のんびり千春とエンハルト!
「うわぁお♪」
千春は大型飛空艇を見上げながら声を上げる。
「凄いだろう。」
エンハルトはニヤリと笑いながら千春に答える。
「すごいねー。」
高さは30mほど、ビル10階はあろうかと言う程の飛空艇を見上げる。
「・・・コレ飛ぶの?」
「飛ぶぞ、テスト稼働の時に乗ったからな。」
「乗ったの!?」
「あぁ、速度は中型艇よりも遅いがそれでも馬車の何倍も速い。」
「すげぇ~。」
千春とエンハルトが話していると、千春の父、大樹が技術者らしき者と歩いて来る。
「お父さん!」
「お、千春見に来たの?」
「うん!すっごいねぇ。」
「だろう?これには千春がくれた一番大きな魔石が使われてるんだよ。」
「あ~、フリエンツに居た闇タコ君の魔石かぁ。」
「他にもサーペントの魔石が幾つか使われてるよ。」
「うぉー、この飛空艇いくらするの?」
千春はそう言うと、大樹とエンハルトは苦笑いする。
「値段は付かないよ。」
「金額に換算出来る物じゃないなぁ。」
「って事はものすっごく高い感じなのね。」
「そうだね、ルーカス宰相さんの話だと、王国の金貨を全て集めても買えないって言ってたよ。」
「ひぇぇ、そんなの飛ばして落ちたら大変だね。」
「それは大丈夫だよ。」
「そうなの?」
「うん、何重にもセーフティを掛けてるし、最悪の事を考えてフェールセーフも付けてる、落ちて壊れる事は無いね。」
「ふぇーるせーふ?」
「知らない?」
「しらない。」
「すべてが壊れても安全に着陸出来るようにしてるんだよ。」
ニコッと笑う大樹は自信満々に答える。
「壊れたら落ちるじゃん?」
「逆だよ、壊れたら発動してゆっくり着地するシステムなんだよ。」
「へーーーーー!!!・・・なんで?」
「えっと、例えを言うと、日本のエレベーターはわかるよね。」
「そりゃIONでいつも乗ってるし。」
「エレベーターのワイヤーが切れたらどうなる?」
「・・・落ちる。」
「いや、落ちないんだよ、ワイヤーが切れたり電気が切れたり、異常が起きた場合単独でロックが掛かるシステムが付いているんだ。」
「へー!」
「他にも電車とか高速で動く物があるでしょ。」
「あるね。」
「停電になったり壊れたりすると強制的にブレーキが掛かるんだ。」
「壊れたらブレーキかかるの?」
「そうだよ。」
「んじゃコレは?」
千春は飛空艇を指差す。
「メイン稼働している魔石に魔力が行かない、高度が急激に下がると自動的に浮力が発生してゆっくり着陸するよ。」
「へー・・・。」
「千春わかってないでしょ。」
「・・・ワカッテルヨ?」
キョトンとした顔で答える千春に大樹とエンハルトはクスクス笑う。
「んで!?これ何処に飛ばすの?」
「まずはジブラロール公国だ、まだ急ぐ必要は無いが、旧ジャシール国に色々と送る必要があるからな。」
「おぉー!本格的だねー。」
「それはそうだろう、フィンレーとユラの公国だ、2人がジブラロール公国に行くまでに準備しておきたいからな。」
「そっかぁ~、妖精にぴょ~んって送って貰ったらダメなの?」
「それも考えたが、物量がなぁ。」
エンハルトはそう呟くと大型飛空艇を見る。
「妖精だけでは限界が有る、それに妖精達は王国の人間ではないからな。」
「そう?」
「こういう政にあまり関わらせるのもな。」
「そっか、お菓子あげるから手伝ってって言ったら幾らでも手伝ってくれそうだけどね。」
笑いながら言う千春にエンハルトもつられて笑う。
「あ!」
「どうした?」
「飛空島使えば?」
何万年も飛び続けている飛空島を思い出す千春はエンハルトを見る。
「アレはチハルの所有物だからな、この件に関してはお国事だ、飛空艇でやるよ。」
「え~?別に良いのに。」
「チハルがジブラロール公国に行くなら飛空島で行けば良いじゃないか。」
「いや、私はフェアリーリングでぴょ~~~んだし。」
手で弧を描くようにジェスチャーする千春。
「それじゃ戻るか?」
「うん、さっきコンビニでスイーツ買って来たから食べる?」
「こんびにすいーつは久しぶりだな頂くよ。」
千春とエンハルトは大樹に手を振りその場を離れた。
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「チハル、私は先に部屋に戻ってますから、何か有れば兵士に声を掛けてくださいね。」
サフィーナは分かれ道で千春へ声を掛ける。
「一緒にスイーツ食べない?」
「ゆっくりしてきたら良いですよ、最近勉強頑張ってるでしょ?」
「ん~、まぁそうだねぇ~。」
千春が答えるとサフィーナはエンハルトを見る、そしてニコッと笑みを浮かべ千春の部屋に戻って行った。
「それじゃ俺の部屋で食べるか。」
「ほーい。」
2人は執事を連れテクテクとエンハルトの部屋に向かう。
「勉強頑張ってるんだな。」
「もうすぐセンター試験だからね。」
「ダイガクと言う学園に入る為のテストだったか。」
「そだよ、選んだのは短大だけどね。」
「何を勉強するんだ?」
「色々だね、専攻科選んでるし。」
気楽に話す千春。
「それに卒業できなくても良いし。」
「そうなのか?」
「うん、別に学歴の為でも無いし、就職はこっちで永久就職じゃない?」
「・・・そうしてもらえると俺も嬉しいな。」
「ンフフ♪それにヨリ達も同じ感じなんだよねー。」
「あっちで就職するわけじゃないんだな。」
「うん、でもウカ様が『うちで働けば良いじゃない。』って言ってくれてるんだよね、困ったら声かけようとは思ってるよ。」
「神様の会社か。」
「凄いんだよ!前行ったスイーツ店もそうだし、不動産とか色々な事業やってるんだって!」
「凄いな。」
「うん、しかも従業員が人外って言うね。」
「人間じゃないのか?」
「そ、こっちだと何て言うんだろうなぁ、日本では妖怪とか土地神的な人らしいよ。」
説明をしながら歩いているとエンハルトの部屋に辿り着く。
「お茶を淹れてもらおうか。」
「良いよ私淹れるし。」
「・・・出来るのか?」
「できま~す♪サフィーに教えてもらったも~ん♪」
2人は部屋に入ると千春はティーセットをアイテムボックスから取り出しお茶の準備を始める。
「水魔法でね~、お湯も沸かせるようになったんだよ♪」
千春はそう言うとポットに暖かいお湯を魔法で出す。
「上達したなぁ。」
「そりゃこっちきて1年以上経つからね♪」
自信満々で言う千春は手際よくお茶を淹れる。
「これで少し茶葉を蒸らしまーす。」
「本格的だな。」
「これしないとサフィーが怖いんだよ。」
「怒るのか?」
「怒るね、お茶の事になるとマジで。」
クスクスと笑う千春、エンハルトも笑みを浮かべながら千春がお茶を淹れるのを見る。
「はい、どうぞ♪」
「ありがとう。」
「あとは新作スイーツ!」
袋に入った生クリームたっぷりのイチゴクレープを取り出す、千春は袋を開けお皿に乗せるとエンハルトに渡す。
「はいどうぞ♪」
「有難う。」
2人はソファーに座りスイーツを食べながら楽し気に話す。
「はぁ・・・美味かった。」
「そりゃよかった。」
ソファーに体を預けながら天井を見るエンハルト。
「ハルト疲れてる?」
「んー・・・少しな。」
「温泉行く?」
「たまに行ってるぞ?」
「そうなんだ。」
「気持ち良いからなぁ。」
目を瞑り笑みを浮かべるエンハルト、すると千春が横に座る。
「ハルト。」
「ん?」
千春は横に座ると太ももに手を当てポンポンと叩く。
「なんだ?」
「ここに頭置いて。」
「え?」
「膝枕。」
「ひざまくら?」
「ん?こっち膝枕って無いの?」
「そこに頭を置くのか?」
「そだよ。」
「・・・それは・・・どうなんだ?」
「どうって?」
「女性の足の上に頭を置くとか・・・ダメだろ。」
「ダメじゃないよ?」
「こっちじゃダメだと思うぞ?」
「えぇ~?文化の違いかなぁ・・・あ!そうだ!」
千春はアイテムボックスから細い棒を取り出す。
「耳かきしてあげる!」
「・・・自分で出来る。」
「なに顔赤くしてんのよ。」
「恥ずかしいだろ!」
「えぇ~?誰も見てないって~、イイからほら!」
千春はエンハルトの腕を引っ張ると頭を乗せ膝枕をする。
「・・・。」
「どう?」
「どうと言われてもなぁ。」
「それでは耳掃除させて頂きまぁ~す♪痛かったら言ってね。」
千春はエンハルトの耳に耳かきをそっと入れ動かす。
「・・・。」
「・・・。」
「気持ちいい?」
「あぁ。」
「・・・。」
「・・・。」
千春は楽し気に、エンハルトは恥ずかしそうに、2人の時間が流れて行く。
「はい、次反対がわ~♪」
「向きを変えるのか?」
「そだよこっち向いて。」
「いや・・・チハル側に向くのか!?」
「そだよ、何をいまさら恥ずかしがってんのさ。」
「・・・。」
エンハルトは有無を言わさず答える千春に何も言えず体の向きを変える、目の前には千春のお腹が見える。
「いつもお疲れ様だねー。」
「・・・仕事だからな。」
「たまにはゆっくりした方が良いよ~。」
「そうだな。」
「・・・。」
「・・・。」
「いつもありがとうね。」
「好きでやってるからな、別にお礼言われる事は無いぞ?」
「良いの、私がお礼言いたいだけだし。」
「お礼言うのはこっちなんだがなぁ。」
2人は何気ない話をしながら時間が流れる、そしてエンハルトは久しぶりに気の張らないゆっくりとした時間を過ごした。
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