港町ルジイタで昼食を!

「エンハルト王子殿下、お食事の準備が出来ております。」

「ありがとう、チハル昼食が出来たそうだぞ。」

「はーい。」

 千春達は何処へ行くか計画していた所に声が掛かる。


「こちらで御座います。」

 侍女に案内され食事が準備された部屋へ皆は移動した。


「どうぞお入りくださいませ。」

 ペコリと頭を下げる侍女、エンハルトが先に入ると領主セルフ・フィンコが立ち上がり挨拶をする。


「どうぞエンハルト王子殿下。」

「ありがとうフィンコ卿。」

 エンハルトはセルフの前に座ると、千春が横にチョコンと座る、皆が座るとセルフがベルを鳴らし執事と侍女がカートに食事を乗せ部屋へ入って来た。


「どんな食事かな。」

「横が海だし魚介?」

「だと思うよ?」

 JK達はコソコソと話しながら待っていると、目の前に皿が並べられる。


「おぉ・・・エビ!」

「こっちは魚だね。」

「塩焼きかな?」

「だねー、あ、こっちは貝煮込み?スープかな?」

 並べられた料理を見ながら千春と頼子、美桜と麗奈も話始める。


「ルジイタ領で取れた新鮮な魚介で御座います。」

 ニコッと微笑み説明するセルフ。


「では頂きましょうか。」

「「「「「「「「「いただきます。」」」」」」」」」

「?」

 千春達だけではなく、エンハルトも手を合わせ「いただきます」と言い、それを見たセルフは不思議そうに見る。


「そ・・・それはジブラロールの作法で御座いますか?」

「あ~・・・まぁそうだな。」

 習慣になってしまったエンハルトは苦笑いで答える。


「ん~、ぷりぷりだ~。」

 フォークとナイフで器用にエビの殻を剥き口に入れる千春。


「千春、この塩って苦みあるよね?」

「うん、精製してないんだと思うよ。」

「そうなの?」

「うん、ジブラロールでもそうだったもん。」

「これはこれで美味しい気もする。」

 新鮮な魚介を前に皆はパクパクと食べ始める。


「美味しいね。」

「塩だけでもこれだけ美味しいなら千春が料理したらもっと美味しいんだろうね。」

 頼子の言葉にピクリと反応する領主セルフ。


「ち・・・チハル王女殿下は調理をされるので御座いますか?」

「はい?はい、料理好きなんで♪」

「そうなんですね、この魚介を使うとどんな調理が出来るのでしょうか?」

 内心ドキドキしながらセルフは千春を見つめる。


「そうですねぇ~、今ならんでる食材だと、ブイヤベースとか、あとはパエリアなんて良いかも♪」

 頭で料理を考えながら思わず笑みを浮かべる千春。


「あー、パエリア良いねー。」

 千春のパエリアを思い出しながら麗奈が呟く。


「チハルのブイヤベース食べたい、調味料無いの?」

 青空は千春に問いかける。


「あるよ、コンソメもトマトも有るし。」

「晩御飯で作らない?」

「イイネ、領主様にもお世話になってますし、夕食を作らせて頂いても宜しいですか?」

 千春はダメと言っても作る気満々で領主を見る。


「ぜ!是非にでもお願い致します!!!」

「うぉ!?あ、はい、それじゃ、夕食は準備しますね♪」

 食い気味に答えるセルフに狼狽えながら笑みを返す千春。


「チハル、街には行かないの?」

「いくよ?これ食べたら。」

「やっぱり食材?」

「食材もそうだけど、土地が違うからね~♪色々見てみたくない?」

「みたいみたい!」

「それじゃ街に行くで決定!」

 千春が言うと皆は塩で焼いた魚介をパクパクと食べた。



-------------------



「ごちそうさまでした。」

 千春は手を合わせ挨拶する。


「それでは竜車を準備致しましょう。」

「竜車!?」

「はい、走竜が引く竜車で御座います。」

「馬じゃないの!?」

「馬ですか?馬車も有りますが、竜車の方が力もスタミナも高いのでこちらでは竜車が多いですね。」

「おぉ~。」

「てっきりドラゴンが引くのかと思ったよ。」

 横で頼子が呟く。


「ドラゴンで御座いますか?」

「竜って言えばドラゴンじゃないんですか?」

 答えるセルフに頼子が問いかける。


「ドラゴンを使役する事など人間には無理で御座います。」

「あー・・・普通そうだよねぇ。」

 頼子は千春をチラッと見ながら答える。


「何?私は普通だけど?」

「はいはい、普通普通♪」

 2人のやり取りを不思議そうな顔で見るセルフ。


「ち・・・チハル王女殿下。」

「はい?」

「あの・・・もしかして、ドラゴンを使役されているので?」

「まっさかぁ♪使役なんてしませんよぉ♪」

「で、ですよね!」

「契約してるんで家族ですもん♪」

「・・・はぃ?」

「別の部屋で食事してる半分以上人間じゃないんで。」

「・・・え?」

「ドラゴンはレフトとライトとミカ、ゼル?」

「メイドのヒスイとフローラもだよ。」

「ロイロちゃん忘れられてるぅ~♪」

「おっと、ロイロちゃん人間姿の方が多いから忘れちゃう。」

「あの・・・皆さん人の姿でしたが?」

「あ、それは人化の術みたいな魔法です。」

「レフトとライト、ヒスイとフローラはコンの術だけどね。」

「ドラゴニュートは目立つからねぇ~。」

 JK達が説明すると、セルフは目を見開く。


「だだだだだだだだいじょうぶなのですか!?」

「大丈夫ですよ?みんな良い子ですもん。」

「怒らせると怖いじゃん。」

「怒らないじゃん。」

「・・・そいう言えば怒らないね。」

 平然と話すJK達にセルフは冷や汗をかきながら話を変える。


「そ、それでは準備を致しますので先程の部屋でごゆっくりされてください。」

「有難うございます~♪」

 千春達は席を立つと皆扉に向かう。


「あ!」

「!?い!如何なされましたか?!」

「こっちのお金持ってないです!」

「・・・あぁ、そう言う事で御座いましたか。」

 何故かホッとするセルフに千春はアイテムボックスを開き巾着袋を取り出す。


「!?」

「えっと、この金貨使えます?・・・あれ?」

「い・・・いまのは・・・魔法で御座いますか?」

「・・・あ、そうだった、はい、ちょっと珍しい魔法です。」

「それは、物を、収納・・・出来る魔法で?」

「はい。」

「その・・・チハル様、もし間違いであれば申し訳ありません。」

「なんです?」

「あの、聖女様で御座いますか?」

「え?なんで知ってるんですか?」

「その、先日交易商人がヴァンディ大陸から戻りまして、聖女様の話が耳に入りまして・・・。」

「あら~、私有名人?」

 立ち止まって話を聞く頼子に千春は自分に指を差しながらニヤっと笑う。


「別の大陸まで名前売れてるとかすげーな千春。」

 頼子はクスクス笑う。


「その魔法は聖女の魔法で御座いますか?」

「いえ?他にも使える人居ますし違いますよ?」

 千春はサフィーナを見るとサフィーナはクスッと笑みを浮かべアイテムボックスを開く。


「おぉぉぉぉぉ!」

 感動するセルフ。


「で・・・この金貨使えます?」

 巾着袋から金貨を一枚取り出しセルフに見せる。


「・・・はい、問題ありませんが、額が大きいので大店商会で一度小さくした方が良いかもしれません。」

「こまめた方が良いんですね、了解でっす!」

 確認出来て満足した千春は部屋を出る、そしてルプ達の食事している部屋を覗き皆は最初の部屋へ戻った。



-------------------



「ルグラス!ルグラスを呼べ!」

 セルフは自室に戻り声を上げる。


「お呼びで御座いますか!?」

「今すぐに調理人を準備しろ!」

「はっ!」

「あとは・・・あとは・・・そうだ!レシピを書き留める者を!」

「はっ!」

「それから!それから!」

「調理はどちらで?」

「そうだ!調理場だ!調理場を徹底的に綺麗に!夕食を聖女様がお作りになる!」

「はい!今すぐに!」

 セルフは千春達を思い出し、そして重大事項を思い出す。


「ルグラスぅ!!!!」

「はい!」

「先ほど別室で食事を取った者達を見たか!?」

「はい、楽し気にお食事をされておりました。」

「・・・人外は居たか?」

「え?」

「人間以外は居たか!?」

「獣人の方が御二人、あとは普通に大人の方、子供の方がいらっしゃいましたが。」

「丁重に扱え!この街!いや!この国が亡ぶぞ!?」

「!?」

「・・・ジブラロール王国・・・恐ろしい国だ、敵対は絶対に出来ないぞ。」

 イケオジセルフは額に冷や汗をかきながらブルっと震えた。






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