ドワーフの街で和包丁を作るの巻!

「ギルマスさーん!ただいまー!」

「どうした?やっぱり下層に行くのはやめたのか?」

「いえ、下層で沢山蟻取って来たので帰って来ました!」

「・・・は?」

 冒険者ギルドに戻った千春達はギルドマスターに報告をする。


「ビェリー。」

「ほーい。」

 子供姿になったビェリーとコン、ビェリーは一匹の蟻を取り出す。


「はい、お土産です。」

「・・・本当に下層まで行ったのか。」

 信じられないような顔で呟くギルマス。


「それじゃ帰りますので!」

「あぁ、お疲れ様、良かったらまた来てくれ。」

「はーい。」

 アリンハンドは事務処理をササッと終わらせ、千春達は箒に乗り城に戻った。



---------------



「ただいまー!」

「もどりましたー!」

「おつかれさまでーす!」

 城の城門で着陸し、門兵へ挨拶をする千春達。


「お帰り王女さん、楽しかったかい?」

「むしむしだらけだったから微妙?」

「はっはっは、ダンジョンなんてそんなもんだろう。」

 気さくに話しかける門兵に挨拶し、部屋に戻ると女神2人、マルグリット、ルクレツィア、そして王妃のカラーシャがお茶をしていた。


「母上、戻りました。」

「お母様、おかぁさんただいまー。」

「お帰りなさい、その様子だと沢山獲れたみたいね。」

「はい!めっちゃ獲れました!」

「ガーラムも食べたがってたから少し分けてもらえるかしら。」

「少しじゃなくても沢山分けますよー。」

 ニッコニコで返す千春。


「それじゃ用事は終わり?」

「はい!帰りましょう!」

「なぁチハル。」

 エンハルトは満面の笑みで千春に声を掛ける。


「なに?ハルト。」

「・・・街はどうするんだ?」

「あ。」

「あ、忘れてたわ。」

「女王蟻の事で全部忘れてたわ。」

「マジそれな。」

「え?女王蟻捕まえて来たの?」

 それを聞いたマルグリットが話しかける。


「はい、ジブラロールのダンジョンで養殖できないかな~って。」

「ん~~~~、ダンジョンマスターに言えば飼えるかもしれないけれど。」

「ダメですか?」

「いえ、女王蟻は特殊個体なのよ、物凄く高く売れるわよ?」

「えー、お金はいらないので。」

「そう、多分魔石も貴重よ?」

「あー、そっちですかぁ。」

「えぇ、魔道具に使う純度の高い魔石が取れるわ。」

「魔石は間に合ってますからまずは養殖ですね!」

「チハルがそれで良いなら構わないけれどね。」

 クスクス笑うマルグリット、それを聞いていた女性陣も笑みを浮かべる。


「よし!それじゃパパっと街に繰り出しますか!」

「あ、行くんだ。」

「一応目的は街探索だったしね!」

「忘れてたけどなぁ。」

 頼子もそう言いながら楽しそうだ、そして先程の面子でもう一度外に出ると街へ移動した。



--------------



「・・・すげぇ。」

「見てこのネックレス。」

「細かい!何これ!」

「見て見て!この宝石!中に細工してある!」

「うぉー!これは凄いな!」

「どう?コレ。」

「キャワ!こっちの髪飾りも良くね?!」

 JK軍団は貴金属店に入り、アクセサリーを漁る。


「そちらはパロッド様のお作りになった髪飾りです。」

 ドワーフの女性がキャッキャ言うJKに微笑みながら説明する。


「この髪飾りください!」

「私はこっちのブレス買お~。」

「ねぇねぇこれ普段付け出来るかな。」

「学校はヤバない?」

「袖なら隠れるじゃん。」

「私このアンクレット買うー。」

 皆はそれぞれ気に入ったアクセサリーを購入し、早速付けて店を出た。


「凄いねドワーフ職人。」

「てっきり剣とか防具作ってるだけかと思った。」

 千春と頼子は買ったアクセサリーを互いに見ながら話すとサフィーナが説明をする。


「金属を使った加工もですが、木工や宝石、色々な品を作られますよ。」

「へぇ~、例えば?」

「そうですねぇ、チハルが良く使う物で言うとフライパンや鍋、料理用のナイフなんかも作りますね。」

「・・・あ、包丁欲しいかも。」

「包丁?」

「うん、こっち包丁無いんだよね。」

「料理で使うナイフですよね?」

「うん、こっちって両刃じゃん?片刃の包丁持ってきてるけどさー、ミスリルで作れないかなーって。」

「ナイフ職人ですか、確かメグ様のお知り合いがいらっしゃったような・・・。」

 サフィーナは魔導通信機を使い確認を始める。


「ザイフォン様にお願いすれば良いと言われてますよ?」

「何処に居るの?」

「ザイフォン殿なら俺が知っているぞ。」

 エンハルトが横から答える。


「どこ?」

「この先に鍛冶場が集中してある、そこの一角がザイフォン殿の所だ。」

 エンハルトとアリンハンドが先頭を歩き道案内を始める、そして少し歩くと金属を叩く音が響き渡る。


「おぉ、ザ!鍛冶場!」

「みてみて!凄い!」

 青空が指差す方には若いドワーフが金属を叩いて伸ばしている姿が見える。


「こう言うのって見せて良いものなの?」

「技術云々の話なら問題ない、問題は腕だからな。」

「へー、秘密主義な技術かと思ったよ。」

「あれじゃん?せっさたくまとか言うやつ。」

 大愛と日葵も楽し気に見て回る。


「ココだ。」

 エンハルトは他よりも大きな建物を指差す、扉を開けると女性が居た。


「いらっしゃい!何か用事?」

「あぁ、ザイフォン殿にお会い出来るだろうか。」

「あー、約束してる?」

「いや、してない。」

「ありゃ、お爺ちゃんそう言うのうるさいんだよねぇ。」

「知っている、マルグリットの息子が来たと言ってくれ。」

「ん?!メグちゃんの息子?!エンハルト君?!」

「あぁ久しぶりだなフラワ。」

「わ!わ!めっちゃ男前になってる!」

「はっはっは、最後に来たのは5年くらい前か、そう変わって無いだろう?」

「人間の5年は男も変えるねー、ちょっと待ってて!」

 フラワは裏の扉を開け走って行った。


「知り合い?」

「あぁ、俺の剣を作る時に一度会った事がある。」

「へ~。」

「なんだ!エンハルトか!」

「お久しぶりですザイフォン殿。」

「お~お~いっちょ前の顔しとるなー!なんだ?剣を磨きに来たか?」

「いえ、この子のナイフを作ってもらいたいと思いまして。」

「ん?この娘っ子か?」

 ザイフォンはペコリとお辞儀をする千春を見る。


「メグは来てないのか?」

「城に居ますよ。」

「来たなら顔出せと言っとけ!」

「はい、お伝えしておきます。」

「で?嬢ちゃんどんなナイフが欲しいんだ。」

 ザイフォンは千春に言うと、千春が和包丁を取り出す。


「この牛刀と、出刃包丁と柳刃包丁、あと菜切り包丁です。」

 テーブルに包丁を4本並べるとザイフォンは牛刀を手に取る。


「薄いな。」

 手に持った金属の棒で包丁をコンコン叩く。


「・・・。」

「どうです?」

「何だこれは。」

「何って?」

「刃の部分と地金が違うのか。」

「えー・・・多分。」

「何処の職人が作ったんだコレは。」

「えっとぉぉぉ、私の国?」

「はぁぁぁ、世の中は広いな!こりゃ凄い。」

 包丁の角度を変えながら見て呟くザイフォン。


「この形でミスリル使って作れませんか?」

「作れと言われれば作るが、このナイフでも大概の物は切れるだろう?」

「えっと、最近魔物切る事多いんで、ミスリルで欲しいなーって。」

「わかった、こんな良いもの見せてもらったんだ、作ってやる。」

 他の包丁を手に取り話すザイフォン。


「あと片刃でお願いします。」

「料理用のナイフか。」

「はい。」

「問題無い、何度か作った事があるからな。」

「え?片刃で?」

「あぁ、どこぞの料理人が使いやすいからと頼んできた事がある。」

「凄いなその人。」

「このナイフを見れば理由が分かる、それぞれが理に適った作りだ、そうだな、1小月待ってくれるか?」

「はい、その時また取りに来ますね。」

 千春はアイテムボックスからミスリルと金貨を取り出す。


「おいくらですか?」

「あー、金は要らん。」

「へ?」

「メグの息子の彼女だろう?」

「えっと、はい。」

「その代わりと言っては何だが、この包丁と言うのを俺も作って良いか?」

「はい!大丈夫です!」

「交渉成立だ。」

 嬉しそうに言うザイフォン、千春も思わずニッコリ笑みを返す、そしてミスリル製和包丁の注文をした千春はウキウキで店を出た。






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