地下に捕らわれる悲しき霊!
「くらぁい。」
リリが魔法で小さな光を出し、足元を照らしながら階段を下りる面々。
「結構奥深いね。」
頼子は小さな声で呟くと千春もうんうんと頷く。
「ルプ、幽霊居る?」
「あぁ奥の方に居るみたいだな。」
階段を降りると地下のわりには広く取られた廊下を歩く、そして古びた扉の前に辿り着く。
「鍵ついてるね。」
「サビサビだ、鍵が有っても開かないんじゃない?」
「壊せば良いだろ。」
ルプは狼姿に変化し扉のノブを手に取ると扉ごと引きちぎる。
バキャッ!!!
「うっぉ・・・ぅ。」
部屋の中を見た千春は声にならない声で唸る。
「なにこれ・・・。」
「牢屋がいっぱい。」
2人はそっと部屋に足を踏み入れ牢屋を見る、牢屋には朽ちたベッドらしき物、鉢植えの様な入れ物が隅に置いてある。
「ねぇ・・・あれ骨?」
千春は奥にある白い物を見ながら呟く、その牢屋の奥に小さく丸まった子供が座っていた。
「あれって残滓?」
「いや、霊魂のままだ、残滓ではないな。」
「マジか。」
「千春!あっちも居る!」
頼子は別の部屋を指差す、その部屋の隅には黒く蠢く塊があった。」
「なに?アレも霊魂?」
「いや、アレは残滓だな。」
千春の問いかけに答えるルプ。
「イヤな残滓だね。」
「恨みの塊だ、残滓とは言え良い物じゃない。」
「アレばアイトネ様の所に連れて行くのは無理ばい、わっちが消してよか?」
「ビェリー出来るの?」
「まかせり~♪」
ビェリーはそう言うと牢屋の中へスルスルと滑り込み黒い塊の前に行くと魔力を放出し黒い塊を散らす。
「あ、ちょっとそっちに逃げたばい。」
「おう、任せろ。」
ルプは流れて来る残滓を包むように魔力を放出すると黒い残滓は消滅した。
「さすが土地神だねぇ。」
「あ、ココにも骨がある、さっきの残滓さんの骨かな。」
「そうかも・・・。」
千春と頼子は白骨に手を合わせる。
「で?千春アレはどうするんだ?」
ルプは牢屋の中で丸くなる子供の霊を指差す。
「・・・どうしよ、さっきの残滓見たいな嫌悪感?は無いんだよねぇ。」
「うん、なんだろ、怖くない。」
「そうだな、怨霊ではない、あっちの言い方をすれば地縛霊って奴だ。」
「・・・その言い方されると怖いな!」
「でも動かないね、気付いてないのかな。」
「いやぁこんだけ騒げば気付くっしょー。」
千春はそう言うと牢屋の前まで移動する、そして。
「ねぇ君~、おーい。」
千春は優しく声を掛けると頭の上からピコンと三角の耳が飛び出る。
「お!ケモ耳!」
「狐?」
「んにゃ、ユラとは違うねぇ、犬?」
千春が首を傾げながら呟くとルプが不満げに呟く。
「アレは狼だ。」
「あ~、はいはい、ルクレツィアさんと同じ種族かなー。」
狼耳の子供霊は真っ黒な耳をピコピコ動かすと千春の方を見る。
「ひっ!?」
「ひぇっ!?」
子供の霊は真っ黒な虚空の目を千春達に向ける。
「こ・・・こ・・・こんにちわっ。」
子供の霊は首をコテンと傾げながら無表情のまま千春達を見つめる。
「る・・・るぷ・・・どうしたらいい?」
「どうしたい?」
「えっとぉ・・・成仏させられる?」
「送る場所が違うからなぁ、消滅させるなら出来るが。」
「えぇぇ!?ソレはなんかヤダ!」
「専門家が居るだろ、呼んでみたらどうだ?」
「あ!そっか!モートさーん!」
千春はルプに言われモートを呼ぶと、モートはすぐ横に姿を現す。
「呼んだか?」
「うん、モートさんあの子なんだけど。」
千春は目の無い顔で見つめる子供の幽霊を指差す。
「・・・ココに縛られた魂か。」
モートは牢屋の前に行くと、何も無いように牢をすり抜け霊の前で立ち止まり軽く手を頭に乗せる。
『・・・あ・・・あぅ・・・いたいょ・・・痛いょぉ。』
「もう痛みはない、記憶に残る痛みだ。」
『・・・き・・・ぉく?』
黒い空洞の目を開き呟く子供の霊。
「モートさん、その子悪い霊じゃないですよね?」
「あぁここで罰を受けそのまま放置され死んだ狼族の少女だ。」
淡々と答えるモート、千春は牢屋の扉を両手で掴み霊に声を掛ける。
「・・・もう痛くないよ!だいじょうぶだよ!」
「うん、もう苦しまなくて良いんだよ!」
千春と頼子は霊に向かって叫ぶ。
『もう・・・たたかれない?』
「叩く者はもう居ない、お前はもう自由だ。」
モートはそう言うと指を鳴らす、すると空洞だった目が現れる。
「ルプ!この扉開けれる!?」
「これか?」
ルプは牢屋の扉を手にすると扉ごと引きちぎる、千春と頼子は子供幽霊の前に行くと目線を合わせ話しかける。
「もう苦しむ事は無いからね。」
「そうだよ、悪い人はだーーーーれも居ないから!」
『いない?』
「いないよ!」
「いないいない!」
ホッとしたように微笑む子供の霊。
『・・・。』
ふと悲しそうな顔に戻る子供の霊はうつむく。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
千春と頼子は少女の霊を見るが返事がない、そしてモートを見るとモートは千春に話しかける。
「このまま冥界に連れて行き来世に送る事も出来るが。」
「出来るが?」
「未練があるみたいだな。」
「なに?!どんな未練?!」
「お腹いっぱい食べたいそうだ。」
「・・・幽霊ってご飯食べれるの?」
思わず突っ込む千春にルプとビェリーが後ろから答える。
「食えるぞ?」
「食えるばい?」
「マ!?」
頼子は思わずビェリーを見る。
「人の食事とは違うがな。」
「食事にこもった気を食べるっちゃ。」
「こっちだと魔力になるのか?」
「そうやない?」
「ほほお?」
ニヤリと微笑む千春、それをみた頼子も思わず微笑む。
「モートさんこの子連れて行って良い?」
「この娘が自分から動く気が有ればな。」
「ほほぉ~?」
千春は少女霊に声を掛ける。
「ね、おねえちゃんが美味しいご飯作ってあげる♪」
『ごはん?』
「うん!」
「千春、今日は南ちゃんがご飯作るんじゃないっけ?」
「あ、そうだった、手伝えば良いんじゃね?」
「それもそうか、私も手伝っちゃおうかな♪」
2人はそう言うと少女霊を挟み2人は少女の手に自分達の手を当てる。
「お!触れる!」
「ほんとだ!」
「なんで?」
「聖女ぱわー?」
千春と頼子はモートを見る。
「聖女なら、触れると思えば触る事が出来るぞ。」
「へぇ~。」
「消すつもりで攻撃すればダメージも与える事が出来る。」
「え?初耳なんだけど。」
「アイトネは教えてないのか?」
「きいてませーん!」
「私もー!」
何故か2人は笑顔でモートに答えると少女霊を見る、そして。
「さ!行こうか!」
「さ、美味しいご飯たべようか!」
『・・・ごはん?』
耳をピコピコ動かし呟き返す少女霊は腰をあげる。
「さ、外に出よう!」
「ねぇ、あなた名前何て言うの?」
『なまえ?・・・』
少女霊は2人に手を繋がれ歩きながら呟く。
『・・・・・・すてぃか。』
「スティカちゃんね!」
「きゃわ!」
2人はスティカの手を取り牢屋を出る。
「あ、そうだ。」
千春はそう言うと牢屋の中を見る、そしてアイテムボックスに白骨を入れる、黒い残滓の牢屋にも目をやるとその骨もアイテムボックスに収納する。
「供養する?」
「うん、あの残滓さんも相当恨み有ったみたいだし。」
そう言うと2人はもう一度スティカを見る、そして明るい外へ向かって歩いて行った。
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