ムカイ領に遊びに行くぞぉ!

「寒くなってきたねー。」

 学校に向かう頼子は横を歩く千春に声を掛ける。


「もうすぐ11月かぁ。」

「進学決めた?」

「概ね。」

「大学?」

「いんや、専門。」

「やっぱりか。」

「ヨリは?」

「うちは短大。」

「大学遠いもんね~。」

 2人は白い息を吐きながら学校に向かった。



----------------



「やっぱ皆そんな感じかー。」

「いやぁ、あの時と違ってさー、家族があっちに行ったじゃん。」

「ソレなー、近くに大学無いじゃん?1人暮らしだとチハルの家に行けないじゃん。」

「専門とか短大は近くにあるもんね。」

 青空達も同じ考えの様で、千春達に頷く。


「私はもうあっちで永久就職でも良いかなぁ。」

 日葵は弁当を食べながら呟く。


「必要な事はググれば良いし、何が出来るかは見て考えても良いからねぇ。」

「お父さん達は流石に凄いと思うけどね。」

「そりゃぁ経験も知識もあるからねー。」

「ママさんズ達も凄くね?」

「凄いね、色々知ってるって凄いよね。」

「ま、そこらへんはこれから経験すれば良いって事で。」

「んだんだ、いまからだべぇ~。」

 のんびりと中庭で昼食をとるJK軍団、そして学校が終わり皆は千春の家に向かう。


「最近みんな私の家に帰るよね。」

「だって家誰も居ないもん。」

「ウチもー、お父さんもお母さんもあっちじゃん。」

「ヒマリってお姉ちゃん居たよね。」

「うん、1人暮らししてるから帰って来ないけどね。」

「ソラんとこのパパさんはどうすんの?」

「ん?異世界連れて行くって言ってたよ。」

「やっぱりか。」

「ムカイ領に取り込むんじゃない?」

「そうなるだろうねぇ、パパさんズ集まって何してんだろうね。」

「見に行く?」

「イイね、何してるか気になるわ。」

 千春と頼子は自分の父親が何をしでかしているのかが気になっていた。


「よし、帰ったらムカイ領に行こう!」

「うぃーっす。」

「早く行こー!」

「ミオ走んな!」

「運動運動!ダイエット続けてんでしょ!」

「言うなぁ!がんばってるわぁ!」

 JK達は千春の家に向かって走り出した。



-----------------



「はぁはぁはぁ・・・ただいまぁ。」

「お帰り千春、どうしたの?」

「ん、皆が走るんだもぉん。」

 門を見守る春恵が千春に声を掛ける。


「千春着替えよ。」

「やーすーまーせーろー。」

「はいはい、ウチらは着替えて来るからねー。」

「もぉー、私も着替えるよぉ!」

 寝室になだれ込むJK達、そして着替え終わると一息つく。


「早かったわね。」

 サフィーナはお茶を淹れながら千春に言う。


「走ったからね。」

「何か急ぎの事でもあったの?」

「んーーーーーにゃ!ヨリ達が走っただけ。」

「私が走ったみたいな事言わないでくださーい、ミオでーす。」

「はーい、ウチでーす。」

 気にせず手を上げる美桜、そして一息つき頼子が立ち上がる。


「さ、行こうか。」

「リリー。」

「は~い♪」

 テーブルの果物を食べていたリリがピョンと飛び上がる。


「ムカイ領ね。」

「うん。」

 リリは確認すると庭に飛び出す。


「さ、入ってー。」

 千春達はフェアリーリングに入る、付き添いはペット軍団、サフィーナ、サリナ、ナッテリー、ワークス、そして春恵だ。


「おかぁさんも行くの?」

「えぇ、タイちゃん、お父さんの所も行くでしょ?」

「いくー。」

 リリが魔力を解放すると大きな屋敷の裏庭に移動する。


「さ、行きましょ。」

 春恵が先頭になり屋敷の扉を開けると侍女達が居た。


「お帰りなさいませハル様。」

「タイちゃん居る?」

「はい、イサム様の執務室に。」

 侍女はそう答えると部屋に促す、そして執務室の扉をノックし扉を開ける。


「こんにちは~♪」

「ハル、どうしたの!?」

「いらっしゃいハルさん、あれ?ヨリ、来たのか?」

「うん、お父さん元気してる?」

「勿論だ、バリバリのバリッバリに元気だぞ。」

「みたいだね・・・何してんの?」

 テーブルを男4人が囲み何かの設計図を見ていた。


「ん、これか?これは魔導バイクだ。」

「バイクぅ?」

「魔導列車で使っている魔導エンジンを小型化したのは成功したんだが、どう乗せるかをな?」

「な?って言われてもなぁ、それ仕事なの?」

「あぁ!仕事だ!」

「うっそだぁ、お母さんに聞くよ?」

「うっ・・・一応・・・仕事だぞ。」

「ふぅ~ん。」

 後ろからJK達がなだれ込む。


「お父さん仕事しなー?」

 美桜は腰に手を当て啓治に言うと麗奈も和也を見る。


「パパって何してんの?」

「ん、色々作ってるよ、先日作った石鹸の材料もパパが作ったんだよ?」

「おぉ・・・マジか。」

「え?ママに聞いてないの?!」

「うん、言わなかったね。」

「えぇ~、頑張ってんのにー。」

 和也は不満げに呟く。


「で、今はバイクなのね。」

「バイクと言うか、原動機の代わりになる動力で色々作ってみたいと思ってね。」

 和也が言うと、パパさんズはウンウンと頷く。


「移動なら空飛ぶ箒で良くない?」

 頼子は移動手段を思い出しながら言うとパパさんズが答える。


「アレは魔道具を作るのに必要な魔法使いが少なすぎるんだよ。」

「あぁ、今作っている魔導エンジンは火魔法や雷魔法、使い手が多いから量産もしやすい。」

「水も豊富にあるからね、水素エンジンも地球より簡素化出来る。」

「あとは軽量化、これはもうすぐアルミニウムが作れるからな。」

「合金にすれば腐食や強度も増やせる、騎士団の防具や冒険者の軽鎧も見直せるな。」

 パパさんズは真面目な顔で話始める。


「あるみにうむ合金?」

「あぁ、ヨリも知ってるだろ、ジュラルミンとか。」

「あー・・・え?アレってアルミニウムなの?」

「そうだよ、何だと思ったの?」

「いや、ジュラルミンって言う金属だと・・・。」

「ははは、まぁアルミ合金は色々あるからね。」

「あるねぇ、それに鋳造し易いってのもあるね。」

「溶ける温度も鉄より低い、加工もし易い。」

「火に弱いの?」

「弱いと言っても簡単には溶けないけどな、ほら、うちの鍋とかアルミだろ?」

「そう言えば・・・そうなのかな?」

「銅と混ぜれば固くなる。」

「マグネシウムと混ぜれば船舶用の素材にもなるな。」

「バイクに使うなら亜鉛とマグネシウムの合金だろうなぁ。」

「鉄とリチウムでも良いんじゃないか?」

「まだこっちの世界じゃ難しいだろソレ。」

 またもや盛り上がるパパさんズ、JK達は話に付いて行けず黙って聞いていた、しかし千春が声を掛ける。


「はいはい、仕事してる感は感じましたー、私達は遊んで来まーす。」

「ん、何するの?」

「何があるの?この領。」

「んーーーー?特に特産物も無いし、山が近いから鉱石が沢山捕れる。」

「女子高生に鉱山教えてどうすんのよぉ。」

「パパ、食べ物とかはどうなの?」

「ママ達が色々広めてるみたいだよ、街に行ってみたら面白いかもね。」

「へぇ、どんな料理?」

「うちで食べてるような料理が普通にあるよ。」

 麗奈と麗奈パパ和也の話を聞き、頼子は皆に言う。


「よし、街行こう。」

「うぃっす。」

「食べ歩きだね。」

「うん、何があるか楽しみだ。」

「そう言えばうちらココの領あんま来てないもんね。」

「来ても直ぐ帰るし。」

「ジブラロールの方が色々あるし彼ピ居るし。」

「「「「「それな。」」」」」

 そう言うと皆はパパさんズに背中を向ける。


「娘が冷たい。」

「父親なんてそんなもんだよ。」

「父親の前で彼氏の話するか?」

「まぁ婚約してるからしょうがないでしょう。」

 しょんぼりするパパさんズ、JK軍団は聞こえないふりをしながら部屋を出る。


「さ、街いくべ。」

「うぃーっす、飛んで行く?」

「そっちの方が早いっしょ。」

「そだね、それじゃ行きますかぁ。」

「護衛は?」

「サフィー達とルプ達が居るから大丈夫だよ、ね?サフィー。」

「はい、ムカイ領に行くと連絡は入れていますから問題有りません。」

「へ?誰に?」

「ハルトとメグ様ですよ。」

「いつの間に?!」

 クスクス笑うサフィーナ、そして皆は杖や箒を取り出し街に飛んで行った。





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