。」

「は~い♪」

「はい。」

「それじゃリリ、ルル、ポポ、お願いねー♪」

「まかせて!」

「がんばるー!」

「まかせろー!」

 3人の妖精はくるくると回りながら返事をする、そして皆は次々と港町ルジイタへ移動して行った。



-------------------



「お帰りなさいませ、チハル王女殿下。」

「ルグラスさんただいまー。」

 領主邸執事、ロマンスグレーイケオジのルグラスに挨拶すると部屋へ促される。


「セルフ様をお呼び致しますので。」

「はーい、みんな一旦チルタイム~♪」

「はいよー。」

「ねぇ、チハル、おじいさんが言ってた場所わかんの?」

 美桜は商談の後に町へ行き、千春と話を聞きに行った。


「プロステル王国の石工ギルド?」

「うん。」

「行って聞けばわかるんじゃない?」

「だと思った。」

「結構広い街らしいじゃん。」

「らしいねー、話聞いてたらジブラロールくらいあるっぽいし。」

「ヤベェじゃん、迷子るよ?」

「迷子になったら箒で一番高い所に行って電話でいんじゃない?」

「そやな。」

 2人が話しているとロイロが声を掛けて来る。


「チハル、プロステル王国の道案内が必要か?」

「え?そんな人居るの?」

「おるぞ、呼んで来るか?」

「え?誰?」

「チハルも知ってる者じゃ。」

「だれだろ、精霊さんとか?」

「いや?人間じゃ、ほれ、昨日儂がボコボコにした獣人がおったじゃろ。」

「あ~!いたいた・・・ルプ達とご飯食べて帰った人ね。」

「うむ、あ奴はプロステルに居た事があるらしい。」

「へー、って事は石工ギルドしってるのかな。」

「邪魔じゃなければ連れて行くか?」

「えぇ~?勝手に決めたらヤバく無ーい?」

「大丈夫じゃろ、ちと連れて来るぞ。」

 ロイロはそう言うと庭に飛び出る、そしてドラゴンに変化するとあっという間に空へ飛んで行った。


「可愛そうに、ロイロに拉致されるのか、あの獣人さん。」

「名前何だっけ。」

「わすれたー。」

「ファーノだぞ。」

 横からルプが答える。


「ファーノさんか。」

「呼び捨てで良いだろ。」

「年上でしょ?」

「チハル達と変わらねぇぞ?」

「そなの?!」

「あぁ、18って言ってたよな?ビェリー。」

「言っとったねー。」

「へぇ~、やっぱりこっちの人は大人に見えるねー。」

「その分苦労してきたらしいからなぁ。」

「ファーノ君苦労して来たんだ、だからチンピラっぽい事してんのね。」

 千春はしみじみとこちらの世界の厳しさを感じながら呟く。


「チハル王女殿下、お待たせしました。」

「いえ、大丈夫です。」

 扉を開け領主のセルフとルグラスが入って来る。


「入国証をお持ちしました。」

「おー・・・これ?」

 千春は模様の入ったペンダントを受け取る。


「はい、各領主が持つ入国証で御座います。」

「これでプロステル王国に入れるんですね。」

「はい、それに道中で兵士に見せる事で無駄なやり取りが無くなります。」

「道中・・・空飛んで行くから会わないだろうなぁ~。」

 千春が言うとセルフは苦笑いで答える。


「手荷物にはならないと思いますのでお持ちください。」

「有難うございます。」

 ペコリと頭を下げる千春にオロオロと焦るセルフ。


「頭をお上げください!」

「あはは、クセなんで気にしないで下さい♪」

 千春とセルフのやり取りが終わると、ティスケリーが現れる。


「チハルちゃーんおかえりー!」

「ただいまー、どこ行ってたの?ティスケリーさん。」

「食事頂いてたわ♪ファラスカちゃんと♪」

 領主の妻、ファラスカと仲良くなったティスケリーはニコニコで答える。


「私達準備が出来たら王都向かうけど、ティスケリーさんどうする?」

「急いでないからこの街で少し遊んでからフリエンツに帰るわ♪」

「そっか、有難うございました。」

「良いのよ♪美味しい食事ありがとう、チハルちゃん、帰ってきたらまたテンプラ作ってね♪」

「まかせて~♪」

「ぎゃぁぁぁあぁぁああああ!」

「なに!?」

 外から聞こえる叫び声にティスケリーが外へ飛び出す、そこにはドラゴン姿のロイロに鷲掴みにされた獣人が居た。


『チハル、連れて来たぞ~♪』

「それ連れて来たというより拉致して来たって言うんだよ。」

『そうとも言うのぅ。』

 ロイロは流石に悪いと思ったのか、そっとファーノを地面に降ろす。


「・・・こえぇぇぇ!!!」

「ファーノ君ごめんねー。」

「うわ!チハルお嬢!」

「やほー、昨日ぶり。」

「なんっすか!?なんなんっすか!?」

「ファーノ君ってプロステル王国居た事あるの?」

「10歳くらいまで王都に居たっす。」

「そうなんだ、道案内とか出来る?」

「何処に行く気なんっすか?」

「石工ギルドとか町ぶらつきたい。」

「・・・まぁ、出来るっす。」

「お願いしていい?」

「え?行くんっすか?」

「うん。」

「結構遠いっすよ?」

「大丈夫ドラゴンで行くから1日かかんないよ。」

 千春はそう言うと準備を始めたドラゴン達を見る。


「ど・・・ドラゴンがこんなに。」

 ロイロだけではなくレフト、ライト、そしてアベリアには竜騎士アイリスが騎乗していた。


「あの子達もドラゴンだよ。」

 ヒスイとフローラ、そしてミカとゼルを指差す。


「・・・プロステル王国落とすんっすか?」

「落とさないよ!?」

「どう見ても落としにかかってますよね?!」

「かかってないよ?!」

「ヤバいっすよ!無理っす無理っす!」

 焦るファーノに千春は溜息を吐きながらアイテムボックスを開き巾着を手渡す。


「はい、帰って来るまでファーノ君を雇います。」

「なんっすかこれ。」

「お給金。」

「見て良いっすか?」

「いいよ。」

 巾着をそっと開けるファーノ。


「・・・あのぉ。」

「なにぃ~?」

「・・・これ金貨っすよね?」

「そだよぉ~♪」

「・・・何枚入ってんっすか?」

「多分100枚くらい。」

「・・・何でもお申し付けくださいっす!!!」

 千春とファーノのやり取りを見ていた頼子が呟く。


「手のひらクルックルやね。」

「くるくるファーノ君。」

「でも助かるじゃん?」

「そだねー、チハルーコッチ準備おっけー!」

「はいよー!それじゃ皆のりこめー!」

 千春は皆を確認すると声を上げる、そしてドラゴン達はゴンドラを掴むと空へ向かって飛び立った。








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