久々王都に繰り出すかぁ!
「ねぇ千春ぅ~。」
「なんですか~ヨリさ~ん。」
「最近異世界感薄れて無ーい?」
「気のせいじゃ~ん?」
頼子と千春はソファーでだらけながら呟く。
「千春勉強しないの?」
春恵が門の部屋から現れると千春に声を掛ける。
「休憩ちゅ~。」
「明日から学校でしょ?」
「そだよ~。」
「今年は濃い正月だったなぁ~。」
頼子は天井を見ながら呟く。
「確かに色々ありすぎた!」
「ねぇ~アヤネちゃんの妊娠も驚いたぁ~。」
「ユラの両親に挨拶できたのは良かったなぁ。」
正月を振り返る2人。
「ねぇ千春。」
「な~ん。」
「王都いかね?」
「ん?何しに?」
「暇潰し。」
「勉強は?」
「飽きた。」
「ヨリさん余裕っすなぁ!」
「これ以上勉強しても頭に入らない!」
「そうだねぇ~、出かけますかぁ!サフィー王都行って良い?」
「良いですよ、準備するので王都用の服に着替えて来て下さい。」
「ほいよー。」
千春と頼子は千春の寝室に向かい王都ぶらつき用の服に着替えた。
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「モリー、ハルト殿下の所へ、ナッテリーは王妃殿下の所へ。」
「は~い。」
「はい。」
2人は千春のお出かけを報告しに部屋を出て行く。
「オクナ、フアナ。」
「「はい。」」
サフィーナが名前を呼ぶと千春部隊の部隊長オクナと副隊長フアナが現れる。
「2部隊に編制地上班と飛空班で待機。」
「了解しました。」
オクナが返事をすると外へ消えた。
「ワークスさんはヨリさんをお願いしますね。」
「了解です。」
サフィーナはサクサクと指示を飛ばす。
「着替えたよーん。」
「今ハルトの所へ報告してますから少し待ってくださいね。」
「はーいサフィーママー。」
「千春はママ多いなぁ~。」
「えへへ~♪」
「いやそこ喜ぶ所?」
二ヒヒと笑う千春を呆れた様に見る頼子。
「楽しそうだな千春。」
「お帰りルプー、お出かけするの。」
「何処に行くんだ?」
「王都だよ。」
「王都かぁ。」
「何?ダメ?」
「いや、別に構わないが・・・。」
ルプは苦笑いしながら千春の横で丸くなる。
「すぐ出かけるのか?」
「報告まち~。」
「そうか。」
「で?王都で何か有った?」
「・・・いや、まぁちょっと他から来た冒険者が暴れてな。」
「ほほう?」
「ほぉう?」
千春と頼子は楽し気にルプを見つめる。
「ロイロ達がちょっと指導したんだが、ちょ~~~~っとやりすぎてな。」
「死んだ?」
「いや、ギリギリ生きてる。」
「半殺しじゃん。」
「瀕死か、大丈夫なの?その冒険者。」
「大丈夫では無いが教会の者を呼んだから回復するだろ。」
「ふぅ~ん・・・それ何処?」
「食事通りだが今は冒険者ギルドだ。」
「そっか、ヨリ回復に行こうか。」
「そだね。」
「千春とヨリが回復するのか?」
「そりゃそうでしょ、ロイロがやったんなら私が面倒見ないとダメじゃん?」
「いつもお世話になってるからね~ロイロちゃん。」
2人が話していると、ナッテリーとモリアンが帰って来る。
「ただいま戻りましたぁ!」
「報告終わりました。」
2人はサフィーナに報告をする。
「それじゃ行こっか。」
千春と頼子は箒と杖を取り出し跨る。
「ルプも行く?」
「あぁ行く。」
ルプも立ち上がり庭に出ると、皆は地面を蹴り空へ飛び立った。
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「ロイロやりすぎにゃ。」
「手加減しらないの?」
猫又の三珠、そしてその背に乗る日本人形の彩葉がロイロを見上げながら呟く。
「最近人間と殴り合いしてなかったからのぅ、ち~とやりすぎたわ。」
ポリポリと頬を掻きながら言葉を返すロイロ。
「吾輩から見てもあの冒険者が悪いにゃ。」
「そうね、千春にバレて怒られるようなら私が証言してあげる♪」
ウンウンと頷く2人にロイロは微笑む。
「ロイロの姐さん!」
「セルロか。」
デミオーガの大将セルロは小走りに近寄るとロイロに話しかける。
「大丈夫ですか?」
「人に遅れは取らんわ。」
「いや・・・相手がですよ。」
セルロは呆れた様にロイロへ突っ込む。
「死んではおらん、冒険者ギルドに放り投げてきたから大丈夫じゃろ。」
「ソレダメなやつっしょ。」
「うるさいのぅ~。」
「良いんですか?チハル様にバレたら酒抜きとか言われますよ?」
「う”っ・・・それは困るのぅ。」
「事情は知ってるんで怒られた時は俺も説明しますから、もう一度冒険者ギルド行きましょう。」
「えぇ~・・・。」
嫌そうに顔をしかめるロイロ。
「ロイロ~ルプが王宮もどったにゃ、遅かれ早かれバレるにゃ?」
「そうよ?ちゃんと復活した所見届けた方がいいわよ?」
「そうですよ、姐さん。」
「・・・仕方ないのぅ~。」
イヤイヤながらもロイロは振り返り、来た道を歩き始めた。
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「シャルル!」
「ふぁあい!?」
通りを歩いていた冒険者、狼の牙のシャルルは、冒険者ギルド職員に呼び止められる。
「ちょっと冒険者ギルドまで来てくれ!」
「え?なんで?」
「負傷者だ!」
「教会呼びなさいよ。」
「呼んでいる、だが瀕死なんだ。」
「えぇ~?!なに?何処かの魔物にでも襲われたの!?」
「いや・・・街中で・・・ロイロ様に手を出した。」
「ばっっっっっっっっかじゃないの!?」
「ジブラロールの冒険者じゃないんだ、ロイロ様の事を知らなかったんだろう。」
「はぁ~・・・そんなバカ死んだ方が良いわよ。」
「そう言うな、冒険者ギルドとしては冒険者が怪我をすれば事がどうあれ助ける事になっている。」
「・・・私関係無いんだけど?」
「・・・ギルマスから回復魔法を使える者を見つけたら連れて来いと指示がな?」
「しょうがないなぁ。」
シャルルはそう言うとネックレスを取り出し魔力を通す。
「ユーリン、ロイロちゃんに手を出して瀕死の冒険者助けるよー。」
『は?そのまま死ぬまで横で笑ってたら良いよ。』
「いやぁ冒険者ギルドにいるんだってさ。」
『え~、ロイロちゃん冒険者ギルドまで運んだのぉ?』
「らしいよー。」
『了解、私も行くわ。』
「はーい。」
通信魔道具から手を離すとシャルルは職員に連れられ冒険者ギルドに向かった。
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「教会はまだか?」
スンと表情が抜けた冒険者ギルドのギルドマスター、レオは職員に声を掛ける。
「まだですね。」
「そうか。」
レオは軽く答えると、冒険者ギルドにある簡易ベッドに寝た男3人を見下ろす。
「他の支店から来た冒険者とは言え・・・少し可哀そうだな。」
1人は曲がるはずの無い方へ足と腕が曲がり、1人は顔が倍に腫れ上がりピクピクと痙攣したまま動かない、そしてリーダーと思われるもう1人の男は・・・。
「生きてるか?」
「・・・脈は在ります。」
体をくの字に曲げ白目を向いたままピクリとも動かない男を見ながら職員が話す。
「声を掛ける相手を間違ったなぁこいつら。」
「えぇ、報告ではこの時間から酒を呑んでいたそうで。」
「昼間から呑むのは別に構わんが、絡む相手を考えないとなぁ。」
「そうですね、ジブラロールに初めて来た冒険者はギルド直行させる様に門番へ指示が必要かと。」
「うむ、後で書類を準備する、ヘンリー殿と話をしておこう。」
レオの話を遮る様に扉が開く。
「ギルマス~、来ましたよ~?うわぁ!ロイロちゃんやったねぇ~。」
「おぉ~、これシャルルの魔法じゃ無理でしょ。」
「きっついねぇ、聖女様呼ばないとダメじゃない?」
ユーリンとシャルルはベッドに転がる男達を見て呟く。
「そっちの男に回復魔法を、この2人は教会に対応させる。」
「了解~♪」
「ギルマス、中級ポーションあるよ?」
ユーリンはアイテムボックスから綺麗な小瓶を取り出す。
「こいつらが支払うなら使うが、無理だろ?」
「え~、金貨2~3枚持ってるでしょ?」
「どうだろうな、田舎から来たらしいからな。」
ギルマスはギルドカードを見ながら呟く、そして千春達が到着するまで冒険者の男三人は生死の境をさまよった。
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