ドワーフのダンジョン村に行くの巻!
「ごちそうさまでした。」
千春は手を合わせ鍋に向かって言う。
「久しぶりに食べたけれど、こういう食べ方もあるのね。」
マルグリットは口元を拭きながら千春に言う。
「はい、しゃぶしゃぶと言ってダシの入った鍋にくぐらせて食べる料理なんです。」
「このつけダレが特に美味しかったわ。」
「このゴマダレってのが美味しかったわ!」
マルグリットとルクレツィアは満足そうに答える。
「千春、ありんこもう無いよ。」
「え?あんなにあったのに!?」
「うん、ビェリーが解体したのも全部回収したけど・・・。」
「お母様、この蟻って胴体は食べないんですか?」
「食べないわね。」
「胴体はスカスカで食べる所殆ど無いのよ。」
「へぇ~。」
外では塩焼きで食べまくっていたロイロ達ドラゴンとペット達が満足そうに転がっている。
「さて、行きますか。」
頼子が立ち上がる。
「そうだね、もうちょっと補充したいし。」
「あの穴埋めなきゃ良かったかな。」
「いやいや、アレはアレで良かったと思うよ。」
「そうそう、それに場所は分かってるんだから良いじゃん。」
JK達はそれぞれ立ち上がると出かける準備をする。
「チハル。」
「何?ハルト。」
「ガーラムの街には行かないのか?」
「あ・・・ん~、ほら、街は逃げないじゃん。」
「ダンジョンも逃げないぞ。」
「それはそれ~これはこれ~。」
千春はケラケラ笑いながらロイロ達に声を掛ける。
「ロイロ、ダンジョン行こー。」
「お、蟻を捕まえに行くのか?」
「そ、もう少し食べたくない?」
「あれは癖になる味じゃな、よし行こう。」
ロイロも乗り気で答える。
「仕方ないな、アリン。」
「そうですね、楽しめれば別にどちらでも良いんじゃないですか?」
「遊びに来てるだけだしな。」
諦めムードのエンハルトとアリンハンドも立ち上がる。
「それじゃさっきと同じフォーメーションで!」
「ガリウス殿を呼んでもらおう。」
エンハルトは部屋付きのメイドに声を掛けガリウスを呼ぶ。
「そこのダンジョンって何が居るの?」
「蟻じゃん?」
「他にもいるっしょ。」
「アイトネわかる?」
『分かるわよ、上層に洞窟エリア、その次が森林エリア、その下が蟻の巣エリアね。』
「えー、下層なの?」
『でも10階くらいしか無いわよ。』
「あら、少ないね。」
『その代わりめちゃくちゃ広いわよ。」
「ほぉー、どれくらい?」
『東京ドームが1600個分くらいね。』
「・・・意味わからん。」
謎単位で答えるアイトネに春恵が答える。
「直径10kmくらいの広さよ。」
「広いなぁ。」
「チハルは箒が有るから問題無いじゃろ。」
「そだね、皆飛んで移動できるし行ってみよー!」
話をしているとガリウスが部屋に入って来る、そしてまたもや出かけるという話に驚く。
「国王陛下にはお伝え致しましたか?」
「ガリウス、私が説明するわ、ルク行きましょ。」
「はいはい、チハルちゃんお土産よろしく~♪。」
マルグリットとルクレツィアは部屋を出て行く、千春達はガリウスを拉致するとダンジョンへ向かった。
---------------
「あそこが荒野のダンジョン、それと村です。」
ガリウスは指を差す、千春は町の開けた所へ箒を飛ばすと着地する、ざわつく周りを気にせず千春はキョロキョロと周りを見回す。
「おぉー・・・人間もいる!」
「ドワーフさんだけかと思ったけど、そりゃそうか、ダンジョンだもんね。」
「冒険者も居るよねー。」
千春は屋台を見つけ近寄る。
「あ、肉だー。」
「お嬢さん、あの、あのドラゴンは。」
「私のペット達なんで大丈夫ですよー、これ何の肉ですか?」
「ルビノリドだ。」
「・・・何それ。」
「あー、首がふたつある魔物だ。」
「美味しいの?」
「美味しいぞ。」
「そっか、今お腹いっぱいだからお腹空いたら買いに来るね。」
冷やかしの様な事をしながら千春は屋台を見て回る。
「チハル!冒険者ギルドに行くぞ!」
ハルトが離れて行く千春に声を掛ける、勿論千春の横にはサフィーナが付いている。
「チハル、ハルトが呼んでるわよ。」
「へーい。」
テテテテと小走りでエンハルトの所に戻る千春、ガリウスに案内されダンジョン村支店の冒険者ギルドに移動した。
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「こちらです。」
「おぉーぼろい!」
「おんぼろだね。」
「いつからあるの?コレ。」
「たしか5~60年前から有りますね。」
「そりゃぼろいわ。」
JK達はけちょんけちょんに言う、苦笑いしながらエンハルトとアリンハンドが扉を開く。
「おんぼろで悪かったなぁ。」
「げ。」
腰に手を当て眉間に皺を寄せたドワーフが笑みで迎える。
「ココの長か?」
「あぁ、おんぼろ冒険者ギルドのマスターだ、何の用だ?」
「ダンジョンに入りたい。」
「あぁ構わんぞ、そこの台帳に名前と冒険者級、あとは戻る予定日を書いて行け。」
「帰る日?」
「ん?嬢ちゃんも冒険者か?」
「はい!」
「そうか、戻る予定の倍の日数を超えた時は死亡扱いになる。」
「えぇ~。」
「そうならない様にちゃんと装備や物資を持って行くんだぞ?」
「はーい。」
思ったよりも優しいギルドマスターは千春に答える。
「一応聞くが、目的はなんだ?」
「蟻です。」
「蟻だな。」
「蟻!」
「ありんこー。」
「蟻の補充。」
「蟻でーす。」
皆が一斉に蟻、蟻、と言い出す。
「蟻?あぁアレか、アレは常時依頼もある、持ち帰ったら報酬があるぞ。」
「いえ!持って帰って食べるので!」
「あれの足は美味いからなぁ。」
「ギルマスさんも知ってたんですか?」
「ん?そこの屋台でも売ってるぞ。」
「へ?メジャーなの?」
「そうでもない、足は食うが必要なのは胴体だ、いい防具や道具になるんだ。」
「へぇ・・・あ!胴体有りますけど!」
「今か?」
「はい、出して良いですか?」
「お、おう、解体場に持って行け、何匹くらいある?」
ギルドマスターは出発すらしてない千春が何故蟻を持っているのか疑問に思いつつも確認する。
「ビェリーありんこ何匹ある?」
「さっきかぞえたら37匹あったばーい。」
「37!?」
「だそうです。」
「まぁなんとか入るか。」
ギルマスは驚きながら解体場に連れて行く、そしてビェリーはドサドサと蟻の胴体を出す。
「まてー!!!!!蟻は蟻でも下層のパンチャクスの方か!!!!!」
「へ?パンチャクス?」
「お前そんな事も知らず・・・何処で採って来たんだこの蟻!」
「えっとぉ・・・。」
千春はガリウスを見ると、ガリウスがギルマスに説明を始めた、そして話を聞き終わったギルマスは溜息を吐く。
「うん、わかった、うん、そういう事なのか。」
一人で納得しウンウンと頷いている。
「で。ぱんちゃくすって何です?」
「下層に巣食う大型の蟻だ、俺が言っていたのは中層のチャクスの方だ。」
「パンが付くと大きいんだ。」
「大きいだけじゃない、甲羅は固い、そして狂暴だ。」
「へぇ~・・・狂暴なんだ。」
「そして、美味い。」
「わかる!」
「美味しかった!」
「メチャウマだった!」
ギルマスの言葉に青空達が反応する。
「お前達、もう残って無いのか?足!」
「無いでーす。」
「食べましたー。」
「しゃぶしゃぶしましたー。」
青空達が答えると、がっくりと肩を落とすギルマス。
「パンチャクスの方は滅多に手に入らないんだ、もし取れたら足一本でいいから分けてくれ。」
「はい、良いですよ?」
「外に売ってる蟻の足はちっちゃい蟻なんです?」
「あぁ、なんなら食べてみたらいい、パンチャクスがどれだけ美味いかわかるぞ。」
手続きも終わり、胴体も渡した千春達は町に出ている露店に向かう。
「これだー!」
「蟻の足くださーい!」
「一本くださーい!」
「はいはい、お嬢ちゃん達ちょっとまちなー。」
露店のドワーフは塩焼きの足を渡す。
「細い。」
「ほんとだ、細いね。」
青空と大愛が少し残念そうに呟く。
「問題は味!」
「いただきます!」
美桜と麗奈がパクっと口に入れ咀嚼する。
「・・・ちがーう!」
「なんだコレジャナイ感。」
「マ?」
日葵と頼子も口に入れモグモグしながら目を瞑る。
「うん、歯ごたえが5倍くらいになって乾燥したかまぼこみたいな・・・もぐもぐ。」
「っていうかジャーキーみたい、まぁ不味くはない。」
2人は呟く、そして千春はカッ!と目を開き皆を見る。
「よし、最下層目指そう。」
「だな。」
「これは違う物だ。」
「ぱんちゃくす狩るぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
バレーボールの気合入れの様に円陣を組み手を合わせるJK達、エンハルト達はいつもの光景だなと生暖かい目で見守った。
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