領主の館でお料理だ!

「もどりましたー♪」

「エンハルト殿下、チハル王女殿下お帰りなさいませ。」

「ルグラスさん厨房案内してもらえますか?」

「はい。」

 領主邸に戻った千春達に執事のルグラスが笑顔で迎える、そして厨房へ案内する。


「どうぞお入りください。」

「ありがとうございまーす・・・おー?」

 千春は厨房に入ると厨房には魔導コンロがあり、いくつかの調理器具が並べられていた。


「この2人が調理のお手伝いをさせて頂きます。」

「リンケで御座います。」

「フルーメで御座います。」

 ペコリとお辞儀をするメイド。


「千春で~すよろしくお願いします♪」

 気さくに声を掛けると千春はアイテムボックスから買った品を出していく。


「千春、私達の買ったのはどうする?」

「そこのテーブルに少しずつ並べて~。」

「りょ~。」

 影収納した物を3人は楽し気に並べて行く。


「千春、コイツ連れて来たが・・・どうするんだ?」

 ルプの背中に乗せられたケモ耳男ファーノを地面に落としながらルプが問いかける。


「いやぁ、こうなったの私のせいだし、そのうち目を覚ますっしょ?」

 ルプは前足でファーノの顔をグリグリと軽く踏みつける、それを見ながら千春は答える。


「なにつくんの~チハル~。」

「予定通りブイヤベースとパエリアは作るよ。」

「やったね♪」

 美桜はウキウキでエプロンを着ける。


「あとはなに作ろっかなー。」

「うちらも何か作るよ~?」

「色々作りたいよね~。」

 大愛と日葵もエプロンを着けながら話す。


「魚もいっぱい有るからね~♪」

 アイテムボックスから取り出したのは、ツヤツヤと光る魚達だ。


「これ鯛みたい。」

「このカラフルなのも食べるの?」

「これ美味しいんだって、ハースの人魚さんが獲ってくれた事あってさ、鯛みたいな感じなんだよ。」

「へぇ~・・・ねぇチハル、塩釜ってやった事ある?」

「無いね。」

「作れない?」

「どうだろ、塩なら沢山あるよ。」

 千春はそう言うとアイテムボックスから大きな袋を取り出す。


ドスッ!


「これハースの紋様入ってるじゃん。」

 花音は袋に付いている紋様を見ながら話す。


「そだよー、ハースで作った塩だもん。」

「へぇ~、これもチハルが教えたんでしょ?」

「何を?」

「塩の精製方法とか。」

「うん、でもうちのお父さんが最終的に塩田の指示したからね~。」

「チハルパパすげー。」

 塩の袋を美桜に渡すと、美桜はスマホで塩釜焼きを検索する。


「下処理した魚と・・・卵白と・・・こんぶ?、あとは小麦粉か。」

「昆布有るよー。」

「卵白使うけど卵黄どうしよっか。」

「あ~、プリンでも作る?」

「はーい!プリン作りまーす!」

「それじゃヒマリ、卵白と卵黄分けるから手伝って~。」

「まかせろい!」

 美桜と日葵は卵を手に取り準備を始めた。


「野菜はどう?」

「ジブラロールとあんまり変わんないかな?」

「ちょっと色が違かったりするけどね。」

「で?この星型の野菜は?」

「果物?」

「野菜って言ってたよ。」

「へぇー、リンケさんこれ知ってます?」

「はい、ノーク瓜ですね。」

「え?瓜なの?」

「はい、1つの蔓に沢山なるのでこの時期は沢山売ってます。」

「へぇ~、食べ方は?」

「砂糖漬けにして食べます。」

「・・・あ!最初に食べたお茶うけだ!」

「あ~アレね。」

「他に食べ方あります?」

「塩焼きですね。」

「・・・それ以外は?」

「生でも食べられますが、味はほとんどありません。」

「生食OKか、ちょっと食べてみよっか。」

 千春は鑑定し、生で食べれる事を確認するとナイフでサクサクっとスライスしてみる。


「外は緑で中は白いね。」

「結構固いね。」

「では実食!」

 千春と頼子、麗奈はスライスしたノーク瓜を手にすると、同時に口に入れる。


「・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・。」

「可もなく不可もなく!」

「美味しいかと言われたら美味しくない。」

「いや、不味くも無い・・・ほんと味ないね。」

「食感はシャクシャクしてるのにね。」

「りんごっぽい食感だよね。」

「・・・砂糖と煮てみるかな。」

「煮てどうするの?」

「パイの具。」

「イイね、私やるわ。」

 麗奈はそう言うとノーク瓜を手にする。


「千春、トマトもあったよ。」

「ほんとだー、これは色々作れるなぁ。」

「トマトは万能だねぇ。」

「ホントそれ、それじゃ料理始めますかー。」

 千春と頼子は必要な食材を手に取ると料理を始めた。



-------------------



「ティスケリー様、エンハルト王子殿下がお戻りになりました。」

 執事は応接間でのんびりお茶をしていたティスケリーに声を掛ける。


「チハルちゃん達も?」

「はい。」

「何事も無かった?」

「概ね。」

「・・・って事は何かしらあったのね~♪」

「はい、チハル王女殿下が女神様を顕現されました。」

「あら、アイトネ様を呼んだの?何があったのかしら?」

「教会の話をされている時に何かしら御聞きしただけで御座いますが。」

「じゃ、問題無いわね。」

「はい・・・しかしその様な事で女神様をお呼びするとは思いませんでした。」

「アハハハハ!大丈夫よ、いつもの事だから♪」

 ケラケラと笑いながら答えるティスケリー、すると領主のセルフ・フィンコが部屋に入って来る。


「ティスケリー様失礼致します。」

「なにかしら?」

「・・・その、チハル王女殿下が女神様をお呼びになったとお聞きいたしまして・・・本当なのですか?」

「本当よ?チハルちゃんが呼べば女神アイトネ様は直ぐに現れるわ。」

「・・・本当に?」

「えぇ♪夕食時に驚かないように覚悟しておきなさいね。」

「え?」

「多分呼ぶわよ。」

「え”?」

「あ~こっちの食材でテンプラ作ってくれないかしら~♪」

「テンプラ?」

「えぇ!至高の料理!テンプラ!テンプラの為なら私は何処までもついていくわ!」

 拳を握りながらティスケリーは空に叫ぶ。


「そこまでの料理で御座いますか。」

「あなたも食べたら分かるわ、女神アイトネ様さえ魅了した千春の料理、食べたら・・・飛ぶわよ♪」

 今日の夕食を心待ちにしながらティスケリーはセルフに微笑んだ。



-------------------



「チハルはどう?」

 マルグリットはチェラシーを寝かしつけながらアルデアに声を掛ける。


「料理を始めたわね。」

「ほんっと、あの子何処でも料理するわね。」

「趣味って言ってたものね。」

 アルデアはチェラシーの頬をツンツンと突きながら呟く。


「起こさないでよ?」

「ぐっすり寝てるわね~・・・可愛い♪」

「でも向こうの大陸に居ても分かるのは凄いわね。」

「ここまで離れた距離で眷属を通して見るのは初めてよ。」

「でも様子が分かるのは助かるわ。」

「問題無いわよ、いざとなればアイトネ様を呼ぶでしょ?」

『呼んだ~?』

「呼んでません、あっち見て無くて良いんですか?」

『見てるわよ♪』

「私より便利な人居たわ・・・。」

 アルデアは苦笑いしながらソファーに座る。


「アイさん、チハルは何を作ってました?」

 マルグリットは楽し気にアイトネへ問いかける。


『パエリアとブイヤベースって言ってたわ、ミオとヒマリも塩釜焼きとプリンって言ってたわねぇ。』

「あら、美味しそうね。」

「塩釜焼き?」

 アルデアは聞きなれない言葉に首を傾げる。


『ミオの思考を読んでたら魚を塩で包んで蒸し焼きにする料理みたいよ。』

「そんな料理あるのね。」

「・・・塩を沢山使ってるのね。」

 マルグリットは塩と聞き考え始める。


「どうしたの?」

「多分だけれど・・・あちらの大陸にも塩の精製方法は無いと思うの。」

 マルグリットはそう言いながらアイトネを見る、アイトネはニコっと微笑み頷く。


「あら~、知りたがるでしょうねぇ~。」

 クスクス笑うアルデア。


「チハルの事だから教えそうね。」

 マルグリットが呟くとアイトネがマルグリットに問いかける。


『言わないように言っておく?』

「塩の交易をするつもりはないから別に良いわ、ただ利権が凄い事になるって事だけは教えておいた方が良いかもしれないわね。」

『おっけ~。』

 アイトネはそう言うと目を瞑る。


((チハル~♪))

(なにー?)

((塩の作り方とかそういうのは言わない方が良いって~。))

(へ?そうなの?)

((メグがそう言ってるわ~。))

(はーい、その手の話はハルトに確認しまーす。)


『そういう話はハルト君に聞いて話すって言ってるわ。』

「ありがとうアイさん。」

 3人はニコッと微笑み合うと、のんびりティータイムを楽しんだ。







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