動き始める貴族!

「チハルちゃんなにしてるの~?」

 日葵の姉、陽菜は千春の部屋に入ると、モリアンを目の前に座らせ話をしていた千春に声を掛ける。


「いらっしゃいヒナねーちゃん。」

「・・・定着したわねその呼び方、で?何してるの?」

「モリーに彼氏ができるっぽいんですよ!」

「へぇ~そうなんだ。」

 興味なさげに相槌を打つ陽菜。


「ヒナねーちゃん良い人居ないの?」

「別にそういう目で見て無いからなぁ。」

「どういう目で見てんの?」

「別に、異世界を楽しんでるだけだもの~。」

「ヒナさんでしたらいくらでも見つかりそうですよね。」

 話が逸れたモリアンは陽菜を見ながら呟く。


「そうなの?」

「はいっ、チハルさん、王女殿下の知り合いでヒマリさんのお姉様ですよ?ブルーワグ次期王妃になるんですよ?」

「そう言われたらそうね。」

 陽菜は頷きながら千春の横に座る。


「別に男を探しに来たわけじゃないもの、私は仕事のネタ探ししてるだけだし。」

「そうなんですね~、ミオさん達は彼氏探しに来ましたよね、こっちに。」

「うん、私とヨリに彼氏出来たのバレてね。」

「ヒナさんなら選り取り見取りですよ!」

「・・・別に良いかなぁ、ま、いい出会いがあれば考えるよ。」

 本当に興味がないのか、すました顔で出されたお茶を飲みながら陽菜は答えた。



------------------



「参りましたお父様。」

「すまんな、そこに座ってくれ。」

 扉を開け、男に声を掛けたのはオーレン公爵令嬢フランシスだ。


「何かご用事でしょうか?」

「あー、そのー、なんだ、お前はチハル王女殿下と仲が良いだろう?」

「はい、仲良くさせて頂いております。」

「それでだ、チハル王女殿下の御友人が居るだろう?」

「はい、いらっしゃいますね。」

「その、ヒマリ嬢の姉、ヒナ嬢と言う女性は知っているか?」

「はい、お会いした事はまだありませんが。」

「そうか・・・その、ヒナ嬢は、あー・・・決まった方はおるのか?」

「いえ?その様な話は聞いておりません。」

「そうか、そうかそうか。」

 うんうんと頷くセベラム・オーレン、その姿をジト目で見るフランシス。


「お父様。」

「ん?なんだ?」

「何をお考えで?」

「・・・チハル王女殿下の御友人は皆手出し不要と厳命されておったのだ。」

「はい、それは承知しております。」

「しかしだ!」

 セベラムは拳を握り力強く話始める。


「ヒナ嬢に関しては出ておらぬのだ!」

「・・・で?」

「うむ!勿論近寄る者には厳重なチェックが入るだろう!しかし今までと違い動く事は出来るのだ!」

「・・・はぁ、その件はお母様にお話しされましたか?」

「ベニファには話しをした、羽目を外さなければと念押しされたがな。」

「でしょうね、その確認だけで御座いますか?」

「・・・フランシス、お茶会でヒナ嬢を呼ぶ事は出来ぬか?」

「はぁ~~~~~・・・。」

 フランシスは思わず深いため息を吐く。


「まだお会いした事が無いと言いましたが。」

「そ・・・そうだったな、フランシス、チハル王女殿下の所へご挨拶に行かないか?」

「用事が御座いません。」

「・・・そう言わずに・・・な?」

「無茶を言わないで下さいまし!いくらお父様でも怒りますわよ?!」

「すまん!いや!悪気はないんじゃ!ほんとうだ!」

 珍しく声を荒げるフランシスを見て手を振るセベラム、すると扉が開く。


「如何なさいましたの?」

「ベニファ!いや!なんでもないぞ?!」

「まったく、外まで聞こえてましたわよ。」

 呆れた顔で言うベニファはセベラムを見る、そしてフランシスに目をやり話始める。


「フランシス、登城します準備しなさい。」

「え?ご挨拶に行かれるのですか?」

「えぇ、マルグリット王妃殿下から呼ばれてるのよ、あなたはチハル王女殿下にご挨拶してもらえるかしら?」

「ベニファ!良いのか!?」

「わたくしもオーレン家の人間です、オーレン家の為に動きますわ、それに変な者を呼ぶつもりは無いのでしょう?」

「当たり前だ、そんな者を呼べば公爵家とはいえお取り潰しもあり得るからな。」

「その人選はあなたにお任せします、フランシスはご挨拶しておきなさいな。」

「はい、お母様。」

 フランシスは返事をするとベニファと一緒に部屋を出る、セベラムはその2人の姿を見送ると机に移動し書類を見る。


「ロデスは婚約が決まっておる・・・フスネはまだ決まっておらぬ・・・次男だが歳も近い、出来ればオーレン家から選んでもらいたいが。」

 長男と次男の名前を呟きながら書類を続けて読む。


「コレート伯爵家・・・ディオクロ伯爵家は呼ぶとして、あとは・・・。」

 懇意にしている貴族を見ながらブツブツと呟くセベラムはお茶会に呼ぶ者を調べ始めた。



------------------



「は~い♪」

「いらっしゃいアルデア♪」

「あら、御機嫌ね、何か良い事あったの?メグ。」

「フフッ、コレ見て~♪」

 少女の様にウキウキで薬指を見せるマルグリット。


「見てたわよ~♪」

「え~覗き見してたの?」

「ちょっとだけよ、直ぐに目を閉じさせたわ。」

 アルデアはシャンデリアの上にいる蝙蝠をチラッと見る。


「朝食も美味しそうだったわね。」

「ヒヤシチュウカって言う料理らしいわ、とっても美味しかったわよ、サリナがレシピを書いてたから、王宮の食堂でも食べれるようになると思うわ。」

「あら、それは良いわね、今度食べてみようかしら♪」

「チハルに言えば作ってくれるわよ?」

「いつでも食べれるなら食堂で良いわよ。」

「それで?何か用があった?」

「貴族達が色々動いてるわよ~。」

「あら、何かしら。」

「ヒマリのお姉さん居るでしょ。」

「・・・もう動き出したの?」

「えぇ、オーレン卿が動いたわね。」

 当たり前の様にソファーに座るアルデア、マルグリットの侍女エリーナも当たり前の様にお茶を淹れる。


「確かあそこの長男は婚約決まってたわよね。」

「次男はまだ居ないみたいね。」

「オーレン卿の息子なら問題無いわねぇ。」

「他にも動いている貴族はコレよ。」

 アルデアはメモをマルグリットに渡すとマルグリットはメモに目を通す。


「・・・。」

 ペンを取り出しいくつかの名前を消していく。


「それは問題ありの貴族?」

「えぇ、ちょうどベニファを呼んでる所なの、話しておくわ。」

「フランシスはチハルの所に行くみたいだから私はあっちで遊んで来るわ♪」

「いつもありがとう、アルデア。」

「いいえ~♪楽しく生活させて貰ってるもの♪」

 2人は笑い合うとアルデアは姿を消した。


「それじゃ準備しましょうかしらね。」

 マルグリットはそう言うと立ち上がりベニファ・オーレンを迎える準備をした。







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