老騎士ワークス聖女に会う!

コンコン


 エーデルは王女殿下の扉をノックする、後ろには老騎士ワークスが、そしてワークスを挟む様に騎士団が付いている。


「どぉーぞー♪」

 老騎士と騎士団の緊張も考えない呑気な返事が帰ってくる、エーデルは思わず微笑む、扉が開きサリナが中へ促すと、先ほど同様にソファーで寛ぐ面々が目に入った。


「いらっしゃいませー♪」

 千春は立ち上がり楽しげに挨拶すると、老騎士は膝を突き挨拶をする。


「聖女様、遅くなり申し訳ありません。」

 まるで約束した時間に来れなかったように謝罪する老騎士。


「えーっと、多分違う人なんですよねぇ。」

「いえ、聖女様に仕えるのは我が身の宿命で御座います。」

「んーー?」

 話が噛み合わない千春はマルグリットとアイトネを見る。


「貴方、名前は?」

 少し威圧的なマルグリットが問いかける。


「ワークスと申します。」

「聖女に仕える理由は?」

「聖女様より『また私を守ってね』と、約束致しました。」

「アイトネ、別人だよね?」

『えぇ、聖女が生まれ変わって、また聖女になると言う事は無いもの。』

「だそうですよ?」

「貴女は?」

 アイトネに視線を向け問いかける老騎士に千春が答える。


「この方々は、この世界の女神様アイトネ様でー、こちらがモート様、こっちはおかぁさん様。」

「千春、お母さん様って何?」

「ハル様?一応女神だし。」

「一応ね。」

 クスクス笑うアイトネと春恵。


「女神アイトネ様、それでは聖女様は今何処に?」

『貴方の言う聖女は輪廻に戻り生まれ変わっているわ、どこに居るかは分からないわね。』

「そうだな、死ぬ前に魂を見ていればまだ追えるが。」

 アイトネとモートが言うと、老騎士は頭を垂れる。


「聖女様、魂は違えど聖女様への忠誠は変わりません。」

 ワークスはそう言うと再度頭を下げる。


「どうしたらいいのん?」

 千春は、はて?と首を傾げる。


『チハルが魂の束縛を解放してあげればいいわ。』

「ほぉ〜・・・無茶振りしてくるねぇww」

「そうでもない、コイツの魂は約束と言う言葉に縛られている、チハルがそれを上書きしてやれば良い。」

「どうやって?」

『新たな使命を与えれば良いわ、聖女に縛られた呪いみたいな物だもの、聖女のチハルしか出来ないわよ。』

 さも当たり前の様に伝えるアイトネとモート。


「上書き・・・上書きねぇ。」

 千春は漫画で読んだ物語を思い出しながら考える。


「ワークスさんはコレからどうしたいの?」

「聖女様にお仕えし、お守りしたいと。」

「守りかぁ、私めっちゃ守られてるもんなぁ。」

 いつものクッションに丸くなっているルプがチラリと千春を見る、ニヤッと笑うと目を逸らす。


「お母様、ぷりーずへるぷみー。」

「仕方ないわねぇ、チハル、王族の剣を出して。」

「はーい。」

 千春はアイテムボックスからミスリルの短剣を取り出す。


「ワークスの肩に乗せなさい。」

「こう?」

「鞘を取ってね。」

「え、危なくないですか?」

「大丈夫よ。」

 千春はワークスの肩に軽く短剣を乗せると、マルグリットは耳元で囁く。


「私が言う事をそのまま言いなさい。(ボソッ)」

「はい。」

 返事をすると、マルグリットが呟く、そしてそれを千春は言葉にする。


「チハル・アル・ジブラロールは騎士ワークスに問います。」

 千春は言われた通りの言葉を発する。


「騎士ワークス、女神に誓いますか?」

「はい、誓います。」

「騎士ワークスは誰に忠誠を誓いますか?」

「聖女チハル様に。」

「騎士ワークスは誰の為に剣を振りますか?。」

「聖女チハル様の為に。」

「女神アイトネの名に誓約を証し命じます。」

「・・・。」

 千春はニッコリ笑う。


「ワークスさん、もうあなたは自由だよ。」

 ワークスは驚き千春を見る、


「・・・。」

「もう何にも縛られない、好きなように生きて下さい。」

「しかし・・・。」

「私は大丈夫、ココに凄い人達が居るから、ね!アイトネ!」

 アイトネを見るとニッコリ微笑み頷く。


「自由・・・。」

「そ、自由だよ。」

 千春は笑みで問いに返す。


「マルグリット王妃殿下。」

「何かしら。」

「チハル王女殿下の執事として働かせていただく事は出来ますでしょうか。」

「・・・はぁ、なんとなくそんな気がしたのよね。」

 溜息を吐くマルグリット。


「エリーナ、セバスを呼んでくれる?」

 マルグリットは付き人のエリーナに、執事長のセバスを呼びに行かせる。


「え?お母様?」

「国が違う者がジブラロールの執事になる為には勉強が必要でしょ?」

「へ?私に執事付けるんですか?」

「そうよ、侍女だけでは困る事も有るもの、それにワークスは結構な手練れでしょう?」

 エーデルに向き問いかけると、エーデルは頷く。


「騎士の人に執事なんて出来るんですか?」

「ワークスなら出来ると思うわよ、歩き方がソレですもの。」

「ワークスさん執事した事あるんですか?」

 千春が問いかけるとワークスは頷く。


「数代前の記憶に有ります。」

「・・・え?」

『チハル、この子記憶を残して転生出来るタイプなのよ。」

「色々と経験しているようだ、魂も綺麗だからな問題無い。」

「神様2人のお墨付きかぁ・・・ん!ま、いっか!ワークスさんよろしく!」

 千春はそう言うと踏ん反り返る。


「んじゃ、恒例の!」

「歓迎会か!?」

 ルプとロイロが千春を見る。


「ぴんぽ~ん♪ワークスさんお酒呑めます?」

「嗜む程度で御座います、聖女チハル様、敬称はお止めいただけると・・・。」

「ん、そこは気にしないで、私の性分だから。」

「しかし・・・。」

「お母様、セバスさんのお勉強ってすぐ終わります?」

「終わるわけないでしょう、顔合わせだけして明日からにするわ。」

 呆れた様に答えるマルグリット、しかし顔は楽しそうに笑っている。


「チハルおねえちゃんパーティーするの?」

「そ!パーティーだよ、美味しい物いーーーーっぱい食べれるよ。」

「やったぁ!」

「千春、ビェリーとコンも呼んでくれ、仲間外れにしたらウジウジ言われるからな。」

「おっけ~、声かけるわー。」

 そしてワークスの歓迎会準備が始まった。





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