クアータス国でロコモコッ!

「聖女様、此方はどちらに。」

「フルールちゃん、私の事はチハルでいいよ。」

「いえ!そんな滅相も無いです聖女様!」

「はい、聖女様禁止~♪」

「・・・チハル様。」

「様禁止~♪」

「・・・チハル・・・さん。」

「まぁよかろう!その卵はそこに置いてもらえる?」

「はい!」

 フルールは卵を器に入れテーブルに置く。


「千春、目玉焼き何個?」

「んー人数分って思ったけど何人いるんだっけ?」

「えっと・・・20人は軽く居るね。」

「おっけ、ヨリこっちやってて、私が目玉焼き作るよ。」

「おっけ~♪」

 千春はハンバーグの成形を頼子に任せると卵をフライパンに次々と落としていく。


「すごいです!」

 フルールは片手で次々に卵を割る千春に驚く。


「慣れだよ~。」

 フルールは千春に卵を渡すと千春は目玉焼きの量産を始めた。


「チハル、マンゴースライムゼリー出来たよ、あとは冷やすだけ~。」

 美桜は器に入れたゼリーを並べて伝える。


「はーい、シャルル氷魔法使えたよね?」

「はい!使えまーす!」

「冷やしたらユーリン保管しておいてー。」

「了解!」

 次々と作られる料理とデザートに騎士団団長レスク、貴族、そして料理人は驚く。


「聖女チハル様、何かお手伝いを。」

「ムーサさんも聖女禁止ね。」

「・・・チハルさm」

「様も禁止~♪」

「・・・しかし!」

「だーめ♪」

「チハルさん・・・。」

「ん!それじゃそこの鳥肉にこの調味料混ぜ込んでもらえます?」

「はい、これは?」

「タンドリーチキンだよ、鶏じゃないけど。」

 器に入った調味料を渡すとムーサは鳥肉に混ぜる。


「チハル、こっちカレー粉あんの?」

「いや、ジブラロールで作ったカレー粉、あっちで作れるならこっちも作れるかなってね。」

「ヨーグルトとかは?」

「あ、これヨーグルト使わないレシピだから。」

「へー、そうなんだ。」

 麗奈は野菜を切り刻み、ドラゴンフルーツと混ぜ合わせサラダを作りながら話す。


「レスクさん、この国ってエビとか食べます?」

「はい、南の領地で魚介は獲れますので。」

「そっか、それじゃエビのカクテルも作るかな。」

「カクテルソース作れんの?」

 エビと聞き大愛が興味深々に聞いて来る。


「うん、なんちゃってウスターにレモン絞って胡椒と辛味入れたらOK。」

「ほほー、分量教えて、うち作るわ。」

「ほいよ。」

 千春は大愛にレシピを教えつつ目玉焼きの量産は止まらない。


「ハンバーグ焼くよー!」

 頼子は千春に言うとハンバーグを焼き始めた。



-----------------



「あとは盛り付けだね。」

「お手伝いさせて頂いても?」

 料理人達が声を掛けて来る。


「お願いしまーす、ここにご飯を乗せて、このプレートにハンバーグと目玉焼き、その横にタンドリーチキンを置いて下さい。」

 ワンプレートの料理を盛り付け見本を見せる千春。


「これは何と言う料理ですか?」

「ロコモコだよ。」

「ろこもこ?何か意味が?」

「・・・さぁ?」

「知らんのかーい。」

「ヨリ知ってんの?」

「知らぬ!」

「チハル、このソースって何?」

「なんちゃってデミグラスだよ。」

「またなんちゃって系か。」

「だってウスターソースがなんちゃってだもん。」

「ここら辺もこっちで作れるようになったらいいねぇ。」

「作れるよ、ただものすっっっっごく時間掛かるだけだし。」

「チハル様、その、作り方を教えて頂く事は?」

「えっと・・・料理長さん作るの?」

「出来れば覚えたいと。」

 料理長は千春をガン見しながら訴えて来る。


「サフィー、ウスターソースのレシピ翻訳した?」

「いえ、シャリーちゃんしか知りませんよ。」

「あぁ・・・コピー取ってないんだよなぁ、今度来る時持ってきますよ。」

「有難うございます!私はマイスと申します。」

「はーいマイスさんですねー。」

 ロコモコにソースをかけながら答える千春。


「はい!出来ました!ロコモコプレート!」

「こっちも出来てるよー。」

「こっちもー!」

 ドラゴンフルーツサラダにマンゴースライムゼリー、そして日葵や侍女達が作ったフライドポテトやシュリンプカクテルを並べる。


「おぉー南国料理っぽい。」

「ぽいぽい。」

「いいねー。」

「サリナ、みんなに配ってくれる?」

「はい。」

 サリナやモリアンが他の侍女達に渡すと、席に座る男性陣の前に並べて行く。


「貴族さん達も食べてくださいね、牢屋でちゃんとご飯貰ってました?」

「・・・いえ。」

「マジですか・・・いきなりこんなの食べたら胃がビックリしないかな。」

「そんときゃ千春が聖魔法で回復したらいいんじゃね?」

「あー・・・うん、そんときはヨリとソラにも練習してもらおう。」

「げ・・・言うんじゃ無かった。」

「マジでやめてよヨリ。」

「ソラも使えたら便利じゃん?」

「まぁ・・・使う機会あったらねー。」

 千春達が気を使いつつも侍女達は普通に貴族達にもランチプレートやサラダ、デザートを並べて行く。


「では!」

「「「「「「「いただきまーす!」」」」」」」」

「いただきますとは?」

「食材に感謝、食事に感謝、作ってくれた人に感謝する言葉ですよ~。」

 そう言うと千春達はロコモコを口に入れる。


「んま!」

「美味しいねぇハワイみたい。」

「ミオ、ハワイ行った事あんの?」

「あるよ?」

「マジで?!ウラヤマ!」

「幼稚園くらいの時だけどね・・・。」

「ロコモコ食べたの?」

「食べた・・・らしい。」

「覚えて無いんかいー!」

 キャッキャと騒ぐJK軍団。


「チハル、これジブラロールでも作れるんだよな?」

「もち!って言うかハンバーグソースがいつもと違うだけであとは全部ジブラロールの調味料使ってるもん。」

 エンハルトに聞かれ千春が答える。


「美味い・・・これがジブラロールの料理・・・。」

「えぇ!これは初めて頂きましたけれど、他の料理も素晴らしいのですよ!」

 レスクが呟くと、ドヤ顔で答えるフルール。


「これは確かに、ジブラロールとの交易を考えて行きたいですね。」

 ムーサも頷きながら話す、貴族達は料理を食べながら涙を流す者も居た。


「美味しゅうございます!聖女様!」

「・・・うっ・・・うぅ・・・生きてて良かった。」

「レスク殿・・・いや、レスク様!是非とも!是非ともジブラロール王国との国交を!」

「いや、先にメラディオ国との友好条約が先ではないか?是非とも一緒にこの料理を広めて!」

 盛り上がる貴族達。


「ハルト、そこんとこどうなのー?」

 ロコモコを食べながら問いかける千春。


「別に今じゃなくても良いだろ、まずはレスク卿の戴冠が先だな、それにメラディオ国の方もあるだろう?」

「あ・・・忘れてたわ。」

 賑やかに食事をしていると兵士が駆け込んでくる。


「失礼致します!軍が戻ってまいりました!」

「そうか、怪我人等は?」

「はっ!アベル隊長率いる第一、第二、第三部隊はほぼ無傷で!」

「他は?」

「・・・そのまま進軍し、ドラゴンに襲われ全滅と。」

「・・・そうか、貴族軍もか。」

「はっ。」

 戦死者の話を聞き千春は悲しそうに呟く。


「・・・私のせいだよね。」

「いや、チハルは被害を最小限に抑えたんだ、誇って良いくらいだ。」

 千春の頭を撫でながらエンハルトが答える。


「でも・・・。」

「あのまま進軍すれば軍はメラディオを攻め、もっと多くの血が流れただろう、間違いなくな。」

「その通りです聖女チハル様、アベルが無傷で戻ったと言う事はドラゴンの強襲に気付き、すぐさま退いたのでしょう、貴族軍や他の者はアベルの提言を無視したと思われます。」

 エンハルトの言葉に頷きレスクが話す、そして。


「進軍した貴族軍はクアータス国王であったゼア国王陛下よりメラディオ国を落とした際、領地を頂くと約束しておりました、欲に目がくらんだのでしょう、当然の報いで御座います。」

 貴族の1人が立ち上がり千春に答える。


「・・・。」

 うつむく千春、頼子達もうつむく。


『チハル。』

「・・・アイトネ。」

『チハル達はそれで良いのよ。』

「え?」

『人の死の重さや責任を感じるその心、大事にしてね。』

「・・・うん。」

『でも、チハル達はそれ以上に人を幸せにしている事も忘れないで頂戴。』

「・・・そうなの?」

『そうよ?』

 アイトネはそう言うとクアータスの貴族や新国王になるレスク、そしてムーサを見る、千春も目を向けると皆は笑みを浮かべ頷く。


「聖女の皆さま、気に病む事は有りません、国の政で御座います、この責任は全て国の貴族そして新しく王になる私、レスク・エントス・・・いえ、レスク・ディ・エントスが責を持ちます。」

「私も、レスク様と一緒に受けます。」

 レスクとムーサはJK軍団にそう言うと礼をする、貴族達も立ち上がり礼をしていた。


「・・・有難うございます。」

 千春達はレスク達に礼を言うと貴族達は食事を終わらせ食堂を出て行く、そしてレスクに連れられ千春達も食堂を出る。


「はぁ・・・。」

「千春、ロイロが戻って来るぞ。」

「うん・・・ロイロやママドラさんにお願いしたのは私だし!労わないと!」

「あー、ロイロ達の事だ、酒でも渡せばいんじゃねぇか?」

「そうやねー、アレ!鳥の絵が入った12年物やね。」

「ロイロさんアレ好きですよねー。」

「うきうっきー!」

「もうー、でもそうだね、お酒は準備してるし。」

 ルプ達の言葉に千春は思わず笑みを浮かべる、そしてロイロ達が城に集まると兵士達の阿鼻叫喚が聞こえたがレスクや貴族が直ぐに抑え、千春達はロイロ達を出迎えた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る