深緑の森焦土作戦!③

 轟々と燃える森を千春達は見つめる、炎は中央の屋敷に向かって広がる、炎の中には炎の精霊が舞い踊り、その外側には風の精霊が楽しそうに風を巻き起こしていた。


「すげぇ~。」

「煙も凄い事になってるねー。」

「ほんとだ~。」

 他人事の様に話す千春達、煙は既に雲へ届くのではと言う程にあがり、炎も巻き上げながら燃えている。


「これ中に居たら死ぬね。」

「そりゃそうでしょ~。」

 ドラゴン達は新たな火種を作り、森の炎を広めていく。


「オピクスさん周りの消火お願いしまーす!」

 水の上位精霊オピクスはニッコリ微笑むと手を上げる、すると水の精霊が水を吹き上げ消火を始めた。


「ほとんど燃え尽くしてるから消火は楽っぽい?」

「そうだね、ラムンディさんが外側の森から離したから大丈夫っぽいね。」

 更に炎は高さを上げ、とうとう屋敷が見えなくなる、炎は渦を巻き中央に向かい燃え盛る、そしてそれを皆は空から眺めた。



---------------



「あなた達!あのドラゴンを落としてきなさい!」

 魔女はワイバーンの屍に命令すると、バサバサと翼を広げ数匹が飛び立つ。


「これはまずい・・・とてもまずいわ、何故ドラゴンがこんな事を、目当ては私?」

 結界の遥か手前を囲むようにドラゴンがいまだ炎を吐き続ける、そしてそれ以上の火が森を覆う。


「あれは・・・精霊!?」

 踊り狂う炎の精霊、そしてそれを楽しむ様に風の精霊が舞っている。


「なぜ!?ドラゴンと精霊が!?」

 訳が分からず魔女は一番大きなドラゴンを水晶で見る。


「女の子?何故ドラゴンに女の子が乗ってるの!?」

 千春を見つめる魔女、そして目に入るのは燃え尽き落ちて行くワイバーンの屍達だ。


「これはダメだわ、逃げないと。」

 周りを見渡す魔女、既に炎に囲まれ屋敷まで炎が届くのも時間の問題だ。


「結界ではこの炎は防げない!」

 魔女はそう言うと部屋に駆け込む、そして自分に保護の魔法を必死で掛けた。



---------------



「国王陛下。」

「ん~なんだぁ?」

 ファスケス王国の国王は部屋で寛いでいると宰相に声を掛けられる。


「深緑の森で炎が上がっております。」

「火事か?それくらいで呼ぶ出ないわ。」

「いえ、火事等の規模ではありません。」

 汗を流しながら宰相は答える。


「では何と言うのだ。」

「魔術師に遠見の水晶で確認させたところ、大量のドラゴンが森に火を放ったとの事。」

「はぁ?ドラゴンだぁ?しかも大量に?何処にそんなドラゴンが居るのだ。」

 話半分で答える国王、そして。


「場所は深緑の魔女殿の館付近だと。」

「何だと!?」

 初めて声を荒げる国王は立ち上がる。


「魔女はドラゴンに喧嘩を売ったのか?」

「そんなバカな事は流石にしないでしょう。」

「あの魔女の事だ、それくらいやりそうだがな、しかし・・・もしそうならばあの計画が白紙に戻るぞ。」

「はい、あの憎い教国へ送り出す兵士が・・・。」

「ドラゴン・・・確か聖女がドラゴンを使役していると言っておったな?」

「はい、しかし聖女はジブラロールに居りますゆえ。」

 国王はそのまま城の高台に移動する。


「・・・何だこれは。」

 城から見える森の奥、遥か先に見える黒煙、そして火柱が目に入る。


「魔女の館はかなり距離があります。」

「うむ、それでもこれだけ見えるのか。」

 モクモクと立ち上る煙を見ながら国王は呟く。


「如何なさいましょう。」

「何が出来ると言うのだ。」

「・・・。」

 宰相が問いかけると国王が逆に聞いて来る、宰相は心の中で舌打ちをする。


「あれでは魔女の安否なんぞ当てにならぬ、次の計画を考えよ。」

「はっ。」

 国王はそう言い放つと、文句を言いながら自室に戻る、宰相は国王の後ろ姿を睨む、そしてもう一度森を見ると舌打ちをし城に戻った。



---------------



『ん~、やっぱり魔女とファスケスの国王は繋がってたわぁ~。』

「みたいですね。」

 アイトネと春恵は話している間に、ファスケスが怪しいのでは?と遠見で王国を覗いていた。


『教国に喧嘩売るつもりだったのねぇ。』

「どうするんですか?アイトネ様。」

『この国、今とても居心地いいのよ~、信仰心もすっごいし♪』

「みたいですねぇ、私にも入って来てますよ信仰心。」

『それはそうよ、ジブラロールにいる教皇のデクスターちゃんと、枢機卿のカーディーちゃんにハルの事説明したもの♪』

「え?話たんですか?」

『勿論♪今この世界には三柱居るって事もね。』

「はぁ~。」

『この国に喧嘩売るって事はぁ~私達に喧嘩売るのと同義だと思うのよ~。』

 アイトネはそう言うと、声を掛ける。


『モート。』

「どうした?」

『ファスケス国の国王、名前なんだっけ。』

「あそこの国王か?たしか、ブラダニオ・ワール・ファスケスだったぞ。」

『あーそれそれ、その子連れて行って良いわよ。』

「国王だけか?」

『ん、他にも居るわね、教国に喧嘩売ってる貴族も全員連れて行ける?』

「それは大丈夫だが・・・。」

 モートは虚空を見つめる。


「・・・多いな。」

「どれくらい居るのですか?モート様。」

「数えるのが面倒なくらいだ。」

『全員連れて行ったら国が持たないかしら。』

「それは問題無いだろう、まともな奴も居るようだ。」

 ニヤっと笑うモート。


『それじゃモートお願いするわ。』

「了解した。」

「モート様、終わったら美味しい料理振る舞わせてもらいますね。」

「それは嬉しいな、ハル。」

 本当にうれしそうな笑みを浮かべ手を振るモート、そして二柱の前から消えた。


『後は魔女ね。』

「これはもう逃げれないでしょ?」

 視線を変え話す春恵。


『どうかしらぁ~?』

 意味ありげに言うアイトネ、その視線には必死で逃げ惑う魔女の姿が見えていた。



---------------



「おぉ・・・屋敷が燃えている。」

 千春は当たり前の事を呟く。


「そりゃ燃えるでしょ。」

 頼子が呆れた様に言う、森は燃え尽き残りは屋敷と半径数十メートルほどの森だ。


「クテトラさん仕上げよろー!」

「まかせろぉ!」

 麗奈の掛け声にクテトラは楽しそうに手を上げる、すると更に燃え上がり、一気に屋敷を燃え尽くした。


「お疲れさまー!」

 千春は皆に声を掛ける。


「流石に魔女さん燃えたよねぇ~。」

「あれで燃えないとかありえないでしょ。」

「わかんないよ?アレでしょ?アンデッドなんでしょ?」

「いやいや、アレ見てよ。」

 黒焦げどころか灰になって転がるゾンビたちを指差す美桜。


『ん~?』

「ロイロどうしたの?」

『まだ生きておるぞ。』

「は!?マジで?!あれで生きてんの?・・・いや、死んでるから生きては無いんだけど。」

『魔力を探索しておったが、まだ残っておるのぅ。』

「何処に?」

 千春は瓦礫と化した屋敷を見る、燃える物はすべて燃え尽くし、場所によっては溶岩の様に解けた岩が見える。


「オピクスさーん消火お願いしまーす。」

 麗奈が言うとオピクスが大量の水を召喚し屋敷を流す。


『うむ、地下に隠れておるの。』

「はぁ?!地下室あんの?ココ!」

「流石アンデッド魔女、しぶといなー。」

「どうするの?掘り起こすの?」

「まだ元気なら魔法怖いよね、石にされるかもよ。」

「あ、そう言えば魔女だから魔法使って来るよね。」

 ドラゴン達も集まり空から屋敷の残骸を見つめる、そしてどうしようかーと考えていると。


ドォォォォォン!!!


「何!?」

 千春達は一斉に屋敷の残骸を見る、土が盛り上がり大きなおっさんが出て来た。


「ネガルス!!!!」

「なんであなた居るのよ!」

「ちょっと!ネガルス!なぜここに!」

 クテトラ、オピクス、セルッティが一斉に声を掛ける。


「ネガルス・・・ネガルス・・・あー!大地の精霊さん!!!」

 麗奈が思い出したように叫ぶ。


「はっはっは!!強大な精霊の力を感じたのでな!覗いておったのじゃ!我も仲間に入れい!」

 ネガルスはガハガハと笑いながら精霊達に声を掛ける。


「ネガルス、お前、なにを持っている。」

 同じく地面から湧き出るラムンディが問いかける。


「ん?お前らコイツ探してたんだろう?地中に隠れておったからの!捕まえてやったぞ!」

 ネガルスの大きなてに握られた魔女はぐったりとしている。


「死んでね?」

「いや、さっきまでロイロが魔力感じてたから・・・ワンチャン生きてるはず。」

「いや、アンデッドだから死んでるっしょ。」

「めんどくせえなアンデッド!死んで生きてんの?!どっち!?」

 ぐったりとして白目を向くアンデッド魔女を見ながら千春達はワイワイと話はじめた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る