デミオーガとの因縁!

 若かりし頃、マルグリットはとある町に来ていた。


「メグ、エイダンは冒険者ギルド寄ってくるって。」

 ルクレツィアはそう言うとマルグリットの所に駆け寄る。


「ゲルダムは?」

「鍛冶屋、自分で研ぐって聞かなかったわ。」

「ふぅーん、ルク、先にご飯食べない?」

「そうね、待ってたら遅くなりそうだし。」

「後から来ても先に食べ終わるでしょ、あの2人なら。」

 2人は町を歩き、店を見つけると扉を開ける。


「へぇ、良いわね。」

 スッキリとした店内、家族でやっているのか少女と男の子が食事や酒を運んでいた。


「いらっしゃいおねえちゃん、空いてる席に座って!」

 男の子は元気に接客をする、マルグリットは笑みで返し適当なテーブルに座るとルクレツィアも対面に座る、少女がお品書きをテーブルに置くとルクレツィアが注文を入れる。


「メグ何食べる?」

 お品書きをマルグリットに見せると、マルグリットは肉串と野菜たっぷりスープを頼む、そしてふと奥の男達に目が行く。


「ルク、あれってデミオーガよね。」

「ん?あ、ほんとだ、ここらに集落あるのかしら?」

 デミオーガから視線を外し、今日の狩りの話をしていると、さらにデミオーガが入って来る。


「おぉう、ココに居たのか。」

「おーこっちだ!」

 デミオーガの男はズンズンと歩きテーブルに向かう、そして女の子に酒を持ってこいと言い席についた。


「店間違えたかしら。」

 マルグリットは不機嫌に言うと、ルクレツィアも手に顎を置き頷く。


「ちょ~っと嫌よね。」

「ね。」

 小さな声で話す2人、デミオーガ達は大きな声で話しながら周りを見渡す。


「おい!お前。」

「・・・。」

「そこの犬と赤い髪の女!」

「・・・。」

「聞こえねぇのか!」

「・・・。」

 無視していると大柄な男が近づいて来る。


「おい、お前、酌しろ。」

「は?嫌よ。」

「あぁん?人間の女の分際で断るのか?」

「おー、威勢のイイねえちゃんだな。」

 ゾロゾロと近寄るデミオーガ達。


「はぁ、ここじゃ迷惑になるわよね。」

「そうね。」

 溜息を吐くマルグリット、すると店の男の子がお盆を持ってデミオーガに声を掛ける。


「お客さん・・・迷惑になるのでやめてください。」

「あぁぁ!?何だ小僧、食われたいのか?」

「ひっ!?食われたくないですけど!女性に酷い事するのはダメです!」

「へぇ、ダメならどうするんだぁ?」

 デミオーガは男の子に手を伸ばす。


「やめなさい!」

 ルクレツィアは立ち上がると声を上げる。


「犬のねーちゃん、お前らが酌すりゃ済むだろうが。」

「・・・表に出なさい。」

「あぁ?俺は別にココでやっても構わねぇぞ?」

 一人のデミオーガがテーブルを殴ると半分に割れる。


「はぁ、やっぱり頭が悪い種族は嫌い。」

 マルグリットはそう呟くと立ち上がる。


「お、やんのか・・・な?なんだ?」

 男達の足元が凍り床から動かなくなる。


「坊や、中に入っててね。」

 マルグリットは男の子を中に促すとルクレツィアはデミオーガの手を掴む。


「うるぁぁ!!!」


バキィ!!!!


「ぎゃぁぁ!!!!」

 扉を粉砕し外に飛び出るデミオーガ、そして他のデミオーガは腰までが凍り身動きが取れなくなっていた。


「お嬢ちゃん、ごめんね修理代は出すから。」

 ニッコリ微笑むマルグリット、女の子は顔を引き攣らせながら見ている。


「さてと。」

 気付けばデミオーガ4人は氷の棺に入ったまま身動き取れず固まったままだ。


「これどうしようかしら。」

「メグ、外のヤツ動けてるわよ。」

 ルクレツィアが言うとマルグリットも外に出る、するとワラワラとデミオーガがさらに5人近寄って来る。


「あーもう!面倒ね。」

 文句を言うマルグリット、助けを呼ぶデミオーガは、マルグリットを指差し何かを言うと他のデミオーガ達が歩いて来る。


「おう、人間の女、なにしてくれてんだ。」

「は?食事の邪魔だから外に出てもらっただけよ。」

「あんたたち、テーブルと扉の修理代払いなさいよね。」

 自分が壊した扉も請求するルクレツィア。


「この犬コロとブスが、お前らやってしまえ。」

「・・・は?犬コロ?」

「・・・ブスですって?」

 ルクレツィアは短刀を両手に持ち、マルグリットは杖を掲げる。


「「殺す。」」

「おい!メグ!ルク!何やってんだ!」

 デミオーガ達の後ろから声が聞こえる、そしてデミオーガ達が後ろを振り向いた瞬間、エイダンとドワーフのゲルダムが切り伏せ、全員が倒れた。


「おいおい、また面倒事かよ。」

「エイダンが遅いからよ、あとそいつら殺して良いわよ。」

「待て待て、デミオーガは魔物じゃねぇぞ。」

「そうじゃぞ。」

「ゲルダム、そう言うけどね、私の事を犬コロって言ったのよ!?」

「エイダン、私ブスなの?」

「いや?相変わらず美人だぞ?」

「・・・んふっ♪」

「ねえちゃん!!」

 店の中に居た男の子が叫ぶ。


「キャァー!」

「ねえちゃん!」

 デミオーガの1人が凍りを砕き、女の子に近付く。


「やめろぉ!おねえちゃんに近付くな!!!」

 お盆でデミオーガに立ち向かう男の子。


「てめぇ・・・。」

 その一言を発すると、デミオーガが倒れた。


「大丈夫か?」

 エイダンはすぐさま店に入ると、デミオーガの後頭部を鞘付きのブロードソードで殴った所だった。


「こいつ、私の氷破ったの?」

「あぁ、こいつらのボスじゃないか?」

 エイダンは周りを見渡す、ゲルダムはヒョイっと氷ごと男達を担ぎ上げ外に投げ捨てる。


「こりゃ派手にやったのぅ。」

 粉砕した扉を見つつ、ゲルダムが呟く。


「しょうがないじゃない。」

 プイっと横を向くルクレツィア。


「坊主、よくねえちゃん守ったな、かっこよかったぞ。」

「頑張ったね。」

 エイダンとマルグリットは男の子を撫でる。


「こわかったぁ・・・。」

 ぺたんと座り込む男の子、少女も腰を抜かす。


「坊主、中々見どころあるな、どうだジブラロールで騎士団に入らないか?」

「は?何言ってんのよ。」

 エイダンのスカウトに飽きれるマルグリット。


「僕は父ちゃんみたいな料理人になるから。」

「あら、良いわね、それじゃ私の館で料理作ってよ。」

 マルグリットはニッコリ微笑む。


「坊主名前は?」

「僕?ルノアーだよ。」

「よし、ルノアー、ジブラロールに来たら俺の名前を兵士に言え、俺はエイダンだ。」

「待ってよ、私の館で料理!ルノアー君、マルグリットって覚えててね、お給金弾むわよ♪」

 2人はルノアーと話をしているとルクレツィアが外から戻って来た。


「はい、修理代。」

「どうしたのコレ。」

「あいつ等からはぎ取って来た。」

「で、アレどうすんのよ。」

「あー、お前らここで飯食ってろ。」

 エイダンはそう言うと外に出る、マルグリットとルクレツィアは、はーいと言うとテーブルに座った。



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「へぇー!ルノアーさんってそこで知り合ったんだ!」

「そ、可愛かったわよー。」

 千春は楽しそうに、マルグリットも少年ルノアーを思い出したのかニッコリ微笑む。


「千春、ルノアーさんじゃなくデミオーガの話だった気がするんだけど。」

 頼子は思わず突っ込む。


「あ、そうだった、で、デミオーガはどうなったんです?」

「エイダンが衛兵に引き渡したわ、王族の短剣を見せて強引に処理したってグチグチグチグチ言われたわよ。」

「それでデミオーガ嫌いなんですか?」

「そうよ。」

「その連中だけなんじゃ・・・。」

「その後数回デミオーガに会ったのよ、全員クズ!最低!やっぱり駆逐するべきだったわ。」

 嫌な事を思い出したのか、マルグリットの額に皺が寄る。


「ルクレツィアさんも嫌いなの?」

 マルグリットの部屋に遊びに来ていたルクレツィアに頼子が問いかける。


「・・・だぁぁぁぁぁぁぁいっ嫌い!!!!」

「うへぇwww」

「後にも先にも犬コロとか言われたのあいつ等だけよ。」

「そりゃ怒るわなぁ。」

「それで?チハル今からデミオーガの所へ行くの?」

「はい、アイトネとおかぁさん、女神がふたり居ますので。」

『心配しなくても良いわよ~♪』

「千春はしっかり守るわよ。」

「・・・はぁ。」

 マルグリットは大きく溜息を吐いた。




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