デミオーガ御一行温泉旅館へ!
「入ってくれ。」
エーデルはホーキンの開けた扉を見ながらクラータに声を掛ける、クラータは軽くお辞儀をすると部屋へ入る、男達も後ろから大人しく付いて行く、後ろからついて来ていたルプとロイロも部屋に入る。
「そこに座ってくれ。」
クラータは無言で指示に従う、大将のセルロはクラータの後ろに立つと、他の男達も後ろに立つ。
「座ってもらって良いのだが。」
「いや、俺達はココで良い。」
セルロはそう言うと直立で後ろに立つ。
「さて、単刀直入に言うと、デミオーガの気質から行って面倒事が起きると思っている。」
「・・・理由は?」
「まず俺も言ったが、デミオーガと目が合っただけで喧嘩を売られた。」
「・・・。」
「そして王妃殿下も以前、冒険者時代にデミオーガとやり合ったらしい。」
「らしい?」
「あぁ、詳しくは聞いていない、そちらの長は何か言って無かったか?」
エーデルはそう言うとクラータを見る。
「・・・死ぬ寸前まで痛めつけられたと。」
「原因は?」
「聞いておりません。」
「ふむ。」
エーデルは話をしながら男達を見るが、興奮することも無く後ろで立っている。
「正直に言えば、そこらの冒険者の方が粗暴の悪さが目に付くくらいには問題無い。」
「ではこの国に滞在しても大丈夫でしょうか?」
「もう一つ聞いて良いか?」
「何でしょう。」
「クラータ殿、最初物凄く怯えていたが、何か問題があったか?」
「いえ、人間の冒険者に痛めつけられた長の話を思い出しただけです。」
チラリとロイロを見るクラータ、目が合ったロイロはニッコリ笑みを返す。
「分った、俺は今から王宮に報告へ行く、お前達はそれまで指示する宿で待機してもらっていいか?」
「はい。」
「姫!」
「黙りなさい。」
「・・・。」
「なに、悪いようにはしない、お前達も寛げる宿だ安心してくれ。」
エーデルはそう言うとルプを見る。
「あそこか?」
「あぁ、ルプ殿。」
「あそこで暴れたら命無いからなぁ。」
ルプの呟きに男達がざわつく。
「お前ら何処に俺達を連れて行くつもりだ!」
「命が無いだと!?俺達をどうするつもりだ!」
「姫!騙されてはいけません!」
「・・・。」
大将のセルロ以外が反論するが、クラータが手を上げると皆が黙る。
「私達の目的は食事と酒を楽しむ事、噂に聞く酒の為なら我慢しなさい。」
クラータがそう言うと皆は黙った。
「酒かぁ、ルプよ、儂はちょっと用事を思い出したぞ。」
「俺もだ、任せて良いか?」
「あぁ、こいつらとは仲良くなれそうじゃ。」
カッカッカと笑いロイロはルプから降りると部屋を出て行った。
「エーデル、俺が案内しよう。」
「ルプ殿、ホーキンと第一騎士団が案内しますので。」
「かまわねぇよ、こいつらくらいならオレ1人で問題ないからな。」
ニヤっと笑うルプ、クラータはその言葉が嘘ではない事が分かり頷く。
「よし、お前ら付いて来い、最高の飯と酒がある所に行くぞ。」
ルプはそう言うとエーデルに笑いかけデミオーガ達を引き連れ出て行った。
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「チハル~♪」
「ロイロおかえり~。」
「酒有るか?」
「あるよ?え?今から飲むの?」
夕方とは言えまだ日もある時間に酒をねだるロイロに千春が問いかける。
「いや、面白い客が来てのぅ、酒が飲みたいらしいんじゃ。」
「ロイロ!わっちも連れて行かんけん!」
ビェリーがロイロに声をかける。
「ビェリー、お前も来てたのか。」
千春の横に居る頼子の頭にのったビェリーがピョンと飛び降りる。
「えーっと、お酒何が良いの?」
「色々欲しいのぅ。」
「んじゃ日本酒と焼酎とウィスキーの定番で良いかな。」
アイテムボックスから取り出す千春、ビェリーは直ぐにそれを影に入れる。
「お客って誰なの?」
「デミオーガって種族だ。」
「オーガ!?デミってなんだっけ。」
千春が言うと頼子が首を傾げる。
「デミって亜人って意味よ?」
春恵が後ろから声を掛ける。
「亜人?」
「オーガって魔物だったよね。」
「魔物じゃないオーガって事?」
「そうみたいね、お母さんもこっちの種族に詳しくないから分からないけど。」
「前見たオーガは日本で言う鬼やったけん、デミオーガってのも鬼やろね~。」
ビェリーが追加で答える。
「鬼かぁ・・・見てみたいなぁ。」
「ん~、結構血の気が多いらしいからのぅ。」
「何処に居るの?」
「今チハルの旅館に向かっておる。」
「温泉旅館かー、おかぁさん温泉旅館あるの知ってる?」
「上から見てたから知ってるわよ。」
「行ってみたくない?」
「大丈夫なの?」
「ロイロとルプ、ビェリーも居るんでしょ?」
「うむ、儂らが相手をする予定じゃな。」
「んじゃ大丈夫じゃん?」
簡単に言う千春にロイロは苦笑いをする、こう言いだすと千春は止まらない。
「サフィー、デミオーガさん達危ない?」
「危ないですよ。」
「即答!?」
「はい、チハルがデミオーガと会うなんてメグ様が知ったら発狂するレベルです。」
「マ!?」
「マ!?」
思わず叫ぶ千春と頼子。
「メグ様はデミオーガを嫌っていますから。」
「えー?マジか、それじゃやめとくかぁ、残念だけど。」
「千春、最強の護衛連れて行ったら?」
「・・・ソレダ。」
千春はさっき頼子と一緒にコンビニで買った生クリームたっぷりロールケーキをテーブルに出す。
「アイトネ~♪」
『はぁ~い♪あなたのアイトネよぉ~♪』
「テンション高いな。」
『暇だから見てたもの。』
「おかぁさんと一緒に温泉旅館行きたいんだけどぉ~、これでお願いしまっす!」
『おっけ~♪』
「で、なんでお母様デミオーガ嫌いなんだろ。」
『聞いてみれば良いじゃない。』
「そだねぇ、別に急いでないし、行くなら報告しないとだし・・・聞いてみよっ♪」
千春は軽~く言うと立ち上がる。
「儂らは行くからな。」
「ヨリ、いってくるばい!」
「ほーい、いってら~。」
「ビェリー暴れたらダメだからね?」
千春と頼子が言うとロイロは翼を出し、ビェリーが飛び乗る、そして空へ消えて行った。
「んじゃお母様の所寄って温泉旅館行こー!」
「おー!」
「良いのかしら。」
『良いじゃない、あの宿良いわよ~♪ご飯美味しいし!』
千春と頼子は手を繋ぎブンブン振りながら廊下を歩く、その後ろからす~っと浮いて移動する女神2がのんびり付いて行った。
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