パイを食べよう!届けよう!

「焼けたよー!」

「おぉ~やっと焼けたか~。」

「お昼になっちゃったね。」

「ちょうど良いじゃんお昼はパイで。」

 千春の声にこたえるJK達。


「ユラ、イーレン、イーナ熱いからね。」

「「「はーい!」」」

 3人は両手にミトンを付け楽し気にオーブンをのぞき込む、そして蓋を開けると美味しそうな香りが充満する。


「おいしそう!」

「きれーい。」

「おいしそうなのです!」

 サリナはその姿を見ながら微笑む、そして天板を引き表に出すと3人はパイが乗った天板を大事に手に取りテーブルに置く。


「上の段は何?」

 横で見ていた頼子が問いかける。


「こっちはお昼用のパイだよ。」

 ユラ達が取り出した丸く大きなパイではなく、パンの様な形状のパイが沢山並んでいた。


「こっちがミートパイ、こっちはレナが持ってきた色々な果物パイ、あとコレはいつものアレ。」

「・・・そろそろ怒られるよ?」

「大丈夫じゃん?」

 サリナが上の段を取り出しテーブルに置くとモリアンとナッテリーがお皿に盛りつける、盛り付け終わった皿はマクリとコラリー、ドロテが応接間に運んで行く。


「さ、私達も食べましょい。」

「良い匂いだねー!」

「手伝う事あるー?」

「飲み物出しておいてー。」

「了解!」

 青空達はスーパーで買って来たジュースをグラスに入れる。


「さて、誰が呼ぶ?」

「もう誰でも良いじゃん。」

「そうだったわ、アイトネー。『はーーーーーい!!!!!』」

 アイトネは千春の呼びかけに被せながら元気に現れた。


「見てた?」

『見てたわ!朝からずっと!』

「ヒマなん?」

『そんな事は無いわよ?エイダンちゃんの様子見てたり、タイキやイサムの様子も見てたもの♪』

「おぉ・・・ありがとうアイトネ。」

『良いのよ♪新しい料理食べられるし♪』

 ウキウキのアイトネはそう言うといつものソファーに座る。


「アイトネ、あっち大丈夫そう?」

『順調ね、明日には国民に話をするそうよ。』

「そっか、お父様達にも届けようかなぁ。」

 千春は次々焼かれるパイを思い出しながら呟く。


「千春、次が焼けたら私が持って行くわよ。」

 春恵は考えている千春に話しかける。


「おねがいしよっかな。」

「任せて頂戴♪」

 ガッツポーズで答える春恵に千春は微笑む、すると頼子が千春に問いかけて来る。


「ハルトさんとアリンさんもあっち呼ばれて行ったじゃん?」

「行ったね。」

「何してんだろ。」

「さぁ?」

「聞いてないんかい。」

「そう言うヨリもアリンに何も聞いてないの?」

「な~~~んも聞いてないよ。」

「同じじゃん。」

 千春と頼子は相方がジャシールに行った事を考える。


「あの2人はさー、まぁわかるじゃん?」

 2人の話を聞いていた麗奈が呟く。


「でもさ、ライリー君とフィンレー君は何で一緒に行ったわけ?」

「なんでだろ、王族男子が全員と第一騎士団の団長、副団長、魔導士団団長があっちに居るわけだよね。」

「大事な話してんじゃなーい?」

「こっちは大丈夫なわけ?ルーカスパパも行ってるよ?」

 ルーカスのファンギス家養女である美桜も心配そうに話す。


「アイトネ、何か知ってる?」

『ぼちぼち?』

「なにその曖昧な言い方、おしえて~♪」

『パイ持って行くときに聞いてみたら良いんじゃない?』

「あ、その手が有ったか、おかぁさん私も行く!」

「ハルママ!私も!」

「ウチも!エーデルさんとルーカスパパにパイ持って行く!」

「私もホーキンさんに持って行こ~♪」

 JK達はお昼からの予定を決めているとサフィーナが声を掛ける。


「次に焼けるパイは私がアイテムボックスに入れておきますから、今やけたパイ食べてくださいね。」

「おっと、そうだったわ。」

 サフィーナに言われ千春は席に座る、横では既にユラ達がモートを呼び、ユラ達はパイを一生懸命に切り分けながら小皿に乗せるとモートに渡していた。


「それでは!」

「「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」

 皆は色々なパイを手に取り口に入れ、笑顔が広がった。



-----------------------



「ではこの国はジブラロール公国に?」

 エンハルトはエイダン国王を見る。


「うむ、今の所は代表を決め統治させるが、後々には・・・。」

 エイダンは言葉を止めフィンレーを見る。


「フィンレーですか。」

「うむ、ユラとの婚姻も決まっておる、これから獣人の国民も増えるじゃろう、獣人が公爵夫人であれば人気もでろう。」

「ライリーは如何なさるので?」

 エンハルトはライリーを見ると、ライリーはニコッと微笑む。


「僕はハルト兄様のお手伝いをしますから。」

 ライリーは当たり前の様に話す。


「そう言う事じゃ、勿論今すぐの話ではない、しかし市井に話をする時にはこの件を言った方が良いじゃろ。」

 エイダンは一緒に話を聞いていた勇を見る。


「そうですね、獣人の抑止力としてもユラちゃんの存在は大きいでしょう。」

「既にジブラロールでは獣人の貴族が居る事、そして軍部の団長が獣人と言う事で落ち着いていますから。」

 勇に続き啓治も頷きながら話す。


「統治ベースは出来ています、ジブラロールでは問題無く動いていますからね。」

 和也も頷き答える。


「千春が言うには獣人に理解の在る貴族も居ると聞いています、たしかドーテル伯爵と言ってましたね。」

「うむ、その件も聞いておる、ドーテル伯爵には連絡を取っておるからのぅ、後日話をする予定じゃ。」

 エイダンはそう言うと一息つくようにお茶を口に含む、すると扉がノックされる。


コンコンコンコンコン!


「千春かな?」

「うちの子かもよ。」

「こんなノックの仕方するのはあの子達だろうね~。」

 思わず笑みがこぼれるパパさんズ、エイダンも笑っている、扉に手をやる宰相ルーカスも苦笑いだ、そして扉を開けると申し訳なさそうにする兵士と満面の笑みのJK達、そしてユラ達が立っていた。


「どうぞチハル王女殿下。」

「おじゃましまーす!」

「おじゃましまーす!」

「おつかれさまー!」

「お父さんがんばってるー!?」

「パパー食事もってきたよーん。」

 元気いっぱいに部屋へ雪崩れ込む聖女軍団。


「ユラがお菓子焼いたから持ってきましたー!」

「ユラとレンちゃんとイーナちゃんとおねーちゃんたちとつくったのー!」

 手に持ったバスケットをテーブルに置くと、皆はいそいそとテーブルに並べて行く。


「へぇ~パイか。」

「ミートパイとかアップルモドキパイとか色々あるよ!」

「こりゃ美味しそうだ。」

「パイと言うのか、初めて見た料理じゃな。」

 エイダンはマジマジとパイを見ていると、ユラ達がパイを切り分け小皿に乗せる。


「はい!おとうさま!」

「有難うユラ。」

「ライリー様どうぞ♪」

「有難うイーレン。」

「フィンレーおにいさまどうぞ!」

「ユラありがとう♪」

 聖女軍団は皆にパイを配ると、パパさんズやエイダン達はパイを食べ始める、皆はパイを食べながら笑みを浮かべる、その姿を見て満足げにしている聖女軍団。


「千春わざわざパイを届ける為に来たのかい?」

「んにゃ?パイだけじゃないよ?」

「へ?他に何か持ってきたの?」

「笑顔を届けに来たんだよ~ん♪」

 千春が言うと大樹はパパさんズやエイダン達を見る、そしてもう一度千春を見ると頭を撫でる。


「ありがとう。」

「えへへ~♪」







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