スキピのプレゼントは手作りで!②

「ヒマリ、まだやってたの?」

 ブルーワグ王宮にある弓削家宮一室で母の梅乃は日葵に声を掛ける。


「ん?・・・げ!こんな時間!?」

 スマホで音楽を聴きながら刺繍をしていた日葵は時間を見て驚く。


「ふわぁぁ、ヒマリおわったのぉ?」

 くぅくぅは日葵の作った籠のベッドから起き上がり問いかける。


「まだだよー、今日はこれくらいにしとくかなぁ。」

「そうしなさい、まだ時間あるんでしょう?」

「ん、そうするー・・・ふわぁぁ。」

 伸びをしながら欠伸する日葵、つられてクゥクゥももう一度欠伸をする。


「お父さんはぁ?」

「陛下と宰相さんと話してるわよ。」

「こんな時間に?」

「ジブラロールの成功例が有るから細かい事まで話してるみたいね。」

「お母さんの方は?」

「ブルーワグ支店の事?順調よ、もう貴族夫人からお茶会誘われ過ぎて大忙し!」

「流石支店長だね。」

「ぜ~んぶメグさんとトモミ達の成果よ。」

 フフッと笑みを浮かべソファーに腰掛ける梅乃。


「綺麗ね。」

 梅乃は刺繍を手に取り優しく触る。


「もう少し細かい所も手を付けたいんだよね。」

「ココとか?」

「そ、ブルーワグ国の紋章。」

「紋章と言えば・・・アレはどうなったの?」

「宝石の方?1人3個までってルール作ったよ、それに1年で効果切れるし。」

「誰に渡すの?」

「お父様とお父さん、あとはハチェットさんと話ししたんだけどルペタにあげることにした。」

「あら、ハチェット君にあげないの?」

「うん、気持ちだけって言われちゃった。」

「そうねぇ、これからの事を考えると陛下とお父さんの方が良いかもね。」

 梅乃は考えながら呟く。


「まだ危ない事考えてる貴族もいるっぽいじゃん?」

「それは大丈夫らしいわよ、既に名前はリスト化されて泳がせてるらしいから。」

「マ?」

「えぇ、この前イーナちゃんとユラちゃんが遊びに来たでしょう?」

「来たねー。」

「その時イーナちゃんが蝙蝠を撒いたらしいわ。」

「あー、アルデアちゃんかぁ、流石だね。」

「いつも血を貰ってるお礼って笑ってたわよ。」

「ちょびっとじゃん、気にしなくて良いのに・・・助かるけど。」

 2人が話をしているとコロソが顔を出す。


「ヒマリさん?」

「コロソ、どうしたの?」

「いえ、そろそろ御就寝の時間だなーって。」

「あ、そうだったわ、明日も学校だし!」

「ヒマリさーんホットミルク飲みますー?」

「のむー!クゥクゥも飲む?」

「オレンジ100%が良いわ~♪」

「はーい、ウメノ様も如何ですか?」

「私はコーヒーにするわ。」

「えー寝れなくなるよ?」

「まだ仕事があるのよ。」

「マジで?働きすぎじゃん。」

「そんなこと無いわよ、ほら、さっさと飲んで寝なさい。」

「はーい、行こ!クゥクゥ。」

 ソファーから立ち上がり部屋を移動する日葵とクゥクゥ、梅乃はクスクスと笑いながら2人を見送りもう一度刺繍を優しく撫でると梅乃もコーヒーを飲みに部屋を出た。



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「っかぁぁ!やっぱりコレじゃなぁ!」

「俺はやっぱりこっちだな。」

 人型に変身したロイロ、獣人姿のルプはいつものテーブルで酒を呑む。


「吾輩はジブラロール酒が好きにゃ~♪」

「わっちは断然日本酒ばい♪」

「僕は果実酒が好きです・・・にゃ。」

 猫又三珠とビェリー、デンハもチョコンと座り酒を呑む。


「あんたら飲み過ぎじゃん?」

「いつもの事じゃん。」

 千春が言うと頼子はケラケラと笑いながら答える。


「チハルさん手止まってますよ~?」

「・・・休憩!」

「モリーちゃんこれ文字あってる?」

「えーっと・・・今の所あってます。」

 モリアンはハンドタオルの刺繍を見て答える。


「千春どう?出来そう?」

「んー!」

 千春は刺繍を春恵に見せる。


「ジブラロールの国旗は?」

「まだ・・・。」

「これ・・・マジでやんの?」

 頼子はスマホで撮った国旗の画像を見せる。


「・・・国旗やめとくか。」

「こっちの紋章だけでよくね?」

「まだ時間は有るんでしょう?」

「あるけどぉ。」

 刺繍を見ながら千春は答える。


「お母さんが手伝う?」

「んにゃ!自分でやる!」

「私の方は魔導士団の軍旗だからちょっとシンプルなんだよね。」

「ハルトは王子だからなぁ。」

「チハル、そろそろ良い時間よ?」

 サフィーナが壁に掛けられた時計を見ながら言う。


「うぉっ!?マジか!」

「やべ、お風呂入って無いじゃん。」

「なー!お風呂わすれてたぁ!」

「お風呂入ってねるべか?」

「そだねぇ、明日もあるし今日はこれくらいで勘弁してやらぁ!」

「王女殿下が口悪いですぅ。」

「ほら、湯浴み行きますよ。」

「「はーい。」」

「お母さんもはーいろっと。」

「アイトネも入るかな。」

『入るー♪』

「普通に来ますねアイトネ様、見てました?」

『見てたわよ♪魔法でやれば早いのにって思いながら。』

「それはちゃうねん。」

「ちゃうねんな~。」

 千春と頼子はアイトネに答えながら寝室を通り浴室に向かう。


「ねぇアイトネ、刺繍で書いた紋章もアレの効果出るの?」

『魔力の通す染料で作った糸で綺麗に書けたら効果出るわよ♪』

「あ、そう言うのが要るんだ。」

『いる?作るわよ?』

「いや、聞いただけだし綺麗に刺繍出来る自信無いから。」

 服を脱ぎながら答える千春。


「アイトネ様、魔法でやればって言ってましたけど、魔法で刺繍出来るんですか?」

『魔法を映してその通りに糸を通せば早いわよ?』

「魔法の下書きって事?」

『簡単に言うとそうね♪』

「へぇ・・・それくらいならセーフかな?」

「私判定としてはセーフかな!」

『今日はもうやらないんでしょ?』

「うん、今日はもう疲れたよ、チクチクチクチクチクチク・・・ア゛ァァァ!ってなった。」

「わかる・・・。」

「ヒマリ凄いよね、アレを黙々とやってんだもん。」

 2人は体を洗い湯船に浸かるとアイトネと春恵も湯船に浸かる。


「はぁ~~~~きもちいい。」

「千春はお菓子作らないの?」

「何の?」

「プレゼント。」

「えー、お菓子とかいつも作ってるもん。」

「特別なお菓子とか。」

「例えば?」

「・・・なんか、こう、クリスマス的な。」

「具体的にぷりーず!」

「国旗入ったクッキーとか!」

「・・・イイナそれ。」

「あ、作れるんだ。」

「うん、キッチンペーパーにチョコで絵描いて貼り付けるだけ。」

「へぇぇ!そんな事出来るんだ。」

「手書きだから数はそんなに作れないけどね。」

『型作るわよ?』

「へ?作れるの?」

『今チハルが想像したチョコを張り付ける型なら出来るわよ♪』

「・・・うん、それは助かるなぁ・・・いや、それダーサンにお願いして作ってもらえるかも。」

「ジブラロール国旗クッキー?」

「うん。」

「また1つジブラロールのお菓子が増えると。」

「またって何があるんよ。」

「有るじゃん、ドラゴン温泉饅頭とじぶらもん。」

「あったな、最近食べてないなぁ。」

「明日食べに行こう。」

「うん、じぶらもん久しぶり食べたいわ。」

 そして4人はのんびりとお風呂を堪能しながら楽し気に明日の事を話した。





 


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