石田と南の朝!
「・・・どこ?」
むくりと起き上がる南は周りを見渡す、天蓋付きのキングサイズよりも大きなベッド、そして横には石田が寝ていた。
「・・・あ、そっか、異世界だ。」
「んん~・・・すぅすぅ。」
気持ちよさそうに寝息を立てる石田を見て微笑む南はベッドから降りる、シルクの様な手触りのナイトガウンを着た南は「お姫様みたい。」とポツリと呟き寝室の扉を開ける。
「おはようございますアヤネ様。」
お辞儀をする侍女を見て一瞬驚く南。
「あ・・・おはようございます。」
「良くお休みになられましたか?」
「はい、とても。」
「お茶をお入れ致しますので先にお着換えを。」
侍女はそう言うと横に立つ2人の侍女がニッコリ微笑み別の部屋へ案内する。
「どうぞこちらへ。」
「は・・・はい。」
部屋を移動すると大きなクローゼットが並びトルソーには動き易そうな服が幾つか掛けられていた。
「本日のご予定ですが、まずは学園の見学、学園が終わりましたら王都探索、昼食後は王宮でご休憩して頂き夕方よりチハル王女殿下のパーティーにご出席となっております。」
「・・・はい。」
「何かご要望等は御座いますか?」
「いえ。」
南は直ぐに答えると侍女は南の服を脱がせる。
「あ!自分で脱げますから!」
南が言うと侍女はニコッと笑みを浮かべそのまま南の服を脱がせた。
「午前はこちらの服になりますが、色は如何なさいますか?」
ずらりと並べられた服を見せる侍女、南はシンプルな紺色のワンピースを選ぶと着替えが始まった。
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「・・・あれ?何処だここ!?」
目が覚めた石田はガバッと起き上がりキョロキョロと見まわす。
「え?!・・・・ええええ?!」
石田は混乱したまま声を上げると扉が開く。
「おはよう御座いますケンタ様。」
「・・・おはようございます・・・どこですここ。」
「王宮の客間で御座います。」
老執事はニッコリ微笑み頭を下げながら答える。
「・・・あー!そうだ!そうだそうだ!・・・えっと南先生・・・アヤネさんは?」
「別室でお着換え中で御座います、ケンタ様もお着換えされますか?」
「あ、はい、えっと・・・はい。」
「それではこちらに。」
寝室の横にある部屋に連れていかれる石田、そして侍女達に服を脱がされる。
「うわぁ!自分で脱げますから!」
石田はそう言うと急いで寝間着を脱ぐ。
「本日はこちらの服にお着換え下さい。」
「これ・・・ですか?」
「はい。」
ニコッと笑みを浮かべる老執事に言われ侍女達が手にする服に着替えると応接間に移動する。
「はぁ・・・びっくりしたぁ。」
「ケンタ様、お茶で御座います、お食事は如何なさいますか?」
石田は老執事に言われスマホを見ると既に8時を過ぎていた。
「あ~・・・どうしようかな。」
ぽつりと呟いていると南が部屋から出て来る。
「あ、おはようございますケンタさん。」
「・・・。」
ポカンとした顔で南を見る石田。」
「どうしました?」
「綺麗です。」
「・・・やめてください、恥ずかしいじゃない。」
顔を赤くする南、石田は南を見続ける。
「ケンタさん朝食どうします?昨日結構呑んでましたけど。」
「酒は大丈夫、言う程吞んでませんし、朝食どうしましょうか。」
「言えば持ってきてくれるそうですよ?」
「あー、何が有るのかな、俺朝飯あんまり食べないんですよ。」
「ダメですよそんな不規則な生活したら。」
「・・・はい。」
素直に謝る石田にクスクスと笑みを浮かべる南。
「それではチハル王女殿下が良く朝食でお食べになる物をお持ち致しましょうか?」
「はい、お願いします。」
「はい、俺もそれでお願いします。」
2人はそう言うと老執事は侍女に指示する、そして2人はしばらくお茶を飲みながら異世界の話を始めた。
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「夢じゃないんですよねぇ。」
「夢だったら昨日のプロポーズ無くなっちゃいます。」
南は指に嵌められた指輪を愛おしく指でなぞる。
「そうだった・・・そうなんですよね、うちの両親にも挨拶行かなきゃだなぁ。」
「私の方にもお願いしますね。」
「勿論です!」
「学校にはいつ言います?」
「そうですね、もう確定事項なので週明けに教頭へ報告します。」
「私も一緒に行きますから。」
「・・・大丈夫ですよ?」
「いえ、2人の事ですし。」
「そうですね、お願いします。」
2人はこれからの事を話しているとノックが鳴り食事が運ばれてくる。
「お待たせいたしました。」
侍女がお辞儀をしながらカートを押してくる、そして並べられる朝食を見て2人は目を見開く。
「ハンバーガーにサンドイッチ!?」
「こっちはコーンスープですね。」
「カツサンドに玉子サンド・・・これはフルーツサンド?」
「美味しそう♪」
「いや、確かに美味しそうなんですが・・・こんなに食べれないっすよ。」
呆れる様に呟く石田、南はふと何かを思い出したように手を広げる。
「アイテムボックス。」
ぽわっと空中に開く黒い窓。
「何ですかソレ!?」
「昨日教えてもらったアイテムボックスって言う魔法なんです、この中に入れたら時間停止効果があるらしくて、食事も出来たてのまま保管出来るんですって。」
「マジっすか、凄いですね、こっちだとそんな魔法があるんですね。」
「藤井さん曰く、この魔法が使える人は4人だけらしいです、私で5人目なんですって、あとは女神様も使えるって言ってましたね。」
「そりゃ凄い!誰が使えるんです?」
「チハルちゃん、侍女のサフィーナちゃん、後はユーリンさんって言う冒険者の人、もう一人はヴァンパイアのアルデアさんだったかしら。」
「ヴァンパイア!?」
「えぇ、よく血を飲みに来るらしいですよ?」
「・・・こわっ。」
「藤井さんが言うには滅茶苦茶可愛いらしいです。」
ニコッと笑みを浮かべながら言う南に石田は聞いてはいけない質問をしてしまう。
「その魔法の条件とか有るんですか?」
「・・・。」
「どうしました?」
「さ、朝ごはん食べましょうか。」
「あ、そうでした!頂きましょう!」
2人はサンドイッチを手に取るとパクリと口に入れ目を見開く。
「美味しい!」
「美味い!凄いなこのボリューム!」
「コレも藤井さんが教えたんですね。」
南がポツリと呟くと老執事が嬉しそうに頷く。
「ハンバーガーも凄いなぁ。」
「ケンタさん食べれます?」
「食べれそうですね、本当に美味い。」
バクバクと食べる石田の姿を見ながらクスクスと笑う南。
「・・・で、さっきの話なんですけど、魔法の条件って。」
「・・・それ次聞いたらグーで殴りますね。」
「え?」
「知らない方が幸せな事も世の中にはあるんですよ?」
「・・・はい。」
「ケンタさん、このカツサンド半分こしません?色々食べてみたいので。」
「・・・はい!勿論です!大丈夫です!」
ニッコリ笑うが目が笑っていない南を見て思わず声を上ずらせる石田、その姿を見て微笑む南、そして2人は宰相ルーカスが挨拶に来るまでのんびり朝食を取った。
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