エイダン国王陛下の苦難!Vol2
「・・・。」
エイダンは職務室で頭を抱えていた。
「陛下。」
「・・・。」
宰相ルーカスがエイダンに声を掛ける。
「考えた所で今とあまり変わらないのでは?」
「・・・伝説のドラゴンだぞ。」
「たしかジブラロール王国が出来て100年目の時でしたか。」
「そう書いてあったのぅ。」
「しかし黄金のドラゴンがママドラ殿の夫と言うのも驚きですね。」
「ロイロ殿の父と言うのもな。」
はぁ、と溜息を吐くエイダン。
「それで?如何なされるので?」
「どうも出来ぬじゃろ。」
「まぁそうですね。」
「チハルはどれだけ儂を驚かせれば気が済むんじゃろうなぁ。」
苦笑いしながらエイダンはニッコニコでパパドラを連れて来た時を思い出す。
「一緒に来たドラゴン5頭・・・いえ、5人のうち3人はパパドラ殿の傍に、2人はチハル様の従者と言う事ですが。」
「うむ・・・それは別に構わん、既にチハルの傍にはロイロ殿、ミカ、ゼルの子供ドラゴンが居るからな、ドラゴンの厩舎・・・いや、もう屋敷じゃな、どうなっておる?」
「すでに基礎は出来上がり早急に建てております。」
「そうか・・・うむ、考えても仕方あるまい、上手くやっていくしか無かろう。」
そう言うとエイダンは立ち上がりソファーに座る。
「お茶にしますか?」
「酒が良いのぅ。」
「まだダメです。」
「もう今日の仕事は終わりじゃ!」
駄々をこねるエイダンに笑みを浮かべるルーカス、すると扉がノックされる、ルーカスは扉を開ける。
「国王陛下にお伝えが御座います。」
現れたのはマルグリットの付き人アルベルだ。
「どうした。」
「王妃殿下の陣痛が始まりました。」
「!?何処だ!?メグの部屋か!?」
「はい。」
「ルーカス!行くぞ!」
「もう1つお伝えが。」
「なんじゃ!?」
「生まれたら呼びに行かせるから来なくていい・・・と。」
「・・・いやいやいやいや、行くじゃろ!?」
「失礼致します。」
ペコリと頭を下げアルベルは部屋を退室する。
「如何なされますか?」
「・・・部屋の前なら良いじゃろ?」
「どうでしょうか。」
「なんじゃその曖昧な答えは。」
「いえ、王妃殿下に怒られるのは国王陛下で御座いますので。」
平然と答えるルーカス、エイダンはしばらく考える、座ったと思えば立ち上がり、そして座る。
「・・・行くぞルーカス。」
「はい。」
エイダンはそう言うともう一度立ち上がりマルグリットの部屋に向かった。
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「チハル。」
「アルデアいらっしゃーい。」
部屋でノートを広げ勉強している千春にアルデアが声を掛ける。
「メグの陣痛が始まったわ。」
「え!?」
千春はガタンとテーブルを蹴りながら立ち上がる。
「!!!!???!??!」
「大丈夫?」
「だ・・・だいじょばない・・・ヒール!」
「まだ陣痛が始まっただけよ、生まれるのはまだ先ね。」
アルデアは壁の方を見ながら呟く。
「アイトネー!!!!」
『はいはーい♪』
「お母様が!お母様が!」
『フフッ、大丈夫よ、ちゃんと私も見てるから。』
「ほんとに!?」
『もちろん♪今の状態も確認しているわ、母子共に良い状態、あとは時間の問題よ。』
「はぁぁぁぁ、それじゃ大丈夫かぁぁぁぁ。」
『大事な私の聖女が生まれるのよ?』
「あ、そっか、チェラシーって生まれる前から聖女なんだっけ。」
『えぇ、きっとチハルとユラ、一緒に色々料理作ってくれるわよね♪』
「料理好きな子だと良いなぁ。」
『ユラもお菓子作り好きだからきっとチェラシーも好きだと思うわよ♪』
アイトネはそう言うとソファーに座る。
「アイトネ様呼んだの?」
「うん、お母様の陣痛始まったって。」
「えぇ見てるわ、今間隔が20分くらいだからもう少し先ね。」
「そうなの?」
「えぇメグさんは3人も生んでるから大丈夫よ。」
「えぇぇ!だいじょうぶって言われてもぉぉぉ。」
「それじゃ私は色々買い出ししてこようかしら♪千春も行く?」
「え?!そんな暢気な事してて大丈夫なの!?」
「大丈夫よ、早くても6時間って所かしら。」
「・・・そんなに?」
「そうよ?」
「マジか。」
「アイトネ様アルデアちゃんよろしくね♪」
『まかせて♪』
「ちゃんと見てるわよ~♪」
アイトネとアルデアはそう言うと姿を消した。
「どこ行ったの?」
「メグさんの所に行ったわ。」
「そっか、それで?おかぁさん何買いに行くの?」
「食材♪」
「え?」
「赤ちゃんの物は揃えているでしょ?」
「うん、色々買った。」
「妊婦ってね、産んだ後も大変なのよ。」
「へぇ~。」
「赤ちゃんに沢山栄養を使うから母体が弱ってるの。」
「ヒールじゃダメ?」
「根本的な解決にならないわね~、必要な栄養が足りないもの。」
「そっか、それで?何買うの?」
「タンパク質多め、ビタミンとミネラルがたっぷりって感じね。」
「へ~へ~。」
「千春もそのうちママになるんだから、一緒に買いに行きましょ♪」
「ママかー・・・なれるかなぁ。」
「なれるわよ。」
フフッと笑う春恵は千春の手を取り日本へ買い物に向かった。
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「ハルト兄様!」
「どうしたライリー。」
「お母様が!」
「あぁ、始まったか。」
エンハルトは慌てるライリーに声を掛ける。
「大丈夫だ、心配するな・・・いや、心配するのは当たり前か。」
「はい・・・。」
「フィンレーが生まれた時はまだライリーも小さかったからなぁ。」
「はい。」
ライリーが返事をすると後ろから大きな声でフィンレーが走って来る。
「おにいさまぁぁ!!!」
「フィンレー落ち着け。」
「お母様が!」
「ははは、フィンレーもか。」
エンハルトは立ち上がり2人の頭に手を置く。
「大丈夫だ、今のお母様には女神の加護が付いている、それに・・・。」
エンハルトは心配無さそうに2人に声を掛ける。
「この世界では考えられない程の知識を持った人が沢山付いている。」
そう言うとエンハルトは2人の手を取り部屋を出て行った。
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「もしもし~♪」
『はーい、ハルどうしたの?』
「メグさんの陣痛が始まったわ。」
『あら、間隔は?』
「20分って所ね。」
『了解、準備して行くわ。』
春恵は日本に戻り千春と歩きながらスマホで電話を始めた。
「麻衣さん呼ぶ?」
『えぇ、陣痛が始まったら声かけてって言われてるから。』
「買い物に出てるから準備が出来たら電話してね♪」
『りょうかーい♪』
ピッと電話を切る春恵。
「おかぁさん誰に電話したの?」
「トモミよ。」
「ヨリママ?」
「えぇ、今ムカイ領に居るからすぐ駆けつけるわよ。」
「麻衣さんってたしかカノンのお母さんだよね?」
「えぇ、看護師してるのよ。」
「そう言えば・・・。」
「最強の女神様が付いているから万が一も無いでしょうけれど。」
「こっちの医学が役に立つ感じ?」
「えぇ、麻衣さんって看護師と助産婦のダブルライセンスなのよ。」
「へぇぇぇ!すごっ!」
「安心した?」
「うん、ママさんズと女神様が付いてるんだもんね♪」
ホッとした千春は春恵の手を握り微笑んだ。
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「・・・エイダン、何しに来たの?」
「いや・・・陣痛が始まったと聞いたからのぅ。」
「まだ始まったばかりよ、生まれるのは深夜か明日の朝くらいかしら。」
のんびりとお茶を飲むマルグリット、横にはアルデア、正面にアイトネが同じくお茶を飲んでいた。
「4人目よ?あなたは自分の仕事をしてらっしゃい。」
「・・・う・・・うむ。」
「まったく、生まれたら呼ぶから。」
「わかった・・・アイトネ様よろしくお願い致します。」
『心配するなと言う方が無理よね~♪』
「メグ愛されてるわね~♪」
「フフッ。」
3人はクスクス笑いながらエイダンを部屋から追い出すとアルデアがマルグリットに声を掛ける。
「で?大丈夫?」
「・・・だいじょうぶぢゃない・・わ。」
『痛み押さえましょうか?』
「アイさん、有難いけれど・・・これは私の為でもあるの、この子を私が産んだという証なの。」
「見てる方が痛いわ。」
『母って凄いわね。』
思わず突っ込むアルデアと感心するアイトネ。
「だって・・・母だもの、ね、チェラシー。」
そう言うとマルグリットは優しくお腹を撫でた。
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