面倒起こしそうなお客様!

「ただいまー!」

「おかえりー千春。」

「あれ?お父さんは?」

「宰相さんとお話に言ったわよ。」

「ふーん。」

 カバンをアイテムボックスに入れソファーに座る千春。


「ほら、千春着替えてきなさい。」

「はぁ~い。」

 春恵は千春に言うと、千春は立ち上がる、するとノックが鳴る。


コンコン


「あら、可愛い子が居るわ。」

「ん?」

「ハル様私が出ますので。」

 春恵が言うとサフィーナが扉を開ける。


「チハルおねえちゃぁ~~~ん。」

 ユラは扉の隙間から顔をのぞき込み声をかける。


「ユラ、いらっしゃい。」

「えっと・・・こんにちは。」

「こんにちはユラちゃんね。」

「はい、ユラです。」

「こっちにいらっしゃい。」

 春恵はニッコリ微笑むとユラを呼ぶ、ユラはテコテコとあるいて足元まで来ると春恵は目線を合わせる。


「千春この子が妹にしたユラね。」

「うん、可愛いでしょ。」

「滅茶苦茶可愛いわ。」

 ナデナデする春恵、ユラも嬉しそうに目を細める。


「ユラずっと来なかったね。」

「うん・・・。」

「どうしたの?」

「おかあさまがチハルおねえちゃんが赤ちゃんになってるから、がまんしてねって言われたの。」

「・・・なってないよ?」

「なってたわよ。」

「なってるって言ってたよ?」

「・・・なってないもぉ~ん♪」

 千春はそう言いながら寝室に逃げて行った。


「ユラちゃん、千春の妹なら私の娘ね。」

「そうなの?」

「そうよ?お母さんって呼んでね。」

「おかあさん?」

「ん~可愛い♪お菓子食べる?」

「たべる!」

 春恵はユラをソファーに座らせるとアイテムボックスからお菓子を取り出し並べる。


「いっぱい食べると夕食が食べれなくなるから少しね。」

「はーい♪」

「そこの精霊ちゃんも出て来て食べて良いわよ。」

「見えるの!?」

 姿を消していたルルがポンッと現れる。


「一応女神だもの、さぁ召し上がれ。」

「頂くわぁ♪」

 ユラとルルは嬉しそうにお菓子を食べ始める。


「あー、ご飯前にお菓子食べてるー。」

 着替えが終わり髪を結いながら部屋に入って来る千春はユラとルルを見る。


「少しだけね。」

「ユラ、お母様は?」

「おとうさまとお話してるよ?」

「そっか、お仕事かな。」

 千春もソファーに座るとお菓子を手に取る、チョコをパイで挟んだ一口サイズのお菓子だ。


「んま~。」

「おいしー。」

「美味しいわぁ~♪」

「おじぃちゃんとおばぁちゃん結局帰っちゃったね~。」

「そうね、でもいつでも来れるし良いじゃない。」

「おじぃちゃん頑固すぎー、俺はあの家から離れんぞっ!って。」

「愛着あるのよ、お婆ちゃんも満更でもなかったでしょ?」

「うん、あの家居心地良いもんねー。」

 千春は赤く染まって来た空を見ながら呟いた。



-------------------



「それじゃコレで良いのね。」

「あぁ、タイキ殿はフジイ公爵、イサム殿はムカイ伯爵、ケイジ殿とカズヤ殿はイサム殿のサポートをすると言う事で領地無しの子爵と言う事で決まった。」

「せっかく領地が空いてるのに。」

「まずはムカイ伯爵領を基点に開発を進めるそうだ、そこで落ち着けば皆で次の領を進めるらしい。」

「のんびりしてるわねぇ。」

「儂もそう思ったが逆らしい、急いでやっても粗が出るからと断られた。」

「この国の貴族とは考え方が違うのね。」

「うむ、無理をさせるつもりはないからな、成功事例を作り広めて行けば良いと言われた。」

「分ったわ。」

「それで?ハル様は如何なされておるのだ?」

「あら、他人行儀ね。」

「女神だぞ?」

「ハルさんは明日一度神の領域に帰るそうよ。」

「そうか、チハルが寂しがるのではないか?」

「それがね・・・すぐ戻って来るらしいのよ。」

 クスクスと笑いながらマルグリットが答える。


「どういう事だ?」

「アイさんに頼まれた仕事聞いたでしょ?」

「門の管理じゃろ?」

「えぇ、門は何処にあるかしら?」

「・・・チハルの部屋だな。」

「えぇ、チハルの門の部屋を神域にするそうよ。」

「・・・は?」

「そう言う反応になるわよねぇ。」

 またクスクス笑うマルグリット。


「と、言う事は?」

「ハルさんは基本チハルの門の部屋で過ごすらしいわ、たまにアイさんの領域に戻って何かしらのチェックをしてまた戻るって言ってたわ。」

「・・・だからタイキ殿は屋敷を断ったのか。」

「一応フジイ公爵の王都邸は準備したんでしょ?」

「勿論だ、公爵家で家を持たぬなぞ他の貴族に示しが付かぬからの。」

「無人の公爵家になるわね。」

「・・・うーむ。」

 エイダンは腕を組んで考える。


「良いじゃない、たまには行くでしょ。」

「そうじゃな、考えてもしょうがないのぅ。」

 2人は書類を纏めると、職務室を出て行った。



------------------



「エーデル団長。」

「どうしたヘンリー。」

 走ってエーデルの前に来る第二騎士団小隊長ヘンリーが報告を始める。


「商業ギルドからの報告です。」

「商業ギルド?」

「はっ、旅団の中にデミオーガらしき者が居ると。」

「・・・デミオーガか、面倒だな。」

「はっ、如何致しましょう。」

「今は何処に居る?」

「北東、タピラニアの街を出たと聞いております。」

「ジブラロールに向かっているのか。」

「商業ギルドの話では。」

「そうか・・・。」

「デミオーガは一種族として認識されておりますが・・・気性が激しいと聞いております。」

「あぁ、俺も一度会った事があるが、いきなり勝負を仕掛けられた。」

「それで?」

「返り討ちにしたが、俺も結構怪我したからなぁ。」

 エーデルは傷も無い腕を摩る。


「来たら話を聞いてみよう、魔物のオーガとは違い話は出来る・・・だが喧嘩は売られるだろうな。」

 面倒そうに呟くエーデル。


「では門兵に伝達しておきます。」

「ヘンリー、この件は王妃殿下の耳に入らぬ様に。」

「何故でしょう?」

「マルグリット王妃殿下はデミオーガが大嫌いだからだ。」

「へ?そうなんですか?」

「あぁ、もし知ったら国に入る前に皆殺し・・・こそはしないだろうが半殺しだろうな。」

「何が有ったんですか?」

「・・・お前もデミオーガに会えば分かる、あいつらは人間をバカにしている、特に女性をな。」

「了解しました。」

 ヘンリーはエーデルに返事をすると去っていく、エーデルは赤く染まる空を見ながら呟く。


「・・・ま、耳に入るだろうな、無事で済めば良いが。」

 ジブラロールに向かって来るデミオーガ一族を面倒と思いつつも、この先の不幸を見据えてエーデルは呟いた。






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