海鮮ダンジョンのダンマス!

「カジキマグロキター!」

「マグロではないんだよなぁ。」

 ビュンビュンと高速で泳ぐカジキを見ながら千春と青空が話す。


「マグロはいなそうだしカジキでも良いかぁ。」

 しゃーないなぁと言わんばかりに頼子が呟く。


「ヨリ、私達がやるわ~♪」

「俺もー!」

「私もやるわー!」

「アレやるの?」

「アレって?」

 リリ、ポポ、ルル、クゥクゥが言うとシュシュが問いかける。


「えぇ、私達が飛ぶ逆の魔法よ♪」

「そう言う事ね。」

「ヨリ、あれ全部地面に落とすから収納してね♪」

 楽し気に言うリリ、そして妖精達は一斉に魔力を溜めると解放する、すると十数匹の巨大カジキが海底に押し付けられビチビチともがく。


「あーそう言う事ね、重力魔法か。」

 頼子は海底に押し付けられたカジキを次々と影に落としていく。


「ナイスリリ!カジキゲットだぜー!」

「刺身かー?」

「照り焼きも美味しいよ。」

「へぇ、カジキの照り焼きか、美味しそう。」

 既にものけの殻になった空間をスイスイ泳ぎ次へ進む一行、その姿を1人の鰭族が覗いていた。



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「なんなんだこいつら。」

 鰭族の男は水晶をのぞき込みながら呟く男、人では無く鰭族だ、しかしセイレーン達の様な人らしい姿ではない、まさに半魚人と言った風貌の男は忌々しく呟く。


「ありえない、人間がこのダンジョンに、いや、獣人、ドラゴン、あの魔物はなんだ?!精霊まで!」

 怒りをあらわにし怒鳴りつける。


「俺のダンジョンが・・・こんな奴らに!」

 半魚人は水晶をまたのぞき込む。


「この先の魔物も敵わない、勝てるわけがない!俺が・・・俺が相手をするしかないのか!」

 半魚人はそう言うと宝物庫に移動する、そして煌びやかな三又の矛を手にする。


「くそう・・・これしかない、俺がやるしかない、ダンジョンを守らなければ。」

 半魚人はそう呟くと最下層エリアへ泳いで行った。



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「ぎゃー!!!!」

「ないわぁぁ~~~!!!!」

「ゼル!ゼル!焼き払って!」

「無茶言うな、海の中だぞ?」

「ミカ!アレ!どうにかなんない!?」

「出来ない事はないけれど・・・私も嫌!」

「ルプぅ!ぎゃー!!!!!」

 JK達はパニックになっていた、それもそのはず、そこに居た魔物はよく海岸に居るアレだ。


「フナムシやね。」

「フナムシだな。」

「フナムシですねぇ。」

「あれフナムシっていうの?」

「あぁ日本の岩場なんかにウジャウジャいる奴だ。」

 フナムシは海中をスイスイと泳ぎながら固まっていた。


「チハル、フナムシは食えるらしいぞ?」

「嫌!」

「あっちのフナムシとは違うだろ、泳いでるぞ?」

「嫌!」

「しょうがねぇなぁ、ロイロどうする?」

「うむぅ、ただ泳いでるだけのようじゃが、襲って来るのかのぅ?」

「魔物だろ?襲って来るだろ。」

「火が使えれば一瞬なんですけれどぉ。」

 コンは残念そうに呟く。


「チハル様!ここは私達にお任せください!」

 ナラーシャは元気に声を掛ける。


「どうにか出来るならお願い!マジで!」

「はい!騎士団!マーメイド部隊!行きますよ!」

「「「「「「はっ!」」」」」」

 セイレーン騎士団、マーメイド部隊は銛を手に取り一気に泳ぐ。


「早っ!!!」

「すごっ!流石人魚!」

「セイレーンも凄い!あんなに早く泳げるんだ!」

 先ほどあっという間に処理したカジキの様に水の中を駆け巡るセイレーン達を千春達はビックリしながら見る、セイレーン達は次々とフナムシの様な魔物を突き、切り刻み処理していく。


「流石だな。」

「うむ、流石と言う言葉しか出ぬのぅ。」

「あれ回収するん?」

「しなくて良いのでは?」

 ビエリーが言うとコンはJK達を見る、千春達は物凄く嫌そうな顔で砕け散るフナムシを見ていた。


「オピクスさぁん!」

「はいはい、あの死骸を消せばいいのね。」

「お願い!」

 水の上位精霊オピクスはクスクスと笑いながら水流を操作し部屋の隅に固めてしまう。


「つぎ!次行こう!キモイ!」

「同じく!キモイ!」

「行こう!キモイ!」

 キモイキモイと連呼しながら次の部屋になだれ込む一行。


「サメ!」

「サメか、良かったぁ。」

 いうが早くサメは千春達を見つけ突っ込んでくる。


「ほう?力比べか?」

 ゼルは悪魔の姿で前に出るとサメに対峙する、サメは大きな咢を開きゼルを飲み込もうとするがゼルは真正面から殴りつける。


「うらぁ!!!」


ドゴン!


「おぉ!凄いゼル!」

 大愛は後ろから大声で応援する。


「まだ居ますわ、あちらは私が。」

 天使姿のミカは翼を広げ飛ぶように泳ぐ、そしてもう一匹のサメがミカに狙いを定め突っ込んでくる。


「フフフ、動きが単純ですわね。」

 ひらりと避けるミカ、そして手をサメの肌に当てながらすれ違う、するとサメは狂ったように泳ぎ壁に激突した。


「え?終わり?」

「あぁ、思ったより弱いな。」

「そうですわね、微弱な電撃を当てただけで狂うなんて弱い生き物ですわ。」

 あっという間に処理が終わった2人は拍子抜けと言わんばかりに呟く。


「千春~フカヒレゲットだぜ~♪」

 頼子はサメを二匹とも影に入れホクホクだ。


「イイねフカヒレ!って私作った事無いよ?」

「ググればいんじゃね?」

「あのでっかいサメ、ヒレデカかったよねぇ。」

「あのヒレ1枚で全員ガッツリ食えるじゃん。」

 皆はフカヒレ料理を思い出しニヤニヤする。


「サメ肉って食べれるの?」

「たしか新鮮なら美味しいとか、低脂質、高たんぱくって聞いたけど?」

「マジで?チハルのアイテムボックス入れてたら新鮮じゃん!」

「そだね、何か作ってあげるかな。」

「やったー!」

 さくっとクリアし次の部屋に移動する面々。


「・・・あれ?なんか今までと違うね。」

 広い通路は変わらないが洞窟では無く綺麗な道になる。


「あーもしかしてラストかな?」

「そうね、多分次はダンマスの部屋よ。」

 アルデアが答える。


「わかるの?」

「なんとなくね。」

 そして行き止まりには大きな扉があった。


「おー!ダンジョン攻略だー!ナラーシャさんココ何階層になるんです?」

「48階層になると思います。」

「50無かったか。」

「50階層超えると消費魔力が増えるのよ、ダンジョン経営するなら50階層が効率良いのよ。」

「あ、経営なんだコレ。」

 アルデアの説明に突っ込む千春、すると扉が勝手に開く。


「ん?誰か開けた?」

「んにゃ?勝手に開いた。」

「自動ドアなのかな?」

「センサーに触れたのかな。」

「ま、入ってみるかー。」

 千春が言うとロイロが先頭を行き、ルプ達も続く。


「お、ダンマスじゃねぇか?」

「その様じゃな。」

 サンゴで出来た豪華な椅子に座る半魚人、手には豪華な三又の矛を手にしロイロ達を見る。


「よくここまで来たな!」

 半魚人はそう言うと椅子から立ち上がる、そして千春達の前に泳いでくる。


「攻撃してくる!?」

「いや、敵意は無いようね。」

 アルデアはダンマスの様子を伺いながら千春に話す。


「おぬしがダンジョンマスターか。」

「いかにも!」

「で?儂らは攻略したわけじゃが。」

「うむ・・・。」

 そう言うと半魚人は手にした三又の矛を前に出す。


「これやるから帰ってくれ!」

「「「「「「へ?」」」」」」

「このダンジョンで一番高価な宝だ!」

「あ、えっと・・・え?」

 千春はロイロを見ると首を傾げる、そしてナラーシャ達を見ても呆けている、千春は困り顔でアルデアを見る。


「・・・ま、そうよねぇ、チハルが私のダンジョンを攻略した時を思い出したわ。」

「へ?どういう事?」

「完全降伏よ。」

「えー!?別に倒すつもり無いよ!?」

「チハルはそう思っていてもダンマスはそう思うわよ、この戦力で来られたら逃げるか覚悟するわよ。」

 呆れた様に話すアルデア。


「えっと・・・どうする?」

 千春は頼子達に声を掛ける。


「別に良いんじゃん?あとは帰るだけだし。」

「そうそう、食材たんまり、ほっくほくよ?」

「お宝もあの槍?矛?」

「いらないねぇ。」

「魔法の武器っぽいけどね。」

 頼子達が話していると、美桜が半魚人に話しかける。


「他に何かないんですー?」

「他?他とは?」

「えっと、ほら、アクセサリーとか貴金属とか、宝石とか?」

「・・・ある。」

「見せて♪」

「・・・はい。」

 サクサクと話しを進める美桜は皆にピースし、半魚人は皆を連れ宝物庫へ移動する。


「ココが宝物庫だ。」

「おぉ~・・・コレどっから持ってきてるの?」

「魚達に運ばせている。」

「何処から?」

「主に沈没船や遺跡だな。」

 開いた箱が沢山並びその中には金貨や銀貨、宝石が入っている。


「そんなものよりこの矛の方が良いだろう?」

「んにゃ?こっちの方が良い!」

 美桜が言うと皆は頷く、そして大愛が小さな箱に入った白い玉を見つける。


「真珠!」

「うそ!マジで?!」

「うわぁ!綺麗!」

 大愛が言うと青空、日葵も一緒に箱をのぞき込む。


「それは貝から出る物だ、魚達が良く拾って来るのだ。」

「これ貰って良いです?」

「構わない、いくらでもあるからな。」

「マ!?」

「マジですかい?」

「どれくらいあんの?」

 これでもかと言うくらいの勢いで詰められる半魚人。


「その箱に入っているぞ。」

 閉められた箱を指差す半魚人、麗奈と美桜はその箱を開ける。


「おぉぉぉぉ!!!」

「すっげぇぇぇ!!!」

「これ貰って良いですか!?」

「かまわんぞ?そんなものが良いのか?」

「チッチッチ、半魚人さんコレが良いんだよ!」

「そう言えばこっちで真珠初めて見たね。」

「だねー。」

「それは全部やる、だから帰ってくれ。」

「・・・ん~どうしよっかなぁ~♪」

 美桜はニヤニヤしながら半魚人に話す。


「コレもっと集めてくれる?」

「ほっといても増える、魚達が持ってくるからな。」

「それこの小さな箱いっぱいになったらフリエンツ王国に持ってきてもらえます?」

「フリエンツ?あの海王が居る所か。」

「海王?」

「ドラゴンが居るだろう。」

「あ、リヴァイアサンのガゥアンさんか、そうそう、そこです。」

「わかった、それでは帰ってくれるのだな。」

「あと!」

「!?まだあるのか!?」

「語尾に「ギョ」つけて♪」

「は?」

「ギョだよギョ。」

「わかった・・・ギョ。」

 肩を震わせながら笑いを堪える美桜。


「ミオぉ~あんまり困らせたらダメだよー。」

「でも真珠は嬉しいかもね。」

「半魚人さん帰り道ってあります?出来れば直行で。」

「あるぞ、その奥に縦穴がある、それを登れば外に出れる・・・ギョ。」

「おぉ!ありがとー!それじゃ帰ろう!」

「よっしゃー!帰って海鮮パーティーだ!」

 千春達は海獣に乗ると縦穴に向かう。


「半魚人さんまたねー!」

「たまに来るねー!」

「美味しい魔物いっぱい育ててねー!」

 青空達は手を振る、そして縦穴を登る海獣達、半魚人は小さな声で呟いた。


「もうこないでくれ・・・ギョ。」






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