深緑の森焦土作戦!①

「・・・マジで?」

「多数決でしょ?」

「そだね。」

 千春は、ハァと溜息を吐く。


「それじゃ森を焼き払うと言う事で!」

 皆は何故か拍手する。


「アイトネ、どれくらいの範囲なの?」

『そんなに広くないわよ、魔女の周辺を守るように居るから、そうねぇ、千春達が分かりやすい範囲だと東京ドーム50個分くらいかしら?』

「余計分かんないよ!」

「たしか飛空島が20個分とか言ってたから、空島の倍以上かー。」

「結構広いね、ロイロちゃん達だけで行けそう?」

「うむ、問題は無いが時間かかるのぅ。」

「それじゃドラゴンもう少し呼ぶ?」

「中央に向かって周りから燃やす感じで良いんじゃん?」

「消火部隊も欲しいね。」

 大愛が言うと麗奈が手を上げる。


「消火は精霊に頼むよ。」

「精霊に出来るの?」

「うん、オピクスさん呼べば。」

 麗奈はそう言うと杖を取り出し、精霊を呼ぶ。


「オピクスさーん!」

 麗奈が呼ぶとコップの水が吹き上がり、美しい女性が現れる。


「レナ、何か用?」

「あのね・・・。」

 麗奈は水の上位精霊オピクスに説明をする。


「ん~、他の精霊も呼ぶから大丈夫だけど、ラムンディとクテトラも呼びなさいな。」

「なんで?」

「ラムンディに森を隔離させて、クテトラには炎を制御させたら余計な被害が無いわよ。」

「おぉー、でも3座も呼んで良いの?」

「問題無いわ、女神アイトネ様がいらっしゃると言う事はそう言う事でしょう?」

 オピクスはアイトネを見ると、アイトネはニッコリ微笑む。


「それでは自分はドラゴンを呼びに行きましょう。」

『私が呼びましょうか?』

「いえ、リリ殿に手伝って頂きます、アイトネ様はチハル様達の方をお願い致します。」

 エーデルはそう言うと、リリを連れ庭に出て行く。


「森の動物とかは?」

「それはラムンディに任せましょう、動物と意思疎通が出来るわ、2座を呼んでくれる?」

 千春にそう答えると麗奈を見る、麗奈は頷き木の上位精霊ラムンディと、炎の上位精霊クテトラを呼ぶ。


「おぉー!レナ!やっと呼んでくれたな!」

「レナ、久しぶりだ、何か有ったか?」

 クテトラとラムンディは楽しそうに声を掛ける、そして同じ様に説明をすると、クテトラは楽しそうに答える。


「ドラゴンの炎を操れば良いんだな。」

「出来ます?」

「あぁ、楽勝だ。」

「それでは我は現地に行って準備しよう。」

 ラムンディが言うと、頼子が場所を説明する。


「えっと、簡易地図らしいんだけど、このファスケス国のこっち側の森なんだけど。」

 地図を指差し説明すると、ラムンディは目を瞑る、そして。


「把握した、腐った死体が、動き回っているな。」

「わかるの?」

「森の中は、我の手の中と、同じだ。」

「それじゃそのまま殲滅とかは?」

「呪いや疫病は消えない、一度燃やした方が良い。」

「ラムンディさん的に森を燃やすのはダメって言うかと思ったよ。」

 千春は当たり前の様に言うラムンディに言う。


「森が、燃える事など、よくある事、消滅と再生は、おのずと訪れる。」

「それじゃラムンディさんお願いしますね。」

 麗奈が言うと、ラムンディは霧の様に消えた。



----------------



「・・・アルデア様。」

「なに?」

 一つ目を大きく見開きテールカがアルデアを呼ぶ。


「上位精霊と言われてましたが。」

「えぇ、正真正銘の上位精霊よ。」

「3体も!?」

「あと1座居るわよ。」

「座?」

「精霊は1座、2座と数えるの、神様は1柱でしょ?」

「えぇ・・・。」

 話をしているとクテトラが麗奈にもう1座呼ばせていた。


「また増えた?!」

「確か風の上位精霊、セルッティー様ね。」

「レナって何者なの!?」

「ふつ~~~の女子高生よ。」

「ありえないわ、ドラゴンで森を燃やすだけでも物凄い事なのに。」

「これくらいで驚いてたらジブラロールで暮らせないわよ~?」

 ケラケラ笑いながらアルデアは答えた。



---------------



「これ美味しいです。」

 コンはテーブルに座り、サラダ煎餅をポリポリ食べる。


「うまかばい、この塩加減がよかっちゃん。」

「酒欲しくなるな。」

 ビェリーとルプも煎餅をポリポリと食べながら千春達を見ていた。


「デンハ、お前も食べないか?」

 デンハはポカンと上位精霊を見ながら固まっていた。


「あ、はい・・・ありがとうございます。」

「どうした?」

「どうした?え?皆さん見えてますよね?上位精霊様が降りて来られてるんですよ!?」

「あぁ、勿論見えてるぞ?パリッ。」

「そげん目悪くなッとらんけんね~・・・パリッ。」

「デンハの里は近いのか?」

「いえ、先程地図を見せてもらいましたが、近くは有りません、しかし森を燃やせばすぐに気付くくらいには・・・。」

「それじゃ大丈夫だ、安心しろ。」

「そやね、ドラゴンに上位精霊4座やけん被害は最小限ばい。」

 気楽に話すルプとビェリー。


「そうじゃぞ、それに2柱も見ておる、これだけ大きな事をした後の打ち上げが楽しみじゃぁ。」

 ロイロはもうすでに、この件が終わった後の楽しみを想像していた。


「豆は別にいいばってん、鰻やね!」

「そうだな、白焼きか蒸篭蒸しもいいなぁ。」

「なんじゃそれは?」

 ロイロはルプに問いかけると、ルプは舌舐めずりする。


「鰻の調理法だ、脂の乗った鰻の白焼きを醤油とワサビでパクっと、そこに吟醸酒の熱燗できゅ~~~っと!」

 ルプが言うと、横ではコンとビェリーが涎を垂らしていた。


「なんじゃその想像しただけで美味そうな食べ方は!」

「ま、楽しみにしておけばいい、鰻は腐る程あるだろ。」

 ルプは冷凍保存された鰻をチラッと見る。


ゴクッ


 ルプ達は同時に喉を鳴らす、そして横で聞いていたデンハもゴクリと唾を飲み込んだ。


「あの・・・ルプ様。」

「なんだ?」

「僕もご相伴に預かれますか?」

「ん?デンハ、お前はその時は里じゃねぇか?」

「えーーー!!!!!!」

「帰りたいんじゃろ?」

「帰るんやろ?」

「帰るんですよね?」

 ロイロ、ビェリー、コンが言い放つと、泣きそうな顔で皆を見るデンハ。


「冗談だ、ハルに鰻を食べさせるって言ってたからな、一度戻って来るだろ。」

「そやねー。」

「日本酒有るんですか?」

「あるばーい、収納しとるばーい♪」

「でかした!ビェリー!」

 ロイロはビェリーの頭を撫でる、そして千春達の準備が着々と進んで行った。






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