無人島でまったり腹いっぱい!

「まっぐろっ!」

「さっしみっ♪」

「てっかどん♪」

「テッカドンって?」

 美桜、大愛、青空の言葉にピクリと反応するティスケリー。


「鉄火丼って言って、マグロのドンブリだよ。」

「丼!」

「たべます?」

「たべるわ♪」

 ティスケリーはそう言うと嬉しそうに答えると、1つ問いかける。


「それ天ぷらにしないの?」

「え?マグロを?」

「えぇ♪」

「・・・マグロを?」

 思わずもう一度問いかける千春、横で聞いていた美桜がスマホを弄る。


「チハル・・・マグロの天ぷら存在してるわ。」

「マ!?」

「うん、ほら。」

 美桜のスマホにはマグロか分からないが天ぷらが映し出されていた。


「・・・油温めるの大変だから今日は鉄火丼でいい?」

「我慢するわ!」

 千春は苦笑いで座っているように言うとマグロを切っていく。


「チハル様、大方切り終わりました。」

 大振りなナイフでマグロを片っ端から解体していたエーデルとホーキンが報告に来る。


「ありがとー・・・まじかぁ。」

 山の様に積み重なったマグロの切り身を見て思わず千春は呟く。


「レナ、ダイア、サフィーそれ全部凍らせておいてー!」

「うい~っす。」

「あいよー。」

「全部ですか?」

「全部、だってコレだよ?」

 千春の前にある切り身の塊を指差すとサフィーナも納得し、凍らせ収納していく。」


「チハル様。」

「どうしたの?レフト。」

 ドラゴンの姿で千春に近付き話しかけるレフト。


「周囲を確認したのですが。」

「うん、安全だった?」

「はい、ティスケリー様の姿を見て海の魔物も逃げて行きました。」

「おー!流石だね!」

「あと・・・。」

「何か問題があった?」

「いえ、問題は有りませんが。」

 レフトが言い難そうに話していると横からもう一人のドラゴンが歩いて来る。


「レフト、沈没船の事報告しました?」

「まだよライト。」

「沈没船?」

「はい、比較的浅い所に数隻の沈没船が有りました。」

「ほほぉ?」

 千春とレフト、ライトの話を聞いていたエンハルトが苦笑いで見ていた、そして。


「レフト、ライト、周りの危険は無いか?」

「空から見た限りありません。」

「この島もに魔物は居ませんでした。」

「そうか。」

 エンハルトは半ばあきらめ気味に千春を見ると、千春はウキウキした顔でエンハルトを見る。


「はぁ、食事が終わったら行くか?」

「もち!」

「なにー?沈没船見に行くのー?」

 横から頼子が声を掛ける。


「行きたくない?」

「行きたくない訳が無い。」

「だっしょ~?」

「まずはお昼ご飯だねー。」

「水着持ってきた?」

「あるよー、皆の影に入れてるもん。」

 頼子は当たり前の様に水着を取り出す。


「それじゃパパっとご飯食べて探索しましょー!」

「ほいよー。」

 千春はそう言うと刺身を盛り付けご飯の上にも角切りにしたマグロを乗せる。


「はーい!ご飯だよー!」

 侍女達はアイトネと春恵にも配膳し、ティスケリー達にも配る。


「これがテッカドン?」

 ティスケリーは真っ赤な丼に卵の黄身が置かれた丼を見る。


「食べてみてねー。」

『チハルそっちは?』

「よく見てるね・・・あれはヅケだよ。」

『食べれないの?』

「まだ味しみてないからなぁ。」

『染みたら食べれる?』

「うん。」

『えい!』

 軽く指を振るアイトネ。


「・・・能力の無駄遣いぃぃぃぃぃ!」

 そう言いながらも千春はヅケを一枚箸で摘まむと口に入れる。


「うめぇ。」

「え?もうヅケ食べれるの?」

「食いしん坊女神が能力の無駄遣いで食べれる様にしたよ。」

「流石アイトネ様。」

「ウチもヅケ丼食べる!」

「はいはい、腐る程あるから先に鉄火丼たべてねー。」

「私上だけ先に食べよ。」

「あ!ずるいレナ!」

「だってご飯まで食べたら二杯無理だもん!」

「アイトネ様なら何杯でもイケそうだよね。」

「ティスケリーさんもじゃん。」

 既にいただきますと言いパクパクと食べ始めている2人を見るJK達。


「それじゃ私達もたべましょーかね。」

「サフィー、サリナ達もたべてよ?」

「はい、頂きます。」

 サリナはペコリと頭を下げるが横では既に着席し皆を待つモリアンの姿があった。



--------------------



「レフ~どこー?」

「こちらです~。」

 千春と頼子は箒に乗りレフトとライトの後ろをゆっくり飛ぶ。


「あそこです。」

 軽くホバリングしながら指を差すレフト、その先には微かに海面から色が違う所が見える。


「結構深いんじゃない?」

「どうだろ、あの魔法掛けたら潜れるんだろうけど、ティスケリーさん使えるのかな。」

 海の中でも息を吸う事が出来、水圧にも耐えれる魔法だ。


「アイトネ様なら使えるんじゃない?」

((使えるわよー。))

「ほら。」

 頼子が言うと頭に言葉が流れる。


「んじゃ問題無いか。」

「んじゃ一回帰る?」

「そだね。」

 4人は沈没船を確認すると皆の所に戻る。


「あったよー。」

「おぉ~おつかれ~。」

「・・・うっぷ。」

「今・・・海に入ると・・・魚の餌を口からぶちまく自信ある。」

「うちもー。」

 美桜達は砂浜に寝転びながらお腹をさする。


「食べ過ぎだって。」

「美味しかったんだよ。」

「いやぁ、マグロは良い物だぁ。」

「でー?どうだった?沈没船。」

「良く分かんない、海中に黒いのあんなーくらい。」

「そっかぁ~・・・うっぷ。」

「ダメだ、しばらく無理だなコレ。」

 千春はそう言うと周りを見渡す。


「レフト、ここら辺何かあった?」

「はい、あちらに果物が沢山有りました。」

「おぉ!イイね!」

「行きますか?」

「行く!誰か一緒に・・・ヨリ、行かない?」

「おっけ~付き合いますかぁ。」

 頼子が声を掛けるとゼルが成獣ドラゴンの姿で立ち上がる。


「俺も付き合おう。」

「さんきゅ~ゼル。」

「たまには母の手伝いもしたいからな。」

「母?」

 思わず首を傾げる千春と頼子。


「ゼル、別に大丈夫よ?魔物が居ても倒せるわ。」

 レフトは気にせずゼルに話しかける。


「・・・あー!そう言えばゼルってレフトの子じゃん!」

「そういやそうだったわ!かんっぜんに忘れてた!」

「ミカって誰の卵だっけ。」

 ポツリと呟く千春にミカが呆れた様に答える。


「ミリカ母様ですわ。」

「そうだったわ。」

「ミリカってどれだっけ。」

「いつも赤いスカーフ巻いてるドラゴンだよ。」

「あ!あの子か。」

 千春に言われ思い出した頼子はポンと手を打つ。


「私もいくわ~♪」

「果物ぉ~♪」

 妖精2人もパタパタと飛び回る。


「ロイロ、こっち頼んだ。」

「頼まれた、お土産楽しみにしておるぞ。」

「まかせろい!」

「俺もついて行くぞ。」

「わっちも~♪」

「僕はお留守番してますね~。」

「おるすばんうっきー!」

 ペット達も答えると千春と頼子、サフィーナ、サリナ、そしてルプ達は地面を蹴りレフトに付いて行く、少し飛んだところでレフトが高度を下げ森の開けた所へ降りた。


「そこ一帯に色々な果物が生えています。」

「ほほぉ?」

 千春と頼子は所々に生る木の実を見る。


「マンゴーっぽいね。」

「千春こっちブドウある。」

「あ、ミカン・・・いや、でけぇ!グレープフルーツかな。」

「これキウイっぽい!」

 色々な木を見つけ千春と頼子のテンションが上がっていく。


「・・・不自然だな。」

「何故こんな所に果物があるんだ?」

「「?」」

 千春と頼子がゼルとルプを見る。


「何処からこの果物の種が来たんだ?」

「鳥じゃん?」

「これだけの種類がここに集まるのはおかしいだろ。」

 ゼルとルプは周りを見渡す。


「鳥の巣があるな。」

 クンクンと匂いを嗅ぐルプ。


「何処だ?」

「あっちだな。」

 2人は地面を蹴ると少し離れた大木へ向かう。


「デカいな。」

 巣を見つけたルプが呟くとゼルは巣に落ちている卵の殻を手に取る。


「卵も結構デカいぞ。」

 ラグビーボール程の殻を見ながら呟く。


「渡り鳥の巣か。」

「今は居ないみたいだな。」

「巣ごもりの時期ではないのだろう。」

「危険は無さそうだな。」

 クンクンと巣を嗅ぐルプは頷く。


「この鳥があっちこっちで果物を食べてフンをしたのか。」

「だろうな。」

「どのみち問題は無さそうだ。」

 ルプとゼルは納得し大木から降りる。


「どうだった?」

「大きな鳥の巣があった。」

 ゼルは卵の殻を見せる。


「でかっ!」

「何の鳥だろう。」

「なんだろうねぇ~。」

「あ!」

 千春は殻を受け取り鑑定魔法を掛ける。


「鑑定!」

「・・・どう?」

「オルニス鳥の殻、たべれない事も無い、炭酸カルシウムその他もろもろ。」

「オルニス鳥って言うんだ・・・ん?どっかで聞いたな。」

 頼子は首を傾げながらう~んと唸る。


「オルニス・・・オルニス・・・なんだろ、私も聞いた事ある。」

 千春と頼子が呟いているとサフィーナが答える。


「ラティですよ。」

「え?ラティ?」

「あー!そう言えばラティってオルニス鳥って言ってたじゃん千春!」

「え?でもラティって山岳地帯に住むって言ってたよ?」

「旅してんじゃん?」

「えぇ~?こんな何も無い島に?」

「果物あるじゃん。」

「それ多分鳥のうんこに入った種だよね。」

「・・・うんこ言うなし。」

「巣作りの時はココで産んでるんじゃないですか?」

「山岳地帯じゃ巣作り嫌だったのかな。」

「まぁ良いじゃん、千春果物取ろうよ。」

「そだね!」

 勝手に納得し、皆は果物を片っ端から収穫していった。






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