源治と文恵を迎えに行こう!

「おばぁちゃーん!」

 千春はルプと一緒に実家に移動し迎えに来ていた。


「チーちゃん!?どうしたのぉ!」

 文恵はビックリした顔で千春に言う。


「迎えに来た!」

「ルプちゃんもいらっしゃい、何か用事?」

「うん!おじぃちゃんは?」

「山で山菜取ってるよ、そろそろ戻って来るからお家で待ってなさい。」

「は~い♪」

「婆さんは何してるんだ?」

「今畑で野菜取ってたんだよ、ルプちゃん食べるかい?」

「あ~・・・それあっちで料理出来るか?」

「あっち?行くのかい?」

「あぁ、その為に来たからな。」

 ルプはニヤっと笑うと千春と一緒に家に入る。



-------------------



「帰ったぞー。」

「おかえりおじぃちゃん!」

「チー!?何してんだ?」

「えへへー迎えに来た!」

「迎え?何処か行くのか?」

「あっちだよあっち♪」

「えらい機嫌良いな、良い事でもあったのか?」

「めっちゃあった!!!!」

「婆さんは?」

「今野菜の下ごしらえしてるよー。」

「チーこれも持って行け。」

 源治は袋を千春に渡すと、千春は袋をのぞき込む。


「おぉぉぉぉ!椎茸!これ舞茸?」

「おう!爺ちゃんの山で採って来たんだ、うっめぇぞぉ?」

「ひゅ~♪おばぁーちゃーん!」

 千春は袋を持って台所へ特攻する。


「爺さん帰って来た?」

「うん!みてみて!コレ!」

「沢山採れたね、コレも持って行くかい?」

「うん!これ天ぷらにしたい!」

「舞茸は炊き込みご飯にしようか。」

「ひゅ~♪食べたい!」

「爺さ~ん、アレ持ってきて。」

「アレぇ?」

「そ、アレ、干してたでしょ。」

「あ~アレな。」

 アレで話が終わる2人を千春はクスクスと笑う。


「ルプ、荷物持てる?」

「おう、任せろ。」

「ビェリー居たら良かったんだけどねぇ。」

「運ぶだけなら俺でも出来る、問題無い。」

 ルプは人狼姿になると、文恵の渡す袋を次々と腕にひっかける。


「婆さん、これも持って行くか?」

「持っていけそうなのは持って行こうかねぇ、あっち人多いし。」

 文恵はサフィーナやエンハルトを思い出す。


「よし、昨日狩った鹿も持って行くか、ルプ持てるか?」

「任せろ。」

 納屋にある大きな冷凍庫を開けると、鹿肉の塊が入っていた。


「おっし、これとこれ、あとコレだな。」

「袋に入るのか?」

「おう、これに入れれば良い。」

 色々な部位の鹿肉を農業用土嚢袋に入れると源治は担ぐ。


「爺さん無理すんなよ。」

「まーだ現役だからな!はっはっは!」

 源治とルプは肉を担ぎ家に戻る。


「婆さんこっちは良いぞ!」

「はいはい、それじゃ行こうかね。」

 文恵と千春は野菜が沢山入った籠を持ち玄関を出る。


「あー、これアケビだ。」

「朝とったヤツだ、チー好きだろ。」

「どんな味だっけ・・・忘れちゃった。」

 千春はウーンと考えながらテクテク歩く、そして近くの小さな神社の鳥居を通り、千春の家に到着する。


「あれ?神社じゃ無いのかい?」

「うん!この鳥居作ってもらったの!」

「誰に?」

「宇迦之御魂様。」

「ひぇぇ、有難いねぇ。」

 庭に出来た鳥居を見ながら文恵は手を合わせ拝む。


「それじゃ行こー!」

 玄関に回ると千春は鍵を開け、文恵と源治を招き入れる、そして異世界に移動する。


「ただいまー!」

「お帰り千春。」

 応接室の扉を開けると大樹と春恵が立って待っていた。


ドスッ・・・


「お母さん。」

「春恵?春恵!?」

「うん、お母さん!」

 文恵は荷物を落とし、春恵は文恵に抱き着く。


「爺さん!春恵が!春恵だよ!?」

 文恵が後ろに居た源治を見ると、源治は目を見開きジッとしている、そして。


バタン!


「おじぃちゃん!?」

「爺さん!」

「お父さん!」

 源治はそのままひっくり返るように倒れた。


「どうしよう!おじぃちゃんが!!!!!」

「大丈夫よ千春。」

 春恵はそう言うと源治の胸を軽く触る、そして。


「おっふっ!!!」

「あ、生き返った。」

「こらっ、お爺ちゃん死んで無いから。」

「今心臓止まったんじゃないの?」

「止まってたわ。」

「死んでるじゃん!」

「動かしたから大丈夫よ。」

「おかぁさんそんな事出来るの?」

「千春も出来るわよ、心臓に小さな電流を流しただけだもの。」

 簡単に言う春恵、そして文恵が源治に声を掛ける。


「爺さん大丈夫かい?」

「・・・あぁ婆さん、川の向こうに春恵が手を振りながら居たぞ。」

「おじぃちゃん!ソレダメな奴!」

「・・・いやいや、私ここに居るから。」

 千春が突っ込み、さらに春恵も突っ込む。


「春恵!?」

「お父さん、久しぶり。」

「俺は死んだのかぁ。」

「「「「生きてるよ!」」」」

 皆が源治に突っ込む。


「はぁ~、チーちゃんの事で驚く事はもう無いと思ってたけど、こりゃビックリしたわぁ。」

「俺もだ、春恵何故生きてるんだ?」

「え~っと、まぁその事は今から説明するから、そこ座ってくれる?」

 春恵はソファーに2人を促す、千春とルプは荷物を厨房に持って行き、部屋に戻って来る、そしてかくかくしかじかと、春恵と千春、そして大樹が説明を行った。



-------------------



「はぁぁぁ?女神ぃ?!」

「凄いでしょ。」

「神様になったのかい?」

「そ、アイトネ様のお手伝いする事になったわ。」

「大樹君、それじゃ君もこっちで生活するんだな。」

「はい、お義父さん。」

「チーちゃん。」

「ん。」

「よかったねぇ。」

「うん!」

 目を潤ませながら千春に言う文恵、源治も目頭を押さえながら頷く。


「よーし!婆ちゃん美味しい物いっぱい作ってお祝いするよ!」

「わたしも手伝うー!」

「私も手伝うわお母さん。」

「俺も手伝うかぁ。」

 千春、春恵、文恵が立ち上がると源治も立ち上がる。


「爺さんは座ってな、さっき死んだんだから。」

「死んでねぇよ!」

「いや、死んでたよ?おじぃちゃん。」

「チーまで・・・春恵、何か言ってやれ。」

「お父さんは座ってて。」

「・・・はい。」

 3人はクスクス笑うと厨房に向かった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る