チェラシー産まれる!
「騒がしくなってきたな。」
「それはそうじゃろう、王女が産まれるんじゃ。」
「そろそろばいね~?」
「木花咲耶姫様のお守りもありますし~。」
「うきぃ~♪」
ペット達は、朝早くから騒めく王宮を観察していた、既に何時生まれてもおかしくない状況で王宮は大騒ぎだった。
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「メグちゃん、もう少しよ。」
「はい、ひっひっふーーー。」
「ゆっくりね、ゆっくり吐いてね。」
ママさんズは苦しそうに息を吐くマルグリットに声を掛ける。
「はい、リラックスして、力抜いて。」
麻衣は指示をしながら様子を確認する。
「はい、いきんで。」
「ンーーーーー!!」
「はい、ゆっくり息を吐いて。」
ママさんズは汗だくのマルグリットの汗を拭う。
「もう少しよ。」
「頑張って!」
「はい!いきんで!」
「ンーーーーーーーーー!!!」
苦しそうに、しかし弱音を吐かず頑張るマルグリットをママさんズは応援し続けた。
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「・・・。」
「父上、座ってはどうですか?」
「・・・。」
別室でウロウロと歩き続けるエイダンにエンハルトが声を掛ける、エンハルトの横にはライリーとフィンレーも居た。
「エイダンさん、大丈夫ですよ、うちの嫁達もついてますから。」
「アイトネ様も見守ってくれてますからね。」
そういうパパさんズ達も座っているが落ち着いて無かった。
「懐かしいなぁ、ヨリが産まれる時を思い出したよ。」
「俺もだ、ミオなんて昼に入って次の日の朝でしたから。」
「男親なんてこんな時なーーーーんにも役に立たないって実感しますね。」
勇、啓治、和也は苦笑いで話す、すると扉がノックされる。
「失礼致します。」
アルベルが入って来るとエイダンが食い気味に問いかける。
「産まれたか!?」
「はい。」
ニコッと微笑み頷くアルベル。
「行っても良いのか?!」
「はい。」
「分かった!」
エイダンはパパさんズに見向きもせず扉を抜け走って行った。
「嬉しそうだなぁ。」
大樹は微笑みながら立ち上がる。
「俺達も行くか。」
「そうですね。」
「マルグリットさんも疲れてるでしょうからちょっとだけ顔を見せてもらったら帰りましょう。」
「だなぁ。」
「そんな心配しなくても智美達に追い出されるから。」
苦笑いで言う勇、パパさんズは皆苦笑いで頷くとエイダンの向かった方を見ながら歩き始めた。
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「ンギャァァ!ンギャァァ!」
扉の外ではJK達とユラが座っていた、すると赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
「産まれた!」
「やったぁ!」
「泣いてる!」
ガッツポーズをしたり飛び跳ねるJK達、しばらくすると扉が開かれる。
「お産まれになられました。」
エリーナとアルベルが出て来るとアルベルはお辞儀をし廊下を歩いて行く。
「どうぞ皆さんお入りください。」
エリーナは微笑みながら千春達を中に入れる、ベッドにはマルグリットが、その周りにはママさんズが並んでいた。
「お母様!」
「・・・。」
力なく微笑むマルグリット、その手には布に包まれた赤ちゃんが居た。
「・・・おめでとうございます!」
涙を溜めながら祝う千春、頼子達もお祝いを言うとマルグリットの周りに集まる。
「ほら、チェラシー、チハルお姉ちゃんとユラお姉ちゃんよ♪」
「ちっちゃい~♪」
「しわしわー?」
千春とユラはチェラシーを見ながら呟く。
「だっこする?」
「いや!イイです!」
マルグリットはクスクスと笑いながら言うと千春は全力で断る。
「白いのついてるー。」
「これはね~胎脂っていうのよ~。」
「たいし?」
「そ、赤ちゃんを守ってるの。」
麻衣はユラを見ながら説明する。
「はぁ~、無事に産まれて良かったわ。」
「ちゃんと泣いてくれたわね。」
「吸引機いらなかったわね。」
「使わないならそれが一番よ。」
ママさんズもほっとしたのか椅子に座る、するとアイトネが現れた。
『メグ、おつかれさま♪』
「アイさん、見守っててくれてありがとう。」
『良いのよ、それに大変なのは今からよ。』
「えぇ、4回目よ?大丈夫よ。」
アイトネが現れマルグリットと話す、それを聞いた千春は首を傾げる。
「今から大変?」
千春が首をコテンと傾けると春恵が答える。
「千春、産後の肥立ちって聞いた事あるでしょう?」
「うん。」
「出産で大変なのは産んだ後なのよ。」
「そうそう、産後の無理は一生祟るって言うからね~。」
「産褥期はとにかく回復が一番大事なのよ。」
ママさんズは経験者と言う事もあり頷きあう。
『ここからは少しお手伝いするわよ?』
アイトネはそう言うとマルグリットのお腹に軽く手を当てる。
「・・・有難うアイさん。」
『何か有ったら呼んで頂戴♪』
「私は呼べないわよ?」
『大丈夫、この子に聞こえるなら私に届くわ。』
アイトネはチェラシーを見ながら微笑む。
「アイトネ、何したの?」
『傷ついた所だけ回復させたわ。』
「全部回復しないの?」
『それはメグに断られたのよ。』
「えぇー!?」
驚いた千春はマルグリットを見る。
「私の矜持って言うのかしら、これは私だけの大事な痛みなのよ。」
「・・・そうなの?」
良く分からずママさんズを見ると皆は微笑む。
「日本じゃ無痛分娩とかあるけどね。」
「こっちの世界じゃこれが常識なんでしょ?」
「でも言ってる事は判るわ。」
「えぇ、お腹を痛めた子って言葉あるくらいだし日本でも同じじゃない?」
ホッとした顔で答えるママさんズ、そして外が騒がしくなる。
「メグ!」
「大きな声出さない。」
「・・・すまん、その子か?!」
「えぇ。」
マルグリットはエイダンにチェラシーを見せる。
「おぉぉぉぉ。」
目に涙を浮かべながらエイダンは横に立つ。
「抱く?」
「良いのか?」
「少しだけよ?手綺麗?」
「勿論だ。」
「はい。」
マルグリットはチェラシーをエイダンに渡すとエイダンは大きな手で受け取る。
「・・・。」
エイダンは静かに、そして小さく息をしている我が子を見守る、そして千春とユラを見る。
「チハル、ユラ。」
「はい。」
「はい。」
「妹をよろしく頼む。」
「任せてください。」
「かわいがります!」
千春とユラはニパッと微笑み返す。
「チェラシー、ほら、お兄ちゃんたちがきたぞ~。」
扉からそっと入って来るライリーとフィンレー、その後ろからエンハルトが来る。
「わぁ!ちいさい!」
「かわいい。」
「かわいいな。」
しわしわな赤ちゃんを優しく見守る兄達。
「メグさんお疲れ様です。」
「可愛いなー、ヨリの時思い出すわー。」
「うん、思い出しちゃうな。」
パパさんズもチェラシーをのぞき込む。
「はい、皆さん顔合わせは終わりです、帰ってくださいね~。」
無常にも直ぐに男達を追い払うママさんズ。
「さ、それじゃ体重計って、それから~・・・。」
麻衣はエイダンからチェラシーを受け取ると、ママさんズは男達を部屋から追い出す。
「はい、ヨリ達も部屋に戻りなさ~い。」
「はーい。」
「千春、ルプにお婆ちゃん呼んでもらう様に言ってるからお願いしていい?」
「はーい!」
「なに?お婆ちゃん呼ぶの?」
「うん、今はやってないけど産婆してたらしいんだ~。」
「サンバ?」
「踊るの?」
「ちゃうわ!昔の助産師さんらしいんだ、産後の料理教えてもらうんだよ~♪」
「へぇ~・・・私も覚えとこうかな。」
「ウチもー!」
「私もー!」
「みんなでお婆ちゃん迎えに行こう!」
「なんかしょっちゅうこっち来てない?」
「良いじゃん、お婆ちゃんのご飯大好き!」
JK達はキャッキャと騒ぎながらマルグリットとチェラシーに手を振り部屋を出て行った。
「メグちゃんゴメンね、うちの子らうるさくて。」
「ん~ん、元気貰ったわ。」
「さ、メグさん横になってね。」
「有難うミサキ。」
マルグリットを労わるママさんズ。
「チェラシーちゃん横に居るからね。」
「ありがとうマイ。」
「2980g、とっても健康よ。」
チェラシーをマルグリットの枕元に置くと麻衣は微笑むと、マルグリットも微笑み返す。
「チェラシー、生まれてくれてありがとう。」
マルグリットは眠るチェラシーに優しく呟いた。
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