ドワーフのダンジョンで蟻乱獲の巻!

「ぎゃぁぁ!!!!」

「ちょぉぉぉ!!!!まってまって!」

「またきたぁぁ!!!」

 千春達は阿鼻叫喚で逃げ回る。


「ルプ、まとめてヤレるか?」

「任せろ。」

 ロイロに答えるルプは風の魔法でムカデの大群を吹き飛ばす。


「アレは食べれんばいねー。」

「食べれても食べたくないです。」

 ビェリーとコンは戦闘モードの姿でルプの後ろから呟く。


「チハル、まだ上層だぞ?」

「だってぇぇ!でっかいムカデとか聞いてない!」

「まぁ俺も聞いてないが、ルプ達が倒してくれているから大丈夫だろ?」

「そう言う問題じゃないんだよぉ・・・。」

 泣きそうに言う千春、頼子達も無言で頷く。


「ガリウス殿、次の道はどちらで?」

 アリンハンドが問うとガリウスは道を示す。


「この先を右に曲がると中層に入る階段が有ります。」

「だそうですよ?」

「早く行こ!洞窟エリア怖い!」

「次は森エリアだよね?」

「森かぁ・・・森も良い思い出ないんだよなぁ。」

 ジブラロールにあるダンジョンの森エリアのムシムシ軍団を思い出す頼子。


「ココよりマシっしょ!」

 千春はそう言うとルプの後ろにぴったりくっつき歩く、そして中層に入った。



---------------



「ココから中層エリアで魔物の種類も変わります。」

「はぁ、ムカデもう出ない?」

「・・・いえ、多分居ると思いますが。」

「ロイロ!飛んで行こう!」

「別に構わんが、他の魔物は狩らぬのか?」

「他の魔物?」

「うむ、直ぐ近くに虫ではない魔物がおるぞ?」

 ロイロは探知魔法で見つけた魔物を指差す。


「どれだろ。」

「あ!アレじゃん?」

 木々の隙間から見える魔物を指差す麗奈。


「あ!ワンコ!」

「・・・首2つあるじょ?」

「おーケルベロス!」

「ミオ、ケルベロスって3つじゃん?」

「2つはなに?」

「えっとー・・・・・・オルトロスだって。」

 スマホで首2つの犬で検索する麗奈。


「あれはルビノリドと言う魔物です。」

「あ、屋台で見た肉だ。」

「って事は食べれるんだ。」

「美味しいんですか?」

 青空がガリウスに聞くと、苦笑いで答える。


「はい、あんまり美味しくないっぽいでーす。」

 青空が答えていると、ルビノリドと言われた2首犬が襲い掛かって来る。


「うりゃ。」

 頼子は影収納でルビノリドを落とす。


「ナイスヨリ。」

「単純な移動してくれたら楽だねぇ~。」

「そう言えば上層に居た冒険者は中層に来ないんですか?」

 大愛はふと思いガリウスに聞く。


「あまり来ませんね、ダンジョンは資源回収場ですが中層や下層まで行くと持って帰るのが大変なんです。」

「そりゃそうだ。」

「それに上層で魔石や甲虫の外装、チャクスや先程のムカデと言われていたドシクリが取れますから。」

「そっかぁ、ロイロこのエリアに冒険者居る?」

「数人感知しておるぞ、森の奥じゃな。」

「そっか、それじゃ焼き払うのはダメだね。」

「冒険者が居なくてもそれはダメじゃろ。」

 ロイロが突っ込むが千春はスルーし箒を取り出す、頼子達も箒や杖を取り出し跨る。


「ガリウスさん下層まで一気に行きたいので道案内お願いしまーす!」

「わかりました。」

 ロイロはドラゴンになり、皆は森を飛んで進む、そして下層へ行く道を一気に駆け下り次の階層もスルーしていく。


「この先が下層エリアになります。」

 ガリウスは説明をするが、何故か苦笑いだ。


「ガリウス殿どうされました?」

 アリンハンドがガリウスに問いかける。


「いえ、ココまで来るのに通常でしたら早くても3~4日掛かります、自分もここまで来るのは2度目、この先には1度しか入っていません。」

「あ~、ここまで2時間掛かってませんからね。」

 説明を聞いたアリンハンドも笑いで返す。


「さ!ここからが本番だぁ!」

「ガッツリ捕まえるぜー!」

「うちらは何したら良いん?」

「後ろで応援でしょ。」

「応援任せろ!」

 アイテムボックスと影収納が出来ない青空達が何故か気合を入れる。


「で・・・思ったよりも狭いんですけどー。」

 1~3階層までの洞窟エリアの様な岩肌、そして湿った空気に千春が嫌そうに呟く。


「蟻の巣エリアって言ってましたね。」

 アリンハンドは壁を触りながら呟く。


「ルプ、気配ある?」

「あぁ所々にあるな、この先に大きな分岐がある、そこにまず行くとするか。」

 ルプはそう言うとテクテク歩き始める。


「ん~うじゃうじゃおるばい。」

「ビェリー、何処に居るか分かる?」

「この先におるばい。」

「沢山いますねー。」

 ビェリーとコンも同じ様に気配を感じ伝える、そして分岐の所でルプが止まる。


「ココだな。」

「ここ蟻の通路やね。」

 ビェリーは5つに分かれた分岐の一つを見ながら影の落とし穴を作る。


「ヨリ、そこに匂いの有るもんおいてくれん?」

「匂い?えっと~、生ものは千春に渡してるんだよね、千春なんか出して。」

「ほいよ、匂いなら魚で良いかな。」

 千春は調理で余った魚のアラを影の手前にボタボタ落とす、すると奥からザワザワと音が聞こえ始める。


「ちょ、蟻?」

「あぁ、今風魔法で匂いをその通路に送ったからな。」

 ルプは通路を見ながら千春に答える、すると大きな蟻がワラワラと出て来る、そしてビェリーの作った落とし穴に面白い様に落ちて行く。


「うわぁ入れ食い?」

「すっご、こんなに居るの?」

 軽く20匹程の蟻が続けて落ちて行く。


「簡単だね。」

「この要領で捕まえて行くばい!」

「うぃーっす。」

 ロイロとルプ達の探知で道を探り次々と蟻を捕獲していく。


「うん、私達する事無いね。」

「もっと冒険者っぽい事すると思ってたよ。」

「応援すらしてねぇ。」

 暫く進み、また捕まえる、それを続けているとルプが一つの通路を見る。


「・・・女王蟻か?」

「魔力は有るがどうじゃろうな。」

「ダンジョンマスターはもっと下層でしょうから、そうかもしれませんね。」

「いってみりゃ分かるんやない?」

「そうだな。」

 ルプはその通路に向かい歩いて行く、そして開けた場所に到着した。


「うわぁ!すごぉぉぉ!」

「うわぁ!キモぉぉぉ!」

「卵だぁ!」

「え?コレ全部卵?」

「蟻の卵って事?」

「やば!気付かれたんじゃん?!」

 部屋に入るなり真っ白な卵が並んでいた、その卵は小さく野球ボールを長細くしたような形だ。


「チハル、蟻回収だ。」

「うぃー!サフィーいくよー!」

「はい!」

 千春とサフィーナはアイテムボックスで近づく蟻を片っ端から捕獲する、ビェリー、頼子、麗奈も影収納で蟻を捕獲し近づく蟻は全て回収した。


「女王蟻はどれだったのかな?」

「女王蟻はアレだろ。」

「どれ?」

 ルプが見る方を千春がのぞき込むと、人の子供ほどの蟻がプルプルと震えていた。


「・・・え?アレ?」

「だろ?」

「ちっちゃいよ?」

「ちっちゃいな。」

「生まれたての蟻じゃ無く?」

「あぁ、魔力の量が違うのぅ、アレが女王蟻じゃなぁ。」

 千春はプルプル震える女王蟻を見る。


「えっと・・・えぇ~?こんなビビられても困るぅ。」

「王冠とか付けてないんだね。」

「ミオ、漫画の見過ぎ。」

「そりゃそうだ。」

「近寄っても大丈夫?」

「儂の魔法を掛けておる、噛まれても大丈夫じゃ。」

 ロイロに言われ千春達は女王蟻に近付く。


「女王蟻ちゃん、言葉分かる?・・・ってわかるわけないか、レナ、分からない?」

「ん~、アミみたいに話しかけられたらワンチャン分かるかもだけど。」

 麗奈はそう言うと女王蟻に話しかける。


「言葉わかる?」

 女王蟻はそのままプルプル震えるだけで動かない。


「・・・ん!ダメだね!」

「そっか、どうしよ。」

「ん~、駆逐するつもり無いしこの子は放置で良いんじゃない?」

「そだね、十分捕まえたし。」

「ねぇ、この子連れてったら蟻養殖出来ないかな。」

「えぇ~?何処に連れてくの?」

「ジブラロールのダンジョンとか?」

「えぇ~?この子一匹じゃ卵の世話とか出来ないんじゃん?」

「あ、んじゃ私とサフィーが捕まえた蟻とこの子、あと卵持って帰る?」

「イイネ!ってこのダンジョンの蟻ってどうなるの?」

 頼子はアリンハンドを見る。


「多分ですが、ダンジョンマスターがまた沸かせると思いますよ。」

「ほう・・・ん?って事はジブラロールのダンジョンマスターって蟻湧かせれる?」

「どうでしょうか、聞いてみないと分かりませんね。」

 千春とアリンハンドの話を聞き美桜が手をポンと打つ。


「レミちゃんにお願いすれば良いのか!」

「蟻湧きエリア作ってもらえば蟻食い放題!」

「なんかヤだなその言い方。」

「蟻食い放題って・・・きしょい。」

「美味しいじゃん?」

「確かに。」

「んじゃ取り敢えず・・・この子は捕獲しとこう。」

 プルプル震える女王蟻を千春はアイテムボックスに落とす。


「チハルぅ。」

「何?ヒマリ。」

「はたから見てると鬼の所業やで?」

「・・・うん、私もちょっと罪悪感駆られた、ま、やっちまったもんはしゃーない!帰ろうか!」

「帰るのか?」

 エンハルトが千春に問いかける。


「え?うん、用事終わりだよね?」

「てっきりダンジョンマスターの所まで行くかと思ってたからな。」

「あー、いや、ダンマスに用事無いし、アイトネに聞いたらダンマスも虫らしいからね。」

「虫のダンマスかー、どんな虫なんだろ。」

「最強の虫じゃん?」

「その最強って何って話じゃん?」

「最強・・・カブトムシ!」

「クワガタだろ!」

「えー!アレ!スズメバチ的な!」

「それって軍隊蜂のアミじゃん?」

「最恐・・・ごきb「帰ろう!」」

「「「「帰ろう!」」」」

 頼子のごきb発言で全員が帰る選択肢を選び、皆は一気にダンジョンを駆け上った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る