エイダン国王、ジャシール城制圧する!

「兵士が出て来た!」

「出て来たけど突っ込めないよねぇ。」

「そりゃドラゴンが上にも下にも居たらねぇ。」

 竜騎士団が千春達の周りを飛び、千春達は少し後ろから騎士団を見ていた。


「あ、なんか偉そうな人が出て来たよ。」

「なんか話してんねぇ。」

 青空と大愛が馬に乗った騎士を指差しながら話す。


「エイダン王様が何か話してるね。」

「アレじゃん?『やぁやぁ我こそはなんちゃらかんちゃらー!』ってヤツ。」

「名乗り上げの口上的な?」

「そ!それそれ!」

 暢気に見学をする千春達、パパさんズもゴンドラの窓から覗き込みながら様子を伺う。


「離れてったね。」

「戦いは無しか、よかったよかった。」

 ジャシール国の騎士や兵士は後退る、するとママドラは大きく口を開くと真上に炎を吐く、ジャシール国の騎士達は這う這うの体で逃げ出した。


「あ、話し合いで引いた訳じゃ無さそうだね。」

「超ビビってるじゃん。」

「いや、ビビるっしょアレ。」

「ママドラの存在感凄いもんねぇ。」

 騎士達が遠ざかりエイダン達は誰一人いない通りを進んで行った。



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「陛下!陛下ぁぁ!」

「何事か分かったか!?」

「はっ!ドラゴンの襲撃で御座います!」

「南のドラゴンか!」

「そう思われますが!人が乗り兵も連れてきております!」

「どういう事だ!?どこの兵だ!」

「じ・・・ジブラロールかと!」

 報告に来た騎士が膝を突き話す。


「ジブラロール・・・エイダンの糞野郎か!」

 忌々しいと言わんばかりに顔を崩すジャシール国王。


「スプレティ様!何事で御座いますか!?」

 ドレス姿の女性がジャシール国王に駆け寄る。


「エイダン・・・ジブラロールが攻めて来た。」

「何ですって!?」

「あの糞野郎、あの時の恨みか、今頃何故・・・。」

 ジャシール国王は怒りをあらわにし、騎士へ命令する。


「今すぐ打ち倒せ!」

「・・・はっ。」

 騎士は膝を突き床を見つめたまま答える、そして立ち上がると部屋を出て行った。



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「ルグラ殿。」

「皆まで言うな。」

 国王の部屋を出た騎士に若い騎士が声を掛けると、言葉を止める。


「しかし。」

「ドラゴンは何頭だ。」

「・・・16は確認しております。」

 ドラゴンの数を聞きルグラはニヤリと笑う。


「よし・・・よし!よし!よしっ!!!」

 嬉しそうに呟くルグラ。


「ルグラ殿?!」

「ブルジャ、騎士、兵士を全て引かせ身を隠せ。」

「宜しいので!?」

「宜しいも何も無いだろう、全軍で突撃してもドラゴン1頭すら倒せるわけがない。」

「しかし王の命令は?」

「聞いただろう、王とジブラロール王に何かしらの因縁があるようだ。」

「その様ですね。」

「王はタダでは済まないだろう、そして。」

「そして?」

「ジャシールはジブラロールの属国になるだろうな。」

 嬉しそうに話すルグラ。


「ルグラ殿・・・まさか。」

「あぁ!時を見てジブラロールに亡命しようと思ったが手間が省ける!俺はジブラロールにつくぞ。」

「そこまであの獣人を?」

「勿論だ!あんなに可愛い猫獣人を、外では奴隷だペットだと言う俺の気持ちが判るか?!ジブラロールでは結婚出来るのだ!」

「確かに・・・可愛いですよねテンシアちゃん。」

「お前の所の獣人も可愛いだろ。」

「・・・ルグラ殿・・・表では言わない約束ですよ(ボソッ)」

「もう隠す必要も無くなるぞ、獣人を迫害するのは古い貴族やイカレたヤツばかりだ、若い連中は隠れて可愛がっている、もうあの時代は古いのだ。」

「確かに・・・。」

 騎士2人はそう言うと頷く、そして急いで騎士の所まで行くとすぐに撤退指示をし身を隠した。



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「兵士が消えたな。」

 城を目前にしエイダンは呟く。


「はっ、騎士は降伏サインを出し撤退しております。」

「・・・人望が無いのぅ~スプレティの奴。」

 呆れた様に呟くエイダン、そして城の前に辿り着くが守りの兵士は見えず門も開かれたままだった。


「何じゃコレは。」

『あまりにもお粗末ねぇ、これでも国なのかしら?』

 エイダンを乗せたママドラ、そしてエイダンは開かれた城を見ながら呟いた。



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「江戸城無血開城かな?」

 ニコニコと笑みを浮かべながら無人の城門を見るパパさんズ。


「これはドラゴンから逃げたというより・・・。」

「あぁ、兵士が独断で撤退してるね、在りえないだろこんな状況。」

「王が撤退せよって言ったとは思えないよなぁ。」

「ほら、あそこ見てみろ、兵士が様子を見てるぞ。」

「お、本当だ、これほっといても反乱起きてたレベルじゃないか?人望無さすぎだろ国王。」

 呆れた様に話すパパさんズ、そしてJK達は城の周りを見回す。


「ビェリー、城の中に人居る?」

「結構おるばい?」

「んじゃ城吹っ飛ばすのはダメだねー。」

「ルプ、気配的にどこら辺に人集まってんの?」

「ん、風下だからな、魔力感知しているロイロなら分かるかもな。」

「ロイロー、人が集まってる所わかるー?」

『んー、あっちこっちに居るぞ。』

「集まってはないんだね。」

 千春達が話をしている間にジブラロール軍は城を囲む、そして竜騎士団は空と地上を、ママドラはドラゴニュートになるとエイダン、エーデル、ホーキン、そして騎士が数名城に入って行った。


「そこに隠れてる人間出てきなさい♪」

 城に入りママドラは壁の方を見ながら話しかける、すると侍女が現れる。


「お・・・お見逃し下さい!」

 両ひざをつき懇願する侍女。


「儂はエイダン・アル・ジブラロールじゃ、お主の身柄は保障する、スプレティの所まで案内せい。」

「はいっ!」

 侍女は声を裏返しながらも返事を返し立ち上がる、そして王の居ると思われる部屋へ案内した。



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「どういう事だ!兵士は!?騎士はどうした!?」

「分かりません!戦闘が行われた形跡は有りません!」

「逃げたのか!騎士は何をしておるのだ!」

 気が狂ったように叫ぶジャシール国王、返事を返す宰相は汗を拭きながらしどろもどろに答える。


「わ・・・分かりません。」

「分かりませんじゃないだろう!何のための騎士だ!王を守る為に命を捨てるのが騎士だろうが!」

「スプレティ様!敵が!侵入して来ました!」

 ドレス姿の女性が叫びながら部屋に入って来る、そしてその後ろからエイダンが当たり前の様に扉から出て来る。


「よぅ、スプレティ、久しぶりだな。」

「くっ・・・貴様、エイダン。」

「お前老けたな。」

「お前に言われたくないわ!何しに来た!」

「ん、昔お前が言っただろ?「覚えてろ」ってな、覚えてたから来てやったぞ。」

 普段の話し方ではなく、気さくに話しかけるエイダン。


「あぁ、言った、俺も覚えている。」

 そう言うとスプレティは剣を抜いた、それをみたエーデルは剣を手にし前に出ようとするがエイダンに止められる、そしてエイダンは腰の剣をスルリと抜く。


「決着をつけてやる!」

 怒りをあらわに叫ぶスプレティ、エイダンは片手を前に出すと、クイックイッと手招きし煽る。


ガキン!


 スプレティは下段からのすくい上げるような剣筋を見切ったように叩き落とすと、剣の腹で顔の側面に叩きつける。


バキッ!


「お見事で御座います。」

「ぼっちゃん生活のコヤツ相手に褒められてもなぁ。」

 顔の形が変わったスプレティは壁まで吹き飛び、ピクピクと痙攣していた。


「おぬしは?」

 エイダンは腰を抜かして怯えている女性を見る。


「お・・・王妃のスファス・・・でございます・・・。」

「ふむ、そこで大人しくしておれ、おい、宰相。」

「はぃぃぃぃ!」

「ジャシール国は終わりじゃ、城に残る者を集めろ。」

「え?」

 自分も殺されると思った宰相はキョトンとした顔で答える。


「一番広い部屋にでも集めろと言っておるんじゃ、わかるか?」

「はいぃぃぃ!今すぐにぃぃぃ!」

「逃げる事は出来ぬからのぉ~。」

 暢気に伝えるエイダン、宰相は四つん這いになりながら部屋を出て行くと急いで消えて行った。


「陛下、まだ息が有りますが。」

「うむ、コヤツはまだ用事があるのでな。」

 エーデルの言葉に答えると同時に声が聞こえる。


「エイダン!」

「ルクレツィア、お前は外で待ってろと言ったじゃろ。」

「あー!!!もう倒してるじゃない!!!」

「まだ生きておるぞ?」

「・・・虫の息よ。」

「トドメ刺すか?」

「・・・情けない姿ねぇ、もう良いわこんな奴。」

 顔が腫れ上がり壁際でピクピクと痙攣するスプレティを見たルクレツィアは溜息を吐く。


「エーデル、安全を確保し計画を進める、タイキ殿達の警護に回り案内してくれ。」

「はっ、陛下の護衛は?」

「ママドラ殿がついておる、それにココにもな。」

 襟首からピョコっと顔を出す蝙蝠を見てエーデルは頷く、そしてジャシール城はジブラロール軍に制圧された。







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