ドワーフの城で試食の巻!

「ただいま戻りましたー。」

 千春達はガリウスに連れられドワーフ王ゲルダムの元に戻った。


「おぉ、早かったな、どうだった?」

「はい!ゴーレムは全部捕獲しました!」

「・・・捕獲!?」

「はい、アイテムボックスの中に居ますよ。」

「まだ動くのか?」

「出したら動きますねー。」

「それをどうするのだ?」

「ヒマな時に出して破壊する予定ですけど、勿体ないなーってちょと思ってます。」

「そうか、魔物は討伐した者の所有になるからな、それでは坑道はもう大丈夫なのか?」

「えっと、その事なんですけどー。」

 千春が言うと、アリンハンドとエンハルトが詳しく説明を行った。



---------------



「そうか、荒野のダンジョンから魔物の蟻が掘って来たと。」

「はい、これがゴーレムの核で御座います。」

 アリンハンドが手に持つ核をゲルダムに渡す。


「ふむ、確かにゴーレムを倒すと出て来る核だな。」

 核を手に取り見つめるゲルダム、するとマルグリット達が入って来る。


「チハルお帰りなさい、どうだった?」

「はい、無事終了・・・なのかな?」

「あぁ、坑道は問題ないだろう。」

「坑道は?他に問題があったのかしら?」

 マルグリットはエンハルトに言うと、再度説明をする。



「あらら、その蟻の魔物ってダンジョンの大きな蟻よね?」

「はい。」

 マルグリットが確認するとエンハルトが頷く、するとルクレツィアが楽しそうに話始める。


「あの蟻って足が美味しいのよね。」

「よく食べたわねぇ。」

 ルクレツィアが言うとマルグリットが思い出しながら話す、するとゲルダムも頷く。


「塩焼きにすると美味いな。」

「・・・え゛食べるんですか?あの蟻。」

「あら、美味しいのよー?」

「・・・いっぱいありますけど食べます?」

「いいの!?」

 ルクレツィアは嬉しそうに言う。


「沢山あるので・・・本当に食べるんですか?虫ですよ?」

「チハルもスライム食べるじゃない。」

「スライムと虫は違くないですか!?」

「私からすればスライムを食べる方が凄いわよ?」

 マルグリットは微笑む。


「それで?ダンジョンの方はどうするの?ゲルダム。」

「ん~、一応あそこは魔石を取る為に冒険者ギルドと小さな町がある、報告をして蟻を減らすしかなかろうな。」

「鉱山の人ってあの蟻知りませんでしたよ?」

「あの連中は冒険者では無いからな。」

「そうね、ダンジョン村に行く者もそう居ないでしょうね。」

 ゲルダムとマルグリットが話し、千春達は部屋に戻る事にした。


「それでは部屋に戻りますので。」

「助かったぞチハル。」

「いえいえ~♪蟻本当に食べるんです?」

「あぁチハルも食べてみたらいい、塩焼きにすると美味いぞ。」

「・・・はい、気が向いたら食べてみます。」

 千春達は挨拶しそのまま部屋に戻った。



---------------



「うぇ~アレ食べるんだってよ。」

「試しに食べてみようよ。」

「マ?」

「いや、ゲルダム王様だけならまだしも、メグ様とルクさんが言ってんだからぁ、美味しいんじゃないの?」

 ビェリーは影に入っている蟻の様子を見る、既に息絶えピクリとも動いていない。


「わっちの影に大量にはいっとるばーい。」

「数十匹入れてたよね。」

「ゴーレムもあるね、これどうするの?」

「あー、ゴーレムは広い所でドラゴン達と遊んでもらおうと思ってる、ミスリルは欲しいからね。」

「蟻は?」

「・・・サフィー、コンロ持ってきてる?」

「ありますよ。」

「サフィー蟻食べた事有る?」

「ありません。」

「食べたい?」

「・・・いえ。」

「デスヨネー。」

 部屋に戻る千春達、扉を開けると、アイトネと春恵が手を振ってくる。


「おかえり千春、蟻食べるの?」

「ヴっ・・・ちょっと焼いてみようかとは・・・思ってる。」

「お母さんも食べてみたいわ。」

「嘘でしょ!?」

「あら、異世界の食材でしょ?試食してみたいじゃない。」

「食べたい人は食べたら良いよ・・・食べたい人ー。」

 千春が言うと皆が手を上げる。


「うっそぉぉぉぉ!?」

「え?あの3人が美味しいって言うんだし、危ない事もないなら食べてみたいじゃん。」

「チハル~今更じゃん?」

「どんな味するんだろうね。」

「私も料理手伝うー♪」

「ダイア、料理って塩焼きにするだけじゃんよ。」

 千春を除くJK達は外に出ると、サフィーナがコンロを取り出す、ビェリーが一匹の蟻を取り出すと頼子が話す。


「足が美味しいって言ってたよね。」

「うん、足しか食べないのかな?」

「どうだろ・・・て足結構太いね。」

「チハル、ナイフ貸してー。」

「はい、どうぞー。」

 千春はミスリルナイフを取り出すと頼子が足を切り落とす。


「おー?」

 切断部を見ると、少し透き通ったような身が見える。


「匂いは・・・臭くはないね。」

「んー、うん、ちょっと甘い匂いするね。」

「塩焼きってこれ殻ごと焼くの?」

「取り出すんじゃね?」

「どうやって?」

「こう・・・蟹みたいに。」

 頼子は間接付け根をナイフで軽く叩いて行くと。


スポッ


「あ、取れた。」

「おー!蟹だ!」

「いや、蟻だよ。」

 美桜に冷静に突っ込む千春。


「で、塩焼き!」

「はーい塩振りまーす。」

「焼きまーす。」

 頼子から蟻の身を受け取る麗奈、それを網に置き焼いて行く青空。


「おー、白くなってきた。」

「やっぱ蟹じゃん。」

「・・・蟻だよ。」

 千春はジト目で焼ける蟻を見る。


「こんくらい?」

「もうちょい焼く?」

「千春鑑定してー。」

「・・・えぇぇ・・・鑑定・・・あ、もう焼けてるから食べれるよ。」

「はーい!最初に食べる人だーれ!」

「はーい!」

「はいはい!ウチ!」

「私もー!」

「じゃんけんする?」

「・・・切り分けたら良いじゃん。」

 千春はハサミを取り出すとチョキチョキと6頭分にする、そしてつまようじをプスプス刺し離れる。


「はいどうぞ。」

「いただきー!」

「まーす!」


パク


「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

「何か言えー・・・。」

 千春は無言の6人に突っ込む。


「どうする?」

「これダンジョンに居るんだよね?」

「乱獲すっか。」

「ビェリーが結構持ってるよ?」

「・・・。」

 頼子達が話を始める、美桜と大愛は黙って次の蟻を焼き始めた。


「え?美味しい?」

「めっちゃうめぇ。」

「やばい、カニより美味い。」

「なんだろ、歯応えあるカニカマの食感だけど甘くて塩が良い感じ。」

「はい!次焼けたぁ!」

 気付けば数本の脚を一度に焼き始めた美桜達、千春は気になり一口食べる。


「・・・うっま。」

「でしょー!?」

「何これ虫だよね?」

「それは言わない約束だ。」

「約束してないけどね。」

「千春これどう料理する?」

「ん~~~~~~~、しゃぶしゃぶしたい。」

「良いな!」

「しゃぶしゃぶしようぜ!」

「蟻だけじゃアレだから野菜とか肉も準備すっかー。」

 千春達はそう言うと部屋にコンロを並べ始める。


「どう?美味しい?」

「うん、蟻と言う事さえ思い出さなきゃ甘いカニって感じだった。」

 春恵に説明しながら鍋に水を入れ出汁を作る千春。


「ビェリー!もっと蟻だしてー!」

「りょうかーい。」

「ルプ君!足全部切り落として!」

「私は殻切り落としていくねー。」

「はい!おさら!これに並べて!」

 千春達の少し早いお昼ご飯は、蟻のしゃぶしゃぶパーティーになった。






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