クラムチャウダー!
「ロイローお花摘みきゅうけーい!」
千春はゴンドラの窓からロイロに声を掛けるとドラゴン達はゆっくりと高度を下げる。
『あそこの町で良いのかぁ~?』
「町?」
ロイロの目線の先を見つめる千春。
「見えないけど良いよー、少し離れて降りる?」
『構わんじゃろ、文句を言ってきたら蹴散らしてくれるわ。』
「やめてくださ~い。」
ロイロは高度を下げつつ町の方へ飛ぶ、そして編隊飛行をするドラゴン達は町の真上に行くと広場へと降りて行く。
「結構大きな町だね。」
「ココはアルータの町っす。」
頼子にポッチーを貰いポリポリと食べながら答えるファーノ。
「この町の特産は?」
「さぁ?」
「何かあるっしょー?」
「知らないっすねぇ、旅人の宿なら沢山あるっす。」
「本当に中継地点みたいな感じなのかな。」
ファーノの言葉に頼子が話しかける。
「そんな感じっす。」
「んじゃお花摘み終わったらすぐ出発で~♪」
千春はゴンドラの中で予定を決めるとゴンドラが地上へ着地する。
「ロイロおつかれ~。」
声を掛ける千春、横ではレフトがゴンドラを下ろしていた。
「レフちゃんさんきゅー♪」
美桜はレフトに声を掛けながらゴンドラを降りる。
「ミオ、ゴンドラチェンジするー?」
「いや!まだ勝敗が決まってないから大丈夫!」
「なにしてたの?」
「大富豪!」
「ま、私がずっと勝ってるから勝敗決まってるんですけどねぃ~♪」
「レナ強すぎなんよ。」
「ミオが弱いんよ。」
「チハルートイレ何処?」
バタバタと降りて騒がしい美桜達、千春は周りを見渡すと、冒険者や商人、旅人が遠くから千春達を見ていた。
「すみませーん、おといれ借りれる所ありますかー?」
千春が声を掛けると1人の冒険者が声を掛けて来る。
「そこの宿屋で借りたら良い、金は必要だが。」
「トイレにお金いるんだ、良いけど、ありがとー。」
にこやかにお礼を言う千春、後ろからサフィーナ達に守られたユラ、イーレンがテコテコとついて来る。
「ココで借りれるってー。」
千春はそう言って宿屋の前に行くと女性がポカンとドラゴンを見つめていた。
「あのー、すみませんおトイレ借りれますか?」
「・・・へ?」
「あの、トイレ。」
「あ、あぁ、お嬢ちゃん達何者だい?」
女性にマジマジと見られながら問いかけられ千春は思わずサフィーナを見る。
「言っても大丈夫ですよ、この方はヴァンディ大陸ジブラロール王国王女殿下で御座います。」
「え?」
ポカンとしたまま返事をする女性。
「あのーおトイレ借りて良いです?」
「あぁ、入って一番奥から中庭に出たら有るよ。」
「有難うございまーす!」
千春はニコッと微笑みユラ達と中に入る、そして中庭に突撃し順番に用を足していった。
「王女様が何故こんな辺鄙な町に・・・ドラゴンで?」
女性は入口で警戒しているモリアンに声を掛ける。
「旅行中でっす♪」
「旅行?」
「はい、王都に遊びに向かってます。」
「王都かい?」
「はい、何か情報有ります?」
「そうさねぇ、最近王都の近くに質の悪い方の山賊が出てるくらいだね、でも飛んで行くなら関係無いね。」
「悪い方のが出ちゃいましたかー。」
「モリーちゃん、悪い方ってなにー?」
日葵がモリアンに問いかける。
「旅人や商人の生死関係なく奪う方の盗賊です~。」
「質悪く無い方は?」
「通行料的な物資やお金渡すと帰って行きます。」
「へー、そんなの有るんだ。」
「はい、でも護衛が居ない旅人とかは片っ端から盗まれますけどね。」
「だから商人さんは冒険者雇ったりするんだね。」
「はい~♪」
「なんで楽しそうなの?」
「護衛のお仕事って良いお小遣いになるんですよぉ♪」
「危なく無いの?」
「危ないですよ~。」
「・・・良いお小遣いの基準が分からないわ。」
モリアンの言葉に呆れながら呟く日葵。
「ヒマリー空いたよー。」
「ほーい。」
「モリー何話してたの?」
「王都の近くで山賊が出るらしいです。」
「山賊って盗賊?」
「ですです~。」
「ジブラロールって最近その手の聞かないよね。」
「居ませんもん。」
「居ないんだ。」
「居たら子アミさん達が襲って来ますからねぇ。」
「アミの行動範囲広いらしいもんね。」
皆のお花摘みを待ちながら千春とモリアンは話す。
「で?どこら辺か聞いた?」
「さぁ?私もこっち知らないんで聞いても分からないですぅ。」
「そりゃそうだ、あ!お姉さんおトイレ有難うございます!お金いるんですよね?」
「あ、あぁ、いや王女様なんでしょう?」
「一応。」
「そんな方から受け取れないよ、汚いトイレで悪いね。」
「綺麗でしたよー♪この町って何が特産なんですか?」
「王都とルジイタの商人が通る町だからね、色々物はあるよ。」
「へぇ~海鮮とか?」
「海の魚や貝、王都からは布や色々な物が通るねぇ。」
「町の特産は無いんです?」
「畜産はしてるよ、茶毛長牛を育ててるね。」
「へぇ~、美味しいんです?」
「ルジイタの塩で焼くと美味しいよ。」
「やっぱり塩かー。」
塩味と聞き千春は呟く。
「チハル全員お花摘み終了~。」
「うぃーっす、お昼どうする?」
「お腹空いたね。」
美桜が言うと麗奈も頷く。
「私はあんまり減ってないな。」
「ヨリはファーノ君とお菓子食べてたからね。」
「ユラもたべたー!」
「私もたべましたー!」
「イーナもたべたのですー!」
「お昼いらない?」
「たべるー!」
「たべますー!」
「たべるのですー!」
「食べるんだ・・・そうだ!」
千春はポンと手を打つ。
「お姉さん、厨房お借り出来ますか?」
「厨房かい?構わないよ。」
千春は女性に連れられ厨房に向かう。
「チハルここでお昼するの?」
頼子は千春の横を歩きながら話す。
「トイレのお礼に料理教えよっかなってね。」
「おー、いいね、何つくるの?」
「ココにある材料で作れそうな物~♪」
千春は厨房に付くと周りを見渡す。
「食材はあるのかい?」
「はい、大丈夫です、いつも何使ってますか?」
「そこの野菜とその箱に入っている魚、あとはそっちの箱に入っている肉だね。」
「見て良いですか?」
「良いよ。」
千春は大きなクーラーボックスのような箱を開ける。
「涼しい!冷蔵庫だー!」
「魔道具だねー。」
頼子と一緒に中をのぞき込む千春、そしていくつかの食材を確認し厨房のテーブルに食材を取り出す。
「はい、ココにある食材と同じ物で料理しますー!」
「え?」
アイテムボックスから野菜や貝、そして燻製肉を取り出す千春、女性はその光景に驚いた。
「そしてコレ!」
牛乳を取り出すと、テーブルにドンと置く。
「お姉さん、今からクラムチャウダー作るんで、覚えてくださいね。」
「くらむちゃうだー?」
「はい!」
「手伝うよーん。」
「ウチもー。」
いつもの様にJK達がエプロンを付け始める。
「モリー、レフ達にお昼作るからのんびりしててってヨロ~。」
「了解でっす!」
「ミオ、野菜の皮よろ~、ソラ達は角切りで、ヨリ、ワイン一本だしといてー。」
「このアサリっぽいの蒸し焼きっしょ?」
「そ、おねがい~。」
皆は千春の指示に慣れた手付きで作業を始めた。
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「お姉さん、チーズって有ります?」
「これならあるよ。」
ガッチガチに固まった硬そうなチーズを箱から取り出す。
「それ入れると美味しいので~。」
千春はチーズの確認をするとアイテムボックスからチーズを取り出しスープに混ぜる。
「はい!出来上がりー!」
「美味しそう~♪」
「本当はコンソメ入れたいけど、コンソメ無いからな~。」
「燻製肉が良い感じに味あるしいんじゃね?」
JK達は千春が混ぜる鍋を見る。
「お姉さんそこで食事しても良いですか?」
「あぁ、構わないよ、凄いね、本当に王女様なのかい?」
「残念ながら王女なんですよぉ~。」
ケラケラと笑いながら千春は答える。
「お姉さんもたべてください、お礼なんで。」
「良いのかい?」
「はいっ!」
気付けばサリナとナッテリーがスープを器に入れ配膳を始めていた。
「チハル、パンも出しますよ。」
「サフィーよろー。」
皆を席につかせるモリアン達、そしてユラ達も楽し気にテーブルを囲む。
「はーい、それじゃお昼頂きましょー!」
「「「「「「いただきまーす!」」」」」」
皆は手を合わせ挨拶すると食べ始める。
「・・・何これ。」
宿屋の女性は目を見開く。
「クラムチャウダーって言う料理です、覚えました?」
「あぁ、覚えたよ・・・凄い、使った材料も全部うちで揃う物ばかりなのに。」
「気を付けるのは塩の量と小麦粉の量ですね。」
味わいながらスープを口に入れる女性。
「これ・・・うちで作っても良いのかい?」
「はい♪作っちゃってください♪」
「有難う王女様、私はラハラって言う名だよ。」
「私はチハルです♪」
自己紹介をする2人は目が合うと微笑み合う。
「料理が冷めちゃいますから食べましょう!」
「そ、そうだね。」
「チハルおかわりー!」
「おかわりはセルフでーす!」
「私いちばーん!」
「ずるい!」
「ずるくなーい!」
「喧嘩しなーい!沢山あるっしょー!」
相変わらず喧しいJK達はあっという間に一杯目を食べ終わりおかわり争奪戦が始まった。
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「良い匂いがするな。」
千春達にトイレを教えた冒険者が遠巻きに宿屋を見る。
「ドラゴン達もドラゴニュートになって入って行ったぞ?」
「大丈夫か?」
「大丈夫だろ、あの女騎士の指示を素直に聞いていたからな。」
冒険者の仲間が答える。
「これ・・・飯の匂いか?」
「こんな良い匂い初めてだぞ。」
「やべっ涎出て来た。」
冒険者達はそっと宿屋に近付く。
「ドラゴン達だぞ、怒らせたらヤバいぞ。」
「宿屋のおかみに後で聞けば良いじゃないか。」
「そ、そうだな。」
様子を伺う冒険者達、そして千春達の食事が終わり、宿屋のおかみと手を振り別れ、空へ飛んで行くと冒険者達は直ぐに宿屋へ突撃する。
「おかみさん!」
「おっと、なんだいサンセじゃないか、泊るのかい?」
「さっきの匂いは!?」
「あ~・・・泊るなら夕食で出してあげるよ。」
「え?おかみさんの料理なのか?」
「まだ作って無いけどね。」
おかみはペラペラと真っ白な紙を見せる。
「夕飯はいくらなんだ?」
「・・・いくらにしようかねぇ~♪あ、そうだ、あんたら今日タダで食べさせてあげるよ、それ見て考えるわ。」
ニヤリと笑うラハラ、そしてラハラのスープは瞬く間に人気となり、宿はこの町一番の宿に、王都からも客が来るほどの宿となった。
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