おかしをつくりたい!

「モートさーん・・・。」

「どうしたユラ。」

 ユラは自室に戻るとモートを呼んだ、するとモートが現れベッドに腰掛ける。


「きょうはありがとうございました。」

 ベッドの上で正座したままペコリと頭を下げるユラ、モートは微笑みユラの頭を撫でる。


「ユラが気にする事は何も無かったぞ。」

「つかれた?」

「いや?いくつかの魂を冥界に送っただけだ、それに俺は疲れないからな。」

 微笑むモートにユラは笑みを浮かべ微笑み返す。


「おれいしたい!モートさん何かない?ユラができることっ!」

「ん~、またお菓子を焼いてくれ、さ、今日は疲れただろう。」

 モートはそう言うと立ち上がる、ユラは布団を掛け横になる。


「おかし・・・おかし~・・・おかし・・・・・・すぅすぅ。」

 ユラは疲れていたのか目を瞑りながら呟くと直ぐに寝てしまった。


「両親の事より俺の心配するとはな。」

 クスッと微笑むとモートはその場から消えた。



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「チハルおねぇちゃん!」

「おはようユラ、お父様達まだ帰って来てないよ~。」

 千春の部屋に飛び込んできたユラ、千春に抱き着くと千春は答えた。


「おねぇちゃん!あのね!あのね!」

「どうしたの?」

「おかし!」

「食べるの?朝ごはんまだでしょ?」

「ちがうの!おかしやくの!」

「お菓子作るの?」

 ぴょんぴょんとジャンプしながらユラが言うと千春はハテ?と首を傾げる。


「モートさんにおかしつくるの!お礼したいの!」

「あ~、そう言う事ね~、昨日は大変だっただろうからねぇ。」

 冥界に送られた魂は結構な人数になるようでアルデアから説明を聞いていた。


「つくれる?」

「勿論♪何が良い?クッキー?ビスケット?」

「えっとぉ・・・つくったことないおかし作れる?」

「ほほう?ユラって結構チャレンジャーだなぁ、よし!おねぇちゃんに任せなさい!」

 千春は胸をドンと叩きながらユラを見る、ユラは楽しそうに頷く。


「千春何作るの?」

 春恵が門の部屋からピョコっと顔を出し話しかける。


「ん~、色々候補あるんだけど、昨日レナ達が大量に果物持ってきたから果物使いたいな。」

「果物ね~・・・パイとか?」

「パイか、イイネ!」

「ぱい?」

「そ、果物をあま~~~~~く煮てそれをパイに挟んで焼くんだよ。」

「おいしい?」

「超おいしいよ♪」

 千春はしゃがんでユラと目を合わせるとニコッと微笑む。


「ユラもつくれる?」

「うん、一緒に作ろうね。」

「レンちゃんも一緒に作っても良い?」

「いいよー、準備してるから呼んでおいで♪」

「はーい!」

 ユラはそう言うと庭に飛び出る、そしてルルと一緒にフェアリーリングに消えた。



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「おはよー千春、朝ごはんつくってんのー?」

「おはよーヨリ、ユラがさ、モートさんにお菓子作りたいって言うから準備してる。」

「ほほ~、何作るの?」

「パイだよ。」

「へぇ、私パイすき~♪」

「おはよー!チハルーヨリー!」

「おいーっす、なにしてんのー?」

 美桜と麗奈、そしてゾロゾロと現れるJK軍団。


「パイ作るんだってさ。」

「へ~・・・朝から?」

「朝食がパイ?」

 頼子が説明すると青空達も顔を出す。


「まずはフィリングを作らないとだし、ユラがレンちゃん呼びに行ってるから。」

「ほほう、ウチら手伝う事ある?」

「んー、ユラ達にさせるつもりだから私もあんまり手伝わないよ。」

「そっか。」

「ミオ、うちらは朝食作ろうか。」

「いいね・・・でもコンロたんなくね?」

 大愛の提案に頷くが美桜は厨房を見渡す。


「卓上コンロあるよ?」

 頼子はそう言うとテーブルに卓上コンロを並べる。


「それが有ったか。」

「よしうちら何つくる!?」

「何食べたい?」

「はーい!」

「はいミオ。」

「カレー。」

「却下。」

「えー!」

「はーい!」

「はい!レナ!」

「ロコモコ!」

「重くね?」

「んじゃヨリは何が食べたいんさー。」

「・・・米。」

「あ~わかる~、鮭たべてぇ。」

 頼子が言うと青空が涎を垂らしそうな感じで呟く。


「んじゃ米炊くか。」

「ご飯炊きたてあるよー。」

 千春はアイテムボックスからお釜をドンと置く。


「炊きたて保管便利すぎじゃん。」

「ふっふっふー。」

 千春は果物を並べながらドヤ顔を見せる。


「私納豆食べたい。」

「鮭ある?」

「無いな。」

「買いに行くか!」

「せやな!」

「千春ちょっと買い物行ってくるわ。」

「あいよー。」

 JK達はゾロゾロと門に向かい買い物に向かった。


「おねぇちゃんつれてきたよー!」

「チハルお姉さまおはようございます。」

「おはよーレンちゃん。」

「おかし作るんですか?」

「そだよー、イーナは居るかな?」

 千春が呟くとユラの頭からピョコっと蝙蝠が現れる、そしてイーナに変化した。


「いるのです!」

「おはよ、イーナ、それじゃこの果物を皮剥いて~、一口サイズにしたら砂糖とレモンで煮るよー。」

「はーい!」

 子供達は手を上げエプロンを着ける、そしてお菓子作りが始まった。



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「玉子あったっけ?」

「買えば?」

「コンビニで?」

「うん。」

「高いじゃん?」

「スーパーよりは高いね。」

「・・・なんか卵ってさー10円高いだけで物凄く損した気分にならない?」

 コンビニに向かう頼子達は歩きながら話す。


「うち24時間スーパーの方に行くよ。」

「私もスーパー組で良いよ。」

「んじゃ私もー。」

 青空、大愛、花音は手を上げる。


「スーパー行くなら全員スーパーで良いじゃん。」

「そだね、色々買って行くかぁ、荷物持ちも居るし。」

 頼子は頭の上を指差す、ビェリーは頭の上に居るが姿は見えない。


「ビェリー君居たんだ。」

「居るよー寝てるけどね。」

 ケラケラと話をしながら頼子達はスーパーに辿り着くと皆はカートとカゴを手に取る。


「それじゃみんなよろしくー。」

 それぞれの担当を決めJK達はスーパーに入り買い漁った。



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「小麦粉とー、バター。」

 ドンと小麦粉の袋を出し、バターを置く。


「チハル、材料はそれだけ?」

「そだよ。」

「簡単なのね。」

「ちょ~っと時間かかるけどね。」

 千春は大きなボウルにバターを置くと大きく切り分け小麦粉をまぶす。


「これを幾つかに分けまーす。」

 黙々と作業を続ける千春をのぞき込むサフィーナとモリアン。


「サフィー、氷水お願い。」

「ココに?」

「こっちで計りながらやるから計量カップの方にお願い。」

 氷水を魔法で出すサフィーナ、千春はそれを受け取りバターに加えると軽く混ぜて行く。


「ほんで~、残りの水を加えて~。」

 千春はラップを広げボウルの中身を移す、そして四角く包むと形を揃える。


「・・・よし。」

「出来ました~?」

「これを寝かせます。」

「おやすみなさ~い。」

「冷蔵庫で1時間~♪」

 モリアンのボケをスルーし魔導冷蔵庫に生地を入れると幼女達を見る。


「良い感じだね。」

「楽しそうね。」

 千春とサフィーナは楽し気に、そして真剣に果物を切るユラ達を温かい目で見守った。






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