深緑の森焦土作戦!②

「お待たせしました。」

 エーデルとリリがフェアリーリングから戻ると、後ろにはドラゴニュートが並んでいた。


「あれ?竜騎士団じゃないんだ。」

「はい、騎士団を出すと国際的に問題が。」

「あぁ・・・そう言う事?」

「はっ、今回は聖女様としての行動で行いますので。」

「でも聖女イコールジブラロールの王女じゃないの?」

「いえ、教国の訪問中に聖女様が見つけ、使役しているドラゴンで討伐した・・・と言う流れになります。」

「・・・うぃ!」

 良く分からない千春は返事を返す。


「チハルちゃん!お手伝いするわよ!」

「ママドラさん!来たの!?」

「えぇ、楽しそうだから♪」

 ママドラはニッコニコで答える。


「母よ、分け前が減る!」

「なによ、良いじゃない少しくらい!」

「ダメじゃ!」

「まぁまぁ、ロイロ、今から追加でお酒注文するから、終わった頃には届いてるよ。」

「ぬ・・・それなら。」

「千春!日本酒増やしてくれ!」

「わっちも!」

「僕もです!」

「へいへい、鰻に合うお酒って入れてお任せ注文するよー。」

 千春はポチポチと操作する、そして立ち上がる。


「それじゃ行きますかぁ。」

「「「「「おー!」」」」」

『チハル、何か有れば直ぐに呼びなさいね。』

「無理しちゃダメよ?」

 アイトネと春恵が声を掛ける。


「大丈夫でしょ、このメンツだよ?」

 ママドラは早速ドラゴンに変化する、他のドラゴンよりも二回りは大きく、まるで怪獣のようだ。


『チハル、私がこの子達に指示を出すわ、私に乗って頂戴。』

 ママドラは首を下げると千春が背中に乗る。


「私達はダフニー達に乗れば良いね。」

「サイマスよろしくね!」

「アベリアちゃん!・・・あれ?卵見てなくて良いの?」

『はい、祝福も頂いてますし、旦那が見てますから。』

「ウチはミリカちゃんねー、よろっ!」

 赤いスカーフを巻いたドラゴン、ミリカはコクリと頭をさげる、微笑んでいるようだ。


「アルデアとテールカはどうするー?」

「んー、私も付いて行こうかしら。」

「え?アルデア様行くの?!」

「テールカもついてらっしゃい、面白そうよ?」

「アルデア、それじゃ好きなドラゴンに乗って~。」

「大丈夫よ、眷属を呼ぶから。」

 アルデアはそう言うと影を作る、そして広がる影に魔法陣が現れる。


「来なさい。」

 アルデアが声を掛けると、黒い煙を纏ったドラゴンが現れる。


「何これ・・・。」

「カオスドラゴンよ、49階層に湧くドラゴンを眷属にしたのよ。」

「ひぇぇ。」

 ブルンと首を振り、アルデアに頭を下げるカオスドラゴン、アルデアは軽く頭を撫でる。


「こ・・・これにのるの?」

 1つ目を大きく開きテールカが問いかける。


「そうよ?大丈夫、言う事聞くから。」

 アルデアはピョンとジャンプすると背中に乗る。


「カオちゃん、頭下げて。」

「グルゥゥゥゥゥ。」

 頭を下げるとテールカはよじ登る。


「良いわよー。」

「・・・まぁいっか。」

 ロイロの背中にはケットシーのデンハ、ビェリー、コンが乗り、ルプは自分の足で行くようだ。


「それじゃレッツゴー!」

 千春の掛け声にドラゴン達が羽を広げ羽ばたく、そして深緑の森へ飛び立った。



--------------



「・・・強力なマナ。」

 女は水晶を手にすると教国の方を向く。


「ドラゴン?」

 先頭を飛ぶ大きなドラゴンを目にし、女はニヤリと笑う。


「こちらに向かってるわね、面白い素材が集まりそう・・・、結界で叩き落してあげましょう。」

 女はそう言うと魔法陣に立つ、そして呪文を唱えると魔法が発動する。


「この森を通る方が悪いのよ?ドラゴン、あなたも私の従僕にしてあげましょう。」

 クスクスと笑う女、そして女の住む館の周りにいる魂の抜けた屍が動き始める。


「これで国王に頼まれた戦力も集まるわね、報酬が楽しみだわ。」

 女は水晶を見つめ続けた。



--------------



「カーディー様!」

 ローブを着た司祭は枢機卿カーディーの部屋に飛び込む。


「何事ですか?」

「聖女様がドラゴンに乗り出かけられました!」

「何!?何処へ?!」

「はい!メイドの話では深緑の森と。」

「何しにあのような所へ。」

 カーディーは首を傾げる。


「それが・・・森を焼くと。」

「は?何だと?!」

「はい、森を・・・焼くと。」

「何故だ!?あの森はファスケス国の国土だぞ!?」

「はい、どうもその件も知っているようですが、アンデッドが湧いているとの事で。」

「何故聖女様が他国のアンデッドを・・・利も無いだろう?」

「詳しくは分かりません。」

「女神アイトネ様は?」

「部屋に残られております。」

「お会い出来るのか?」

「お伺いを立ててみますか?」

「そうだな・・・いや、私が直接お伺いする。」

 カーディーはそう言うと立ち上がる、そしてアイトネの居る部屋へ向かった。



--------------



「動き出した、ようだな。」

 木のドラゴン、ラムンディは気配を感じ呟き目を瞑る、すると、円を描くように木が動きだす。


「これくらい、開けていれば、外には広がらぬだろう。」

 ラムンディは呟く、そして木々を通し生きた動物に話しかける、その瞬間鳥が飛び立ち動物達は円の外へ飛び出す。


「森の木々よ、新たな芽を、残す事を、約束しよう。」

 そう呟くとラムンディは姿を消した。



--------------



「ママドラさんあれかな?」

『えぇ、そのようね。』

 一面の森に円を描く様に区切られた森が見えた。


『皆、配置に付きなさい!』

『チハル、あの中央に館が見えるぞ。』

「どれどれどれ!?」

「あー、あれが魔女の館か?」

「それっぽいやん。」

「どのみち燃やすんですよね?」

 ロイロの視線の先には小さな屋敷が見える。


「小さい?」

「いやここから見えるくらいだ、結構デカいぞ。」

「へー。」

 どうせ燃えるし、と軽く返事を返す千春。


「ママドラさん、ドラゴンさん達に号令って聞こえるの?」

『私の声は直接届くわよ。』

「テレパシー的な?」

『そう、そんな感じね。』

 配置に付いたドラゴン達、そして麗奈の乗るアベリアの横には上位精霊が3座浮いている。


「それじゃ行きますかー、レナよろしくねー。」

「了解、クテトラさん火力UP、セルッティさん中央に向かって風を、オピクスさん燃え尽きた所から消火をお願い。」

「任せろ。」

「了解♪」

「わかったわ~。」

 麗奈は千春にOKサインを出すと千春はママドラに声を掛ける。


「ママドラさん!ふぁいあー!」

『始めなさい!』

 ママドラが皆に合図を出す、そして一斉に森が炎に包まれた。








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