スティカと美味しい食事!

「おわったよー!」

 千春はLIMEで連絡を取り皆の集まる応接間に戻る。


「おつかれー♪」

「結局何体居たの?」

「6体らしいよ。」

「そんなに居たの!?」

「らしいよー。」

「チハル、その子なに?」

 集まったJK達は千春と頼子に手を繋がれた黒髪の狼獣人少女を見る。


「スティカちゃんだよ。」

「かわいいっしょ。」

「うん、可愛いね、どこから連れて来たんよ。」

「地下に居たんだよ。」

「へ?地下室あったの?」

 麗奈が言うと千春と頼子は頷く。


「・・・ねぇもしかしてその子幽霊?」

「ぴんぽーん!」

「地縛霊だってさ。」

「えー!・・・全然怖くないんだけど。」

「ね、怖くないどころか可愛いんだが。」

 ワイワイと騒ぐJK達を後目に南は首を傾げる。


「そこに幽霊居るの?」

「いるよー、あ!南ちゃん見えないんだっけ幽霊。」

「見えないわよ?」

「アイトネ、南ちゃんに幽霊見える様に出来る?」

『出来るわよ?AとBどっちがいい?』

「なにその選択肢。」

『アヤネちゃんが見える様になるのと、スティカちゃんを見える様にするの。』

「・・・それって南せんせーが聖女になるって事?」

『ぴんぽーん♪』

「やめたげてwww」

「ナカーマ増える。」

「アヤネちゃん聖女になる?」

「え?ヤダ、なんかヤダ。」

 断る南、アイトネは千春を見ると頷く。


『そう言う事で連れて来たのね、それじゃご飯食べれるように一時的だけど肉体を与えるわ♪』

 アイトネはそう言うとスティカの前に行き頭を撫でる。


「うわっ!見えた!」

 南は目の前に現れた黒髪狼獣人少女を見て驚く、そして微笑む。


「あなたがスティカちゃんね。」

「・・・おねーちゃんは・・・だれ?」

「この子達の先生よ♪」

 千春と頼子をチラッと見る南は微笑む。


「南せんせー、この子未練が有って、ご飯お腹いっぱい食べたいらしいの。」

 千春が言うと南はもう一度スティカを見る。


「ご飯たべる?」

 南の言葉にコクリと頷くスティカ、可愛い仕草に南はスティカの頭を優しく撫でる。


「よし!お礼もあるし頑張って作りましょ!」

「せんせー!私も手伝うよ!」

「私も~♪」

「ウチも手伝う!」

「うちもー!」

 皆は手を上げるとそれぞれマイエプロンを取り出す。


「食材は私持ってるから、せんせー何つくるの?」

「そうねぇ、アイトネ様何をご所望で?」

 南はアイトネに問いかける。


『美味しいもの!』

「アイトネ、それ一番困るんだってば。」

『えー、でもチハル達が作るの全部美味しいんだもん!』

「はいはいありがとうございまーす、それじゃ南せんせー得意料理何?」

「ん?得意・・・。」

 顎に手を当て悩み始める南。


「うん、適当に材料出すからキッチンで考えましょ~♪」

 千春はそう言うと皆を連れ厨房に向かう。


「牛肉~♪オーク~♪鶏肉ぅ~♪魚もあるよ~ん♪」

 テーブルに食材を並べる千春とサフィーナ。


「あら、これキャベツ?」

「キャベツっぽいキャベツです。」

「それじゃキャベツよね?」

「キャベツでは無いんですよ。」

「それじゃ何?」

「・・・キャベツっぽいこっちの野菜です。」

「味は?」

「キャベツです。」

「キャベツで良いじゃない。」

 南はそう言うとキャベツを手に取る。


「ロールキャベツにしましょ。」

「良いですねー、ロールキャベツに合う副菜ってなんだろ。」

「洋風なら何でも良くない?」

 千春の呟きに頼子が突っ込む。


「んじゃ私はオムレツ作ろ~っと。」

 千春は卵を取り出し準備を始める。


「私はサラダ作るかな、スティカちゃんおこちゃまだしコーンサラダにしよ。」

「ウチは子供が大好きソーセージでつ~くろっと。」

「うちら何つくる?」

「アイトネ様は何でも食べるからスティカちゃんの好きそうな物作りたいよね。」

「何が好きなんだろ。」

「ユラちゃんと似てるし肉じゃね?」

「肉だね。」

「肉でしょ。」

「おっけ、副菜じゃなくても良いならステーキか?」

「ハンバーグもいんじゃね?」

「えー?ハンバーガーとかじゃん?」

「・・・全部作れば?」

「食えねーだろ!」

「イケるイケる、アイトネ様だけじゃなくモート様も居たし。」

「よし!それじゃ作るか!」

 JK達も作る料理を決めると皆は作業を始めた。



--------------------



「お帰りなさいませケンタ様。」

「ただいま、ノイガーさん・・・ん?騒がしいね誰か来てます?」

「はい、エンハルト王子殿下、チハル王女殿下、それから聖女の皆様が。」

「あ~家を見に来たのかな。」

 苦笑いしながら石田は声のする方に向かう。


「お帰りなさいケンタさん♪」

「ただいまー・・・何やってるの?アヤネさん。」

「料理だけど?」

「うん・・・凄い量だね。」

 呆れる程の料理を見て呟く石田、出来上がった料理をサフィーナが次々とアイテムボックスに収納していく。


「新居祝い?」

「そう言う訳じゃないのよ、ちょっと・・・今忙しいから後で説明していい?」

「うん、着替えて来るから。」

「はーい、あっちで寛いでてー。」

 南はにこやかに言うと石田も慣れた様に手をふり部屋を出て行く。


「凄いねぇみんなあんなに料理出来るんだ。」

「チハル王女殿下の御料理は陛下、王妃も絶賛しておりますので。」

「たしかに、藤井の飯は美味い!」

 思わず叫ぶ石田、そして着替えを済ませ応接間に移動するとエンハルト、アイトネ、モート、そしてペット達が寛いでいた。


「おじゃましてますケンタ殿。」

「エンハルト王子、いらっしゃいませ、アイトネ様とモート様いらっしゃいませ。」

『♪』

「聖女達に呼ばれたのでな、寄らせてもらっている。」

 2柱とも挨拶を交わし石田はソファーに座る。


「家を見に来たのですか?」

 エンハルトに問いかける石田、エンハルトは苦笑いしながら答える。


「そのつもりだったのですが・・・ちょっとイレギュラーな事が有りまして。」

「イレギュラー?」

 エンハルトはそう言うとペット達を見る、そこには丸くなったルプに気持ちよさそうに寄り掛かる狼獣人の少女が居た。


「獣人の子?」

「あぁ、この屋敷に捕らわれていた霊だ。」

「・・・はい?」

「チハル達の言い方だと地縛霊と言うらしい。」

「へぇ~・・・へ?」

 ポカンとした顔で相槌をうつ石田。


「他にも5体程居たらしいが他は全部処理済みだ。」

「・・・えぇぇ、そうだったんですかぁ!?」

「すまない、俺達には見えないから気付かなかった。」

「いえいえいえいえいえいえいえ!私も住んでて全然気づきませんでしたから!」

 石田は頭を下げるエンハルトに必死で声を掛ける。


「石田ー!ご飯できたよー!」

「せめて先生付けろ!平田ぁ!」

「はいはいはいはいせんせ~♪」

「ハイが多いわ!」

「怒ると禿げるぜ先生!」

 美桜は笑いながらテーブルに料理を運ぶ、先に出来た料理はサフィーナがアイテムボックスから取り出し同じく並べ始める。


「スティカちゃんこっちにいらっしゃい♪」

 南はティスカの手を取り席に座らせ、南も横に座る。


「アヤネさん、その子・・・。」

「あ、聞きました?幽霊らしいですよ。」

「・・・怖くないんですか?」

「え?何処が怖いの?可愛いわよ?」

「・・・可愛いですね。」

 南は自分が作ったロールキャベツを前に置く。


「食べ方分かる?」

「・・・わかんない。」

「これを切って食べるの、熱いから気を付けてね。」

 南はそう言うとフォークとナイフ、スプーンを並べスティカに食べ方を教え食べさせる。


「どう?」

「おいひい!」

「良かった♪」

 南は微笑み自分もロールキャベツを口に入れる。


「うん、美味しいですね。」

 石田も満足そうにロールキャベツを頬張る、パクパクと口に入れるスティカにハンバーグやサラダも食べさせると、満面の笑みで返すスティカ。


「可愛い♪」

 南はスティカの頭を撫でる。


「アイトネ様この子成仏出来そうですか?」

 南はアイトネに問いかける。


『・・・愛着わいちゃった?』

 アイトネは南に微笑みながら問いかける。


「こんな・・・可哀そうな子、もっと幸せな事を教えてあげたいと・・・思いまして。」

 料理中に千春から事情を聞いた南は途中泣きながら料理をしていた。


『このまま霊としてこの家に憑く事も出来るけれど・・・今の様に食事が毎回できるわけでは無いわよ?』

「そうですよね・・・。」

『でも~♪』

「でも?」

『生まれ変われば食事は出来るわ。』

「そうですね・・・。」

 少し悲し気にスティカを見る南。


『それに、この子には辛い記憶が多すぎるわ、生まれ変わって新しい人生を送る方が良いわよ。』

 少し悲し気に微笑み返すアイトネ、そして南に話を続ける。


『スティカのお母さんになる?』

「え?」

『今なら出来るわよ?』

「へ?」

 アイトネの視線が南のお腹を見る。


「え!?」

『えぇ、その通りよ、まだ実感は無いでしょうけれど、おめでとう♪』

「えぇぇぇ!?」

 驚く南に皆の視線が集まる。


「どうしたの?南せんせー。」

「アヤネちゃん何?急に。」

「アヤネさんどうしました?」

 問いかける皆を放置し、南はスティカを見る。


「スティカちゃん。」

「なに?」

「この食事が終わったら・・・私の娘になる?」

「・・・むすめ?」

「えぇ、私がお母さんになるの、どう?」

「おかーさん?」

「うん、毎日美味しいご飯つくってあげる。」

「ほんと?」

「うん、約束するよ?」

「なる!」

 嬉しそうに答えるスティカ、南はポロリと涙をこぼしながらも笑みを作りスティカを撫でる。


「アイトネ様お願い出来ますか?」

『えぇ、私の加護を付けておくわ、安心して頂戴♪』

「有難うございますアイトネ様。」

『それじゃ食事を続けましょ♪』

「はい!スティカちゃん次はこれ食べようか♪」

「うん!・・・お・・・おかーさん?」

 スティカはそう言うと南は微笑み返す、そして皆は美味しい料理を堪能した。







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