冒険者ギルマスのレオさん!
「姫桜満開じゃん。」
王都から見える大きな桜を見上げながらユーリンが呟く。
「ってことはぁ~。」
「宴会してる?」
「かもね。」
シャルルも一緒に姫桜を見上げながら話す。
「ユーリン!シャルル!ギルマスが呼んでるぞ!」
「へ~い。」
「はーい。」
2人は冒険者ギルドの中に入ると受付の横を通り応接間に入る。
「良く来てくれた、狼の牙。」
「なんっすか?」
「また依頼?」
「最近指名多くないかな?」
「報酬良いから俺は有難いがな。」
「面倒も多いけどな。」
皆はギルマスの前でも言いたい事を話す。
「お前ら・・・俺の前じゃそう言うのは言わないものだぞ?」
「今更じゃーん?」
「それで?何なんですか?ギルマス。」
ユーリンとシャルルは軽ーく流し話を促す。
「コレだ、ギルドからの指名依頼だ。」
「これっすか。」
リーダーのパトリスは紙を受け取り目を通す。
「・・・マジっすか?」
「なになになに?」
「面倒な依頼なの?」
「いや、簡単すぎる、こんなので指名っすか?」
「・・・あぁ、少し問題があってな。」
真面目な顔で話す冒険者ギルドのギルマスレオは話を続ける。
「場所が面倒なんだ。」
「え?馬車で1小月、そこから3日ほど歩きでココスの実を採取ですよね?鉄級・・・いや、銅級でも出来ますよね?」
「途中に結構ヤバい魔物でも出るんじゃねぇか?」
パトリスが依頼を読み上げるとガーランがレオに問いかける。
「いや、出たとしてもオークくらいだ、大きな集落もない。」
「それじゃ何故俺達に?」
「沢山必要だとか?私のアイテムボックス必要とか。」
「必要数量書いて無いの?」
シャルルはパトリスに問いかけるとパトリスは紙を見る。
「籠1つ分だなぁ。」
「え~意味わかんない、報酬金額は?」
「金貨2枚・・・マジか。」
「え?そんなに?」
「ギルマス!何か裏があるんでしょう?」
狼の牙は皆でギルマスを見ると、レオは口を開く。
「・・・飯がな。」
「飯?」
「あぁ、皆王都から遠くに行きたがらないんだ。」
「「「「「・・・。」」」」」
「分かるだろ?王都の飯は美味い!」
「美味しいよね。」
「うん、めっちゃ美味しい、でも領都でも食べれるじゃん?最近。」
「王都には負けるけどな。」
「飯のせいで遠出しないから俺達にお願いすると?」
パトリスが言うと頷くレオ。
「私達の食事って私が保管してるからいつでも美味しいもんね♪」
「ソレなんだよ。」
「へ?」
「冒険者達は遠征すると何を食べる?」
「そりゃ・・・携帯食料だよね?」
「あぁ、固いパンに干し肉や塩漬けの保存食だ。」
「現地調達すれば良いじゃん?」
「冒険者が全員料理を作れるわけじゃ無いだろう?」
「そりゃそうだ。」
ガーランは頷き返す。
「ユーリン、チハル王女殿下にもらったアレは?」
「ん?・・・コレかな?」
ユーリンはパトリスに言われアイテムボックスから小袋や缶詰を幾つか取り出す。
「何だソレは。」
「こっちは玉子スープ、こっちは魚の照り焼き、こっちは焼き鳥ですね、シャルルお湯良い?」
カップを取り出すユーリン、そのカップにシャルルがお湯を魔法で作り出し流し入れる。
「で、コレ入れまーす。」
玉子スープのフリーズドライを入れると軽くスプーンでかき混ぜるとレオに渡す。
「はいどうぞ。」
「・・・?」
「飲んでみてください。」
「・・・!?」
「美味しいでしょ~♪」
「何だこれは!?」
「チハルちゃんから貰った携帯食ですよ。」
「それは?!」
「こっちですか?缶詰と言って料理をこの缶に入れて密封して腐らない様にしてるらしいです。」
ユーリンはそう言うと缶詰をパカッと開けてレオに渡す。
「食べて良いですよ、無くなったらチハルちゃんがくれるので。」
「・・・。」
レオはマジマジと缶詰の中身を見る、そして1つ口に入れる。
「美味すぎるだろう!」
「あははは、ですよねー。」
「お前達こんなの食べてたのか?!」
「アイテムボックスの食事が無くなったら食べてますね。」
シャルルはレオにそう答えると男達もウンウンと頷く。
「これは!作り方は分かるのか?!」
「チハルちゃん曰くですけど~・・・ムカイ領の領主様と側近の方が開発中だとかなんとか言ってましたよ。」
シレっと答えるユーリンにレオは唸る。
「ユーリン、これを王都で作れるか・・・いや、作っても良いかチハル王女殿下に聞く事は出来るか!?」
「えぇ~?姫桜見たでしょー?多分何かやってるから無理じゃなーい?」
「ユーリン、チハルちゃんの所に行く口実出来るんじゃない?(ボソッ)」
「あ、そうだね。(コソッ)」
「分かりました、冒険者ギルド、ギルマスからの依頼でチハル王女殿下に聞いてきますね。」
「・・・くっ、しかし・・・仕方ない、ソレで構わないから聞いてくれ。」
「了解で~す!で、その依頼どうします?」
「少しくらい遅れても構わん、ずっと依頼が受けてもらえない案件だ。」
「はーい、それじゃ王城に行って来ますねー。」
「私も行こーっと♪」
ユーリンとシャルルはそう言うと立ち上がる。
「俺達はどうする?」
「どうせユーリン達は明日まで帰って来ねぇだろ、レウピィの食堂でのんびりしようぜ。」
「だなぁ~。」
男3人はそう言うと立ち上がる。
「お前達は行かないのか?」
「呼ばれてないのに行けないっすよ。」
「ユーリン達は普通に行くけどな。」
「行けば歓迎してくれるけれど、そう行ける場所じゃ無いっしょ?」
「それに行くとかなりの確率で王族の方が一緒なんっすよ。」
「いろんな意味で怖い場所だからなぁ。」
「食堂で飯食ってた方が落ち着くわ。」
レオの言葉に返す男達はそう言うと部屋を出て行く。
「それじゃギルマス、聞いてきますねー♪」
「それでは失礼しまーす。」
「頼んだぞ!今後冒険者ギルドの死活問題にも関わるからな!?」
「はいは~い善処しまーす。」
ケラケラと笑いながらユーリンとシャルルは部屋を出て行った。
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「さてと、シャルル裏行こうか。」
「はいはーい。」
2人は裏道を通り人通りの無い場所へ移動する、そしてユーリンは杖を2本取り出す。
「ほい。」
「ありがと。」
2人は杖に跨ると地面を蹴る。
「ほんっと便利よねコレ。」
「うんうんオークションで300枚超えらしいよ?この空飛ぶ箒♪」
2人は慣れた様子で空を飛び王宮へ向かう、そして姫桜まで来ると地面に降りる。
「チハルちゃん居るかな?」
「わぁ、貴族が沢山居る!」
「アレじゃない?姫桜の。」
「あー告白かぁ。」
他人事の様に話しながら貴族を横目に千春の部屋へ向かう2人、貴族達は急に空から降りて来た冒険者2人に驚きながらもモリアンの指示を聞き並ぶ。
「モリーちゃんチハルちゃん居る?」
「はぁはぁ・・・はい・・・先程帰って来ました。」
「ありがと♪」
「がんばれ~♪」
モリアンを応援しつつ部屋を覗くと千春達はソファーで寛いでいた。
「お?!ユーリンどうしたの?」
「やっほ♪今大丈夫?」
「うん、なに?あれ?野郎共は?」
「おいて来た、ちょっと聞きたい事あってね?」
「ん、取り敢えず入ってよ。」
千春は2人を部屋に入れるとサフィーナがお茶を淹れる。
「有難うございます。」
シャルルはサフィーナに礼を言うとお茶を口にする。
「で?」
「よく貰ってる携帯食あったでしょ?」
「あーフリーズドライとか缶詰ね。」
「アレをギルマスに見せたのよ。」
「やっと?」
「いや、見せるタイミング無かったからさ。」
「で?どんな反応だった?」
「もう食い付く食い付く、是非にでも作り方教えて欲しいって。」
「フリーズドライは・・・レナ、アレ出来た?」
「概ね出来たよ、完全に真空に出来なかったけど乾燥は出来たから。」
「おぉー、商業化出来そう?」
「大型なのはまだ無理かな、爆発しても良いなら作れるけど。」
「いやダメでしょ。」
麗奈はアハハと笑いながら影収納から電子レンジの様な箱を取り出す。
「これが試作6号機だよ。」
「おぉ、電子レンジみたい。」
「まぁね、風魔法で空気抜いて氷魔法で凍結、こっちはタイマーだね。」
「結構デカいけど。」
「中の空気無くなるから強度が必要なんだよね、何号機だったかなぁいきなり潰れたからね。」
「こわっ!これ大丈夫なの!?」
「イケるイケる、何回か作ったから。」
そう言うと麗奈はフリーズドライを取り出す。
「おぉー!しっかりフリーズドライじゃん!」
「すごいね、レナこんなの作ってたんだ。」
日葵と花音は手に取り驚く。
「また金持ちになるなぁレナ。」
「作るのが楽しいだけなんだけどね。」
JK達はレナ作フリーズドライを見ながら楽し気に話す。
「チハルちゃん缶詰は作れない?」
「あ、それはもうすぐパパさんズが商品化すると思うよ、ねぇヨリ。」
「うん、ただパカッて開けるのはまだ無理っぽいね、缶切りが必要だよ。」
「十分じゃね?」
「まぁね。」
「ユーリン、缶詰は冒険者の非常食メインで作るから缶詰の方は後日話行くよ。」
「フリーズドライは?」
「レナ次第?」
千春は麗奈を見るとニヤっと笑う。
「冒険者ギルドに卸すだけならいつでもOKだよ。」
「本当!?」
「凄い!」
ユーリンとシャルルは嬉しそうに答える。
「ユーリンとシャルル今日の夜ひま?」
「ひま!」
「ひまです!」
千春の問いかけに食い気味に答える2人。
「今日クリパするからどう?」
「クリパ?」
「なにそれ?」
「んっと、ケーキ食べてチキン食べて遊ぶパーティー。」
「なにそれ楽しそう。」
「是非!」
「はい決まりね、野郎共はどうする?」
「ほっといていいよ。」
「うん、チハルちゃん王族の方も来るんでしょ?」
「来るね。」
「それじゃアイツらは放置で。」
「あははは。」
即答するユーリンとシャルルに苦笑いで返す千春は、お持ち帰りした朝マフィンを2人に分けのんびりとした朝を過ごした。
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